中学受験専門 国語プロ家庭教師(東京23区・千葉北西部)

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■選択問題の選び方(50種)

・選択問題(択一式問題)において、解答者を誤答に誘導するために作問者がよく用いる手法の一覧です。子どもたちは大人が当然備えているような様々な視点や検討力が未発達です。そのため、塾講師や家庭教師は子どもたちの未発達な能力を育成すべく、また、新たな視点を付与すべく様々な技術を工夫して指導しています。以下の手法を見抜くことで選択問題の全てが解決するというわけではありませんが、子どもたちに新たな視点を付与し、検討力を培うという意味で、一つの参考としていただければと思います。また、子どもたちにとっては、本文内容との十分な照合・検討の訓練を継続的に行い、正確な判断と解決が迅速に行えるよう、普段から本質的な学習を積み重ねてゆくことが大切です。

       

・これまでに当方が担当した生徒たちの話によると、国語における選択問題の解き方については、自分が習っている塾の先生や家庭教師から、「選択肢の各文を前半と後半とに分け、前半を棒線で消し、後半や文末に書かれた内容のみで判断しなさい」、「選択肢に書かれてある文を二~三の部分に分け、それぞれの部分が本文の内容に一致すれば正解である」といった機械的な判別法や、「『言い過ぎ』であったり『大げさ』であったりすると感じられるものは除外しなさい」、「残った二つのうち、『強い』と感じられるほうを選びなさい」、「『真面目な印象』、『明るい印象』を与える選択肢を選びなさい」といった感覚や印象による判別法が指導されてきたというケースが相当数ありました。

 中学受験を特に専門としているプロの指導者にはそのような手法を真面目に教授する人は多くありませんが、そうした指導を受けている生徒たちを当方が受け持つことになった際に共通して感じるのは、「自分の頭を使って文章を読むための訓練を受けていない」、「自分自身の能力を発揮して問題を解決しようという姿勢が感じられない」、「国語は簡易な方法によれば解決するものと信じ込まされている」、「行き詰まるとすぐに安直な手法に逃げる」、といった傾向が強いことです。「本文を通読してはならない」と教わっている生徒もまた相当の割合でおり、そうしたケースに当たる度に、子どもの問題解決力や潜在力の育成が極端に阻害されているという実感を強く持たされます。

 かつて、当方が担当した生徒の中に、「私は作問者と戦うつもりで問題に当たっています」と力強く言い切る者がいましたが、そのように直接には表現せずとも、その取り組みに「戦う姿勢」、「問題解決の姿勢」が示されている子どもたちと、逆に「問題を直視しようとせず、楽な道に逃げて済まそうとする」子どもたちとを比較してみると、大げさな表現にはなりますが、そこにはその時の子どもの「生き方の姿勢」がそのまま反映しているようにも思えてきます。

 中学受験を目指す小学生のみなさんは、中学校側が求めている生徒像がどのようなものかをよく心に受け止め、思考したり苦闘したりせずとも楽に、そして簡易にあらゆる夢を叶えてくれる「魔法の杖」の存在を信じて安易に飛びついてしまうのではなく、また、大人に自分の成長を任せきるのでもなく、「直面した問題を一つひとつ、自身の持てる力を最大限に発揮して解決してゆく姿勢」、「自分自身を育てる姿勢」、「自分の人生を自分の力で築き上げていく姿勢」を忘れないで学習に取り組んでほしいと思います。中学受験は、君たちが、君たち自身の人生における、その生き方を学ぶ場でもあるのですから。

       

本項とは別件ですが、「就」の正しい字形について、第11画を「飛び出すのが正しい」と指導される先生がここ10余年ほどの間に大分減ったように見受けられますが、現在でもまだ同様に指導されている先生がいらっしゃるようですので、以下のページを是非ご参照ください。(2019年1月21日追記)

「就」の正しい字形について



ごく基本的な論理のおさらい① 三段論法

どちらが論理的でしょうか?

(1)
 (a)クモは8本足である。(大前提)
 (b)コガネグモはクモである。(小前提)
 (c)だから、コガネグモは8本足である。(結論)
(2)
 (a)クモは8本足である。
 (b)蝶はクモではない。
 (c)だから、蝶は8本足ではない。

・三段論法:二つの前提から一つの結論を導き出す推論形式で、論理展開の基本とされる。「大前提=土台」で「全体のことがら(一般的原理)」、「小前提」で「一部のことがら(具体的事実)」を述べ、最後に、この「二つの前提」から「的確な結論」を導く。「前提」に誤りがあると「誤った結論」が導かれ、また、「前提」から導かれないことを無理やり結論してしまうと、それは「飛躍」となる。

(1)について
・「前提(a)」と「前提(b)」のどちらもが正しいと認めた場合、「結論(c)」は正しく、論理的に正しい推論である。
・「前提(a)」では「クモ一般」についての「性質=事実」が示され、「前提(b)」では「クモ一般」に含まれる「コガネグモ」を「具体的事例」とし、この「二つの前提」が「根拠」となり、「クモの一種であるコガネグモは8本足である」という結論が導き出せ、論理に矛盾は起きない。

(2)について
・「前提(a)」と「前提(b)」のいずれもが正しいと認めても、「結論(c)」は正しいとは言えない。
・「前提(a)」では「クモ一般」についての「性質=事実」が示されている。また、「前提(b)」では「クモ一般」と「蝶」とが「種類として区別される」という「事実」が示されている。ところが、この二つの「前提」は、いずれも「クモ以外には8本足の生き物は存在しない」ことを意味しているわけではない。「クモ以外にも8本足の生き物が存在する」可能性を示しているということは、その「8本足」の生き物の中に「蝶」が含まれる可能性、つまり、「8本足の蝶が存在する可能性」が示されているということだ。以上により、「蝶は8本足ではない」と言い切ることができないにもかかわらず、これを「結論(c)」として導くことは誤りであることがわかる。

※ちなみに、昆虫とは胸に三対、全6本の脚がある節足動物と定義されるが、奈良東大寺の大仏様の前に置かれた花瓶には「8本足のアゲハ蝶の像」が添えられている。

ごく基本的な論理のおさらい② 背理法

記号選択問題での消去例

結論:「空欄A」の時点で太郎が「選択肢(ア):マッチを擦った」はずはない。
 ①本文の「空欄A」の時点で太郎が「選択肢(ア):マッチを擦った」と仮定する。
 ②マッチはその性質上、「擦ったその直後」に火が灯る。
 ③ところが、「空欄A」の直後には「火が灯った」という描写も「すぐに火が消えた」という描写も無く、「風雨の様子とその変化」が描写されている。
 ④「風雨の様子とその変化」は、つまり、「時間の経過」を間接的に表し、「少なくとも数分の時間経過」を意味している。
 ⑤「風雨の変化とその様子」が描写された直後には、「もう一度火が灯った」という描写がある。
 ⑥「仮定①」にしたがうと、「太郎が擦ったマッチの火が灯ったのは、マッチを擦った直後ではなく、少なくとも数分が経過した後である」という文脈になる。
 ⑦「空欄A」の時点で太郎が「マッチを擦った」にもかかわらず、「少なくとも数分が経過してからその火が『突如』灯った」というのは、「マッチの性質」から不自然な現象であり、「矛盾」と判断される。
 ⑧よって、「空欄A」に「選択肢(ア):マッチを擦った」という選択肢は当てはまらず、他の空欄を検討すべき。

・背理法:「ある主張」について、「その主張を否定した仮定」を行うことで「矛盾」を導き、それによって「ある主張が正しい」ことを証明する方法。
・上の例では、「空欄(A)に選択肢(ア)は入らない」という「主張」について、それを「否定した仮定」、つまり、「空欄(A)に選択肢(ア)が入ると仮定」したところ、「マッチの炎の様子・時間経過・マッチの性質」という観点から複数の「矛盾」が生じ、そのため、「当初の仮定」そのものが否定されることで、「空欄(A)に選択肢(ア)は入らない」という主張が証明される。
※本文、および設問の詳細は都合により記載していない。また、設問に当たるうえでの前提条件がいくつかあるが、本項では記載していない。そのため、専門的(論理学的)な論証の範疇(はんちゅう)には入らない。

ごく基本的な論理のおさらい③ 暗黙の前提

「暗黙の前提」による結論例

結論:人間は自らの体内で水を作ることができる。
①クジラは海中にすむほ乳類である。
②ほ乳類であるクジラには、「飲み水=塩分を含まない水」が必要だ。
一般に動物は、食べた食物の栄養分が分解される際に水ができる。
④クジラの食物には多量の脂肪分が含まれている。
⑤クジラの体に蓄えられている脂肪にもまた、多くの脂肪が蓄えられている。
⑥クジラは、特に脂肪を分解する際に多くの水を得ることができる。
⑦よって、「クジラは自らの体内で水を作ることができる」と言える。
⑧⑦までの情報により、「人間もまた、自らの体内で水を作ることができる」と言える。


・⑦までの情報により「結論⑧」を導くのは「飛躍」ではないかと思われるが、③にある「動物」には特別な条件が付いておらず、「陸にすむほ乳類である人間」が除外されているわけではない(小学生の場合、本文が「クジラの飲み水」についの説明文であることに強く引っ張られ、③の文脈において人間を無意識に除外して考えがち)。そこで、③の「動物一般」については、「クジラと人間とはすむ環境がまったく異なる『動物』ではあるが、『ほ乳類であるという点で体のしくみが共通しており、体内で水を作るしくみもまた共通している』」と捉え直すことができ、本文中に直接にはそのように表現されずとも、これを「暗黙の前提」として⑧の結論を導くことができる。

・特に表明せずともわかりきった事柄を「暗黙の前提(暗黙の了解)」という。読解訓練においては、本文の正確な内容把握により「明示された前提」と「隠れた前提」の二つをしっかりと押さえることが重要になる。本文で不要と思われる部分を抜かして読む「飛ばし読み」や、機械的処理法等に傾注していると、押さえるべき種々の「前提内容」が踏まえられぬままに処理に当たらねばならない恐れがあるので、自分の文章読解への取り組み方を今一度見直してみよう。
※本文、および設問の詳細は都合により記載していない。また、設問に当たるうえでの前提条件がいくつかあるが、本項では記載していない。そのため、専門的(論理学的)な論証の範疇(はんちゅう)には入らない。

選択肢の判別法(50種)

※以下の判別法によって全ての選択問題が解決するわけではありません。視点や検討力が未発達な子どもたちに提示できる、ものごとを多角的、総合的に捉える際の視点の例としてご参考ください。
※子どもたちには、機械的手法はあくまで補助的手段として、多角的に分析する本来的な検討力をしっかりと養ってもらいたいと思います。
※作問に携わる方には、受験生の思考力を測る本来の目的に沿い、以下を参考にその場しのぎの機械的、かつ一面的な手法によってたやすく崩されないような工夫を加えてもらいたいと思います。


※2019年(令和元年)8月24日(土)現在、加筆・修正中!


※以下手法のいくつかが複合されている場合があるので注意しよう。

基本(誤答肢)

(1)論外
・明らかに本文の内容や設問の要求から外れるため、比較的除外しやすい。ただし、(18)の「カモフラージュ(偽装)」による正解肢を誤って「論外」として除外してしまうことのないよう注意しよう

(2)要素不足
・説明が完結するために必要な要素が不足している。不足に気づかれないよう、表現や内容を微妙に調整してある場合があるので注意が必要。また、必要な要素が全て含まれていても説明の趣旨がねじれていたり、論理構造が正しくなければ正解とはならないので、単眼的な視点で「要素の有無」にのみ注目するのではなく、「選択肢に書かれてある説明文の読解」をもしっかりとできるよう訓練しておこう。

(3)虚偽要素の付加
・説明が完結するために必要な要素が全て含まれているが、それに加え、誤った要素を別に忍ばせてある。不要な要素が「事実」なのか「心情」なのか、あるいはそれ以外のものなのか、さまざまな視点を持って総合的に検討、判断できるようにしよう。

(4)方向違い
・設問の要求に対し、異なった方向性、あるいは、偏(かたよ)った方向性での考え方が説明されている。「設問の要求」を正しく把握せず、「思考の方向」を正しく定めぬままに解答を判断する受験生が相当に存在することを作問者は心得ている見当違いの方向で思考して迷路にはまらぬよう、設問の要求を正しく把握し、正しく方向付けて思考する訓練を積んでおこう。

(5)視点違い
・本文の内容とは「異なる視点」での要素が含まれている。本文における筆者(作者・登場人物)の「視点」と、選択肢の説明における「視点」とをしっかりと比較、照合できるよう訓練しておこう。

※視点:①注意を向けて捉える点。着目する点。②観点。物事を見たり考えたりするうえでの立場。見地。

(6)展開無視
・展開把握力を見る狙いがある。本文の展開や構成を把握せず、問われている箇所の前部だけ、あるいは前後近辺の断片情報を単眼的に捉えて解答を判断する受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。問われている箇所において、「その時点で読み取れないこと(起きていないこと・わかっていないこと)」が書かれてある選択肢を選んでしまわないよう、「全体視点」をもって本文の「展開や変化」、「時系列」を把握できるよう訓練しておこう。

(7)限定的一致
・筆者、あるいは作者が挙げた具体例や話題、登場人物の言動など「一部の内容」を取り上げ、それが筆者(作者・登場人物)の中心思想であるかのように見せかけてある。本文の内容から外れるわけではないために否定できず、判断に迷いやすい。本文から得られる種々の情報を整理し、「重要性の度合い」にも目を向けよう

(8)非主要
・選択肢の説明が「本筋」から逸れ、「特に主要とは言えない内容」に変えられている。説明の内容や各部要素自体に誤りが無いにもかかわらず、文脈や表現を微妙に調整してあるため、判断が非常に難しくなる。全体視点を同時に働かせつつ、細部の意味内容を多角的視点ををもって捉えられるよう、本質的な読解力をしっかりと養っておこう。

※本筋(ほんすじ):正当な、中心的な筋道。正当な道理。

(9)表面的説明
・上辺をなぞっただけの表面的、あるいは形式的な説明がなされているのみで、設問の要求に対する「本質的な説明」、あるいは「踏み込んだ説明」にまで敢(あ)えて至らせていない。「これは表面的、形式的な捉え方に過ぎず、本質的な説明にまで踏み込んでいない」といった判断ができるよう、普段から一つ踏み込んで考え、検討する力を養っておこう。

(10)主観的説明
・本文の内容に沿った客観的な説明とは別に、無関係な主観的説明が設定してある。客観的な視点による把握力が未発達な受験生を簡単に誘導できるため、しばしば用いられる手法。普段から本質的な読解学習に取り組み、「この説明は不特定他者の主観であり、筆者(作者・登場人物)自身の考えとは無関係である」と見抜けるようになろう。

※主観:自分(その人)だけの考え。

(11)一般論
・本文の内容や主題・要旨に沿わない、無関係な一般論的な説明が書かれてある。説明内容自体は「一般論として正しい」ために否定できず、判断に迷いやすい。「一般論としてはそのとおりだが、筆者の主張、本文の内容とは無関係である」と見抜けるように、両者を明確に区別する視点を備えよう。

※一般論:広く世間一般に認められると考えられる論。「勉強すれば将来の役に立つ」、「自然は大切だ」、「適度な運動は健康によい」など。

(12)趣旨違い
・選択肢の説明における意味内容を変えて説明してある。選択肢の説明について、部分的な要素にのみ注目し、趣旨や文脈そのものを正確に捉えられない受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。必要な要素が全て含まれていても、その説明が正しい趣旨や文脈となっているかどうか、論理的に整合するかどうかといった視点を持ち、「選択肢に書かれてある説明文の読解」もしっかりとできるよう訓練しておこう。

※趣旨:言おうとしている中心的な内容。趣意。(『新聞用語集』では『趣旨』、『主旨』いずれも『趣旨』として表記を統一)

(13)フェイク(にせもの)
・本文から一部をそっくり引用してあるだけで、実は設問の要求には全く対応していない。線部等、問われている箇所の直前・直後に書かれてあることがらにしか注意が向かない受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。少し冷静に考えれば判別はさほど難しくないので、「本文に書いてあるから」、「線部のすぐ近くに書いてあるから」といった単純な理由で選択してしまわないよう注意しよう。


飛躍系(誤答肢)

(14)飛躍
・正しい筋道を飛び越えた内容の説明がされている。論理上の飛躍の度合いが小さい場合や大きい場合など、さまざまに調整してある。断片的な情報にしか注意が向かず、本文を単眼的にしか捉えられない受験生や思い込みの強い受験生、センスに頼って国語に対応してきた受験生、論理的な思考訓練が不十分な受験生等を簡単に誤答に誘導できるため、しばしば用いられる手法。本文の内容や論理構造の正確な把握を大前提としたうえで、論点について「前提に基づいた推論が可能かどうか」を検討できる力を養おう。

※飛躍:論理的に正しい手順を踏まずに、誤った結論を強引に導き出すこと。「前提」と「結論」との間に的確な連関があるかどうか、あるいは、「結論」に「こじつけ」が無いかどうかをよく検討し、「可能性はゼロではないが、全面肯定もできない」、「結論に至る道筋に誤りがある」、「前提に欠落が無ければこのような結論は出ないはずだ」といった判断ができるよう訓練しよう。
※前提:論理の土台となる客観的事実。
※こじつけ:本来は関係無い事柄どうしを無理に関連づけ、いかにも道理が通ったように装うこと。

(15)飛躍意志
・筆者の考えや本文の内容、あるいは登場人物の気持ちや考えに沿わない「意志表現」で説明してある。「絆を結ぼと…・仲直りしようと…」というように、表現にさり気なく組み込まれている「う・よう・まい」などの「意志を表す助動詞」が使用されている場合が多いが、「たい・たがる」などの「希望を表す助動詞」が使用されている場合もあるので注意。さらには、以上のような助動詞を敢えて使用せず、飛躍に気づかれないよう、例えば「~するために・~目的で・認める・受け入れる」といった「意志を前提とした表現や文脈」によって調整してある場合や、「~してほしい」のような「願望表現」が使用されている場合、また、「積極度」や「消極度」の違いにより「意志の度合い」を微妙に調整してある場合もあるので注意。「筆者、あるいは登場人物はそのような意志(希望)までは抱いていない」と見抜けるよう、本文の内容を客観的に、かつ正確に把握する訓練を怠りなく。(14)の「飛躍」の一種。

(16)二分法
・「仲間ではない」という説明は、必ずしも「敵である」ことだけを意味するとは限らない。にもかかわらず、そのように「中間層=他の可能性」を一切排除し断定的に説明してあるため、解答者の思い込みを誘発させる。社会を生きていくうえでも、ものごとを捉える際に「中間層=他の可能性」を常に視野に入れて対応する姿勢を持つことが大切。(14)の「飛躍」の一種。「白黒思考」ともいう。

(17 )強引な一般化
・例えば、登場人物による「『私は平気、別に何とも思っていないから』と、さばさばした表情で彼女は言った」のような言動についての描写が本文にあるとしても、その発言が「私」の「本心」や「人物像」をそのまま直接に示しているとは限らない。にもかかわらず、背景や事情、経緯、人物の本心や意図、あるいは人物どうしの関係性、文脈等の諸条件を無視し、選択肢では、「細かなことに拘らない、さっぱりとした性格」というように、その人物像を無理やり一般化して説明してある。部分的な描写や言い回しから短絡的に一般化して捉えてしまうしまうのではなく、複眼的、多角的視点によって意味内容を正しく捉えられるよう訓練しておこう。(14)の「飛躍」の一種。

※一般化:一部の事例をもとに、それを普遍的な概念・法則に拡張すること。さまざまな事物に共通する性質を抽象し、一つの概念にまとめること。普遍化。
※抽象化:多くのものごとが共通して持っている性質だけを抜き出し、それらを同類のものごととして捉えること。


偽装系(正答肢)

(18 )カモフラージュ(偽装)
・文中語句を敢えて使用せずに言い換えたり、抽象化したり、あるいは一歩踏み込んだ説明をしたりすることで、正解でありながら正解と判断されないようにしてある。消去法のみに依存して十分な検討をせずに解答を判断する受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、(1)の「論外」として早々に除外してしまいやすいので特に注意が必要。普段から「抽象化」や「言い換え」の視点と技術とを持って読解学習や記述学習に取り組もう。判別難度が高く、正答率を下げるのに効果的な手法。

(19 )暗黙の前提(偽装)
・本文には直接表現されてはいないが、筆者(作者・登場人物)が「暗黙の前提」としている事柄をもとに説明がなされている。正解でありながら、まさかと思うような内容の説明となる場合があるため、明らかな誤りとして早々に除外してしまう恐れがある。本文の内容における「暗黙の前提」を踏まえないまま、しかも消去法のみに依存して解答を判断する受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。本文の内容把握がしっかりとできるよう、本質的な訓練をしっかりと積んでおこう。(18)の「カモフラージュ」の一種。

※前提:論理の土台となる客観的事実 。
※暗黙の前提:特に表明せずともわかりきった事柄を「暗黙の前提(暗黙の了解)」という。読解訓練においては、本文の正確な内容把握により「明示された前提」と「隠れた前提」の二つをしっかりと押さえることが重要になる。

(20)推定妥当(偽装)
・物語文等では「本文には直接描かれていないその後の展開」、説明的文章等では「本文に直接表明されていない筆者の発展的な考え」等について、推論としてありうる範囲の事柄が「断定的に」説明されている。本文には直接書かれていなくとも、主題や要旨、展開等を踏まえると論理的には推断が可能な内容であるため、(1)の「論外」、(14)の「飛躍」と判断して消去してしまわないよう注意しよう。(18)の「カモフラージュ」の一種。

(21)対比表現(偽装)
・筆者や作者、登場人物の考え方や表現を使用せずに、それと対比される人物の考え方や表現を利用して筆者(作者・登場人物)の考え方を説明してあるため、正解でありながら誤答と判断してしまう恐れがある。筆者(作者・登場人物)の考えに注目するだけでなく、それと対比される考え方にもしっかりと目を向け、多角的視点によって総合的に判断できるようにしよう。(18)の「カモフラージュ」の一種。

(22)断定表現(偽装)
・「『断定的』な表現や『限定的』な表現のある選択肢は選ぶな」といった機械的判別法を指導されている受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手に取り、「絶対に」、「決して」、「必ず」、「常に」といった断定表現や、「だけ」、「のみ」、「しか」等の限定表現を敢えて用い、正解でありながら正解と判断されないようにしてある。また、「~は間違っている」、「~する必要がある」、「~しなければならない」といった断定的表現に関しても、あくまで「本文内容との照合」によって正否を判断できるよう訓練しておこう。(18)の「カモフラージュ」の一種。

(23)誇張表現(偽装)
・「『大げさ』な表現や『極端』な表現、あるいは『強い』印象を与える選択肢、『言い過ぎ』と言えるような選択肢は選ぶな」といった印象による判別法を指導されている受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手に取り、敢えて誇張した表現を「正答肢」に使用することで印象による判断を誘い、正解でありながら正解と判断されないようにしてある。(18)の「カモフラージュ」の一種。

※誇張(こちょう):大げさに表現すること。


すり替え系(誤答肢)

(24)前提のすり替え
・「前提」となる事柄(大もととなる客観的事実)をわざとすり替えたうえで説明してある。前提内容が本文の内容に一致しないにもかかわらず、「偽装論理」が成立し、説明自体がいかにも正当であるかのような内容となるため、非常に紛らわしくなる。「本文を通読せず、問われている箇所の前後数行の内容から解答を判断する」といった安直な手法やセンスに依存して解答を判断する受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。本文内容を正確に捉えていないと、「作問者が前提としている事柄」と一致しないために、解答者の考えや判断はその都度揺れを起こしてしまう「この説明は前提内容が本文と一致せず、すり替えられている」と見抜けるよう、これを新たな視点として備えるべく、本文の内容把握訓練をしっかりと積んでゆこう。思考訓練や内容把握訓練が不十分な受験生を簡単に惑わすことができるため、しばしば用いられる手法。

(25)架空論法
・筆者の主張や本文の内容をわざとゆがめて引用し、それを「前提」とした論理構成によりいかにも正しい説明であるかのように見せかけてある。「ゆがめられた前提」により「偽装論理」が成立しているため、非常に紛らわしくなる。問われている箇所の前後に書かれてある断片的な情報だけをもとに解答を判断せず、本文全体から読み取った「前提内容」が揺らがぬように、論理的思考力をしっかりと培ってゆこう。(24)の「前提のすりかえ」の一種。

※架空(かくう): 事実に基づかず、想像によって作り上げること。

(26)人物像のすり替え
・登場人物や作者・筆者の人物像とは異なる別の人物像にすり替えたうえで、それを前提として説明されている。「この説明は登場人物(あるいは筆者や作者)の人物像とは異なる人物像を前提としている」と見抜けるよう、本文全体を通して「人物像の正確な把握」をしっかりと行おう。尚、人物像を前提とした選択肢の説明は他の種々の手法にも援用されるので、普段から人物像の把握を読解上の重要事項として念頭に置こう。(24)の「前提のすりかえ」の一種。

(27)因果の逆転
・本文における該当箇所の内容としては【《A~ので:原因・理由》+《B~:結果》】という因果関係であるのに、選択肢では【《B~ので:原因・理由》+《A~:結果》】という構造にすり替え、「原因や理由となる内容」と「結果となる内容」とを逆転させて説明してある。「ので」や「から」、「ため(に)」等の「原因・理由」を示す語を使用すると逆転に気づかれやすいため、「~ことで」や「~ことにより」、「~によって」などの表現に替えられていることが多い。また、【《B~できるよう(~するよう):結果》+《A~する:原因・理由》】のように、因果関係そのものを捉えづらくするために巧妙に表現が操作された場合もあるので注意。本文での「論理構造」や「因果関係」を正しく踏まえずに、もっぱら「要素」の有無や要素の正否のみを基準に解答を判断する受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。選択肢の説明に必要な要素が全て含まれていても、因果関係が逆転していては正当な説明が成立しない。本文全体、および細部での論理構造や因果関係をもしっかりと踏まえ、また、速やかに照合、検討する訓練を積んでおかないと瞬時には「逆転」に気づかないので十分に注意しよう。

(28)偽装因果
・ 本文中に明記されたある内容(A)と別のある内容(B)とを「~ことで(ので、ため、から)」等の「原因・理由を表す語」を用いて「A~ことで、B~」のように連結し、「それらしい因果関係を装う」ことでいかにも正当な説明、あるいは正当な根拠を提示しているかのように見せかけてある。「見せかけの根拠」や「見せかけの説得力」によって誘導されないよう、設問の要求に対応した正確な説明であるかどうか、また、論理的に正しい文脈であるかどうかを検討する力を養っておこう。

※偽装(ぎそう):ある事実を覆(おお)い隠すために、それが本当のことであるかのように装うこと。

(29)論点のすり替え
・設問で要求されている論点とは異なる別の論点にすり替えて説明してある。論点は異なるが説明内容自体は否定できないため、非常に紛らわしくなる。設問文において何が「論点」とされているかを正確に把握し、そのうえで正しく方向付けて思考できるよう訓練しておこう。

※論点:議論の中心となる問題点。

(30)主語のすり替え
・一見、説明自体の方向性も内容も正しいようだが、説明における主語(人物や事柄)が別のものにすり替わっている。主語と述語の係り受けをほとんど意識せずに文章を読んでいる受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。安直な手法に依存するばかりでは備えるべき視点が備わってゆかず、「主述の不整合」にさえ気づかないので、平常より主語と述語の係り受けをよく意識して読み、書き、話す習慣を持とう

(31)正答もどき
・選択肢の説明における文脈や、そこに含まれる各要素とその表現までを「正答肢」に非常によく似せ、選択肢の判別を困難にする。文脈、論理構造、表現、各要素の意味内容等について、本文の内容に沿った的確なものであるかどうか、また、相応(ふさわ)しい表現となっているかどうか等、正誤を見極めるための種々の視点と厳密な検討力とが要求される。

(32)前後要素の置き換え
・例えば、「A:仲間を守ろうとした」(にもかかわらず)「B:みんなに誤解された」(太郎の様子を見て)「C:胸を締めつけられるような思いでいる」が正しい説明だとして、それを「B:みんなに誤解された」(にもかかわらず)「A:仲間を守ろうとした」(太郎の様子を見て)「C:胸を締めつけられる思いでいる」のように、「A」、「B」それぞれの要素自体は正答肢にも誤答肢にも共通して含まれていながら、要素を前後で置き換えることで判断を紛らわしくしてある。「要素が全て含まれているかどうか」だけを基準にしていると判断が困難な場合が多いので、説明における趣旨や文脈、論理等を総合的に検討できるようしっかりと訓練しておこう。

(33)表現の矮小化
・選択肢の説明や説明に含まれる要素が、本来の的確な表現ではなく、それに意味の近い「控えめの表現」や「意味を弱めた表現」にさりげなくすり替えられている。説明自体の趣旨、方向性としてはほぼ正しいために、微妙な意味の違いに気づかず、誤りでありながら正解であると判断してしまう恐れがあるので注意。「大げさ」、「言い過ぎ」、「強い」、「弱い」のように印象によって判断するのではなく、選択肢の説明やそこに含まれる構成要素が本文の内容に沿った的確なものとなっているかどうかをしっかりと検討、判断できるよう、平常より「精度追求型」の学習に取り組んでおこう。

※矮小化(わいしょうか):事柄を小さく、控(ひか)えめにすること。

(34)虚偽の換言
・「不思議な出来事・力」、「奇跡的な出来事・経験」、「未知の経験・世界」といった表現を使用することによって、いかにも本文の内容に沿った的確な「言い換え」や「抽象化」がなされたように見せかけてあるが、実は逆に「漠然とした表現へのすり替え」に過ぎず、正当な説明として成立しない。選択肢の説明において「言い換え」や「抽象化」、「一般化」がなされている場合、それが本文の内容と一致する的確な表現であるかどうか、あるいは、的確とは言えない表現にすり替えられていないかどうかを検討する視点を備えよう。

※虚偽(きょぎ):嘘(うそ)。偽(いつわ)り。

(35)語意のすり替え
・「共感」と「同情」、「中途半端」と「いい加減」、「真面目」と「素直・正直」、「信頼が揺らぐ」と「信頼が損なわれる」など、類語としては同種の範囲に含まれるが、本文で読み取れる内容に合わない意味を持つほうの言葉にさり気なくすり替えられている。普段の言語生活において、言葉を感覚的にのみ捉えていると、語意の違いや用法、それぞれのニュアンスの違いに気づかず誤答に誘導されてしまう恐れがあるので注意。国語辞典を用いてその語の辞書的な意味、用法を確認するなど、言葉に関わる取り組みや言語生活への姿勢をもう一度見直してみよう

※国語辞典を使用して言葉の意味を調べる際には、意味が分からない言葉があったら何も考えずに即座に辞書を引くのではなく、まずはその言葉に用いられている言葉や漢字、文脈を手掛かりに、知識や語感、また、それまでの生活体験に等にも照らし、自分なりに意味を推定し、そのうえで本来の正しい意味を確認するという手順を踏むほうがよい。そして、その言葉を単に知識事項として確認して済ますのではなく、今後自分が生きていくうえで使いこなしていく言葉の一つとして、あるいは、「自分」というものを作り上げていくための大切な要素の一つとして、しっかりと積極的にその言葉を採り入れていく姿勢を忘れないことが大切。


印象操作系

(36)印象操作
・例えば、「海」は「広い、大きい、深い、穏やか、静か、荒々しい」といった様々な様相を現実に示し、一般にそのようにイメージもしやすい情景でもあるが、それが例えば「海のような」と本文中に比喩として用いられた場合に、選択肢の説明において、本文の内容とは無関係に、単に「良い印象を与える説明」として利用されたり、「一般的なイメージ」として利用されたりする。「暗い印象の選択肢は選ぶな」、「自然な印象を与える選択肢を選べ」、「真面目な印象を与える選択肢を選べ」、「強い印象を与える選択肢を選べ」といった「印象による判別法」を指導されている受験生が相当に存在することを作問者は心得ている表現から受ける印象につられず、本文の内容、あるいは筆者(作者・登場人物)の主張や考えに沿った正確な説明が判別できるよう、照合と検討とを徹底しよう

(37)価値要素
・「正しい・誤っている」、「良い・悪い」、「好ましい・好ましくない」、「素晴らしい・最低だ」等のような「価値」を視点とした説明がなされている。本文において「筆者(作者・登場人物)は何に『価値』を置いているのか」、あるいは「そもそも『価値的要素』が読み取れるのかどうか」を正確に把握しておかないと、価値の見方を誤ったり、あるいは正解であるにもかかわらず「言い過ぎだからダメ」、「大げさだからダメ」、「強い・弱い」というように単に印象によって誘導されてしまう恐れがあるので注意しよう

(38)常識・道徳論
・「常識や道徳」に関わる説明がされている。道徳的・倫理的・常識的に正しい事柄に対しては否定しづらく、逆に道徳的・倫理的・常識的にふさわしくない事柄に対しては肯定しづらい一般心理を作為的に利用している。「常識的、道徳的にはそのとおりだが、本文の内容とは合致しない」と見抜けるよう、本文内容をあくまで客観的、かつ正確に把握する訓練を積んでゆこう。

※道徳:社会生活を送るうえで、個人が守るべき規範。人が踏み行うべき正しい道。
※倫理(りんり):語源的には「道徳」と同義であり、根本的な相違はない。ただ、現代の日本では、道徳の場合、「『徳』という意味合いを強く含意し、自発的に正しい行為へと促す個人の内面的原理として働く」というニュアンスを含むようだ。
※常識:社会人として誰もが共通して持っている普通の知識や分別。

(39)精神論・生き方論
・「がんばる・努力する・やる気を出す・気合を入れる・根性で・くじけない・あきらめない・力を出し切る・力いっぱい・全力で・一生懸命に取り組む・自分を信じる・自分に打ち勝つ・自分自身に向き合う・困難に向き合う・困難を乗り越える・現実に向き合う・現実を受け入れる・前向きに生きる・一瞬一瞬を大切に・生き甲斐・成長をとげる・自分を大切にする・自分に正直に生きる・自分らしくありのままに生きる・相手の気持ちを理解する・相手の心に寄り添う」のように、精神力によればいかなる障害も克服できるとする「精神論」や、「人間の生き方・生きる姿勢」に通ずる表現を敢えて誤答に使用し、印象による誘導を図る。本文の内容を正確に把握し、印象につられて誤答肢に誘導されないよう注意しよう


詐欺系(誤答肢)

(40)成り済まし
・「なぜですか」という「理由説明を求める問題」でありながら、問われている箇所の表現を単純に別表現に改めてあるだけ、あるいは、問われている箇所の意味内容を詳しく説明してあるだけで、設問の要求である「理由」については何も答えていない。「どういうことですか」、あるいは「線部内容についての説明として正しいものを一つ選びなさい」といった「内容説明を求める問題」と勘違いして選んでしまいやすいので注意。また、逆に「内容説明」を求める問題でありながら、その説明内容が「理由」に相当する内容にすり替わっている場合もあることも念頭に置く必要がある。設問の要求を正確に把握し、正しく方向付けて思考し解決してゆく訓練をしっかりと積んでおこう。

(41)偽証
・本文に書かれてある「筆者が想定する他者の反論」や、「登場人物が本心を隠して述べる逆の気持ちや考え」等をそっくり引用し、設問で要求する「筆者(作者・登場人物)の主張や考えに沿うもの」であると誤認させる。「筆者の主張・登場人物の本心」と「筆者が想定する他者の反論・登場人物の偽りの気持ちや考え」とを明確に区別できるよう、読解における基本訓練をしっかりと積んでおこう。

※偽証(ぎしょう):真実でないことを真実であるかのように述べた証明。

(42)同義反復(循環論法)
・「世界平和のためにはどのような社会にすべきだと筆者は考えていますか」という問いに対し、「戦争の起きない社会にすべきである」といった一見もっともらしい説明が書かれてある。しかし、これは、「戦争が起きない社会を実現するためには、戦争が起きない社会を実現する必要がある」と言っているのと同じことなので、実は設問の要求に対する本質的な説明が全くなされていない。オウム返しをするように設問の内容がそのまま選択肢において無意味に繰り返されていないかどうかを見抜く視点を備えておこう

同義反復:「善人は善い人だ」「雨が降る日は天気が悪い」のように同義語を無意味に繰り返すことを「同義反復」、「同語反復」、「類語反復」等という。
循環論法:「彼は勤勉だ(結論)。なぜなら、彼は真面目だからだ(根拠)。」は、「彼は真面目だ(結論)。なぜなら、彼は勤勉だからだ(根拠)。」と同じ意味であり、このように「結論と根拠とが単純に循環し、証明とならない」論法を「循環論法」という。

(43)おびき寄せ
・問われている箇所に関して、本来「正答肢」に使用すべき心情語やキーワード等を敢えて「誘導肢」の「後半部」や「末尾」に使用して目立たせ、逆に「正答肢」には正解と判断されないよう言い換えられた語句を使用することでカモフラージュ(偽装)し、いっそう誤答に誘導しやすくしてある。選択肢の「後半部」、もしくは「末尾」にある心情語やキーワード等を正誤を判断するうえでの特に重要な基準とするよう指導されている受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。選択肢の正誤については、単眼的、機械的判断でのみ済ますのではなく、種々の視点と検討力とをもって総合的に判断できるよう訓練しておこう。

(44 )矛盾
・筋道を踏んだ論理的な説明がされているようだが、本文内容と食い違った結論が導き出されていたり、あるいは、結論は正しいが筋道そのものに矛盾があったりし、論理的に整合しない。読解学習においては、まず「情報(事実)」を収集し、「その情報を突き合わせ(総合)」、「筋道を立てて(論理構築)」、「結論を導く」というプロセスを踏んだ本質的な読解学習をしっかりと積み重ねておこう。

※矛盾(むじゅん):理屈として、二つの事柄のつじつまが合わないこと。筋道が通らないこと。

(45)反対表現の罠
・「満足」の対義語は「不満(不満足)」だが、「不満ではない」という「反対表現」をしても「満足」と同義とはならない。このように、「本文で読み取れる内容の対義語を『反対表現』にする」ことで、その説明がいかにも本文の内容に一致し、設問の要求にも合致するかのように見せかけ、誤答に誘導する。

※「彼が仲間でないなら敵だ」といった説明は、「中立」等の「候補」を度外視した「二分法」を用いた手法だが、「反対表現」の場合は逆に、二者以外の「候補」をあたかも二者の一方と同一であるかのように見せかけて誤認させる手法。

(46)類比論法
・筆者(作者・登場人物)の考えに沿うような「似た例え」を引用して説明し、それを根拠の一つとしていかにも正当な説明であるかのように見せかけてある。「説明内容に類似した例え(類比)」は、抽象的な事柄や難解な事柄を理解する一助になるうえ、その説明に説得力を与える効果を持つが、元来説明そのものとは「別物」であるため、その「例え」に本質的に異なる点(相違点)が無いか、また、その「例え」が説明における正しい根拠となっているかどうかをきちんと検討する視点を備えておこう。

類比論法・・・主張の内容と類似した別件を例えとして引用し、主張に説得力を持たせる論法。その「例え」が適切な根拠となっている場合とそうでない場合とがあるので注意。また、「慣用句」や「ことわざ」が説明に引用された場合にも、それが適切な「類比」として機能しているかどうかをよく検討しよう。

(47)指示語の罠①
・問われている箇所に指示語が含まれている問題において、指し示す内容として解答者が取り違えやすい部分を敢えて選んで選択肢の説明に含めてある。「指示語の指し示す内容は常にその直前にある」という思い込みにより、前後の文脈を確かめずに機械的に処理してしまう受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。線部等、問われている箇所に指示語が含まれている場合は、それを含む一文に加え、その前後数行をも含め、「文と文の論理的連関」、つまり「文脈」を把握し、そのうえで設問の要求に沿って正確に方向付けて思考できるよう訓練しておこう。

・例題(一般的な指示語の問題):
「人間などの陸にすむほ乳類の体液には、わずかな塩分がふくまれているが、海水に比べるとその濃度ははるかに低い。だから、もし海水を飲むと、逆にのどがかわいてしまう。」
・問い:「その濃度」とは何の濃度か。ア:海水の濃度 イ:陸にすむほ乳類の体液の濃度 ウ:塩分をふくまない水の濃度 エ:塩分の濃度 オ:海にすむ生物の体液の濃度 ※正解は本項末尾

(48)指示語の罠②
・指示語の指し示す内容が前後やその付近、あるいは近接する段落内にさえ無く、本文の内容や構成、展開等を正確に捉えていないと判別できない。判別難度が高く、受験者の本質的な読解力が試される。付近の語句を代入して文意を確認するような機械的な解決法では対処できないので注意が必要。要旨や主題、筆者(作者・登場人物)の考えとそれに対比される考え、また、段落構成や展開等を押さえ、本文内容を整理しながら正確に捉える訓練を積んでおこう。

(49)釣り
・語句の意味を問う問題において、「文脈的・印象的」には馴染みそうであるが、実は「辞書的」には存在しない意味を選択肢に設定してある。小学生の国語や言葉に対する関わり方や普段の言語生活、語感、感性、推定力といったものが試される。また、「適当」や「結構」のように、用法によって意味がさまざまに異なる言葉についても、その選択には注意が必要。言葉の「辞書的な意味合い」や、言葉の「生きた使われ方」に馴染んでいないと的確な判断が困難になるので、普段から厭(いと)わずに国語辞典を引く習慣をもち、文章に慣れ親しみ、人と人との言葉によるコミュニケーションを大事にして生活しよう。同時にまた、自分の考えをしっかりと持ち、それを他者に対してしっかりと正確に「伝える力」が、今、社会で強く求められていることも忘れないこと。

(50)びっくり箱
・設問形式の一つとして、「本文全体の内容の説明」、「文章全体の表現上の特色」等について適切なものを選ぶといった問題については、通常大設問内の最終問題として設定されていることが多く、照合と検討に予定外に時間を取られてしまう恐れがあるので注意。また、本文にて照合、検討する必要のある項目は、「背景・事情」、「本文の内容」、「心情・心情変化」、「葛藤(かっとう)」、「人物像」、「人物どうしの関係性」、「視点人物」、「場面・構成」、「時間軸」、「回想部」、「展開・変化」、「成長・生き方」、「主題・要旨」等の読解関連についての他、「会話表現の特徴や効果」、「文章の特徴や効果」、「情景描写の特徴や効果」、「―(ダッシュ)」や「……(リーダー)」等の符合の使われ方等の描写全般について、さらに、「象徴」や「暗示」等の描写技巧について、「比喩の有無や使用頻度」、「擬音(声)語・擬態語の有無や使用頻度」、「歴史的現在」、「皮肉」、「反語」、「逆説(パラドックス)」等の修辞に関するものなど多岐に渡る。種々の情報をより多く、多角的に収集しながら通読できるよう、さまざまな視点を備え、対応力を向上させてゆこう。

葛藤(かっとう):(つる性植物である葛《かずら》と藤《ふじ》がもつれ合うことから)二つの相反する感情の板挟みとなり、迷い悩むこと。コンフリクト。「葛藤する」「心の葛藤」
ジレンマ(ディレンマ):二つの相反する事柄について選択を迫られ、苦しんでいる状態。板挟み。八方ふさがり。「ジレンマに陥る」
両価性:ある同一の対象に対して、「愛と憎しみ」のように相反する感情を同時に持つこと。両面価値。両価価値。アンビバレンス。「(おいしそうなので)食べたいが、(太りたくないので)食べたくない」「(好みの容姿なので)好きだけれど、(価値観が違いすぎて)嫌い」
会話表現の特徴や効果:「会話」の形式や多少、「方言」の使用による効果、「文体」や「表記」に関する効果等について検討が求められる場合がある。
視点人物:筆者、主人公、第三者等、「誰の視点から語られているか(描かれているか)」を問われることが多い。
象徴:本文の内容において、一見さほど重要でなく思われる部分的な描写であるが、実はその作品の「主題」や「人物の心情」等と深く関連づく、作品上重要な意味を与えられたものごと。情景、生物、日常ありふれた器具、飲食物、色、形状、音、臭い、味、感触、人物の言動など種々のものが、作家の意図と工夫により「象徴事象」として利用される。「象徴事象」を、それと結びつく「一般的なイメージ」だけで説明しようとしても本文の内容と合致せず、むしろ全く違った意味や真反対の意味となってしまう場合もあるため、これを解読する「象徴問題」への対応においては「本文内容との重ね合わせ」の視点での精度の高い読解訓練が求められる。

・「象徴」の例:主人公である「私」の「とりあえずウミガメのスープを仕込もう。」という言葉が、「私が本当に求めている、見た人の胸に真に届き、生きていく気持ちを支える力を持った絵をいつか描けるようになるために、自分を支えてくれる人達やさまざまなものへの思いを胸に、一日一日を大切に生きてゆこう」という「私」の生き方への思いを象徴している。(宮下奈都『ウミガメのスープ』)~平成30年(2018年)10月実施、『サピックス 10月度 マンスリーテスト』【大設問4】、平成30年(2018年)10月実施、『四谷大塚 第4回 合不合判定テスト』【大設問1】にて出題。

暗示:その後に起こる「事件」や「展開」を情景描写や種々の事象によって予め読者にそれとなくほのめかしておく手法。伏線。

比喩(たとえ):
 ①直喩(明喩):「Aは(まるで・あたかも)B~(ようだ・みたいだ)」等のように、「比喩を表す言葉」を用いて、直接に(はっきりと)比喩であることを示した言い方。「ようだ・みたいだ」といった語が用いられることで間接的な表現となり、隠喩に比べて与える印象はソフト。「先生は(まるで)鬼のようだ!」
 ②隠喩(暗喩):「ようだ・みたいだ」のような「比喩であることを表す言葉」を用いずに、「AはBだ」のように、ある事柄を別の事柄にたとえて言い切る。直喩よりも鋭く、強い印象を与える。「先生は、鬼だ!」
 ③擬人法(活喩):人間ではないものが、人間がしたことのようにたとえる方法。親近感や生き生きとした印象を与える効果がある。「救急車が悲鳴を上げている。」
擬音(声)語:音や声を言葉に表したもの。オノマトペ。「お腹がゴロゴロと鳴る。」(片仮名表記)
擬態語:ものごとの様子や感じを言葉に表したもの。オノマトペ。「日曜日は家でごろごろとしている。」(平仮名表記)
歴史的現在:過去の出来事が、今、目の前で起きているかのように「現在の時制」で表現する技法。史的現在。
皮肉:①遠回しに意地悪く相手を非難すること。アイロニー。「(宿題を大量に与えられた生徒が)先生は大変な生徒思いですね」 ②予想や期待とは反対の、良くない結果になること。「まさかあの最下位チームに負けてしまうとは皮肉だ」 ③自分に対する落胆した気分を表す。「雨天により運動会が中止と決定した直後に、皮肉にも雨が上がった」
反語
 ①「疑問文の形」をとりながら、暗に「強い否定」の意味を表す強調表現。「そんな不思議な話が本当にあるのだろうか(=そんな不思議な話が本当にあるはずがない)」
 ②ある語を本来の意味とは反対の意味に使うことで、皮肉を込める言い方。アイロニー。「(遅刻した人に)随分とお早い到着ですね。」
逆説(パラドックス):
 ①「急がば回れ」、「負けるが勝ち」、「かわいい子には旅をさせよ」のように、一見矛盾しているようだが、実は真理の一面を表す説。
 ②通常とは異なった手順で真理を把握しようとする説。「逆説的に言えばー」
修辞:言葉を効果的に使って表現すること。その技術。レトリック。直喩、隠喩、擬人法、擬声(音)語、擬態語、体言止め、対句、反復法、倒置法、反語、逆説、皮肉など、中学受験生(小学生)が基礎知識とすべきもの以外にもさまざまな技法がある。

※参照ページ:時間配分
※参照ページ:高速トレース・速読訓練(トップページ)


※(47)の問いの答え:大人にはごく自然に把握できる文脈だが、小学生の場合は単眼的・機械的な捉え方により論理に矛盾が起きても気づかない傾向が強い。線部の前に書かれてある内容にのみ注目するのではなく、線部の後にある「だから」以降の文意も含めて考えると、①「人間などの陸にすむほ乳類の体液には塩分がふくまれている。」、②「海水にもまた塩分がふくまれている。」、③「『塩分の濃度』という『同質のもの』を基準として両者を比較した場合、①のほうがはるかに低い。」、④「海水を飲むと、塩分が体内に取り込まれる。」、⑤「その結果、体内の塩分濃度が上昇し、『のどがかわく』という現象が起きる。」という文脈。小学6年生の正答率は5%以下。正解はエ。
※ちなみに人間の場合、体液の塩分濃度は約0.85%、海水の塩分濃度は平均約3.5%だそうである。また、塩分を過剰に摂取した際にのどが渇くのは、塩分濃度を薄めようとする体の働きによるもの。


※2019年8月24日(土)現在、この項、編集中!
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小手先テクニック・感覚判定法の例

当方が指導を担当する生徒たちの中で、例年少なくともその3~4名から、国語の選択問題は以下に挙げたような方法で解決するよう塾の先生や家庭教師から指導されたという話を必ず聞かされます。読解を前提としない機械的判別法や、感覚や印象によって解決を導く「小手先テクニック」と呼ばれる合理性の無い手法ですが、作問者はこのような手法によって選択肢の判定を行う受験生が相当に存在することを承知のうえで作問していることを念頭に置いて学習する必要があります。

(1)「選択肢に書かれてある説明を前半と後半とに分け、前半を棒線で消し、後半の内容のみを比較して判断しなさい」
(2)「短い説明のものは選んではいけない。具体的な内容で、しかも説明が長めの選択肢を選びなさい」
(3)「極端に長い説明や、極端に短い説明のものは選んではいけない」
(4)「いかにも立派なことがらや正論が書かれているものは選んではいけない」
(5)「少しピントが外れた説明がされているものが正解」
(6)「『断定的な表現』がされているものは選んではいけない」
(7)「傍線部に最も近い部分の説明を利用した選択肢は選んではいけない」
(8)「『音の似た語』が使用されている二つの選択肢を探して、どちらか一つを選びなさい」
(9)「本文中のキーワードが使用されていない説明の選択肢は選んではいけない」
(10)「二つの相反する説明があったら、どちらか一方が必ず正解である」
(11)「五択であれば1番目と5番目を選んではいけない。四択であれば3番目を選びなさい(2番という説もある)」
(12)「選択肢を検討する際、『大げさ』と感じるもの、『言い過ぎ』と感じるものは選んではいけない」
(13)「選択問題で直感力を最大限に発揮できるよう、普段からしっかりと鍛えておきなさい」
(14)「『暗い印象』の説明が書かれた選択肢は選んではいけない」
(15)「プラスイメージとマイナスイメージに分け、設問の方向性に合うほうを選びなさい」
(16)「選択肢の説明を本文の中に当てはめた時、『自然な印象』を与えるものを選びなさい」
(17)「作問者が一番最初に作った選択肢が正解なので、それを推定して答えなさい」
(18)「選択肢で最後に迷ったら、『比較的地味な説明』のほうを選びなさい」
(19)「選択肢で最後に迷ったら、『後のほう』の選択肢を選びなさい」
(20)「選択肢で最後に迷ったら、『正しそうに見えない説明』のほうが正解である可能性が高い」
(21)「選択肢で最後に迷ったら、『強い』と感じるものを選びなさい」
(22)「選択肢で最後に迷ったら、『常識的な説明』だと感じるものを選びなさい」
(23)「選択肢で最後に迷ったら、『まじめな印象を与える説明』のものを選びなさい」
(24)「選択肢で最後に迷ったら、『まじめすぎる印象を与える説明』のものは選んではいけない」
(25)「選択肢で最後に迷ったら、『穏やかな印象を与える説明』のものを選びなさい」
(26)「選択肢で最後に迷ったら、『正解だ』と思えるほうを信じなさい」
(27)「選択肢で最後に迷ったら、最初に『正解だ』と感じたものを信じなさい」


※現在、その他各種小手先テクニック、感覚や印象による「マル秘裏技」が蔓延し、これが大手・中小を問わず相当に多くの塾講師の方々、あるいは家庭教師の方々によって指導されています。選択肢の説明が設問の要求に対応しているかどうか、また、選択肢の説明の趣旨自体が正しいかどうかといったごく基本的な検討さえが一切行われず、形式的作業や感覚、印象に依るだけで誰でも簡単、確実に判定できるかのように指導されるので注意が必要です。子どもに未発達な視点を新たに付与するという意味では「テクニック」もまた全否定されるものではありませんが、「読む力」や「考える力」、「獲得する力」の育成、「精度の向上」が念頭に置かれないままにただ形式的な作業に陥ってしまっているという現実が、指導側、生徒側双方に全く認識されていません。

 特に早稲田アカデミーに在籍する生徒さんや、理系の先生が運営されている地域塾等に通っている生徒さんにこのような指導を受けているケースがごく一般的に見受けられます。読解訓練、記述訓練、時間短縮訓練、精度向上訓練などを通して「国語はできて当たり前」という水準に学力を引き上げておかねばならないにもかかわらず、そのままでは不安要素を大きく抱え込んだまま入試本番に突入せざるをえなくなります。また、「制限時間内に問題を解き終えるためには本文を通読していては間に合わない」と指導されることも当該塾では一般であるため、本来の速読力のみならず、全体視点や複眼的把握力が備わらないままになるリスクも解消しません。このような簡単な方法で国語の読解問題が解決するのであれば、国語に苦労する子どもたちは世に存在しないはずですが、現実にはそうなっていません。

 さらにまた、これも例年のことなのですが、早稲田アカデミーに在籍する生徒の保護者様のお話によれば、秋の保護者会などで、国語科の主導的立場にある方から、「この時期になって国語の成績が伸びなければもう伸びることはない。国語は一切捨てて算数に注力するように」と指示されるとのことです。訓練期間は確かに個人差がありますが、適切な訓練を積むことで子どもの「国語力の育成・向上」、「時間短縮」や「精度向上」は十分可能であると断言します。秋の時点での成績が受験結果の全てを決定しているわけではなく、むしろ秋からこそ子どもの本質的な実力を向上させる絶好の機会であるとも断言します。
※トップページ内『お子様が早稲田アカデミーに通われている保護者さまへ』をご参照ください。


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・添付画像も本来当方が素材サイトよりダウンロードし、掲載したものです。※俳句の通釈:「は行」

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■作成:2010年(平成22年)11月30日
■追補・加筆・修正:随時