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■中学受験 学習用資料

短歌の基本

短歌とは
・和歌に「長歌」という詩形があり、それに対する詩形が「短歌」です。短歌は「五・七・五・七・七」の三十一音で詠(よ)まれる日本古来の定型詩で、俳句や川柳、狂歌などの原型となりました。奈良時代に編纂(へんさん)された『万葉集』には多くの優れた作品が収められています。短歌には、「たらちねの」や「くさまくら」などのような、特定の語を修飾し、歌の調子を整えるための「枕詞(まくらことば)」が用いられることがあります。俳句には季語を必ず詠み込まなければならないという決まりがありますが、短歌には季語や枕詞を必ず詠み込まなければならないという決まりは特にありません。

〈例〉
・あをによし 奈良の都は咲く花の にほふがごとく 今盛りなり(万葉集)
※読み方は「あおによし・ならのみやこは・さくはなの・におうがごとく・いまさかりなり」で、「五・七・五・七・七」の定型どおりに詠まれています。
※歌の意味は、「奈良の都、平城京は、咲く花が色美しく照り映(は)えるように、今やまことに繁栄(はんえい)の極(きわ)みであることだ。」 です。

※和歌とは、中国の漢詩に対し、日本固有の形式による大和歌(やまとうた)を意味する詩の総称です。奈良時代には「短歌」以外に「長歌」や「旋頭歌(せどうか)」、「仏足石歌(ぶっそくせきか)」などの和歌がありましたが、後には短歌しか詠まれなくなり、和歌といえば短歌のことを指すようになりました。
長歌とは、「五・七・五・七…」を何度か繰り返し、最後に「七で結ぶ」詩形のことです。また、旋頭歌は「五・七・七・五・七・七」、仏足石歌は「五・七・五・七・七・七」の形式で詠まれました。
定型詩…五音や七音など、一定の音数で組み立てられた詩。

※併せて
『詩の種類と表現技法』もご参照ください。

構成要素
「五・七・五・七・七」の五つの句を上から順に「初句二句三句四句結句」と呼び分けます。また、全体を前半と後半に分け、「五・七・五」の部分を「上(かみ)の句」、「七・七」の部分を「下(しも)の句」といいます。

音数の数え方
「音数」は文字を平仮名に改めて数えます。

〈例〉
・立身出世… 七音(り・っ・し・ん・しゅ・っ・せ)
・ジャッキー・チェン… 六音(じゃ・っ・き・い・ちぇ・ん)
(1)拗音(ようおん):「きゃ・しゅ・ちょ」などは一音で数える。
(2)特殊音(とくしゅおん):外来語に由来する「ファ・トゥ・シェ」などは一音で数える。
(3)促音(そくおん):小さな「っ」は一音で数える。
(4)撥音(はつおん):「ん」は一音で数える。
(5)長音(ちょうおん):「ー」は一音で数える。また、「おかさん」の「あ」や「おねさん」の「え」なども長音としてやはり一音で数える。(オカーサン・オネーサンに同じ)
※(1)、(2)、(3)、(4)、(5)の五種全ての音が含まれている「ジャッキー・チェン」の語で音数の数え方をしっかりと確認しておこう。「ファッションショー」の語でもいいですね。

※短歌では三十一音、つまり平仮名に改めて三十一文字使われることから、短歌のことを「三十一文字(みそひともじ)」とも呼びます。

破調
音数が三十一音を越える場合は「
字余り」、不足する場合を「字足らず」といいます。「字余り」や「字足らず」のように音数に多少が出ることを「破調(はちょう)」といいます。

(1)字余りの例
・ふるさとの 訛(なま)りなつかし 停車場(ていしゃば)の 人ごみの中に そを聴きにゆく(石川啄木)
※読み方は、「ふるさとの・なまりなつかし・ていしゃばの・ひとごみのなかに・そをききにゆく」で、「五・七・五・八・七」の三十二音で詠まれている「字余り」です。「に」が加わることで、故郷への思いやさびしさがいっそう強く伝わってきます。
※歌の意味は、「ふるさとを離れ、ずっと東京で暮らしていると、故郷岩手のお国なまりがたまらなく懐(なつ)かしくなることがある。ある時私は、故郷とを列車で結ぶ上野駅の人ごみの中に、お国なまりの言葉をわざわざ聴きに行ったことだ。」です。
(2)字足らずの例
・群がれる 蝌蚪(かと)の卵に 春日さす 生(うま)れたければ 生れてみよ(宮柊二)
※読み方は、「むらがれる・かとのたまごに・はるひさす・うまれたければ・うまれてみよ」で、「五・七・五・七・六」の三十音で詠まれている「字足らず」です。「生まれてみよ」と命令調で強く言い切ることで、小さな命に対する愛情や確信が強く伝わってきます。
※歌の意味は、「春先の水辺を歩いていると、清く澄んだ水の中に蛙(かえる)の卵が沈みかたまっているのを見つけた。春の明るい陽の光に守られるようにして、無数にある黒い粒の一つひとつが、穏やかな心持ちで、静かに、安らかに眠っているかのようだ。一つひとつの小さな命よ、やがてその命の光を発散させたいならば、自らの意志をもって、力強く泳ぎ出よ。そして、生きてみせよ。」です。

句切れ
文としての意味が途切れる所を「句切れ」といいます。「初句」に意味上の切れ目が来る場合を「初句切れ」、二句に切れ目が来る場合を「二句切れ」、順に「三句切れ」、「四句切れ」といい、歌全体で一文として構成されている場合は「句切れなし」といいます。

〈例〉
(1)初句切れ
・海恋し。/潮の遠鳴り 数へては 少女(おとめ)となりし 父母(ちちはは)の家(与謝野晶子)
※「ふるさとの海がたまらなく恋しい。」と初句で強く言い切ることで、作者の望郷の念が強く伝わってきます。
(2)二句切れ
・信濃路(しなのじ)は いつ春にならん。/夕づく日 入りてしまらく 黄なる空の色(島木赤彦)
※「信濃路はいつになったら本格的な春を迎えるのだろう。」と、重い病に臥(ふ)して苦しみつつも、春の訪れを待ちわびる作者の祈りに似た思いが伝わってきます。作者、島木赤彦はこの歌を詠んだ翌月に四十九歳で亡くなりました。
(3)三句切れ
・いつしかに 春の名残(なごり)と なりにけり。/昆布(こんぶ)干場(ほしば)の たんぽぽの花(北原白秋)
※昆布干し場の隅(すみ)にひっそりと咲いたたんぽぽを見つめながら、「いつの間にか春は過ぎ去って、たんぽぽはただその名残となってしまったのだなあ。」と、過ぎ去った春をしみじみと惜しむ作者の気持ちが伝わってきます。
(4)四句切れ
・街(まち)をゆき 子どものそばを 通るとき みかんの香(か)せり。/冬がまた来る(木下利玄)
※「街を歩いていて、子どもとすれ違ったとき、ほのかにみかんの香りが漂(ただよ)ってきたことだ。」と、ふいに気づかされた季節の推移にしみじみと感じ入っている作者の思いが伝わってきます
(5)句切れなし
・のど赤き 玄鳥(つばくらめ)ふたつ 屋梁(はり)にいて たらちねの母は 死にたもうなり。/(斎藤茂吉)
※「のどが鮮やかな赤い色をしたつばめが二羽やって来て、家の軒先(のきさき)の古びた屋梁(はり)の上に、まるでこれから起きるできごとを見守るかのようにして止まっているそんな中、私を生み育ててくださった最愛の母は、まさに今、死んでゆかれたことだ」と、生命の象徴である燕(つばめ)と滅び行く命とを対照させながら、作者の深い悲しみと慟哭(どうこく)とを印象的に伝えています。

※一般には「マル(句点)が打てる所が句切れ」といった基準が提示されますが、そもそもどこにマルが打てるかの判断が小学生には困難な場合が少なくないようです。やはり歌の意味を考え、感じ、味わうという本来の学習を疎(おろそ)かにしてはいけません。

五七調と七五調
(1)五七調とは
・【五音+七音】がひとまとまりになって、意味上密接なつながりを持つ歌の調子をいいます。

〈例〉【春過ぎて(5)・夏来たるらし(7)】【白妙の(5)・衣干したり(7)】+(天の香具山)
※量的に上(五音)が軽く、下(七音)が重いところから「安定感」があり、素朴で力強く、また、荘重(そうちょう)な響きとリズムを与えます。この力強さや重々しさを「男性的」とたとえることもあります。
※【五音+七音】の組み合わせに重点が置かれるため、句切れは「二句切れ」か「四句切れ」となります。例に上げた歌は二句と四句の二か所で切れています。二句と四句のところで少し間を置いて声に出して読んでみてください。(はるすぎて、なつきたるらししろたえの、ころもほしたりあめのかぐやま。)
※歌の意味は、「春は知らぬ間に過ぎ、いよいよ夏がやって来たらしい真っ白な衣(ころも)が干してあるのが鮮やかに見えているあの青葉のみずみずしく茂った天の香具山(かぐやま)のふもとに」です。(持統天皇作)
※「五七調」は奈良時代の万葉集に多く見られましたが、平安時代に入り、やがて「七五調」に取って変わられました。

(2)七五調とは
・【七音+五音】がひとまとまりになって、意味上密接なつながりを持つ歌の調子をいいます。

〈例〉(心なき)+【身にもあはれは(7)+知られけり(5)】+(しぎ立つ沢の)+(秋の夕暮れ)
※量的に上(七音)よりも下(五音)が軽いところから「軽快感」があり、流麗(りゅうれい)で優美な響きとリズムを与えます。この流れるような滑らかさを「女性的」とたとえることがあります。
※【七音+五音】の組み合わせに重点が置かれるため、句切れはその前後である「初句切れ」か「三句切れ」となります。例に挙げた歌は「三句切れ」です。三句のところで少し間を置いて声に出して読んでみてください。(こころなき・みにもあわれは・しられけりしぎたつさわの・あきのゆうぐれ。)
※例に挙げた歌の意味は、「俗人(ぞくじん)の感情を絶ち切った出家僧(しゅっけそう)である私の身にさえ、しみじみとした情趣が感じられることだ鴫(しぎ)が飛び立つ水辺の、秋の夕暮れのこのものさびいい風情には。/」です。(西行作)
※平安時代に入り、「七五調」は奈良時代に全盛だった「五七調」に取って変わりました。「古今和歌集」で盛んに用いられ、以後も『平家物語』や歌舞伎の台詞(せりふ)、また、近代に入ってからも新体詩や唱歌など、和歌に限らず広く用いられるようになりました。

参考
・次の例で「五七調」と「七五調」それぞれの調子や印象の違いを比較してみよう。

(1)五七調
厳かで重々しく、力強いリズムとなっています。(男性的
・『椰子(やし)の実』(島崎藤村)
名も知らぬ 遠き島より(五音+七音)
流れ寄る 椰子の実一つ(五音+七音)
故郷(ふるさと)の 岸を離れて(五音+七音)
汝(なれ)はそも 波に幾月(いくつき)(五音+七音)

・『題知らず』(読み人知らず)※古今和歌集(平安時代)
わが君は 千代に八千代に(五音+七音)
さざれ石の 巌(いわお)となりて(五音+七音)
苔(こけ)のむすまで(七音)
※後の『和漢朗詠集』では「わが君は」が「君が代は」に変わっている。

・弘法も 筆の誤り(五音+七音)※ことわざ

(2)七五調
優美で、滑らかで、軽やかなリズムとなっています。(女性的
・『耳』(ジャン・コクトー作、堀口大学訳)
私の耳は(七音)
貝のから(五音)
海のひびきを(七音)
なつかしむ(五音)

・「いろは歌」(平安時代)
色は匂へど 散りぬるを:イロワニオエド・チリヌルヲ(七音+五音)
我が世誰ぞ 常ならむ:ワガヨタレゾ・ツネナラン(七音+五音)
有為の奥山 今日越えて:ウイノオクヤマ・キョウコエテ(七音+五音)
浅き夢見じ 酔ひもせず:アサキユメミジ・エイモセズ(※七音+五音)

・『にっぽん昔ばなし』(川内康範)※アニメ主題歌
坊やよい子だ ねんねしな(七音+五音)
いまも昔も かわりなく(七音+五音)
母のめぐみの 子守歌(七音+五音)
遠いむかしの 物語り(七音+五音)

・雉(きじ)も鳴かずば 撃(う)たれまい(七音+五音)※ことわざ
・「セブンイレブン いい気分」(七音+五音)※キャッチコピー

表現技法
(1)枕詞(まくらことば):「あおによし」や「たらちねの」などのような、ある言葉を引き出すためにその言葉の前に置かれる、主に五音の修飾語をいいます。歌の調子を整え、情趣を添えます。
(2)比喩(ひゆ):ものごとを他のものごとにたとえることで、印象をより鮮明にします。
(3)体言止め:結句の末尾を体言で止めることで、意味を強め、余情を持たせます。
(4)倒置法:語順を置き換えることで、意味を強め、印象を深めます。
(5)対句(ついく):対照的なものや似たものを並べることで、印象を強めます。
(6)反復法:同じ言葉をくり返すことで、意味を強め、リズムを生みます。
(7)呼びかけ法:対象に呼びかけるような言葉を用い、親しみの気持ちを表します。
(8)押韻(おういん):句の頭か末尾を同じ音でそろえ、リズムを生み、調子を整えます。

※併せて『詩の種類と表現技法』をご参照ください。

〈例〉
(1)金色(こんじき)の ちひさき鳥の かたちして 銀杏(いちょう)ちるなり 夕日の丘に(与謝野晶子)
比喩:夕日を受けてひらひらと舞い散る鮮やかな黄色をした銀杏の葉を「金色をした小さな鳥」にたとえ、華やかで美しい絵画的な情景を印象づけています。
倒置法:本来の「夕日の丘に・銀杏ちるなり」の語順を倒置して、意味を強めて余韻を残しています。
(2)みちのくの 母のいのちを 一目見ん 一目見んとぞ ただに急げる(斎藤茂吉)
反復法:「一目見ん(一目でも見よう)」の繰り返しにより、「生きているうちに母に一目でも会いたい」という作者の強い焦りや切実な思いがひしひしと伝わります。
(3)これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂(おおさか)の(蝉丸)
対句:「行くも・帰るも」、「知るも・知らぬも」がそれぞれ対照関係にある語どうしであり、意味を強め、印象を深めています。
体言止め:「関」という体言(名詞)で止め、余情を深めています。
(4)さふめば さにかくるる いしずえの つのはくしゃに ひびくさびしさ(会津八一)
押韻:初句、二句、四句それぞれの頭に「く」の音を置いて韻を踏むことで、リズムを生み、調子を整えています。
体言止め:句の末尾を「さびしさ」という名詞(体言)で止め、余情を深めています。
(5)我が母よ 死にたまひゆく 我が母よ 我(わ)を生まし 乳(ち)足らひし母よ(斎藤茂吉)
反復法:「母よ」を三度繰り返し、死んでいかれようとしている自分の母親への痛切な思いが強調されています。
呼びかけ法:「母よ」と心の中で「呼びかけの言葉」を三度も繰り返し、死んでいかれようとしている自分の母親への深い愛情が切実に響いてきます。

枕詞(まくらことば)
(1)それ自体は直接の意味を持たず、(2)ある特定の言葉を修飾し、(3)短歌の調子を整え、歌に情趣を添えます。(4)音数は五音が普通ですがが、三音や四音、六音などのものも少数あります。枕詞は約1200語あり、古くは実質的な意味を持っていたと考えられますが、時代が過ぎるにつれて形式化しました。また、俳句には季語を必ず詠み込まなければならないという決まりがありますが、短歌には枕詞を必ず読み込まなければならないという決まりは特にありません。

〈例〉
あをによし 奈良の都は 咲く花の にほふがごとく 今盛りなり(小野老)
※「あをによし」が枕詞で、「奈良」を修飾しています。「青丹(あおに)」の語源については、「奈良山付近から塗料の顔料として用いた『青丹(青土)』を産出したことによるのではないか」と考えられていますが、よくわかっていません。「青丹」は、それと関連の深い「奈良」を修飾して歌の調子を整え、情趣を添えるために用いられているだけなので、「青丹の色は美しい」などと訳す必要はありません。
※歌の意味は、「奈良の都、平城京は、咲く花が色美しく照り映(は)えるように、今やまことに繁栄(はんえい)の極(きわ)みであることだ。」です。

※他に「あかねさす」、「足引きの」、「石走(いわばし)る垂水(たるみ)」、「草枕(くさまくら)」、「白妙(しろたえ)の」、「足乳根(たらちねの)の」「久方(ひさかた)の」などは基本として覚えておこう。

感動を表す語
(1)直接心情語
「かなし・かなしさ」、「さびし・さびしさ」、「うれし・うれしさ」といった心情を直接表す言葉に作者の感動が込められている場合が多い。

〈例〉
・白鳥(しらとり)は 哀(かな)しからずや 空の青 海の青にも 染(そ)まずただよふ(若山牧水)
※ただ一面の青い世界にありながら、それに染められることなく孤高(ここう)を貫いているかのような白鳥の姿に、作者自身の「哀しさ」を思い重ねて歌っています。
※歌の意味は、「白鳥(しらとり)は悲しくはないのだろうか。空の青さにも海の青さにもとけ合うことなく、その白い姿のまま漂っている。」です。

(2)助詞や助動詞
「かな・けり・や・ぞ・たり・なり・よ・かも」などの語に感動が込められている場合が多い。

〈例〉
・大海(おおうみ)の 磯(いそ)もとどろに 寄する波 割れてくだけて さけて散るかも(源実朝)
※歌の意味は、「大海(たいかい)の磯(いそ)にすさまじく打ち寄せる波が、激しく岩にぶつかり割れてとどろき、砕(くだ)け散っていることだ。」です。

短歌の数え方
短歌の作品は一、二と数えます。俳句の場合は一句、二句と数えるので、間違えないようにしよう。

俳句と短歌の違い
・俳句は「五・七・五」の十七音で詠まれる世界で最も短い定型詩で、季語(季節を表す語)を一つ必ず詠み込むのが決まりとなっています。それに対し、短歌は「五・七・五・七・七」の三十一音を定型とした日本古来の詩形で、俳句と異なり、季語を必ず詠み込まなければならないという決まりはありません。

〈俳句の例〉
・古池や 飛びこむ 水の音(松尾芭蕉) ※季語は蛙、季節は春
※句の意味は、「静かな、ひっそりとした古池に佇(たたず)み、しみじみとした情趣に浸(ひた)っていた。と、その時、一匹の蛙(かえる)が池に飛び込む小さな音が聞こえた。辺りの静けさを破ったその一瞬の水音がした後には、以前にもまして深い静寂の世界が広がったことだ。」です。

※併せて『俳句の基本・季語一覧表』もご参照ください。


剽窃について
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・他にも本サイトの記事をコピー&ペーストしただけで作成されているブログやサイトが複数あるようです。※俳句の通釈:「は行」

■主要枕詞一覧表

※一覧表に掲載した赤字の枕詞と、青字の被修飾語だけは基本として覚えておこう。
※併せて「短歌の通釈集」もご参照ください。
  枕 詞 かかる語 語 義・語 源
 1 あかねさす (茜さす) 、昼 茜(あかね)色に照り輝く、の意から。

〈例〉
あかねさす野行き標野(しめの)行き、野守(のもり)は見ずや、君が袖振る。
(美しい紫草の植えてあるこの御料地(ごりょうち)を、あなた(大海人皇子)は巡り歩いては、そんなに袖を振って私に向かって
合図をなさる。困るではありませんか、野の番人に見られては) 額田王(万葉集)

※紫野(むらさきの)… ムラサキソウを栽培している野。
※標野(しめの)… 御料地。皇室、貴人が領有した野原。狩り場などにされ、一般人の立ち入りを禁じた。
※野守(のもり)… 御料地の番人。
②君(天皇、主君、あなた、の意) ②照り映えて美しい、の意から、ほめたたえる気持ちを込め、「君」にかかる。
 2 あきづしま (あきつしま・秋津島・蜻蛉島) 大和 ・本来は大和(奈良県)の一地方を指したらしいが、やがて大和の国全体、さらには日本の国を指すようになった。

〈例〉
・大和には群山(むらやま)あれど、とりよろふ天の香具山。登り立ち国見をすれば、国原(くにはら)は煙(けぶり)立ち立つ。海原(うなはら)は鴎(かまめ)立ち立つ。うまし国ぞ、蜻蛉島(あきづしま)大和の国は。
(多くの山々があるけれど、中でも美しく整った天(あめ)の香具山(かぐやま)よ。この山に登り立ち、国内を見渡すと、広々とした国土に炊煙(すいえん)があちらにもこちらにも立ち昇(のぼ)っている。埴安(はにやす)の池の広い水面には一面に水鳥たちがあちらに飛び立ち、こちらに飛び立ちしている。すばらしい国よ、この大和の国は。) 舒明天皇(万葉集)

※群山(むらやま)… 多くの山々。群がっている山々。
※とりよろふ(とりよろう)… 備わり整う。
※天の香具山(あまのかぐやま)… あめのかぐやま、ともいう。奈良県橿原(かしはら)市にある標高148mの山。耳成山(みみなしやま)、畝傍山(うねびやま)とともに大和三山として知られる。「伊予国風土記」によれば、もと天上にあった山が分かれ、天降(あまくだ)った片方が大和の天の香具山という。
 3 あしひきの (あしびきの・足引きの) 、峰(お) 足を引きずりながら山を登る、また、山の裾(すそ)を長く引く、などの説があるが、未詳。

〈例〉
あしひきの鳥の尾のしだり尾の長々し夜を独りかも寝む
(山鳥の尾の長く垂れ下がっている尾のように、長い長いこの秋の夜を、わたくしの待つその人はついに来ず、今夜は独り寂しく寝ることだよ) 柿本人麻呂(拾遺和歌集)
 4 あづさゆみ (梓弓) 張る、引く ①弓の弦を張ったり引いたりすることから張る、引く、また、「張る」と同音の「春」にかかる。

〈例〉
梓弓の山辺を越え来れば道も去りあへず花ぞ散りける
(のどかな春の山路を越えてやって来ると、道をよけて通ることができないほどに、花が散っていることだ) 紀貫之(古今和歌集)

※梓(あずさ)… アズサの木。材質が堅く、弓の材料として用いた。
②射(い)、射る ②弓を射ることから。
③音 ③弓を引くと音がすることから。
④末(すえ) ④弓の上端を末(すえ)と呼ぶことから。
 5 あまざかる (あまさかる・天離る) (ひな=田舎) ・都から田舎を望むと、天空のもとに遠く離れていることから。

〈例〉
天ざかるひなの長路(ながじ)ゆ恋ひ来れば明石の門(と)より大和島見ゆ
(田舎からの長い道中の間、大和を恋つつやって来ると、明石海峡の船上より、いよいよ懐かしい大和の山々が見えてきたことだ) 柿本人麻呂(万葉集)

※明石(あかし)… 明石海峡。
※門(と)… 両方から陸地が突き出て門戸のような地形になっている所。
※大和島(やまとしま)… 大和の国は島ではないが、海上から見ると海の上に浮かんでいるように見えることから。
 6 あらたまの (新玉の) 、月、日、春 ・年や月、日があらたまる、の意からか。未詳。
※新玉… 掘り出されたままで、まだ磨かれていない玉。

〈例〉
あらたまのたちかへる朝(あした)より待たるるものは鶯(うぐいす)の声
(新年を迎えて、その朝から、今か今かと待たれるものは、鶯の鳴く声であることよ) 素性法師(拾遺和歌集)

※年たちかへる… 年が改まる。
※朝(あした)… 朝。朝方。明け方。
 7 あをによし (青丹よし) 奈良 顔料とする青土が奈良山の周辺で産出したことからか。

〈例〉
あをによし奈良の京師(みやこ)は咲く花の薫(にお)ふがごとく今盛りなり。
(奈良の都平城京は咲く花が色美しく照り映(は)えるように今やまことに繁栄の極(きわ)みであることよ) 小野老(万葉集)

※薫(にお)ふ… 美しく照り映える。美しく輝く。
 8 いそのかみ (石上・いすのかみ) 古(ふ)る、降る、振(ふ)る 奈良県天理市の石上神宮周辺にある布留(ふる)という地名と同音の語、「古る(=古くなる)」、「振る(=震わす)」、(雨や雪などが)「降る」にかかる。

〈例〉
いそのかみふりにし人を尋(たず)ぬれば荒れたる宿に菫(すみれ)つみけり
(昔親しくしていた人を尋ねると、その人の姿は見えず、荒れ果てた家の辺りで、見知らぬ女が菫を摘んでいたことだ) 能因法師(新古今和歌集)

※ふり… 「古くなる、昔のものとなる」という意の古る(ふる)の連用形。「古りにし」で「昔のものとなってしまった」。
 9 いはばしる (石走る) 垂水(たるみ=滝)、滝 石の上を激しく流れる、の意から。

〈例〉
石(いわ)ばしる垂水(たるみ)の上のさ蕨(わらび)の萌(も)え出(い)づる春になりにけるかも。
(雪解けのためにかさを増し、激しい勢いで石の上を流れる水。滝のほとりのわらびが芽を出した。待ち焦がれて、いよいよ春になったことだ。) 志貴皇子(万葉集)

※なりにけるかも… なったのだなあ、なったことだよ、と詠嘆を表す。
②近江(おうみ) ②溢水(おうみ)=激しく流れて水が溢(あふ)れる、の意から、同音の「近江」にかかる。
 10 うつせみの (現身の) 世、代、人、命 ・現身(うつせみ)とは、「この世の人」の意。

〈例〉
うつせみのわがのかぎり見すべきは嵐の山の桜なりけり
(自分のこの命のあらん限り、見るべきものとは、嵐山のこの美しい桜の花であることだ。) 八田知紀(しのぶぐさ)

※嵐の山… 京都市にある標高376mの山。紅葉、桜の名所。
 11 かむかぜの (神風の) 伊勢(いせ) ・神風(かむかぜ)とは、神の威力によって起こるという激しい風。 神風の息吹(いぶき)の「い」と同音である「伊勢」にかかる。また、イセツヒコが風を起こした伝説があることからとも言われる。

〈例〉
神風の伊勢の国にもあらましをなにしか来にけむ君もあらなくに
(伊勢の国にいればよかっただろうに、どうして私は大和へ来てしまったのだろう。ここ大和には既に弟の君も亡くなって、この世にはおいでにならないものを。) 大来皇女(万葉集)

※あらましを… いたほうがよかったのに。
※君もあらなくに… あなたはもうおこの世にはいらっしゃらないのに。
※君… 謀反(むほん)の罪により処刑された弟、大津皇子(おおつのみこ)を指す。
 12 からころも、からころむ(唐衣、韓衣) (すそ)、着る、袖、裁(た)つ ・唐衣(韓衣:からころも)とは中国風の衣服のことで、そこから衣服に関する語にかかる。

〈例〉
韓衣に取りつき泣く子らを置きてぞ来ぬや母なしにして
(私の着物の裾に取りすがり、別れを惜しんで泣き悲しむ子どもたちを、家に残して来てしまったことだ、母親がいないというのに。) 他田舎人大島(万葉集)
 13 くさまくら (草枕) 、結ぶ、結ふ(ゆう) 旅先で草を結んで(束ねて)枕とし、野宿をしたことから。

〈例〉
・家にあれば笥(け)に盛る飯(いい)を、草枕にしあれば、椎(しい)の葉に盛る。
(家にいるときは食器に盛る飯を、今は旅の最中にあるので、椎の葉に盛って食べることだよ。) 有間皇子(万葉集)

※笥(け)… 器。ここでは食器。
※有間皇子(ありまのみこ)が謀反の疑いで紀伊(きい:和歌山)の行宮(あんぐう)に召されてゆく途中、磐代(いわしろ:和歌山)の岡で自ら悲しんで詠んだ歌。
 14 さざなみや (細波や、小波や、細波の、小波の、等) ①大津、志賀、古き都 ①琵琶湖の南西岸あたりの旧地名などにかかる。

〈例〉
さざなみや志賀の都はあれにしを昔ながらの山ざくらかな
(志賀の都は今はもう見る影もなく荒れ果ててしまったが、、長良山の桜は昔と変わらず美しく咲き匂っていることだ) 読み人知らず(千載和歌集)

※『平家物語』では平忠度作としている。
※志賀… 天智天皇が営んだ近江大津京。また、万葉集には「滋賀」の表記は無い。
②波、寄る、夜 ②「波」や、波が寄ることから「寄る、寄す」、同音の「夜」などにかかる。
 15 しきしまの (磯城島の、敷島の) 大和日本(やまと) ・奈良県の磯城島(しきしま)の地に都があったことから。

〈例〉
敷島の日本(やまと)の国は言霊(ことだま)のさきはふ国ぞま福(さき)くありこそ
(この日本の国は、言葉に宿る神霊がその霊力を発揮する国であるぞ。自分が今、あなたのために、幸せを祈って言挙(ことあ)げをし、その言葉通りに無事に幸福でいてください。)

※言霊(ことだま)… 言葉の持つ神秘的な霊力。言葉に宿る神霊。古代、言葉には霊力があり、その用い方により人間の幸不幸が左右されると信じられた。
※言挙(ことあ)げ… 言葉に出して言い立てること。
 16 しらぬひ 、しらぬひの 筑紫(つくし) ・都から「知らぬ日(多くの日数)」をかけて行く地、の意があるが、未詳。
※しらぬひ(しらぬい)… 四音の枕詞。
※「不知火」は当て字。

〈例〉
しらぬひ筑紫(つくし)の国は敵(あた)まもるおさへの城(き)そと
(筑紫の国は、敵を監視する鎮護の砦であると)) (万葉集)

※筑紫(つくし)… 筑前(ちくぜん)と筑後(ちくご):(ともに福岡県)。転じて、九州地方を指す。
 17 しろたへの (白妙の) 、袖、紐(ひも)、袂(たもと) 白妙(しろたえ)が白い布の意であることから、衣服に関する語にかかる。

〈例〉
・春過ぎて夏きたるらし。白たへの乾(ほ)したり、天(あめ)の香具山(かぐやま)。
(春は過ぎ、いよいよ夏が来たらしい。真っ白な衣が干してあるのが見えている。ああ、青葉の茂ったあの天の香具山(かぐやま)のふもとに)。 持統天皇(万葉集)

※天の香具山(あめのかぐやま)… あまのかぐやま、ともいう。奈良県橿原(かしはら)市にある標高148mの山。耳成山(みみなしやま)、畝傍山(うねびやま)とともに大和三山として知られる。「伊予国風土記」によれば、もと天上にあった山が分かれ、天降(あまくだ)った片方が大和の天の香具山という。
②雪、雲、波、富士、羽 ②白妙が白い布の意であることから、白いものにかかる。
 18 そらみつ (そらにみつ) 大和 ニギハヤヒノミコトが空飛ぶ船に乗って大和の国を見下ろしたことからとする説があるが、未詳。
※四音の枕詞。

〈例〉
・籠(こ)もよ、み籠(こ)持ち、ふくしもよ、みぶくし持ち、この岡に菜(な)摘(つ)ます子。家聞かな。告(の)らさね。そらみつ大和の国はおしなべてわれこそ居(お)れ。しきなべてわれこそ座(ま)せ。われにこそは告(の)らめ、家をも名をも。
(よいかごを手に持ち、よいへらも手に持って、この岡で菜を摘んでおられる娘さん。あなたのお家が聞きたい。あなたの名をおっしゃいな。この大和の国は、すべてこの私が従え治めているのです。全てこの私が領し従えているのです。その私にこそは教えてくれるでしょう、あなたの家も名をも。)

※籠(こ)… 竹で編んだかご。
※籠もよ… かごも、まあ。
※み籠持ち… 良いお籠を持って。
※ふくし… へら。
※ふくしもよ… ふくしも、まあ。
※みぶくし持ち… 良いへらを持って
※家聞かな… 家が聞きたい。
※告(の)らさね… おっしゃいな。
※おしなべて… 一面に従えて。
※われこそ居れ… われこそおしなべて居れ、つまり、私が一面に従え治めているのだ、の意。
※しきなべて… 一面に領し従えて。
※われこそ座(ま)せ… われこそしきなべて座せ、つまり、私が一面に領し従えているのだ、の意。
※われにこそは告(の)らめ… この私にこそは教えてくれるでしょうね。
 19 たかてらす (高照らす) ・高く照りたまう、の意から。

〈例〉
・やすみしし我が大君は高照らすの皇子(みこ)神(かむ)ながら神さびせすと…
(あまねく天下をお治めになる我が大君、天上高く光りお輝きになる日の神の皇子は、神であるままに神らしくお振る舞いになって…) 柿本人麻呂(万葉集)

※やすみしし… 八方すべて治める、の意。
※神(かむ)さび… 神らしい振る舞い。神々(こうごう)しく振る舞うこと。
 20 たまのをの (玉の緒の) ①長し、短し ・玉の緒は「玉を貫いた緒(=ひも)」のことで、その長短から。

〈例〉
・相思(あいおも)はぬ妹(いも)をや、もとな、菅(すが)の根の玉の緒の長き春日(はるひ)を思ひ暮らさむ
(こちらを思ってくれないあなたを無性に思い焦がれて、長い春の日を物思いをしながら暮らすのだろうか。)(万葉集)

※相思(あいおも)ふ… 互いに思う。「相思はぬ」で、「互いに思うことのない」。
※妹(いも)… 男性から、妻・恋人・姉妹などを親しんで呼ぶ語。
※もとな… 無性に。わけもなく。やたらに。
※菅(すが)… カヤツリグサ科の多年草。スゲ。葉を刈って笠(かさ)、蓑(みの)、縄(なわ)などを作る。
※菅の根の… スゲの根は長く乱れていることから、「長き」、「乱る」、「絶ゆ」などにかかる枕詞。
②乱る、絶え、継ぎ ・玉の緒が乱れたり、切れたり、また、それをつないだりすることから。
 21 たらちねの (垂乳根の、足乳根の) 、親 乳房が垂れた、母乳が満ち足りた、などの解釈があるが未詳。

〈例〉
たらちねの がつりたる 青蚊帳(あおがや)を すがしといねつ たるみたれども
(久しぶりに故郷へ帰ったその夜、母が私のためにと青蚊帳(あおがや)を釣って寝床を用意してくれた。母の心づかいがうれしくて、すがすがしい気分で寝られたことだ。年老いた母の釣ってくれたその蚊帳は、少したるんでいたけれども。) 長塚節
 22 ちはやぶる (千早振る) 、わが大君、社(やしろ) 神が威力を発し、すさまじく荒々しい、の意から「神」や神に関する語にかかる。

〈例〉
ちはやぶる代(かみよ)も聞かず竜田川(たつたがわ)からくれなゐ(い)に水くくるとは
(不思議なことが起こっていた神代(かみよ)の話にさえ、水を深紅(しんく)に絞り染めにするなどということを聞いたことがない。紅葉が美しく散り浮かんだ竜田川(たつたがわ)の美しさは、深紅の絞り染めそのものである。) 在原業平(古今和歌集)

※竜田川(たつたがわ)… 奈良県生駒郡の川。古来、紅葉の名所として知られ、多くの歌にも詠まれている。
②宇治、氏 ②「勢い」という意味の「うぢ」と同音の地名である宇治にかかる。
 23 ぬばたまの 、夕、月、夢 ・「ぬばたま」とは「ヒオウギ」という草のことで、その実が黒いことから、黒や夜に関する語にかかる。

〈例〉
ぬばたまのの更(ふ)けゆけば久木(ひさき)生(お)ふる清き川原(かわら)に千鳥(ちどり)しば鳴く
(夜が更けていったので、久木の伸びた清い吉野川の川原に、千鳥がしきりに鳴いていることだ。) 山部赤人(万葉集)

※久木(ひさき)… 樹種は不明。
※千鳥(ちどり)… 千鳥科の小鳥の総称。
※しば鳴く… しきりに鳴く。
 24 ははそはの (ははそばの、柞葉の) ・柞(ははそ)とはナラやクヌギなどの植物のこと。最初の二音が同音であるため、「母」にかかる。

〈例〉
ははそはのを思へば児島(こじま)の海逢崎(おうさき)の磯波(いそなみ)たち騒ぐ
(年老いた母のことを思っていると、児島の海の逢崎の磯では波がたち騒いで、夜のはかなさを感じさせることだ。) 平賀元義(平賀元義集)

※児島(こじま)… 岡山県児島湾。
※逢崎(おうさき)… 現岡山県玉野市八浜町大崎。
 25 ひさかたの (久方の) 、天(あめ・あま)、雨、月、雲、都 「日射す方」の意か。天空に関する語にかかる。

〈例〉
ひさかたの のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ
(日の光がやわらかく照るうららかな春の日であるというのに、どうして桜の花は、そんなにも落ち着かずに散り急いでいくのだろう。) 紀友則(古今和歌集)

※しづ心(ごころ)なく… 落ち着いた気持ちもなく。
 26 ほのぼのと 明かし、明石 ・ほのぼのと明るくなるという意から、「明かし」、また、同音の「明石」にかかる。

〈例〉
ほのぼのと明石(あかし)の浦の朝霧(あさぎり)に島隠(しまがく)れゆく舟をしぞ思ふ
(ほんのりと明けてゆく明石の海辺の朝霧(あさぎり)の中にこぎ出して、ゆっくりと島に隠れてゆく舟を目で追いながら、それをしみじみとあわれ深く思ったことだ。) 読み人知らず(古今和歌集)

※明石の海… 兵庫県明石市の海岸。
※島隠(しまがく)れゆく… 島に隠れて見えなくなってゆく。
 27 もののふの (武士の、物部の) ①八十(やそ)、氏、宇治、 ①武人や官人を意味する武士(もののふ)は人数や氏が多いことから。

〈例〉
もののふの八十(やそ)をとめ等(ら)がくみまがふてらいの上の堅香子(かたかご)の花
(おおぜいの少女たちが入り乱れて水を汲(く)んでいる寺の井のほとりに咲く堅香子(かたかご)の花の可憐(かれん)さよ。) 大伴家持(万葉集)

※八十(やそ)… 数の多いこと。沢山。
※堅香子(かたかご)… かたくり。
②矢、弓削(ゆげ=弓作り、弓職人) ②武人は武具(弓)を携えていることから。
 28 ももしきの (百敷の、百磯城の) 大宮(おおみや) ・多くの石を畳み築いた建物、の意から「大宮」にかかる。

〈例〉
ももしきの大宮人(おおみやびと)はいとまあれや桜かざして京も暮(くら)しつ
(宮中にお仕えする人々は暇が(ひま)があるからかしら、桜の花を飾りとして頭にさして今日も一日遊んで暮らされたことよ。) 山部赤人(新古今和歌集)

※大宮(おおみや)… 皇居、神宮の尊敬語。
 29 やくもたつ (八雲立つ、八雲刺す) 出雲(いずも) ・多くの雲の立ち上る出雲の国、の意から。

〈例〉
八雲立つ出雲八重垣(やえがき)妻籠(つまご)みに八重垣作るその八重垣を
(幾重にも重なって雲の立ちのぼる出雲の国の、幾重にも囲いをめぐらした、立派な宮殿よ。私の新妻を住まわせるために、幾重にも囲いをめぐらし、立派な宮殿を造る。ああ、その立派な宮殿よ。) 須佐之男命(すさのおのみこと)(古事記・日本書紀)

日本最初の和歌とされるが、実際には須佐之男命が作歌したわけではない。
※八重垣(やえがき)… 幾重にも作り設けた垣根。
 30 やすみしし(安見しし、八隅知し) わが大君(おおきみ)、わが大王(おおきみ) ・安らかに天下をお治めになる、の意から。

〈例〉
 ・やすみししわが大王(おおきみ)の食(お)す国は大和も此処(ここ)も同じとぞ念(おも)ふ
(私のお仕え申し上げている天皇陛下がご統治あそばす国は、大和もこの太宰府(だざいふ)も同じであることだ) 大伴旅人(万葉集)


補足:五音以外の枕詞
  枕 詞 かかる語 語 義・語 源
 1 ※三音の枕詞
 千葉の(ちばの)
葛野(かどの) ・多くの葉が茂る、の意か。葛(かずら=つる草)には葉が多いことから、「葛野(かどの=京都の地名)」にかかる。

〈例〉
千葉の葛野を見れば百千(ももち)だる家庭(やにわ)も見ゆ国の秀(ほ)も見ゆ
(葛野を見渡すと、人里にたくさんの家々が見える。国が優れていることもまた見える。) 応神天皇(古事記)
 2 ※四音の枕詞
 春日の(はるひの、はるびの)
霞(かすみ) ・春の日には霞(かす)むことから、同音を含む地名「かすが」にかかる。この枕詞によって地名「かすが」に「春日」を当てるようになった。
 3 ※四音の枕詞
 味酒(うまさけ)
①鈴鹿(すずか)、餌香(えか) ・うまい酒、おいしい酒の意。
①美酒の産地「鈴鹿(すずか=三重県)」「餌香(えか=大阪府)」にかかる。
②三輪(みわ) ②神酒(みき=神に供える酒)を古くは「ミワ」と言ったことから、同音の地名、「三輪(みわ)」にかかる。
 4 ※六音の枕詞
 桜麻の(さくらあさの)
※五音で「さくらをの」とも読む
苧生(おう) ・桜麻(さくらあさ)は雄麻(おあさ=麻の雄株)の異名。苧生(おう=麻畑)にかかる。