第40回日精研春季講座
主催
日本精薄教育研究会[現 日本精神遅滞教育研究会](日精研)
後援
文部省
静岡県教育委員会
全日本特殊教育研究連盟
日本知的障害者愛護協会
テーマ
今を積み上げて21世紀へII−それぞれの現場で
日精研は、今年で40周年を迎えます。この半世紀、知的障害児・者の教育、福祉、労働は、社会全般の価値観の変化を背景にして、大きな変貌を遂げてきました。特にここ数年、障害者自身とその家族がより主体的に、多様で質の高いサービス内容を求めるようになり、法律や制度も改変されてきています。こうした時代の流れの中で、私たちの現場は、十分にその変化に対応できているでしょうか。ノーマリゼーション、個別的対応、専門性、保護者や他機関との連携など、どれも大切であると分かっていても、現場ではなかなか実現できないことが多いのはなぜでしょうか。
日精研「春季講座・研究会」は、知的障害のある幼児から成人までの教育・福祉・労働・医療に携わる人々が集まり、実践の中で悩んでいることや考えていることを話し合いながら、障害児・者の将来を見据えて学び合うことを大切にしています。
今年度は、第1日目に40周年記念講演として、「21世紀の教育・福祉の展望」をテーマに、これまでの歴史をふまえて、今後の障害児・者への関わりのあり方を考えてみたいと思います。2日目の分科会では、昨年度に引き続き、「つまずきをのりこえる」を共通のテーマとして、知的障害児・者が、自ら考え、学び、生活するための関わり方を、実践報告を元にして話し合います。また、3日目の実技講座では、「造形活動」を、実技を交えて学びます。
年度末の忙しい時期ですが、全国からの参加者と共に、知的障害児・者の教育・福祉・労働について、ライフステージや分野を越えて総合的に、そして実践的に考えてみませんか。
期日
1999年3月28日(日曜日)〜3月30日(火曜日)
場所
静岡・伊東温泉 ホテルラヴィエ川良
日(曜日) | 時間 | 内容 |
---|---|---|
28日(日曜日) | 12時30分 | 受付 |
13時30分 | 開講式 記念講演 |
|
18時 | 自由時間 | |
19時 | 夕食 | |
29日(月曜日) | 9時30分 | 分科会 |
12時 | 昼食 | |
13時 | 分科会 | |
16時30分 | 総会 | |
18時 | 自由時間 | |
30日(火曜日) | 9時30分 | 実技講座 |
12時 | 閉講式 |
講座内容
開講式
会長
川田昇先生が「講演や分科会で多いに勉強し、夜は多いに語り合いましょう」とあいさつ。
事務局長
藤島 岳先生が「会の改称が話題に上っているが、『教育』という言葉のあらわすところを改めて考えて欲しい。」とあいさつ。
40周年記念講演
テーマ1:「21世紀の知的障害児教育の展望」 松矢勝宏(東京学芸大学)
テーマ2:「21世紀の福祉の展望」 北沢清司(東海大学)
今まさに転換期のただ中にある障害児教育、障害児・者福祉について、近年の動向を踏まえながら、今後のあり方と課題を考えます。
分科会
共通テーマ:つまずきをのりこえる
日精研の機関誌「現場のための精薄教育(現 現場のための日精研)」で、昨年度からのメインテーマとして連載している「つまずきをのりこえる」が、分科会の共通テーマです。
「子ども自身が自分のつまずきに気づき、それをのりこえた時に真の学びがある」という考え方があります。今年度は、それぞれのライフステージで、「どのような点でつまずきやすいか」、「どのようなつまずきでも、乗り越えさせていくことに意味があるのか」、「つまずきを乗り越えさせるには、どのような配慮が必要か」等々を、レポーターからの実践報告を元にして話し合います。
第1分科会「幼児期から児童期前半」
- 幼児期における「つまずき」を考える
−対人・社会性の発達を支援する療育から−
山ア佳生子 (東京・江東区こども支援センター「Coco」) - 「しるし」がわかった! 頭が洗えた!
奥山潤子(東京都立立川養護学校) - 障害の特性に見合ったつまずき克服法について
安斉好子(東京都立羽村養護学校)
幼児期から児童期前半にかけては、基本的生活習慣が形成され、家庭外の生活・活動・学習を通して、徐々に生活経験や友だち関係が拡がっていく時期です。また、自我の基盤が作られる時期でもあります。このような時期の子どものつまずきを、どのように受け止め、どのように関わっていけばよいのかを考えます。
第2分科会「児童期後半から青年期」
- 生徒も教師もつまずきをのりこえる
菊地直樹(東京都立港養護学校) - つまずきをのりこえる【児童期後半から青年期】
−作業学習における物作りの基本を題材にしてつまずきをのりこえる−
藤井周郎(東京都中野区立第四中学校) - 進路学習におけるつまずきをのりこえる
原 智彦(東京都立あきる野学園養護学校)
児童期後半から青年期にかけては、学校での活動や学習を通して様々なことを学び、また、余暇活動や買い物などを通して地域との関わりが増えてくる時期です。学習・活動への取り組み方や集団の中での役割など求められるものも多くなり、人間関係も、友だちだけでなく、先輩・後輩、教師、地域の人々などへと拡がっていきます。また、思春期に伴う情緒的な不安定さ、自己認識の変化なども生じて来るでしょう。子どもから大人へと成長していくこの時期のつまずきを、どのように受け止め、どのように関わっていけばよいかを考えます。
第3分科会「青年期から成人期」
- 就労指導と就労後の定着指導
−事例 M.I氏の保護者、職場、教員との連携を通して−
杉山康子(東京都北区立赤羽中学校) - 青年学級の関わりの中から
−Aさん、Bさん、Cさんの例を中心に−
高橋 裕(東京・北区立昭和町福祉工房) - 聴覚障害のつまずきを乗り越えて
−個別の指導計画を手だてとしてコミュニケーションの基礎を育てる−
東京都立港養護学校 岡本正子
青年期から成人期以降になると、労働・仕事の中で人間関係は複雑になり、求められる社会のルールもより厳しくなっていきます。自己認識・自己評価と周囲の人々の理解のくいちがい、思春期と性の問題、さらには加齢に伴うなども生じてくる時期です。家庭・学校から地域へと生活の中心が移り、社会人の一人として生活していくこの時期のつまずきをどのように受け止め、どのように関わっていけばよいかを考えます。
3つの会場に分かれ、朝9時から午後3時半までのロングランで研修を深めました。また、予定の提案者に加え、港養護の岡本先生が第3分科会で提案して下さいました。
実技講座
テーマ:楽しく学ぶ造形活動
講師:石丸良成(東京都立七生養護学校)
造形活動を、より楽しく展開していくための視点と方法を、実技を通して学びます。
養護学校における「美術」の実践の紹介のあと、参加者全員が画用紙を使って『高く積む』をテーマに作品づくりに取り組みました。それぞれがなかなかの“力作”を作って、石丸先生から評価していただきました。
言いたい放題コーナー
全国からの参加者と共に、講師・助言者と膝を交えて気楽に、自由に話し合う場です。例年、日精研ならではのホットスポットになっています。
参加者のみなさんが、講師の先生方を囲んで、夜がふけるまで大いに盛り上がっていました。
作品展示・交換・即売
皆さんの日常の活動の様子が分かるものをお持ち下さい。活動風景などの写真、作品、教材、資料など、何でも結構です。
交歓会
参加者の皆さんが部屋ごとに工夫を凝らした出し物を披露してくれました。二人羽織あり、「森のくまサン」あり。最後は全員で恒例の「かっこう」輪唱で盛り上がりました。
閉講式
以上のように、無事第40回春季講座は終了しました。今回は北は山形、南は沖縄からお集まりいただき、教育・福祉・労働の関係者だけではなく、保護者の立場で参加された方がいました。参加者の数が約70名と少なく、ちょっと寂しい思いをしましたが、来年は案内を発送する時期を早めようという反省が出ました。
午後から記念講演・分科会等の記録を事務局員がまとめ、機関誌4月号の原稿が今(3月31日午前1時20分)出来上がりました。4月下旬には会員・参加者の皆さんのお手元に届けられると思います。
講師・助言者
- 松矢勝宏(東京学芸大学)
- 北沢清司(東海大学)
- 吉田昌義(文部省特殊教育課)
- 山本良典(東京都心身障害者福祉センター)
- 川田 昇(こころみ学園)
- 松為信雄(障害者職業総合センター)
- 本橋駒三郎(日精研副会長)
- 藤島 岳(東洋大学)
- 井村逸郎(東京福祉商経専門学校)
- 大見川正治(文京女子大学)
- 山田耕一郎(東京学芸大学附属養護学校)
- 梅田靖子(都立あきる野学園養護学校)
- 加藤正仁(うめだ・あけぼの学園)
- 小笠原まち子(東京学芸大学附属養護学校)
- 原 直志(東京都立王子第二養護学校)
- 松本千*(*=糸曽)(東京都心身障害者福祉センター)
- 石塚謙二(国立特殊教育総合研究所)
会員 | 一般 | |
---|---|---|
合計 | 39,000円 | 41,000円 |
うち 宿泊費(2泊3日) | 28,000円 | 28,000円 |
研究会参加費 | 13,000円 | 11,000円 |
春季講座 第1〜9回 第10〜19回 第20〜29回 第30〜39回 第40回 第41回 第42回 第43回
セミナー 第1回夏季 第2回春季 第3回春季 第4回春季 第5回春季 第6回春季 第7回春季 第8回春季 第9回春季 第10回春季 第11回春季 第12回春季