中学受験専門 国語プロ家庭教師(東京23区・千葉北西部)

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■選択問題の判別法

・選択肢の判別問題において、解答者を誤答に誘導するために作問者がよく用いる手法の一覧です。子どもたちは大人が当然備えているような様々な視点や検討力が未発達です。そのため、塾講師や家庭教師は子どもたちの未発達な能力を育成すべく、また、新たな視点を付与すべく様々な技術を工夫して指導しています。以下の手法を見抜くことで選択問題の全てが解決するというわけではありませんが、子どもたちに新たな視点を付与し、検討力を培うという意味で、一つの参考としていただければと思います。また、子どもたちにとっては、本文内容との十分な照合・検討の訓練を継続的に行い、正確な判断と解決が迅速に行えるよう、普段から本質的な学習を積み重ねてゆくことが大切です。

       

・これまでに当方が担当した生徒たちによると、国語の選択問題については塾講師や家庭教師から、「選択肢の各文を前半と後半とに分け、前半を棒線で消し、後半や文末に書かれた内容のみで判断しなさい」、「選択肢に書かれてある文を二~三の部分に分け、それぞれの部分が本文の内容に一致すれば正解である」といった機械的な判別法や、「『言い過ぎ』であったり『大げさ』であったりすると感じられるものは除外しなさい」、「残った二つのうち、『強い』と感じられるほうを選びなさい」、「『真面目な印象』、『明るい印象』を与える選択肢を選びなさい」といった感覚や印象による判別法が指導されているというケースが相当の割合でありました。

中学受験を特に専門としているプロの指導者にはそのような手法を真面目に教授する人は多くありませんが、そうした指導を受けている生徒たちを当方が受け持つことになった際に共通して感じるのは、「自分の頭を使って文章を読むための訓練を受けていない」、「自分自身の能力を発揮して問題を解決しようという姿勢が感じられない」、「楽な方法によれば問題が解決すると信じ込まされている」、「行き詰まるとすぐに安直な手法に逃げる」、といった傾向が強いことです。「本文を通読してはならない」と教わっている生徒もまた相当の割合でおり、そうしたケースに当たる度に、子どもの問題解決力や潜在力の育成が極端に阻害されているという実感を強く持たされます。

かつて、当方の生徒の中に「私は作問者と戦うつもりで問題に当たっています」と力強く言い切る者がいましたが、そのように直接には表現せずとも、その取り組みに「戦う姿勢」が示されている子どもたちと、逆に解決姿勢が強くなく、しかも楽な道に逃げて済まそうとする子どもたちとを比較してみると、大げさな表現にはなりますが、その姿勢にはその時の子どもの「生き方」がそのまま反映しているようにも思えます。

中学受験を目指す小学生のみなさんは、思考したり苦闘したりせずとも楽に、そして簡易にあらゆる夢を叶えてくれる「魔法の杖」の存在を信じて安直に飛びついてしまうのではなく、また、大人に自分の成長を任せきるのでもなく、直面した問題を一つひとつ、自身の持てる力を発揮して解決してゆく姿勢、自分自身を育てる姿勢、自分の人生を自分の力で築き上げていく姿勢を忘れないで学習に取り組んでほしいと思います。中学受験は、君たちが、君たち自身の人生における、その生き方を学ぶ場でもあるのですから。

       

本項とは別件ですが、「就」の正しい字形について、第11画を「飛び出すのが正しい」と指導される先生がここ10年ほどの間に大分減ったように見受けられますが、現在でもまだ同様に指導されている先生がいらっしゃるようですので、以下のページを是非ご参照ください。(2019年1月21日追記)

「就」の正しい字形について



ごく基本的な論理のおさらい

どちらが論理的でしょうか?

 (1) (a)クモは8本足である。(b)コガネグモはクモである。
    (c)だから、コガネグモは8本足である。

 (2) (a)クモは8本足である。(b)蝶はクモではない。
    (c)だから、蝶は8本足ではない。

■(1)について… 「前提(a)」と「前提(b)」のどちらもが正しいと認めた場合、「結論(c)」は正しく、論理的に正しい推論である。

「前提(a)」と「前提(b)」によって、クモという生き物の中にコガネグモという種類のクモが含まれていることがさらに前提となり、その結果、「コガネグモもまた8本足のクモである」とう結論が導き出せ、論理に矛盾は起きない。

 (2)について… 「前提(a)」と「前提(b)」のどちらもが正しいと認めても、「結論(c)」は正しいとは言えない。

前提(a)と(b)は「クモ以外に8本足の生き物は存在しない」ことを意味していない。つまり、クモ以外にも8本足の生き物が存在する可能性を示唆している。そうであるならば、特別な条件でも無い限りは「そこに蝶も含まれる」可能性が否定されないのだから(つまり「8本足のチョウがいる」可能性を示しているということ)、それを前提とすれば、結論(c)のように「蝶は8本足ではない」とは必ずしも言い切れないことになる。

よって(2)の場合、「結論(c)」を導くためには(a)と(b)はともに前提として不完全であり、そのためこの推論は正しいとは言えない。


選択肢の判別法

※以下の判別法によって全ての選択問題が解決するわけではありません。視点や検討力が未発達な子どもたちに提示できる、ものごとを多角的、総合的に捉える際の視点の例としてご参考ください。

(1)論外
・明らかに本文の内容や設問の要求から外れるため、比較的除外しやすい。ただし、(2)の「カモフラージュ(偽装)」による正解肢を誤って「論外」として除外してしまうことのないよう注意しよう

(2)カモフラージュ(偽装)
・文中語句を敢えて使用せずに言い換えたり、抽象化したり、あるいは一歩踏み込んだ説明をしたりすることで、正解でありながら正解と判断されないようにしてある。消去法のみに依存して十分な検討をせずに解答を判断する受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、(1)の「論外」として早々に除外してしまいやすいので特に注意が必要。普段から「抽象化」や「言い換え」の視点と技術とを持って読解学習や記述学習に取り組もう。判別難度が高く、正答率を下げるのに効果的な手法。

(3)暗黙の前提(偽装)
・本文には直接表現されてはいないが、筆者(作者・登場人物)が「暗黙の前提」としている事柄をもとに説明がなされている。正解でありながら、まさかと思うような内容の説明となる場合があるため、明らかな誤りとして早々に除外してしまう恐れがある。本文の内容における「暗黙の前提」を踏まえないまま、しかも消去法のみに依存して解答を判断する受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。本文の内容把握がしっかりとできるよう、本質的な訓練を積んでおこう。判別難度が高く、正答率を下げるのに効果的な手法。(2)の「カモフラージュ」の一種。

※前提:論理の土台となる客観的事実

(4)断定表現(偽装)
・「『断定的』な表現や『限定的』な表現のある選択肢は選ぶな」といった機械的判別法を指導されている受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手に取り、「絶対に」、「決して」、「必ず」、「常に」といった断定表現や、「だけ」、「のみ」、「しか」等の限定表現を敢えて用い、正解でありながら正解と判断されないようにしてある。(2)の「カモフラージュ」の一種。

(5)誇大表現(偽装)
・「『大げさ』な表現や『極端』な表現、あるいは『言い過ぎ』と言えるような選択肢は選ぶな」といった印象による判別法を指導されている受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手に取り、敢えて誇大な印象を与えるような表現で説明し、正解でありながら正解と判断されないようにしてある。(2)の「カモフラージュ」の一種。

(6)対比表現(偽装)
・筆者や作者、登場人物の考え方や表現を使用せずに、それと対比される人物の考え方や表現を利用して筆者(作者・登場人物)の考え方を説明してある。筆者や作者、登場人物の考えに注目するだけでなく、それと対比される考え方にもしっかりと目を向けるようにしよう。(2)の「カモフラージュ」の一種。

(7)要素不足
・説明が完結するために必要な要素が一部不足している。不足に気づかれないよう、表現や内容を微妙に調整してあることが多いので注意が必要。また、必要な要素が全て含まれていても説明の趣旨や文脈がねじれていたり、論理構造が正しくなければ正解とはならないので、単眼的な視点で「要素の有無やその正否」にのみ注目するのではなく、「選択肢に書かれてある説明文の読解」もしっかりとできるように訓練しておこう。

(8)虚偽要素の付加
・説明が完結するために必要な要素が全て含まれているが、それに加え、誤った要素を忍ばせてある。不要な要素が「出来事」なのか「心情」なのか、あるいはそれ以外のものなのか、さまざまな視点を持って総合的に検討、判断できるようにしよう。

(9)趣旨のねじり
・説明の意味内容を微妙に変えて説明してある。選択肢の説明について、部分的な要素にしか目が向かず、趣旨や文脈そのものを正確に捉えられない受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。必要な要素が全て含まれていても、その説明が正しい趣旨や文脈となっているかどうか、「選択肢に書かれてある説明文の読解」もしっかりとできるよう訓練しておこう。

(10)視点違い
・本文の内容とは「異なる視点」での要素が含まれていたり、説明そのものが「視点違い」となっていたりする。本文における筆者(作者・登場人物)の「視点」と、選択肢の説明における「視点」とをしっかりと照合、検討できるよう訓練しておこう。

(11)方向違い
・設問の要求に対し、異なった方向性での考え方が説明されている。「設問の要求」を正しく把握せず、『思考の方向』を正しく定めぬままに解答を判断する受験生が相当に存在することを作問者は心得ている見当違いの方向で思考して迷路にはまらぬよう、設問の要求を正しく把握し、正しく方向付けて思考する訓練を積んでおこう。

(12)論点のすり替え
・設問で要求されている論点とは異なる別の論点にすり替えて説明してある。論点は異なるが説明内容自体は否定できないため、非常に紛らわしくなる。何を「論点」としているかを正確に把握し、そのうえで正しく方向付けて思考できるよう訓練しておこう。

※論点:議論の中心となる問題点。

(13)矛盾
・筋道を踏んだ論理的な説明がなされてはいるが、本文内容と食い違った結論が導き出されていたり、あるいは、結論は正しいが筋道そのものに矛盾があったりし、論理的に整合しない。読解学習においては、まず「情報(事実)」を収集し、「その情報を突き合わせ(総合)」、「筋道を立てて(論理構築)」、「結論を導く」というプロセスを踏んだ読解学習をしっかりと積み重ねておこう。

(14)飛躍
・正しい筋道を飛び越えた内容の説明がされている。論理上の飛躍の度合いが小さい場合や大きい場合など、さまざまに調整してある。断片的な情報にしか注意が向かず、本文を単眼的にしか捉えられない受験生や、思い込みの強い受験生等を簡単に誤答に誘導できるため、しばしば用いられる手法。本文の内容や論理構造の正確な把握を大前提としたうえで選択肢の検討を行うよう習慣づけよう。

(15)飛躍意志
・筆者の考えや本文の内容、あるいは登場人物の気持ちや考えに沿わない「意志表現」で説明してある。「絆を結ぼと…・仲直りしようと…」というように、表現にさり気なく組み込まれている「う・よう・まい」などの「意志を表す助動詞」が使用されている場合が多いが、「たい・たがる」などの「希望を表す助動詞」が使用されている場合があるので注意。さらには、以上のような助動詞を敢えて使用せず、飛躍に気づかれないよう、例えば「~するために・~目的で」といった「意志を前提とした表現や文脈」によって調整してある場合もある。「筆者、あるいは登場人物はそのような意志(希望)までは抱いていない」と見抜けるよう、本文の内容を客観的に、かつ正確に把握する訓練を怠りなく。(14)の「飛躍」の一種。

(16)二分法
・「仲間ではない」という説明は、必ずしも「敵である」ことだけを意味するとは限らない。にもかかわらず、そのように他の可能性を一切排除し断定的に説明してあるため、解答者の思い込みを誘発させる。(14)の「飛躍」の一種。「白黒思考」ともいう。

(17)推定妥当
・本文の内容、主題や要旨を踏まえたうえで、推論としてありうる範囲の事柄が「断定的に」説明されている。本文には直接書かれていなくとも、主題や要旨、展開等を踏まえると論理的には推断が可能なため、(1)の「論外」、(14)の「飛躍」と判断して消去してしまわないよう注意しよう。

(18)形式的説明
・上辺をなぞっただけの表面的、あるいは形式的な説明がなされているのみで、設問の要求に対する本質的な説明がなされていない。「これは表面的、形式的な捉え方に過ぎず、本質的な説明にまで踏み込んでいない」といった判断ができるよう、普段から一つ踏み込んで考え、検討する力を養っておこう。

(19)主観的説明
・本文の内容に沿った客観的な説明とは別に、無関係な主観的説明が設定してある。客観的な視点による把握力が未発達な受験生を簡単に誘導できるため、普段から本質的な読解学習に取り組み、「この説明は不特定他者の主観であり、筆者(作者・登場人物)の考えとは無関係である」と見抜けるようになろう。

※主観:自分(その人)だけの考え。

(20)一般論
・本文の内容や主題・要旨に沿わない、無関係な一般論的な説明が書かれてある。説明内容自体は「一般論として正しい」ために否定できず、判断に迷いやすい。「これは単に一般論であって、本文の内容とは無関係である」と見抜けるように、両者を明確に区別する視点を備えよう。

※一般論:広く世間一般に認められると考えられる論。

(21)常識・道徳論
・選択肢に「常識や道徳」に関わる説明が記述されている。道徳的・倫理的・常識的に正しい事柄に対しては否定しづらく、逆に道徳的・倫理的・常識的にふさわしくない事柄に対しては肯定しづらい一般の心理的傾向を作為的に利用しているので注意が必要。「常識的、道徳的にはそのとおりだが、本文の内容とは一致しない」と見抜けるよう、本文内容をあくまで客観的かつ正確に把握する訓練を行ってゆこう。

※常識:社会人として誰もが共通して持っている普通の知識や分別。
※道徳:社会生活を送るうえで、個人が守るべき規範。人が踏み行うべき正しい道。

(22)精神論・生き方論
・「がんばる・努力する・やる気を出す・気合を入れる・根性で・くじけない・あきらめない・力を出し切る・力いっぱい・全力で・一生懸命に取り組む・自分を信じる・自分に打ち勝つ・自分自身に向き合う・困難に向き合う・困難を乗り越える・現実に向き合う・現実を受け入れる・前向きに生きる・一瞬一瞬を大切に・生き甲斐・成長をとげる・自分を大切にする・自分に正直に生きる・自分らしくありのままに生きる」のように、精神力によればいかなる障害も克服できるとする「精神論」や、「人間の生き方・生きる姿勢」に通ずる表現を敢えて誤答に使用し、解答者を誘導する。本文の内容把握が不十分だと印象につられて誘導されてしまう恐れがあるので注意しよう。

(23)同義反復(循環論法)
・「世界平和のためにはどのような社会にすべきだと筆者は考えていますか」という問いに対し、「戦争の起きない社会にすべきである」といった一見もっともらしい説明が書かれてある。しかし、これは、「戦争が起きない社会を実現するためには、戦争が起きない社会を実現する必要がある」と言っているのと同じことなので、実は設問の要求に対する本質的な説明が全くなされていない。オウム返しをするように設問の内容がそのまま選択肢において無意味に繰り返されていないかどうかを見抜く視点を備えておこう

※「善人は善い人だ」「雨が降る日は天気が悪い」のように同義語を無意味に繰り返すことを「同義反復」、「同語反復」、「類語反復」等という。
※また、「彼は勤勉だ(結論)。なぜなら、彼は真面目だからだ(根拠)。」は、「彼は真面目だ(結論)。なぜなら、彼は勤勉だからだ(根拠)。」と同じ意味であり、このように「結論と根拠が単純に循環し、証明とならない」論法を「循環論法」という。

(24)展開無視
・展開把握力を見る狙いがある。本文を通読しないために本文の展開や構成を把握せず、問われている箇所の前部だけ、あるいは前後近辺の情報を単眼的に捉えて解答を判断する受験生が相当に存在することを作問者は心得ている視野を広げ、「全体視点」も同時に働かせながら「展開や構成・変化」を把握できるよう訓練しておこう。

(25)因果の逆転
・「原因や理由となる内容」と「結果となる内容」とを逆転させて説明してある。本文での「論理構造」や「因果関係」を正しく踏まえずに解答を判断する受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。必要な要素が全て含まれていても、因果関係が逆転していては正当な説明が成立しない。本文全体、および細部での論理構造や因果関係をしっかりと踏まえ、また、速やかに照合、検討する訓練を積んでおかないと瞬時には「逆転」に気づかないので十分に注意しよう。

(26)前提のすり替え
・「前提」となる事柄(大もととなる客観的事実)をわざとすり替えたうえで説明してある。前提内容が本文の内容に一致しないにもかかわらず、「偽装論理」により説明自体はいかにも正当であるかのような内容となっているため、非常に紛らわしくなる。「本文を通読せずに、問われている箇所の前後数行の内容から解答を判断する」といった安直な方法に依存し、本文内容を十分に踏まえないまま解答を判断する受験生が相当に存在することを作問者は心得ている「この説明は前提内容が本文と一致せず、すり替えられている」と見抜けるよう、これを新たな視点として備えるべく、論理的思考力をしっかりと培ってゆこう。読解学習において論理的に思考する訓練が不足し、センスに依存して対応する傾向の強い受験生を簡単に惑わすことができるため、しばしば用いられる手法。

(27)架空論法
・筆者の主張や本文の内容をわざとゆがめて引用し、それを「前提」とした論理構成によりいかにも正しい説明であるかのように見せかけてある。「ゆがめられた前提」により「偽装論理」が成立しているため、非常に紛らわしくなる。問われている箇所の前後に書かれてある断片的な情報だけをもとに解答を判断せず、本文全体から読み取った「前提内容」が揺らがぬように、論理的思考力をしっかりと培ってゆこう。(26)の「前提のすりかえ」の一種。

(28)人物像のすり替え
・登場人物や作者・筆者の人物像・性格などを微妙にすり替えたうえで説明してある。「この説明は登場人物(あるいは筆者や作者)の人物像とは異なり、別の人物像を前提としている」と見抜けるよう、本文全体を通して「人物像の正確な把握」をしっかりと行おう。(26)の「前提のすりかえ」の一種。

(29)主語のすり替え
・説明自体の方向性は正しいようだが、説明における主語が別のものにすり替わっている。主語と述語の係り受けをほとんど意識せずに文章を読んでいる受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。平常より主語と述語の係り受けをよく意識して読み、書き、話す習慣を持とう

(30)語意のすり替え
「中途半端」と「いい加減」、「真面目」と「素直・正直」、「信頼が揺らぐ」と「信頼が失われる」など、印象的には同種の範囲に含まれるが、本文で読み取れる内容とは合わない意味を持つほうの言葉にさり気なくすり替えられている。普段の言語生活において、言葉を感覚的にのみ捉えていると、語意の違いやニュアンスに気づかず誤答に誘導されてしまうので注意。国語辞典を用いてその語の辞書的な意味、用法を確認するなど、言葉に関わる取り組みや言語生活への姿勢をもう一度見直してみよう

※国語辞典を使用して言葉の意味を調べる際には、意味が分からない言葉があったら何も考えずに即座に辞書を引くのではなく、まずはその言葉に用いられている言葉や漢字、文脈を手掛かりに、また、語感やそれまでの生活体験からくる知識等にも照らし、自分なりに意味を推定し、そのうえで本来の正しい意味を確認するという手順を踏むほうがよい。そして、その言葉を単に知識事項として確認して済ますのではなく、今後自分が生きていくうえで使いこなしていく言葉の一つとして、あるいは、「自分」というものを作り上げていくための大切な要素の一つとしてしっかりと採り入れていく姿勢を忘れないことが大切。

(31)なりすまし
・「なぜですか」という「理由説明を求める問題」でありながら、問われている箇所の表現を単純に別表現に改めてあるだけ、あるいは、問われている箇所の意味内容を詳しく説明してあるだけで、設問の要求である「理由」については何も答えていない。「どういうことですか」、あるいは「線部内容についての説明として正しいものを一つ選びなさい」といった「内容説明を求める問題」と勘違いして選んでしまいやすいので注意。また、逆に「内容説明」を求める問題でありながら、その説明内容が「理由」に相当する内容にすり替わっている場合もあることも念頭に置く必要がある。設問の要求を正確に把握し、方向付けて思考し、解決してゆく訓練をしっかりと積んでおこう。

(32)虚偽の換言
・「不思議な出来事」、「未知の経験」といった漠然とした意味の表現を利用し、いかにも本文の内容に沿った的確な抽象化がなされたように、あるいは、正しく言い換えられたように見せかけ、誤答に誘導する。選択肢の説明において「抽象化」や「言い換え」がなされている場合、それが本文の内容と一致する的確な表現であるかどうか、あるいは、不適当な言葉にすり替えられていないかどうかを検討する視点を備えよう。

(33)つまみ食い(限定的一致)
・筆者、あるいは作者が挙げた具体例や話題、登場人物の言動など一部の内容を取り上げ、それが設問の要求に沿った筆者(作者・登場人物)の中心思想に通ずるかのように見せかけてある。本文の内容から外れるわけではないために否定できず、判断に迷いやすい。本文から得られる種々の情報を整理し、「重要性の度合い」にも目を向けよう

(34)価値要素
・「正しい・誤っている」、「良い・悪い」、「好ましい・好ましくない」、「素晴らしい・最低だ」等のような「価値」を視点とした説明がなされている。筆者(作者・登場人物)は何に「価値」を置いているのか、あるいはそもそも「価値的要素」が読み取れるのかどうかを正確に把握しておかないと、価値の見方を誤ったり、あるいは正解であるにもかかわらず「言い過ぎだからダメ」、「大げさだからダメ」というように単に印象によって誘導されてしまう恐れがあるので注意しよう

(35)印象操作
・例えば、「海」は「広い、大きい、深い、穏やか、静か、荒々しい」といった様々な様相を現実に示し、一般にそのようにイメージもしやすい情景であるが、それが例えば「海のような」と本文中に比喩として用いられた場合に、選択肢の説明において、本文の内容とは無関係に、単に「良い印象を与える説明」として利用されていたり、「一般的なイメージ」として利用されていたりする。「暗い印象の選択肢は選ぶな」、「自然な印象を与える選択肢を選べ」、「真面目な印象を与える選択肢を選べ」といった「印象による判別法」を指導されている受験生が相当に存在することを作問者は心得ている表現から受ける印象につられず、本文の内容、あるいは筆者(作者・登場人物)の主張や考えに沿った正確な説明が判別できるよう、照合と検討とを徹底しよう

(36)指示語の罠
・問われている箇所に指示語が含まれている問題においては、その指示語の指し示す内容を正確に把握したうえでないと正しい選択肢を絞り込めないが、解答者が取り違えやすい部分を敢えて選んで選択肢の説明に含めてある。「指示語の指し示す内容は常にその直前にある」という思い込みにより、前後の文脈を確かめずに機械的に処理してしまう受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。線部等、問われている箇所に指示語が含まれている場合は、それを含む一文に加え、その前後数行をも含め、「文と文の論理的連関」、つまり「文脈」を把握し、そのうえで設問の要求に沿って正確に方向付けて思考できるように訓練しておこう。

・例題(一般的な指示語の問題):
「人間などの陸にすむほ乳類の体液には、わずかな塩分がふくまれているが、海水に比べるとその濃度ははるかに低い。だから、もし海水を飲むと、逆にのどがかわいてしまう。」
・問い:「その濃度」とは何の濃度か。ア:海水の濃度 イ:陸にすむほ乳類の体液の濃度 ウ:塩分をふくまない水の濃度 エ:塩分の濃度 オ:海にすむ生物の体液の濃度 ※正解は本項末尾

(37)フェイク(にせもの)
・本文から一部をそっくり引用してあるだけで、実は設問の要求には全く対応していない。少し冷静に考えれば判別もさほど難しくないので、本文に書いてあるから」という単純な理由で選択したり、「線部の直前・直後に書かれてある事柄にしか注意が向かないといったことのないよう、積極的に本質的な読解学習に取り組んでゆこう。

(38)釣り
・語句の意味を問う問題において、「文脈的・印象的」には馴染みそうであるが、実は「辞書的」には存在しない意味を選択肢に設定してある。小学生の国語や言葉に対する関わり方や普段の言語生活、語感、感性、推定力といったものが試される。また、「適当」や「結構」のように、用法によって意味がさまざまに異なる言葉についても、その選択には注意が必要。言葉の「辞書的な意味合い」や、言葉の「生きた使われ方」に馴染んでいないと的確な判断が困難になるので、普段から厭わずに国語辞典を引く習慣をもち、文章に慣れ親しみ、人と人との言葉によるコミュニケーションを大事にして生活しよう。同時にまた、自分の考えをしっかりと持ち、それを他者に対してしっかりと正確に「伝える力」が、今、社会で強く求められていることも忘れないこと。

(39)曖昧(あいまい)説明
・説明内容を曖昧にしたり、焦点をぼかした説明にすることで判断を紛らわしくし、解答者の思考を混乱させる狙いがある。検討に時間を取られる恐れがあるため、普段から選択肢の説明文を正確に読み分ける訓練を積んでおこう

(40)混乱術
・複雑な説明によって正当な説明がなされているように思えるが、実は論理構造や内容がまったくのでたらめである。解答者の思考を混乱させる意図がある。本文全体、および細部での論理構造の照合・確認が確実に行われていないと確認作業に手間取り、時間配分が狂わされてしまう。また、そのために解答者の動揺を生む恐れもあるので注意が必要。

※その他:上記手法のいくつかが複合されている場合がある。

※(36)の問いの答え:大人にはごく自然に把握できる文脈だが、小学生の場合は単眼的・機械的な捉え方により論理に矛盾が起きても気づかない傾向が強い。①「人間などの陸にすむほ乳類の体液には塩分がふくまれている。」、②「海水にも塩分がふくまれている。」、③「『塩分の濃度』という「同質のもの」を基準として比較した場合、①のほうがはるかに低い。」、④「海水を飲むと、ほ乳類の体液にふくまれる塩分濃度が上昇する」、⑤「その結果、『のどがかわく』という現象が起きる。」という文脈。小学6年生の正答率は5%以下。正解はエ。

小手先テクニック・感覚判定法の例

当方が指導を担当する生徒たちの中で、毎年少なくともその3~4名から、国語の選択問題は以下に挙げたような方法で解決するよう塾の先生や家庭教師から指導されたという話を必ず聞かされます。読解を前提としない機械的判別法や、感覚や印象によって解決を導く「小手先テクニック」と呼ばれる合理性の無い手法ですが、作問者はこのような手法によって選択肢の判定を行う受験生が相当に存在することを承知のうえで作問していることを念頭に置いて学習する必要があります。

(1)「選択肢に書かれてある説明を前半と後半とに分け、前半を棒線で消し、後半の内容のみを比較して判断しなさい」
(2)「短い説明のものは選んではいけない。具体的な内容で、しかも説明が長めの選択肢を選びなさい」
(3)「極端に長い説明や、極端に短い説明のものは選んではいけない」
(4)「いかにも立派なことがらや正論が書かれているものは選んではいけない」
(5)「少しピントが外れた説明がされているものが正解」
(6)「『断定的な表現』がされているものは選んではいけない」
(7)「傍線部に最も近い部分の説明を利用した選択肢は選んではいけない」
(8)「『音の似た語』が使用されている二つの選択肢を探して、どちらか一つを選びなさい」
(9)「本文中のキーワードが使用されていない説明の選択肢は選んではいけない」
(10)「二つの相反する説明があったら、どちらか一方が必ず正解である」
(11)「五択であれば1番目と5番目を選んではいけない。四択であれば3番目を選びなさい(2番という説もある)」
(12)「選択肢を検討する際、『大げさ』と感じるもの、『言い過ぎ』と感じるものは選んではいけない」
(13)「選択問題で直感力を最大限に発揮できるよう、普段からしっかりと鍛えておきなさい」
(14)「『暗い印象』の説明が書かれた選択肢は選んではいけない」
(15)「プラスイメージとマイナスイメージに分け、設問の方向性に合うほうを選びなさい」
(16)「選択肢の説明を本文の中に当てはめた時、『自然な印象』を与えるものを選びなさい」
(17)「作問者が一番最初に作った選択肢が正解なので、それを推定して答えなさい」
(18)「選択肢で最後に迷ったら、『比較的地味な説明』のほうを選びなさい」
(19)「選択肢で最後に迷ったら、『後のほう』の選択肢を選びなさい」
(20)「選択肢で最後に迷ったら、『正しそうに見えない説明』のほうが正解である可能性が高い」
(21)「選択肢で最後に迷ったら、『強い』と感じるものを選びなさい」
(22)「選択肢で最後に迷ったら、『常識的な説明』だと感じるものを選びなさい」
(23)「選択肢で最後に迷ったら、『まじめな印象を与える説明』のものを選びなさい」
(24)「選択肢で最後に迷ったら、『まじめすぎる印象を与える説明』のものは選んではいけない」
(25)「選択肢で最後に迷ったら、『穏やかな印象を与える説明』のものを選びなさい」
(26)「選択肢で最後に迷ったら、『正解だ』と思えるほうを信じなさい」
(27)「選択肢で最後に迷ったら、最初に『正解だ』と感じたものを信じなさい」


※現在、その他各種小手先テクニック、感覚や印象による「マル秘裏技」が蔓延し、これが大手・中小を問わず相当に多くの塾講師の方々、あるいは家庭教師の方々によって指導されています。選択肢の説明が設問の要求に対応しているかどうか、また、選択肢の説明の趣旨自体が正しいかどうかといったごく基本的な検討さえが一切行われず、形式的作業や感覚、印象に依るだけで誰でも簡単、確実に判定できるかのように指導されるので注意が必要です。子どもに未発達な視点を新たに付与し育成するという意味では「テクニック」もまた全否定されるものではありませんが、「読む力」や「考える力」、「獲得する力」の育成、「精度の向上」が念頭に置かれないままにただ形式的な作業に陥ってしまっているという弊害が、指導側、生徒側双方に全く認識されていません。

特に早稲田アカデミーに在籍する生徒さんや、理系の先生が運営されている地域塾等に通っている生徒さんにこのような指導を受けているケースが相当多く見受けられます。読解訓練、記述訓練、時間短縮訓練、精度向上訓練などを通して「国語はできて当たり前」という水準に学力を引き上げておかねばならないにもかかわらず、そのままでは不安要素を大きく抱え込んだまま入試本番に突入せざるをえなくなります。また、「制限時間内に問題を解き終えるためには本文を通読していては間に合わない」と指導されることも当該塾では一般であるため、本来の速読力のみならず、全体視点や複眼的把握力が備わらないままになるリスクも解消しません。このような簡単な方法で国語の読解問題が解決するのであれば、国語に苦労する子どもたちは世に存在しないはずですが、現実にはそうなっていません。

さらにまた、これも例年のことなのですが、早稲田アカデミーに在籍する生徒の保護者様のお話によれば、秋の保護者会などで、国語科の主導的立場にある方から、「この時期になって国語の成績が伸びなければもう伸びることはない。国語は一切捨てて算数に注力するように」と指示されるとのことです。訓練期間は確かに個人差がありますが、適切な訓練を積むことで子どもの「国語力の育成・向上」、「時間短縮」や「精度向上」は十分可能であると断言します。秋の時点での成績が受験結果の全てを決定しているわけではなく、むしろ秋からこそ子どもの本質的な実力を向上させる絶好の機会であるとも断言します。
※トップページ内『お子様が早稲田アカデミーに通われている保護者さまへ』をご参照ください。

■作成:2010年(平成22年)11月30日