中学受験専門 国語プロ家庭教師(東京23区・千葉北西部)

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■【国語 選択肢の判別 111の視点】

・受験国語の選択問題でよく用いられる手法を、主に論理的アプローチにより111種に分けて整理しました。
※ご注意
:PDF版の随時改訂を優先しているため、本ページの更新作業は時期が遅れます。最新の内容は冊子(PDF/全60頁)をご確認ください。(本ページ最終更新:2024年3月3日)

『国語 選択肢の判別 111の視点』(全60頁/B4用紙16枚/製本用):無料PDFのダウンロード(2024年4月26日改訂版)
■製本
・両面印刷後、二つ折りにし、ページ順に揃え、回転式ホチキス(100均で入手可能)で「中(なか)とじ」します。
・ホチキスは、背(外側)からノド(内側)に向けて打ちます。また、天地からそれぞれ6~7cmの位置に一か所ずつ打つと冊子が安定します。
■プリンター設定

・B4用紙/印刷の向き(横)/両面印刷/短辺とじ
・B4枚数:全16枚/表紙1枚含む
※両面で上下反対に印刷されないよう、テスト印刷をしてください。
記事:正味60ページ(約94,000字)
PDFデータ量:6.74MB
本資料は一見難しい内容に思えるかもしれませんが、大人の助力により、手順を踏んで説明すれば、小学5、6年生にもしっかりと理解させることが可能です。また、内容的に中学生や高校生の学習にも利用できます。
指導用の教材として利用される場合は、「生徒に教材を与えっぱなし」にして済まさず、生徒にとって有効な活用法を考慮願います。


目次

※選択問題で用いられる各種技法について、20年来メモを取りためてきたものを中心に分類、整理しました。
※本ウェブサイト、および各種資料に掲載した内容の剽窃・アイデア盗用・改変使用はやめよう!
※『論理パズル』、および『各種論理(弁証法・類推・仮説形成など)』の記事は、『論理パズルと、各種論理』のページに移動しました。

【基本的な論理】
①三段論法(演繹法) ※図あり
②暗黙の前提
③前提のすり替え
④因果関係
・因果の逆転
⑤矛盾
・自己矛盾
⑥背理法 ※図あり
⑦飛躍(論理的飛躍)
⑧論点のすり替え
⑨帰納法 ※図あり

【選択肢の判別 111の視点】
一般手法

(1)論外
(2)カモフラージュ(カモ/偽装)
(3)ファンタジー💛(お花畑/おとぎの国)
(4)キラキラワード(うっとりワード/キラキラフレーズ)
(5)ホイホイトラップ(撒(ま)き餌(え))
(6)ウソ(違うこと言ってる/デタラメ/でっち上げ)
(7)読み取り不能(ヨミフ/根拠無し/情報無し)
(8)根拠無し(根拠不十分/前提不十分)
(9)意味不明(イミフ/ちょっと何言ってんのかわからない…)
(10)展開無視(ワープ/展開不一致)
(11)視点違い(視点ずれ/よそ見禁止)
(12)論点違い(ロンチ/論点すり替え)
(13)方向違い(崖からバンジー/方向ズレ/見当違い/的外れ/明後日の方向)
(14)要素不足(部品不足/部品落下)
(15)余計(蛇足/異物混入/お邪魔虫)
(16)表面的説明(形式的説明)
(17)主観(どっかの誰かさんの考え)
(18)コピペ(フェイク/ダミー)
(19)直前トラップ(直前に書いてあるもん💛)
(20)真逆(逆のこと言ってる)
(21)誇張(盛ったでしょ)
(22)誇張カモ (言い過ぎ?/大げさ?/極端?)
(23)強調カモ(こそ?/まさに?)
(24)断定(断言/言い切ったな!)
(25)断定カモ (絶対に?/必ず?)
(26)限定(そんだけぇ~💛/限定的一致)
(27)限定カモ(だけ?/のみ?/しか?)
(28)全称(全部が全部!)
(29)全称カモ(全て?/どれも?/みな?)
(30)お楽しみ箱(びっくり箱/気絶フェスティバル)
※視点人物・象徴暗示・比喩(直喩・隠喩・擬人法)・皮肉反語逆説・擬声(音)語・葛藤・両価性・歴史的現在・会話表現・呼称の変化・主観的と客観的・絶対的と相対的、など。

飛躍(論理的飛躍)
(31)飛躍(論理的飛躍)
(32)意志飛躍(そんなつもりないし!)
(33)意志調整(積極度・消極度の調整)
(34)期待・願望飛躍(別に期待してないし/別に願ってないし)
(35)好意飛躍(別に好きってわけじゃないし)
(36)カゼオケ論法(ドミノ論法/連鎖飛躍)
(37)二分法(白黒思考)
(38)矛盾(両立不可能)
(39)拡大解釈(意味広げたでしょ)
(40)単純化(単純な話さ)
*1:無理な一般化(例外は無いのけ?) ※レッテル貼り
*2:逆は必ずしも真ならず(逆立ち飛躍現)
*3:裏返しもまた必ずしも真ならず(AでないならBでない?)

前提操作
(41)前提のすり替え(聞いてないよ!)
(42)暗黙の前提(暗黙の了解)
(43)人物像不一致(人物像のすり替え/あんた誰?)
(44)人物関係のすり替え(関係性が違くね?)
(45)条件トラップ(『条件』作ってみた!)
(46)仮定トラップ(『仮定文』作ってみた!)
(47)因果トラップ(『理由』作ってみた!/イントラ)
(48)基準トラップ(『基準』作ってみた!)
(49)推定妥当(確かにありうる!)
(50)主題違い(要旨違い/主題トラップ)
(51)肯定前提/肯定的信条前提(肯定してたっけ?/肯定的心情だったっけ?)
(52)前向き前提/受け止め前提(前向きだったっけ?)
(53)受け入れ前提/受け止め前提(受け入れてたっけ?/受け止めてたっけ?)
(54)理解前提(理解してたっけ?)
(55)認識前提(認識してたっけ?)
(56)好意前提(好きになってたっけ?)
(57)期待・願望前提(期待してたっけ?/望んでたっけ?)
(58)つまみ食い論法(チェリーピッキング/いいとこ取り)
(59)ダミー論法(わら人形論法/ダミー攻撃/架空論法)※歪曲・曲解
*4:道徳主義トラップ(道徳をダシにせよ!)
*5:自然主義トラップ(自然に倣え!)
*6:新規主義トラップ(新しければいいの?)
*7:伝統主義トラップ(古ければいいワケ?)

偽装論理
(60)因果の逆転
(61)因果要素の倒置
(62)偽装因果(『因果関係』作ってみた!)
(63)無関係(関連性無し/虚偽の関連付け)
(64)踏み込み不足(寸止め/あと一歩)
(65)類比論法(そのたとえは無関係!)
(66)比較トラップ(別に比べてないし!)
(67)価値トラップ(価値判断してないし!)
(68)価値比較(価値と比較の合体!)
(69)同語反復(循環論法/おんなじこと言ってる!/オウム返し) ※循環論法
(70)偽装飛躍(これ正解かよ!)
(71)屁理屈(ああ言えば、こう言う)
*8:前後即因果(祈ったから合格した!)
*9:疑似相関(見せかけの相関)

すり替え一般
(72)主語のすり替え(えっ、マジか!)
(73)心情違い(気持ちが違う)
(74)理由違い(理由のすり替え)
(75)目的違い(目的のすり替え)
(76)対象違い(対象のすり替え)
(77)定義のすり替え(定義ちがくね?)
(78)趣旨違い(脱線/意味違い/意味ズレ)
(79)説明不足(具体性欠如/過度な抽象化/テキトーだな)
(80)語のすり替え
(81)換言トラップ
(82)ぼかし語トラップ(概念語によるはぐらかし) ※概念語
(83)結論違い(ゴール間違えた!)
(84)道筋違い(コース間違えた!)
(85)きっかけ違い
(86)いきさつ違い(経緯違い)
(87)あらすじトラップ
(88)比喩説明不適 ※実在トラップ
(89)暗示・象徴トラップ
(90)事実の主張へのすり替え
(91)具体例照合(落ち着いてあわてろっ💛)
(92)非主要(後回しでよくね?)
(93)一般論(一般論はさておき)
(94)常識・道徳論
(95)迂言(うげん)法
(96)要素倒置(要素不足誤認)
(97)半分ずっこ(ハーフ&ハーフ)
(98)前後同一(ダブり/同語反復/循環論法)
(99)別の事柄の説明(別件の説明/不正流用)
(100)替え玉(身代わり)
(101)偽証トラップ
(102)反対語トラップ
(103)可能性トラップ
(104)回想部の変造(思い出作ってみた!/思い出作り)
(105)語句矮小化(なんか意味弱まった…)
(106)論点矮小化(大した問題かよ!)
(107)成り済まし(偽装理由)
(108)それってあなたの感想ですよね!
*10:論点混在(めまいがするわ)
*11:単純例示
*12:否定不能(消極的肯定)

おびき寄せ(印象操作)
(109)おびき寄せ(コラージュ作品)
(110)おとり(また引っかかったもん💛)
(111)正答もどき(ゴースト/パラレルワールド/トワイライトゾーン/蜃気楼)

心理操作術
①確証バイアス
②初頭効果
③新近効果
④アンカリング(初期値提示誘導)
⑤誤前提暗示 (二分法の罠)
⑥イエス誘導法
⑦事後情報効果
⑧催眠誘導 (トランス誘導/幽体離脱誘導)
⑨ゾンビ効果
⑩サブリミナル効果 (隠し誘導文)

その他
・自己矛盾(→基本的な論理⑤『矛盾』)
・レッテル貼り(→*1『無理な一般化』)
・だって論法(ブーメラン論法)
・悪魔の証明
・疑似相関(見せかけの相関)
・循環論法
・二重語法(曖昧語法)
・ダブルスタンダード(二重基準)


はじめに
・選択問題(択一式問題)において、解答者を誤答に誘導するために作問者がよく用いる手法の一覧です。子どもたちは大人が当然備えているような様々な視点や検討力が未発達です。そのため、塾講師や家庭教師は子どもたちの未発達な能力を育成すべく、また、新たな視点を付与すべく、試行錯誤を重ね、様々な技術を工夫して指導しています。以下の手法を見抜くことで選択問題の全てが解決するというわけではありませんが、子どもたちに新たな視点を付与し、検討力を培うという意味で、一つの参考としていただければと思います。また、子どもたちにとっては、本文内容との十分な照合・検討の訓練を継続的に行い、正確な判断と解決が迅速に行えるよう、普段から本質的な学習を積み重ねてゆくことが大切です。

       

・これまでに当方が担当した生徒たちの話によると、国語における選択問題の解き方については、自分が習っている塾の先生や家庭教師から、「『言い過ぎ』であったり『大げさ』であったりすると感じられるものは除外しなさい」「残った二つのうち、『強い』と感じられるほうを選びなさい」、「『真面目な印象』、『明るい印象』を与える選択肢を選びなさい」「プラス、マイナスの印象の違いで決定せよ」「直感を信じ、普段から直感力を鍛(きた)えておきなさい」といった「感覚や印象による判別法」の他、「『断定表現』や『限定表現』のある選択肢は選ぶな」「『全て・どれも・みな』」のような包括(ほうかつ)表現が使われた選択肢は選ぶな」「選択肢の各文を前半と後半とに分け、前半を棒線で消し、後半や文末に書かれた内容のみで判断しなさい」「選択肢に書かれてある文を二~三の部分に分け、それぞれの部分が本文の内容に一致すれば正解である」といった「機械的な判別法」が指導されてきたというケースが相当数ありました。これは、高校受験や大学受験での指導においても一般のようです。
※消去法について:「(テストや入試では選択肢を検討するための十分な時間が無いため、)消去法によって最後に残った選択肢を(検討抜きに)自動的に正答と判断してよい」と指導されるケースが少なくない。

 「印象や感覚」、あるいは「機械的処理法」に頼って結論を出すというのは、「鉛筆やサイコロを転がして答えを決める」のと違いはありません。作問者もまた、多くの受験生がそのような手法によって国語の問題に当たるよう指導されていることを承知したうえで誤答に誘導しやすいよう工夫を加えながら作問をしています。

 中学受験を特に専門としているプロの指導者にはそのような手法を真面目に教授する人は多くありませんが、そうした指導を受けている生徒たちを見て感じるのは、「自分の頭を使って文章を読むための訓練を受けていない」、「自分自身の能力を発揮して問題を解決しようという姿勢が感じられない」、「国語は簡易な方法によればどんな問題でも解決するものと信じ込まされている」、「行き詰まるとすぐに安直な手法に逃げる」、といった傾向がとても強いことです。

 かつて、当方が担当した生徒の中に、「私は作問者と戦うつもりで問題に当たっています」と力強く言い切る者がいました。問題が解けないことが悔(くや)しい、作問者の仕掛けた罠(わな)にはまるのが悔しい、とその生徒は言い添(そ)えましたが、大人(作問者)の思考力に自分の思考力が及(およ)ばない悔しさと苦悩(くのう)、そして、それを克服(こくふく)してゆくために、一つひとつの問題に真正面から向き合ってゆこうとする11、12歳の子どもなりの気概(きがい)が、私にはひしひしと伝わってきました。

 そのように、「問題に真っ向から向き合う姿勢」や、「自らの能力をもって問題を全力で解決しようという姿勢」が現れている子どもたちと、逆に「問題を直視しようとせず、楽な道に逃げて済まそうとする」子どもたちとを比較してみると、大げさな表現にはなりますが、そこにはその時の子どもの「生き方の姿勢」がそのまま反映しているようにも思えて不安になります。

■中学受験を目指す小学生のみなさんは、中学校側が求めている生徒像がどのようなものかを今一度考え、それをよく心に受け止め、思考したり苦闘したりせずともあらゆる夢を楽に叶(かな)えてくれる「魔法の杖(つえ)」の存在を信じて安易にそれに飛びついてしまうのではなく、また、大人に自分の成長を任せきるのでもなく、「自分で自分を育てる姿勢」、「直面した問題を一つひとつ、自身の持てる力を最大限に発揮して解決してゆく姿勢」、「自分の人生を自分の力で築き上げていく姿勢」の大切さを忘れずにいてください。

 また、中学受験国語は、論理や思考力だけで全ての問題が解決するわけではありません。日がな一日机に向かうばかりでなく、時に外界へと視野を広げ、自然や世の中のさまざまな事象に目を向け、五感を働かせて、触れ、感じ、想像し、考えてみる。そして、人と人との関わりを大切にし、自分の未来にしっかりと目を向け、一つひとつ自分の生き方を見定めてゆくつもりで、自分自身を磨(みが)き、育(はぐく)んでゆく。そうした姿勢こそが、揺(ゆ)るぎない自分という存在の礎(いしずえ)を築き、人間としての幅を広げ、心の豊かさを培(つちか)うための大切な勉強であると言えます。そのことを常に胸の底に置いて、日々の学習に勤(いそし)んでもらいたいと思います。中学受験は、君たちが、君たち自身の人生における、その「生き方を学ぶ場」でもあるのですから。

■作問に携(たずさ)わる方々には、受験生の思考力や分析力、検討力を測る本来の目的に沿(そ)い、その場しのぎの安直な手法や機械的な手法によって容易(たやす)く崩(くず)されないよう、巧(たく)みに工夫を施(ほどこ)してもらいたいと思います。今後、『三択で絞り込みに迷う問題』や『不適切肢を選ぶ問題』、『本文や図表、資料との確実な照合によらねば判断が困難な問題』等を増やすのも一手でしょう。
 また、塾講師や家庭教師の先生方にも、子供たちが論理的な思考力と多角的な検討力とを備え、自分の頭をよく使い、思考作業による判断と結果に確かな手応(てごた)えを得られるよう、精緻(せいち)な工夫を指導に施(ほどこ)してもらいたいと思います。

■以下は多くの小学生(中学受験生)たちが「正攻法」として指導を受けている非本質的な小手先テクニックの事例です。これをしたり顔で伝授する指導者の様子も含め、ご参考に是非動画をご覧になってください。(YOU TUBE)
『文章理解のコツ』テクニックだけで問題を解く方法教えます!(26分)
※多くの小学生(中学受験生)たちがこうした手法を『文章が速く正確に読める魔法のテクニック』として指導を受け続けています。
『センター試験』ズルい選択肢の選び方! 分からなくても答えが出る!(12分)
※こちらも多くの小学生(中学受験生)たちが『印象や感覚、機械的作業だけで解ける魔法のテクニック』として指導され続けています。

       

本項とは別件ですが、「就」の正しい字形について、第11画を「飛び出すのが正しい」と指導される先生がここ10余年の間に大分減ったように見受けられますが、現在でもまだ同様に指導されている先生がいらっしゃるようですので、以下のページを是非ご参照ください。(2019年1月21日追記)

「就」の正しい字形について
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基本的な論理① 三段論法


三段論法とは、「二つの前提」から「一つの結論」を導き出す推論形式で、論理展開の基本とされます。「前提」とは、「結論」を導くための「根拠となる条件」のことです。「前提」は、「論理の土台」となり、因果関係を組み立てるうえでの重要な要素です。
・読解においては、「思考の迷い」や「判断の揺らぎ」を起こさないために、正確な読解に基づいて「前提」をしっかりと固定する必要があります。

①【大前提】で「全体のことがら(一般法則)」を述べます。
 ・クモは8本脚(あし)だ。
②【小前提】で「一部のことがら(個別事例)」を述べます。
 ・コガネグモはクモだ。
③二つの前提を「根拠」として【結論】を導きます。
 ・だから、コガネグモは8本脚だ。

・「大前提」の「クモ」の中にはもともと「コガネグモ」が含まれているわけですから、「大前提の中に既に『結論』が含まれている」という捉え方ができます。

■国語の読解において本文の内容を正しく把握し、把握したその内容を「前提」として各設問に当たる必要がある。普段、部分的な読み方や機械的な読み方に傾注していると、大事な「前提」が踏まえられず、各問いに当たる度に「思考の迷い」や「判断の揺らぎ」を起こしてしまう。正しく「根拠」に基づかず、「感覚」や「推測」、「思い込み」に頼って解答を決めたり、断片的な情報に頼ってばかりいると、いつまで経っても「的確な判断」ができるようにはならない。「前提を把握し、固定する」こと、「筋道を立てて考える」こと、「根拠を構築する」こと、「多角的に検討する」ことの大切さについてよく認識し、「設問の要求」に正しく沿って問題解決に当たれば、選択問題だけでなく、抜き出し問題や記述問題等、その他の形式の問題においても解答精度は自ずと向上してゆくものだ。

基本的な論理② 暗黙の前提

言明されていない前提
・日常の会話等では、「クモは8本脚(あし)だろう。だから、コガネグモだって8本脚なんだね。」と表現しても、特に意思疎通に支障は無い。それは、「コガネグモはクモの一種だ」というもう一つの「前提」が当事者間で暗に「共有」されているためだ。

暗黙の前提:「特に言明せずともわかりきった前提」を「暗黙の前提(暗黙の了解)」という。中学受験国語の読解学習においては、本文の正確な内容把握により、「明示された前提」と「表現の裏にある前提」に加え、「暗黙の前提」の三つをしっかりと押さえることが大切だ。そして、両者を把握(はあく)するうえで大切なのが「本文の通読」であることは言うまでもない。筆者(作者・登場人物)、作問者、受験者との三者間で「前提を合致させておく」必要があるからだ。前提が合致していないと、判断はその都度揺れを起こす。
・また、日常の会話等においては、両者で前提となっている事柄の全てをいちいち確認し合っていては話が進まない。しかし、自分と相手との間で前提が一致していると思い込んで主張を進めてしまうと、「前提の不一致」による水掛け論(両者が自説にこだわって争い、いつまでも結論の出ない議論)に陥(おちい)ったり、齟齬(そご:意見などが食い違うこと)が生じたりして人間関係にまでひびが入ってしまうこともあるので注意しよう。

「暗黙の前提」による結論例
① クジラは海中にすむほ乳類である。
② ほ乳類であるクジラには、「飲み水=塩分を含まない水」が必要だ。
③ 一般に動物は、食べた食物の栄養分が分解される際に水ができる。
④ 特に脂肪を分解する際に多くの水を得ることができる。
⑤ クジラの食物には多量の脂肪分が含まれている。
⑥ クジラの体にもまた、多くの脂肪が蓄えられている。
⑦ よって、「クジラは自らの体内で水を作ることができる」と言える。
⑧ つまり、「人間は、自らの体内で水を作ることができる」ということだ。

・⑦までの文脈により「結論⑧」を導くのは「論理的飛躍」ではないかと思われるが、③にある「動物」には「陸にすむほ乳類である人間」が除外されているわけではない。ただ、小学生の場合、本文が「クジラの飲み水」についての説明文であることに強く引っ張られ、人間を無意識に除外して考えがちである。そこで、③については、「クジラと人間とはすむ環境がまったく異なる『動物』ではあるが、『ほ乳類であるという点で体のしくみが共通しており、体内で水を作るしくみもまた共通している』」と捉え直すことができ、本文で直接にはそのように言明されておらずとも、この内容を「暗黙の前提」として⑧の結論を導くことができる。選択問題での選択肢に⑧の説明がある場合、小学生の多くは「暗黙の前提」を捉えられず、この選択肢を消去してしまうため、正解率が極端に低くなる。

基本的な論理③ 前提のすり替え

前提のすり替え
・ある主張(結論)が成り立つための大もととなる「本来の前提」を、「それと一致しない別の前提」に作為(さくい)的に変更したうえで説明を展開することを「前提のすり替え」といいます。

・花子さん:「夏休みの宿題、もう全部終わったし!」(前提:自分は自力で宿題を処理した)
・愛子さん:「先生にバレなきゃいいね!」(前提:花子はズルい手を使って宿題を処理した)
・花子さん:「違うってば! もうっ! 意地悪!」(結論:信頼関係が深まる!)

・「花子さんは実際に自分一人の力で全ての宿題を早く片付ることができた(正しい前提)」のですが、愛子さんはこの「事実=前提」を承知しながら、「花子さんが何かズルい手を使って宿題を早く片付けることができた」という「別の前提」に「わざと変更=すり替え」を行ったうえで、意地悪く応答しました。

◎「前提のすり替え」は、選択問題においても誤答に誘導する手法としてしばしば用いられる。本文を拾(ひろ)い読みしただけでは「前提の誤り」を見抜くことができず、判別を困難にする。本文における「前提」と選択肢の説明における「前提」とが合致しているかどうかを見極められるよう訓練しておこう。

人物像のすり替え
・「
人物像のすり替え」は「前提のすり替え」の一種で、選択問題において誤答に誘導するための手段として用いられることがあります。

・太郎君:「パッパラッパッピ~‼ ホゲホゲ~‼」(前提:ふざけてみただけ)
・次郎君:「今、救急車呼んでやるからな!」(前提:太郎君は体調に異変が起きた人である)
・太郎君:「オレ、ビョーキじゃないし!」(結論:二人はより親密になる!)

・太郎君は、ちょっとおどけて、滑稽(こっけい)な仕草(しぐさ)をしながら唐突に奇声を上げました。次郎君は、それが「太郎君による故意の振る舞いであることがわかっていながら=太郎君が健常であるとわかっていながら(前提)」、わざと「太郎君の体調に異変が起きた」という「前提」に「変更=すり替え」て、「医者に診(み)てもらう必要」を訴(うった)えてみせました。
・日常においては、前提をすり替えた発言をわざとすることでユーモラスなジョークになることもあれば、相手を貶(おとし)めたり、責任追及を回避したりするための詭弁(きべん)として用いられることもあります。
※詭弁(きべん):相手を言いくるめるために、無理やりこじつけた論理で都合よく展開する弁論。

基本的な論理④ 因果関係

・ある事柄が「原因」(前提)となり、その「結果」として別の事柄が引き起こされる関係を「因果関係」という。

・太郎君:「この間、歩いていて木に頭をぶつけたよん!(原因)」
・次郎君:「そっか! だから、最近タロちゃんは勉強がよくできるのかあ!(結果)」

・読解学習においては、「原因」と「結果」との間の「関連性や連続性」をしっかりと掴(つか)みながら本文を読もう。また、日常においては、ものごとについて考える際に「論理的矛盾(むじゅん)や論理的飛躍」が起きないよう注意し、何か問題が起きた際には、「結果」から遡(さかのぼ)って「原因(前提)」を探り、確かめ、検討する、という手順を踏んで対処しよう。

因果の逆転:選択問題において、「受験生が多いから、塾が多い」を「塾が多いから、受験生が多い」のように、本文における「本来の因果関係を逆転」させて説明し、誤答への誘導を図る場合がある。「本文中に書かれてあるか、無いか」といった「要素の有無」や、「要素の正否」のみを判断基準にしていると「因果の逆転」に気づかない恐れがあるので注意。

基本的な論理⑤ 矛盾

両立不可能
・昔、中国の楚(そ)の国で、矛(ほこ)と盾(たて)とを売っていた商人が、「この矛は、どんなにかたい盾をも突き通すことができる。また、この盾は、どんなに鋭利な矛であっても突き通すことができない」と言って誇(ほこ)った。すると、見物人が、「では、その矛でその盾を突いたらどうなるか」と問うたところ、商人は返答に窮(きゅう)してしまった。

矛盾:二つの事柄のつじつまが合わないこと。論理的な食い違いがあり、筋が通らないこと。撞着(どうちゃく)ともいう。
・上の例では、「この矛(ほこ)はどんなにかたい盾(たて)をも突き通すことができる」という主張[A]と、「この盾はどんなに鋭利(えいり)な矛であっても突き通すことができない」という主張[B]は、論理的に整合しない。つまり、「A」の主張を「正しい」と認めた場合は「B」の主張が「誤り」となり、逆に「B」の主張を「正しい」と認めた場合は「A」の主張が「誤り」となって、二つの主張を両立させることが不可能なのだ。

自己矛盾①
・花子さん:「この世界に『絶対』と言えるものなど、何一つ無いのだわ!」(何一つ=絶対に
・愛子さん:「『絶対が存在しない』ことが『絶対』だなんて、あんた、言ってること、絶対おかしいわよ」

・花子さんは、「この世界に絶対といえるものは存在しない」と言いつつ、自分のその発言が「絶対のものだ」と主張しているので、その主張は矛盾していると言えます。

自己矛盾②
・太朗君:「『インターネットの情報は信用してはいけない』って、ネット記事にあったよ」
・次郎君:「ということは、『インターネットの情報は信用してはいけない』というネット情報も信用してはいけない、ってことになるね」

自己矛盾:自分自身の考えや言動の中に食い違いが生じ、矛盾すること。自己の言動に自己を否定する要素を含んでいること。自家撞着(じかどうちゃく)ともいう。「あの子、いつも他人の批判ばかりするからダメなのよ(自分自身が『あの子』の批判をしている)」という主張も「自己矛盾の例」として覚えておくとよいだろう。

基本的な論理⑥ 背理法

背理法とは、「背理法」とは、「①:ある主張」について、「②:その主張を否定した仮定」を行い、それにより生じる「③:矛盾」を示すことで「仮定の誤り」を導き、結論として「④:当初の主張が正しい」ことを証明する方法です。ただし、主張(結論)が本当に正しいかどうかは、検証によって証明される必要があります。

①「お母さん、僕、勉強サボってないよ」(主張
②「もし勉強をサボっていたのなら…」(主張を否定した仮定
③「ほら、1時間でこれだけの宿題が終わるはずがないよ」(矛盾の指摘
④「だから、僕は勉強をサボってないよ」(結論=主張

※さぼる:フランス語の「サボタージュ(怠業/たいぎょう)」を語源とし、「怠(なま)ける」という意味で大正時代から使われているが、俗語なので、記述解答やあらたまった場面では使用すべきでない。
※俗語(ぞくご):あらたまった場面では用いられないような、品の無い、くだけた言葉。

・別の例文:①「私は犯人ではない」→②「もし私が犯人なら」→、③「犯行時刻に、犯行現場であるA町にいたはずだ。でも、その時私はB町にいたし、証人もいる」→④「だから、私は犯人ではない」

・上記の例文と図を参考に、下の空欄に背理法を使った簡単な例文を考えてみてください。

①「                              」(主張)
②「                       」(主張を否定した仮定)
③「                           」(矛盾の指摘)
④「                           」 (結論=主張)

記号選択問題での消去例
・「もし『ア』が正しいとすると『▲』という矛盾が生じるので、『ア』は正解ではない」というように選択肢を背理法で消去できる場合があるので、是非練習してみてほしい。

①「空欄Aに選択肢『ア』は入らない」(主張
②「もしAに『ア』が入るなら」 (主張を否定した仮定
③「時間の経過上、文脈が不自然だ」(矛盾の指摘
④「だから、空欄Aに『ア』は入らない」(結論=主張

基本的な論理⑦ 飛躍(論理的飛躍)

論理の飛躍
・論理が正しい手順を追わずに飛び越して進むことを「論理の飛躍」という。「前提」と「結論」との間に隔たりがあり、その因果関係が不明確な場合が多い。一例に過ぎないものを強引に 「一般化 」したり、 「結論 」を導くために必要な 「前提 」が不十分だったり、関連性の無い「前提」をもとに強引に「結論」を導いたりと、「論理的飛躍」は日常的にも起こりやす く、相手との間で齟齬(そご:意見などの食い違い)が生じてしまうこともあるので注意しよう。

①花子はおしゃれだ。(大前提
②花子は女の子だ。(小前提
③だから、女の子はおしゃれだ。(結論

・①と②の「前提」いずれもが正しいとしても、「花子一人の性質」をそのまま「女の子全体の性質」として「一般化」して結論づけてしまうのは、「正しい筋道を踏み越えている」と言える。「花子以外の女の子の性質」を「前提に置かず」に、「女の子というものは皆おしゃれなものだ」と一方的に決めつけているからだ。「一部」に言えることを「全体」の傾向として結論づけるのは、「論理の飛躍」である。

※一般化:一部の事例をもとに、それを普遍的な概念に拡張すること。普遍化。
※抽象化:多くのものごとが共通して持っている性質だけを抜き出し、それらを同類のものごととして捉えること。

◎選択問題では、誤答に誘導するために「論理的飛躍」の手法がしばしば用いられる。思い込みが強かったり結論のみを急いでいたりすると「飛躍」に気づきにくく、判別も困難になる。「前提」と「結論」との間の「関連性・連続性・因果関係」を的確に捉(とら)え、また、「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」といった「可能性の視点」も持って、客観的、総合的に判断しよう。

◎選択肢の説明内容が「『言い過ぎ』、『大げさ』、『極端』だと感じられるものは選ぶな」、「『強い』印象やポジティブな印象を与えるものを選べ」、「『断定表現』や『限定表現』のあるものは選ぶな」、「『弱い』印象やネガティブな印象を与えるものは選ぶな」といった、「印象や感覚に依存(いそん)する手法」や「機械的処理法」が指導されているケースが非常に多く見受けられる。本文の内容(前提)に基づいて論理的に検討し判断するというのではなく、そうした処理法によって解答を判断するというのは、鉛筆やサイコロを転がして解答を決めるのと違いはない

基本的な論理⑧ 論点のすり替え

・論点とは、「議論の中心となる問題点」のこと。論点を意図的に変更することを「論点のすり替え」という。

・花子さん:「愛ちゃん、あんた、約束守ってねって、言ったでしょ!」(正しい論点)
・愛子さん:「ふんっ! 花ちゃんだって約束破ったことあるじゃん!」(別の論点)

・花子さんは「愛子さんが約束を守らなかったこと」を論点として追及(ついきゆう)しているのですが、愛子さんはその論点をかわし、「過去に花子さんが約束を守らなかったこと」を新たな論点として都合よく変更してしまいました。

◎日常においては、特に互いに意見を主張しあう議論の中で、つい論点が逸(そ)れてしまったり、そもそも論点が明確でなかったりといった経験をすることがあるだろう。自分の据(す)えた論点はもとより、相手が「何を論点として主張しているのか」をしっかりと押さえながら、感情に流されず事実に基づいて論理的に主張を展開するよう心掛けよう。
◎また、自分の誤った意見を正当化したり、正しい主張に見せかけたりするための詭弁(きべん)の一種として「論点のすり替え」が用いられることがあるので、議論をする際にはこれも念頭に置いておくとよい。
※詭弁(きべん):誤っていることを、意図的に正しいと思わせるように仕向けた誤魔化(ごまか)しの議論。
◎選択問題においても、誤答に誘導する手法の一つとして「論点のすり替え」がしばしば用いられる。「本文における各所の論点」、「設問における論点」、「各選択肢における論点」について、それぞれをしっかりと押さえ、それを軸(じく)に正しく方向づけて思考しよう。

基本的な論理⑨ 帰納法


三段論法と演繹法(えんえきほう)
・『四谷大塚 第二回 合不合判定テスト(令和二年/2020年7月実施)』、大設問2番にて「演繹法(えんえきほう)と帰納法(きのうほう)について説明された部分を含む素材文が扱われ、その関連問題(100字記述)が出題されました(出典:『日本史でたどるニッポン』本郷和人著)。

「一般法則」をもとにして「個別的結論」を導く推論形式を「演繹法」といいます。ですから、「三段論法」は演繹法の一種です。

演繹法と帰納法(きのうほう)
帰納法とは、「演繹法」とは逆に、「個別事例(複数の具体例)」をもとに「共通点(因果関係)」を見出し、それを「根拠」として「一般法則」を導き出す推論形式です。「一般法則」がスタート地点になるのが「演繹法」で、「一般法則」がゴールになるのが「帰納法」ということです。

【帰納法の例】
・前提①:【個別事例】
A:あの湖にいる白鳥(はくちよう)は、白い。(具体例)
B:その川にいる白鳥も、白い。(具体例)
C:この池にいる白鳥も、白い。(具体例)
・前提②:どれも白鳥だから、白いのだ。【共通点/因果関係】
・結論:(恐らく)全ての白鳥は、白いだろう。【一般法則】

※帰納法では列挙される具体例以外に例外の出現がありうるため、③の「結論」に「恐らく」を付けてあります。もし例外が出現した場合には、帰納法による「結論」は「一般法則」とは言えず、むしろ「論理的飛躍」、もしくは「論理的な誤り」となってしまうからです。実際、ヨーロッパでは「スワン(swan=白鳥)」は白いものだという常識があったのですが、1697年、オーストラリアで「黒いスワン(固有種の黒鳥(コクチョウ)」が発見され、この「帰納推論による仮説」は明確な誤りであったことが判明しました。


◎「A君はハムスターを、Bさんはウサギを、C君は亀を飼っている。みんな、小動物が好きなんだな」のように、日常においても私たちは無意識的に帰納法を用いて推理や推測をしたり、仮説を立てたりして、生活や発想などに役立てています。帰納法は、「既知(きち)の知識」をもとにして「未知の知識」を得るための強力な思考法の一つなのです。
◎以下に、帰納法を使った簡単な例文を自分でも考えてみましょう。(上図の前提②は省略して可)

【具体例:いくつか挙(あ)げる】   (                          )
【抽象化:まとめて捉(とら)え、一般化する】 (                     )

■国語 選択肢の判別 111の視点

■以下の判別法によって全ての選択問題が解決するわけではありません。視点や検討力が未発達な子どもたちに提示できる、ものごとを多角的に検討する際の視点の例としてご参考ください。
■作問に携(たずさ)わる方には、受験生の思考力や分析力、検討力を測る本来の目的に沿(そ)い、その場しのぎの安直な手法、機械的な手法によって容易(たやす)く崩(くず)されないよう、巧(たく)みに工夫を施(ほどこ)してもらいたいと思います。また、塾講師や家庭教師の先生方にも、子供たちが論理的な思考力と多角的な検討力とを備え、自分の頭をよく使い、選択肢の判別結果や思考作業の結果に確かな手応(てごた)えが得られるよう、高度で精緻(せいち)な工夫を指導に施(ほどこ)してもらいたいと思います。
■一つの選択肢に複数の手法が用いられている場合があります。


【一般手法】

★(1)論外
・設問の要求に対し、選択肢の説明における内容が明らかに間違っている。「読み取れない」、「本文の内容に沿(そ)わない」、「嘘(うそ)」、「根拠無し」、「情報無し」、「無関係」、「趣旨違い」、「方向違い」など、比較的除外しやすい。
※「選択肢を全部検討する時間は無いので、消去法によって最後に残った選択肢を正答と判断してよい」と指導されている受験生が少なくないが、各選択肢の吟味(ぎんみ)が不十分だと、(2)「カモフラージュ」や、(42)「暗黙の前提」等、「正解でありながら正解と思えなくする手法」が用いられた正答肢を「確信を持って消去」してしまう恐れがあるので注意が必要。
※「設問で何が要求されているのか」を確かめもせずに、また、「本文を照合せず、記憶に頼(たよ)って選択肢どうしの読み比べだけで判断する」受験生が相当に存在することを作問者が承知のうえで作問していることを忘れてはならない。

★(2)カモフラージュ(カモ/偽装(ぎそう))
・文中語句を敢(あ)えて使用せずに言い換(か)えたり、抽象(ちゆうしよう)化したり、あるいは一歩踏(ふ)み込んだ説明をしたりすることで、「正解でありながら正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある」。十分な検討をせずに、専(もっぱ)ら「印象や感覚」、あるいは「機械的処理法」に頼(たよ)って解答を決める受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。(1)「論外」として早々に除外してしまわぬよう注意しよう。普段から「言い換え」や「抽象化」、「踏み込み理解」の視点を持って読解学習や記述学習に取り組んでおきたい。
※カモフラージュ:偽装(ぎそう)。ある事実を覆(おお)い隠(かく)すために他の体裁(ていさい)を装(よそお)うこと。カムフラージュ。(フランス語)

★(3)ファンタジー💛(お花畑💛/おとぎの国)
・事実に基(もと)づかない空想的な虚構(きょこう)や、都合のよい勝手な解釈や突飛(とっぴ)な解釈が尤(もっと)もらしく述べ立てられている。素材文を「はじめに結論ありき=自分が期待する結論に沿うように都合よく想像しながら読む」のではなく、「事実を踏まえて客観的、論理的に読み、捉(とら)える」習慣を身に付けたい。(1)「論外」の一種。
※ファンタジー:現実にはありえない、幻想(げんそう)的、空想的な世界。
※お花畑:一面に広がるのどかな花畑から連想される、喜びと幸福に満ちあふれ、まばゆく、美しくきらめく愛と光の洪水(こうずい)の中で、うっとりとした気分に浸(ひた)りながら、希望の歌を口ずさみ、舞(ま)い、踊(おど)っては、心地よく安楽に暮らしてゆける、永遠の平和と安息が約束された、素晴らしい夢の世界。また、理想にとらわれて現実を認識することができない人が生きる、夢想や幻想(げんそう)の世界。
※突飛(とっぴ):常識からひどく外れていて、思いがけないさま。

★(4)キラキラワード(うっとり💛ワード/キラキラフレーズ)
・「力の限り(全力で/一生懸命に/精一杯)・決してくじけない(あきらめない)・困難に向き合う(立ち向かう/を乗り越える)・意志を貫(つらぬ)く・信念を貫く・現実に向き合う(を受け入れる)・前向きに生きる・未来を見つめる(切り開く/へと踏(ふ)み出す)・自分を信じる(見つめ直す/大切にする)・自分の可能性を信じる・自分自身に向き合う(打ち勝つ)・自分らしく生きる・自分に正直に生きる・ありのままの自分・一瞬一瞬を大切に・成長をとげる・絆(きずな)を大切に(を結ぶ)・真の友情を育(はぐく)む・心の支えとなる(よりどころとする)・共に支え合う(理解し合う)・手を取り合って(携(たずさ)えて)・心に寄り添(そ)う・生きがいとする・幸福をかみしめる(つかみとる)」などのように、精神力によればいかなる障害も克服(こくふく)できるとする「精神論」や、「人間の生き方・生きる姿勢」に通ずる表現等、情緒(じょうしょ/じょうちょ)や信念に訴(うった)えかける語句を作為(さくい)的に使用して目立たせ、誤答肢に誘導する。美しくキラめくものに幻惑(げんわく)されて正常な判断力を失わないよう注意しよう。(109)「おびき寄せ」の一種。
※幻惑(げんわく):ありもしないことに惑(まど)わされること。

★(5)ホイホイトラップ(撒(ま)き餌(え))
・本文中の「キーワード」や「キーフレーズ」、また、(4)「キラキラワード」や「魅力的・理想的な語句」等を華(はな)やかに散りばめて目立たせ、逆に「正答肢」には「言い換えられた語句」を使用してカモフラージュ(偽装)して誤答肢におびき寄せる。「読む力」や「検討する力」が不足し、目立つ言葉や断片情報にばかり気を取られて感覚的な判断をしがちな受験生が誘導されやすい。自分から喜んで罠(わな)に掛かっていくようなマネが繰り返されぬよう、思考力をしっかりと身に着けよう。「何度も何度もやすやすと同じ手に引っかかりまくり!」でいてはいけない。(109)「おびき寄せ」の一種。
※ホイホイ(と):獲物(えもの)がたやすく、次々と罠(わな)に掛かって来るさまを表す擬態語。
※トラップ:罠(わな)。
※撒き餌(まきえ) :魚や小鳥などをおびき寄せるために、餌(えさ)をまくこと。

★(6)ウソ(違(ちが)うこと言ってる/デタラメ/でっち上げ)
・説明内容そのもの、あるいは説明の一部が完全な虚偽(きよぎ)である。表現や文脈の調整によって、それらしい、説得力のある説明に見せかけてあるので、「本文中のキーワード」につられたり、「説明から受ける印象や感覚」によって安直に判断したり、あるいは、「記憶に頼(たよ)って選択肢の読み比べだけで判断」したりすることのないように。また、単眼的に「要素の有無」や「要素の正否」だけを基準として判断するのも危険。「選択肢の説明の一文一文を読解」し、「多角的に分析・検討」する地道な訓練を継続しよう。(1)「論外」の一種。
※でっち上げ:事実でないことを本当らしく仕立て上げること。捏造(ねつぞう)。

★(7)読み取り不能(ヨミフ/根拠無し/情報無し)
・その説明内容を一切本文から読み取ることができない。ただし、正解でありながら言い換え等により正解と思えなくする(2)「カモフラージュ」や、(42)「暗黙の前提」等の手法が用いられた「正答肢である可能性」も排除してはならない。(1)「論外」の一種。

★(8)根拠(こんきょ)不十分(前提不十分)
・一見、本文の内容に即(そく)した適切な説明に思えるが、その説明全体、もしくは、その説明に含(ふく)まれる一部要素が、「十分な根拠に基(もと)づかずに導かれた内容」となっている。「確かな根拠(前提)に基づく確かな結論」を導く論理的な吟味(ぎんみ)の訓練を徹底しよう。(31)「論理的飛躍」の一種。

・太郎君:「花子と愛子は、やっと仲直りしたようだね」
・次郎君:「二人は絆(きずな)を今以上に深めて、互いに支え合って生きていくのさ」

・次郎君は、花子と愛子二人の間に今後生起するさまざまな状況や変化を前提に置かずに、あるいは、不十分な根拠をもとに、今後の二人の発展的な人生について「飛躍した判断」を下しています。

★(9)意味不明(イミフ/ちょっと何言ってんのか分からない/曖昧(あいまい))
・何が言いたいのか、さっぱり意味がわからない。あるいは、意味内容が曖昧(あいまい)で捉(とら)えにくい。ただし、正解でありながら言い換(か)え等により正解と思えなくする(2)「カモフラージュ」や、(42)「暗黙の前提」等の手法が用いられた「正答肢である可能性」も排除してはならない。(1)「論外」の一種。

★(10)展開無視(ワープ/展開不一致(ふいっち))
・本文における「時系列」、あるいは、「展開や変化」に合致(がつち)しない説明となっている。「制限時間内に全問を解き切るためには本文を通読してはいけない」と指導されている中学受験生は少なくないが、「本文の情報を部分的、断片的に拾(ひろ)い上げていくような読み方」、あるいは、「記憶に頼(たよ)って選択肢の読み比べだけで判断する」、といった「スピード重視・精度犠牲型」の取り組み方を続けていても対処は困難だ。本文全体における「大きな流れ=時系列や展開・変化、構成」等を通読段階でしっかりと掴(つか)み、「この時点ではまだそのような心情を抱(いだ)いていない」、「この時点では以前の主張を修正している」というように、問われている箇所(かしょ)を「基点」として「それ以前に起きたこと(述べられていること)と、それ以後に起きること(述べられていること)」等との連続性や関連性を全体視点で判断できるよう訓練を積んでゆこう。
※展開:時間や筋道に沿って出来事や話が進行していくこと。

★(11)視点違(ちが)い(視点ずれ/よそ見禁止)
・選択肢の説明において、無関係な「視点要素」が組み込まれている。例えば、絵画(かいが)を見るきに「目を向ける点(視点)」が「芸術性」なのか、あるいは「技法」なのかによって捉(とら)え方は変わる。あるいは、「素人(しろうと)」や「専門家」など、「観察する立場(視点)」によっても捉え方は変わる。「何に着目するのか」、あるいは、「どのような立場から見るのか」によって物事の捉(とら)え方は様々に変わるので、本文の内容をよく踏(ふ)まえて、その「視点要素」がそもそも必要なのかどうか、関連のあるものなのかどうかについてよく検討しよう。
※視点:キーワードや概念(がいねん)など、ものごとを考えるうえで着目する点。物事を観察する立場。

★(12)論点違(ちが)い(ロンチ/論点すり替え) ※基本的な論理⑧『論点のすり替え』参照!
・「設問における論点」とは「無関係な論点にすり替え」て説明されている。また、「論点を微妙にずらしてある場合」や「論点が曖昧(あいまい)な場合」もあるので注意。「見せかけの説得力」に騙(だま)されないよう、「設問における論点」をまず正しく掴(つか)み、「正しく方向づけて論理的に思考する」訓練をしっかりと積んでおこう。また、記述説明する際や、普段の会話、議論等においても、論点を明確に据(す)えたうえで、書き、話し、主張するよう心掛けよう。
※論点:ものごとを論じるうえでの問題点。議論の中心となる問題点。

★(13)方向違(ちが)い(崖(がけ)からバンジー/方向ズレ/見当違い/的(まと)外れ/明後日(あさって)の方向)
・「設問の要求」に対し、「異(こと)なった方向性での説明」となっている。「設問の要求」を正しく把握(はあく)せず、「思考の方向」を正しく定めぬままに判断しようとする受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。見当違いの方向に全力で突き進んで崖(がけ)から派手に転落せぬよう、設問の要求を正しく把握し、正しく方向付けて思考する訓練を怠(おこた)りなく。(1)「論外」の一種。

★(14)要素不足(部品不足/部品落下)
・説明が完結するための要素や条件が不足している。「要素不足」に気づかれないよう、表現や内容を微妙(びみょう)に調整してある場合が多い。また、問われている箇(か)所の前後数行を読むだけでは「求めるべき要素」を読み取れない可能性があるので、全体視野で本文の文脈や展開、構成等を捉(とら)える訓練を積んでおこう。

★(15)余計(よけい)(蛇足(だそく)/異物混入/お邪魔(じやま)虫)
・説明を成立させるための要素は全て揃(そろ)っているが、実は密(ひそ)かに「偽(にせ)要素」も付加(ふか)してある。「偽要素の埋め込み」に気づかれないよう、表現や内容を微妙(びみょう)に調整してあることが多く、「正しい要素が全て含まれていれば正解」といった機械的、単眼的な判断法では見抜けない恐れがある。

★(16)表面的説明(形式的説明) ※(64)『踏(ふ)み込み不足/寸止(すんど)め/あと一歩』参照!
・例えば、「ある倉庫が火事になった」という事柄(ことがら)について、その理由が、①「燃える物がそこにあったから」という説明、②「漏電(ろうでん=電流が回路以外にもれて流れること)が起きたから」という説明、あるいは、③「漏電によって発火し、資材に引火したから」という説明を受けた場合とを比べると、「根本的な原因への踏み込みの度合い」が異なるため、納得できる度合いもまた大きく異(こと)なる。このように、選択肢の説明において、①のように、上辺(うわべ)をなぞっただけの表面的、あるいは形式的な説明に止(とど)めて、「根本的・本質的な説明」にまで踏(ふ)み込まずにおく説明のしかたをする。説明内容自体に矛盾や誤(あやま)りがあるわけではないため、つい上辺(うわべ)の説明に引っ張られて誤答に誘導されてしまわぬよう注意しよう。尚(なお)、説明における踏み込みの度合いを調整し、①よりは深いが、②のように「本質(根本・核心)にまではあと一歩」というところで止(とど)める応用手法については、(64)『踏み込み不足/寸止め/あと一歩』を参照のこと。

★(17)主観(どっかの誰かさんの考え)
・本文の内容に沿(そ)った客観的な内容とは異なる、無関係な主観的内容の説明であったり、主観的な「偽(にせ)要素」が組み込まれていたりする。客観的な視点や客観的な把握(はあく)力が未発達な小学生を誘導しやすい。相対的視点をもって「自分の見方」と「他者の見方」とを区別し、「この説明は不特定他者の主観であって、筆者(作者・登場人物)自身の考えとは無関係である」と見抜けるようになろう。(109)「おびき寄せ」の一種。
※主観:自分(その人)だけの考え。
※客観:自分の考えから離れて、他者の立場から考えること。

★(18)コピペ(フェイク/ダミー)
・本文中から一部をそっくり引用して説明らしく見せかけてあるだけで、実は設問の要求には何も答えていない。「本文に書いてあるから」、「線部の近くに書いてあるから」といった安直な判断の仕方をせぬよう注意。(109)「おびき寄せ」の一種。
※コピペ:コピー・アンド・ペーストの略。俗語(ぞくご)。他の文章から必要な部分の写しを取り、それを別の場所に貼(は)り付けること。
※フェイク:偽物(にせもの)。本物に似せて偽装(ぎそう)した作り物。ダミー。

★(19)直前トラップ(直前に書いてあるもん💛)
・問われている箇所(かしょ)の「直前」に書かれてある内容をそっくり引用して説明してあるだけで、実は設問の要求には全く対応していない。問われている箇所の、特に「直前」に書かれてある事柄(ことがら)にしか注意が向かない受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。「線部の直前に書いてあるから」とか、「本文にそのまま書いてあるから」といった単純な理由で選択してしまわないこと。「『設問の要求』を正しく捉(とら)え、正しく方向づけて思考する」訓練、「自分の頭をよく使って読み、よく考えて解く」訓練を怠(おこた)りなく。(11)「コピペ(フェイク/ダミー)」、(109)「おびき寄せ」の一種。

★(20)真逆(まぎゃく)(逆のこと言ってる)
・選択肢の「説明そのもの」、あるいは、「選択肢に含(ふく)まれる一部」が、本文とは「真逆(まぎゃく)の内容」となっている。本文を照合せずに、専(もっぱ)ら記憶に頼(たよ)って選択肢どうしの読み比べばかりに注意を向けていても正確な判断は困難なので、客観的で論理的な検討力をしっかりと鍛(きた)えておこう。

★(21)誇張(こちょう)(盛(も)ったでしょ)
・説明の内容が、実際よりも程度を大きく捉(とら)え直して説明してある。小手先(こてさき)テクニックに見られるような、思考もせずに「言い過ぎだ、大げさだ。だから消去!」などといった安直な判断のしかたをせず、「内容に正しく見合った説明となっているかどうか」を検討、判断する力を養(やしな)ってゆこう。
※誇張(こちょう):ものごとを過度に大きく、または小さく形容して表現すること。
※盛(も)る:上辺(うわべ)を飾(かざ)り繕(つくろ)って、実際よりも話を大きく見せかけること。俗語(ぞくご)。
※小手先テクニック:その場をしのぐための、普遍性のない、にわか仕込みの浅はかで安直な技術。

★(22)誇張(こちょう)カモ(言い過ぎ?/大げさ?/極端(きょくたん)?)
・小手先テクニックに見られるような、「『言い過ぎ・大げさ・極端』な印象を与える選択肢は選ぶな」といった、思考を前提としない「印象や感覚による安直な判別法」が指導されている小学生(受験生)が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手(ぎゃくて)に取り、作為(さくい)的に『誇張表現』を用いて目立たせることで、正解でありながら正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある。本質的な思考力と検討力とを養い、「内容に正しく見合った説明となっているかどうか」を判断できるようになろう。(2)「カモフラージュ」の一種。
※誇張(こちょう):ものごとを過度に大きく、または小さく形容して表現すること。

★(23)強調カモ(こそ?/まさに?)
・小手先テクニックに見られるような、「『~こそ/まさに~』のような『強調表現』が用いられた選択肢は選ぶな」といった、思考を前提としない「安直な機械的処理法」が指導されている小学生(受験生)が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手(ぎゃくて)に取り、作為(さくい)的に『強調表現』を用いて目立たせることで、正解でありながら正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある。思考もせずに「強調表現があるから言い過ぎだ、大げさだ。だから消去!」などと安直に判断せず、本質的な思考力と検討力とを養い、「内容に正しく見合った説明となっているかどうか」を判断できるようになろう。(2)「カモフラージュ」の一種。

★(24)断定(断言/言い切ったな!) ※(25)『断定カモ』参照!
・本文においては「~だろう(推量)」、「~かもしれない(可能性)」、「~ようだ(推定)」といった「非断定的な認識や判断」が読み取れるにもかかわらず、選択肢の説明においては「正しいもの・確かなもの・完全なもの」として「断定(断言)」されている。ただし、必ずしもその説明に『絶対に・必ず・常に・決して』といった明確な『断定表現』が用いられているとは限らないので、本文との照合と検討により、「断定」と「非断定」とを、あくまで『内容によって判断』できるようになろう。

★(25)断定カモ(絶対に?/必ず?/常に?/決して?) ※(24)『断定(断言)』参照!
・小手先テクニックに見られるような、「『絶対に・必ず・常に・決して』のような『断定表現』が用いられた選択肢は選ぶな」といった、思考を前提としない「安直な機械的処理法」が指導されている小学生(受験生)が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手(ぎゃくて)に取り、作為(さくい)的に『断定表現』を用いて目立たせることで、正解でありながら正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある。思考もせずに「断定表現があるから言い過ぎだ、大げさだ。だから消去!」などと安直に判断せず、本質的な思考力と検討力とを養い、「内容に正しく見合った説明となっているかどうか」を判断できるようになろう。(2)「カモフラージュ」の一種。

★(26)限定(そんだけぇ~💛 /限定的一致) ※(27)『限定カモ』参照!
・本文における内容について、その「一部」についてしか説明されておらず、そのため、『限定的には一致している』が、本来求められる説明としては不完全である。説明内容の方向性自体は間違っていないため、本文との照合が不十分だと誤認を招いて誘導される恐れがある。記憶に頼(たよ)って選択肢どうしの読み比べだけで判断せず、本文との照合と検討を徹底しよう。

★(27)限定カモ(だけ?/のみ?/しか?) ※(26)『限定(そんだけぇ~💛)』参照!
・小手先テクニックに見られるような、「『だけ・のみ・しか』などの『限定表現』のある選択肢は選ぶな」といった、思考を前提としない「安直な機械的処理法」が指導されている小学生(受験生)が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手(ぎゃくて)に取り、作為(さくい)的に『だけ・のみ・しか』などの限定表現を用いて目立たせ、正解でありながら正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある。思考もせずに「限定表現があるから言い過ぎだ、大げさだ。だから消去!」などと安直に判断せず、本質的な思考力と検討力とを養い、「意味や内容に正しく見合った説明となっているかどうか」を判断できるようになろう。(2)「カモフラージュ」の一種。

★(28)全称(ぜんしよう)(全部が全部!) ※(29)『全称カモ』参照!
・ある事柄(ことがら)について、「一部についてはそう(▲)である」のように、本文においては筆者の「限定的な認識や判断」が読み取れるが、選択肢の説明においては「全てがそう(▲)である」といった内容にすり替えられている。ただし、このような場合においても、「全て/どれも/みな」のような『全称表現』が必ずしも直接用いられているとは限らないので、記憶に頼(たよ)って選択肢どうしの読み比べだけで判断せず、本文との照合と検討により、あくまで『内容によって判断』できるようになろう。
※全称:「全て・どれも・みな」のような、ある範囲全体の物事について断定する表現。

★(29)全称(ぜんしよう)カモ(全て?/どれも?/みな?) ※(28)『全称』参照!
・小手先テクニックに見られるような、「『全て・どれも・みな』のような全称表現のある選択肢は選ぶな」といった、思考を前提としない「安直な機械的処理法」が指導されている小学生(中学受験生)が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手(ぎゃくて)に取り、作為(さくい)的に『全て・どれも・みな』のような全称表現を用いて目立たせ、正解でありながら正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある。思考もせずに「限定表現があるから言い過ぎだ、大げさだ。だから消去!」などと安直に判断せず、本質的な思考力と検討力とを養い、「意味や内容に正しく見合った説明となっているかどうか」を判断できるようになろう。(2)「カモフラージュ」の一種。
※全称表現:「全て・どれも・みな」のような、ある範囲(はんい)全体の物事について断定する表現。

★(30)お楽しみ箱(びっくり箱/気絶フェスティバル)
・設問形式の一つとして、「本文全体の内容の説明」、「文章全体の表現上の特色」等について適切なものを選ぶといった問題については、通常大設問内の最終問題として設定されていることが多く、照合と検討に予定外に時間を取られてしまう恐れがるため、テストや演習などに取り組む段階で問題全体の構成や設定を確認する必要がある。

◎本文と照合、検討する必要のある項目については、「背景・事情」、「本文の内容」、「心情・心情変化」、「葛藤(かっとう)」、「人物像」、「人物どうしの関係性」、「視点人物」、「場面・構成」、「時間軸」、「回想部」、「展開・変化」、「成長・生き方」、「主題・要旨」等の読解関連についての他、「会話表現の特徴や効果」、「文章の特徴や効果」、「情景描写の特徴や効果」、「―(ダッシュ)」や「……(リーダー)」等の符合の使われ方等の描写全般について、さらに、「象徴」や「暗示」等の描写(びょうしゃ)技巧(ぎこう)について、「比喩の有無や使用頻(ひん)度」、「擬音(声)語・擬態語の有無や使用頻度」、「歴史的現在」、「皮肉」、「反語」、「逆説(パラドックス)」等の修辞(しゅうじ)に関するものなど多岐(たき)にわたる。普段から、知識の一面的な捉(とら)え方や暗記にとどめず、「生きた国語」のための総合的学習が求められる。
※修辞(しゅうじ):言葉を効果的に使って表現すること。その技術。レトリック。

視点人物
・筆者(作者)、主人公、第三者等、「誰の視点から語られているか(描かれているか)」を問われることが多い。

象徴
・本文において、一見さほど重要でなく思われる部分的な描写(びようしや)であるが、実は「主題」や「人物の心情」等と深く関連づく、作品上重要な意味や役割を与えられたものごと。情景描写以外にも、日常ありふれた器具、飲食物、色、形状、音、臭い、味、感触、人物の言動、様子、また、生き物の様子など、人間の五感や感情等を通して描かれる種々(しゅじゅ)のものが、作家の意図と工夫により「象徴素材」として利用される。「象徴する内容」については、その物事から受ける「一般的なイメージ」で説明できるわけではないので、あくまで「本文の内容との重ね合わせ」による精度の高い解読訓練が求められる。

象徴問題の例
・問題本文の最終行にある、主人公である「私」の「とりあえずウミガメのスープを仕込もう。」という言葉が、以下のように、「私」の今後の生き方への思いを象徴する。
【私が本当に求めている、見た人の胸に真に届(とど)き、生きていく気持ちを支える力を持った絵をいつか描(か)けるようになるために、自分を支えてくれている人達やさまざまなものへの思いを胸に、一日一日を大切に生きてゆこう】
※『ウミガメのスープ』(宮下奈都)~『サピックス 10月度マンスリーテスト(平成30年/2018年10月実施)』の【大設問4番】、および、『四谷大塚 第3回 合不合判定テスト(平成30年/2018年9月実施)』の【大設問1番】にて同場面が出題。

暗示
・情景描写や種々(しゆじゆ)の事象描写(びょうしや)によって、その後に起こる「事件」や「展開」を予め読者にそれとなくほのめかしておく手法。伏線(ふくせん)。暗示内容がその後に具体的な結果や役割として明らかとなる場合を、俗(ぞく)に「伏線回収」と呼ぶことがある。

比喩(ひゆ)(たとえ)
直喩(明喩):「Aは(まるで・あたかも)B~(ようだ・みたいだ)」等のように、「はっきりと比喩であることを示した言い方」。「ようだ・みたいだ」といった語が用いられることで、隠喩に比べて与える印象はソフトとなる。例:「先生は(まるで)鬼のようだ(鬼みたいだ)!」
隠喩(暗喩):「ようだ・みたいだ」のような「比喩であることを表す言葉」を用いずに、「AはBだ」のようにたとえて言い切る。直喩よりも鋭(するど)く、強い印象を与える。例:「先生は、鬼だ(鬼です)!」
擬人法(活喩):人間ではないものが、人間がしたことのようにたとえる方法。親近感や生き生きとした印象を与える効果がある。「救急車が(人間ではない主語)→悲鳴を上げている(人間の動作)。」、「冬将軍(冬の寒さの厳しさを、将軍の険しく厳しいさまにたとえている)」など。
皮肉
①遠回しに意地悪く相手を非難すること。アイロニー。「(宿題を大量に与えられた生徒が)先生は大変な生徒思いですね」など。
※中学受験国語では「皮肉①」に関連する出題が多いので、しっかりとこれを押さえておきたい。
②予想や期待とは反対の、良くない結果になること。「まさかあの最下位チームに負けてしまうとは皮肉だ」 など。
③自分に対する落胆(らくたん)した気分を表す。「雨天により運動会が中止と決定した直後に、皮肉にも雨が上がった」など。

反語
①「疑問文の形」をとりながら、暗に「強い否定」の意味を表す強調表現。「そんな不思議な話が本当にあるのだろうか(=そんな不思議な話が本当にあるはずがない)」 など。
※中学受験国語では「反語①」に関連する出題が多いので、しっかりとこれを押さえておきたい。
②ある語を本来の意味とは反対の意味に使うことで、皮肉を込める言い方。アイロニー。「(遅刻した人に)随分とお早い到着ですね。」など。

逆説
①「急がば回れ」、「負けるが勝ち」、「かわいい子には旅をさせよ」のように、一見矛盾(むじゅん)しているようだが、実は真理の一面を表す説。パラドックス。
※中学受験国語では「逆説①」に関連する出題が多いので、しっかりとこれを押さえておきたい。
②通常とは反対の方向からものごとを捉(とら)えたり、考えを進めたりするさま。「逆説的に言えば、苦労が多いほど、人生を豊かにするということだ」など。

擬声(音)語
・音や声を言葉に表したもの。オノマトペ。「お腹がゴロゴロと鳴る。」(片仮名表記)
擬態語
・ものごとの様子や感じを言葉に表したもの。オノマトペ。「日曜日は家でごろごろとしている。」(平仮名表記)

葛藤(かっとう)
・(つる性植物である葛《かずら》と藤《ふじ》がもつれ合うことから)二つの相反する感情の板挟(いたばさ)みとなり、迷い悩(なや)むこと。「葛藤する」「心の葛藤」
両価性
・「愛と憎(にく)しみ」のように、同一の対象に対して相反(あいはん)する感情を同時に持つこと。「(おいしそうなので)食べたいが、(太りたくないので)食べたくない」「(好みの容姿なので)好きだけれど、(性格的に合わなくて)嫌い」など。両面価値。両価価値。アンビバレンス。

歴史的現在
・過去の出来事を、今、目の前で起きているかのように「現在の時制」で表現する技法。史的現在。

会話表現
・「会話表現」について、その形式や特徴、効果等について検討が求められる場合がある。
呼称の変化
・相手を「あだ名」で呼んでいたものが「さん付け」に変化したり、自称が「オレ」から「ぼく」に変化したりするなど、「呼称の変化」の裏にある心情について検討を求められる場合がある。

主観的と客観的
・主観的:その人だけの見方、感じ方であるさま。
・客観的:当事者から離れて、第三者の立場から物事を観察して考えるさま。

絶対的と相対的
・相対的:他との比較によって成り立つ(存在する)さま。
・絶対的:他とは関係なく、それだけで成り立つ(存在する)さま。


【飛躍(論理的飛躍)】

★(31)飛躍(論理的飛躍) ※基本的な論理⑦『飛躍(論理的飛躍)』参照!
・正しい筋道を飛び越えた内容の説明がされている。論理上の飛躍の度合いが小さい場合や大きい場合など、さまざまに調整してある。論理的な思考訓練が不十分で、判断がその都度「印象や感覚」によって揺(ゆ)れやすい小学生を誤答に誘導しやすい。「前提」と「結論」との間の「関連性・連続性・因果関係」を的確に捉(とら)え、また、「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」といった「可能性の視点」も持って、客観的、総合的に判断しよう。また、小手先テクニックに見られるような、思考もせずに「言い過ぎだ、大げさだ。だから消去!」などといった方法で安直に判断せず、文章を論理的に読み、把握(はあく)する訓練を怠(おこた)らぬように。
※飛躍(論理的飛躍):正しい筋道を飛び越えて結論づける論理的な誤り。「前提」と「結論」との間に隔(へだ)たりがあり、因果関係が不明確な場合が多い。
※小手先テクニック:その場をしのぐための、普遍性のない、にわか仕込みの浅はかで安直な技術。

★(32)意志飛躍(そんなつもりないし!)
・筆者の考え、あるいは、登場人物の考えや気持ちに沿(そ)わない「意志表現」で説明してある。『言い過ぎだ、大げさだ、極端だ』のように「印象や感覚」によって判断するのではなく、あくまで「本文の内容に照らして、論理的な隔(へだ)たりがあるのかどうか」を客観的に検討し、「筆者(作者)、あるいは登場人物はそのような意志までは抱いていない」と見抜けるようになろう。(31)「論理的飛躍」の一種。

・太郎君:「今回のテスト結果、どの教科も、まあまあの成績だったぜい!」
・次郎君:「次回のテストではクラス上位を狙(ねら)ってるってわけか!」(狙う=意志)
※動詞に注意! 意志を勝手に飛躍させている!

・次郎君は、太郎君自身の考えを前提に置かず、一方的に自分の考えだけを都合良く押し進めて、太郎君の「意志を飛躍させて判断」しています。

◎「歩(あゆ)もウとする」、「仲直りしヨウとする」、「逃(に)げマイとする」のように、「意志を表す助動詞」である「う・よう・まい」が用いられている場合が多いが、ぱっと見では目立たないために「飛躍」に気づきにくい。
◎また、「認める・受け入れる・決める・向き合う・選択する・否定する・評価する」といった「もともと意志を含意(がんい)する動詞=意志動詞」や、「~するために・~する目的で」、「~しなければならない・~つもりだ」といった、やはり「意志を含意する表現=意志表現」を用いることで飛躍に気づかれないよう調整してある場合も少なくないので十分に注意しよう。

★(33)意志調整(積極度・消極度の調整)
・本文において、筆者(作者)、あるいは登場人物が、ある事柄(ことがら)について「意志を抱(いだ)いていることが間違っていない」場合に、選択肢においてはその「意志の度合い」を微妙にずらして説明してある。また、「意志の積極度や消極度を正しくない度合いに調整」してある場合もあるので注意。

★(34)期待・願望飛躍(ひやく)(別に期待してないし/別に願ってないし)
・筆者(作者)、登場人物がそもそも抱(いだ)いていない「期待や願望」が述べられている。「仲直りがしたいと考えて」、「帰りたがっている」のように「希望(願望)を表す助動詞」である「~たい・~たがる」が用いられている場合が多いが、ぱっと見では目立たないために「飛躍」に気づきにくい。また、「~してほしい・~を願う・~を望む・~を期待する」といった表現が用いられている場合もあれば、「きっと~だろう」、「きっと~ちがいない」のような表現を用いることで飛躍に気づかれないよう調整してある場合も少なくないので十分に注意しよう。(31)「論理的飛躍」の一種。

★(35)好意飛躍(ひやく)(別に好きってわけじゃないし)
・ある作品において、「男女間における親しい関係」が描(えが)かれていても、それが必ずしも「両者間における好意や恋愛(れんあい)感情」を意味しているとは限らない。人物の心情や相互(そうご)の関係性、その後の展開などを、思い込みにより都合よく飛躍させて捉(とら)えてしまわないよう注意しよう。(31)「論理的飛躍」の一種。

★(36)カゼオケ論法(ドミノ論法/連鎖(れんさ)飛躍(ひやく))

【風が吹けば桶屋(おけや)が儲(もう)かる】
【強い風が吹くと、土ぼこりが立つ】→【土ぼこりが目に入って目を傷(いた)め、盲人(もうじん)が増える】→【盲人は三味線(しゃみせん)の演奏を生業(なりわい・せいぎょう)とするので、三味線のに張るための猫の皮が沢山必要になる】→【猫が減る】→【猫を天敵とする鼠(ねずみ)が増える】→【鼠は桶(おけ)をかじるので、桶の需要(じゅよう)が増える】→【桶屋が儲(もう)かって喜ぶ】

・「風が吹けば桶屋(おけや)が儲(もう)かる」は、「ある事柄(ことがら)が原因となって、まったく無関係と思われるところに影響(えいきよう)が出る」という意味のことわざである。選択肢の説明においては、「AだからB、BだからC、CだからD…」のように「複数の因果関係をつなぎ合わせて論理を好き勝手に飛躍させていないか」を確かめる視点も備えよう。(31)「論理的飛躍」、(41)「前提のすり替え」、(45)「条件トラップ」の一種。

★(37)二分法(白黒思考)
・「仲間ではない」という説明は、必ずしも「敵(てき)である」ことを意味するわけではない。他に「中立」や「無関係」という立場が想定されるにもかかわらず、そのような「中間層の可能性」を排除し、「二者」のみを前提とした説明がされている。(31)「論理的飛躍」、(41)「前提のすり替え」の一種。

・太郎君:今回のテスト、国語の成績が最悪だったよ。
・次郎君:つまり、勉強をさぼったということだね。

・次郎君は、「勉強したか、勉強しなかったか」の「二つの選択肢」のみを「前提」に置き、太郎君が「努力したにもかかわらず苦手な出題分野だった」、「ミスを連発した」、「集中力が発揮できなかった」といった「他の可能性」を前提に置かずに、一方的に「飛躍した判断」を下しています。

★(38)矛盾(むじゆん)(両立不可能) ※基本的な論理⑤『矛盾』参照!
・選択肢に書かれた説明内容が、本文に書かれた意味内容と論理的にかみ合わない。選択肢の説明に「論理的な食い違い」は起きていないかどうか、「両立不可能な言説」が組み込まれていないかどうかをしっかりと検討できるよう訓練を積んでおこう。
※矛盾(むじゅん):二つの事柄(ことがら)のつじつまが合わないこと。筋道が通らないこと。

【自己矛盾(むじゅん)】
・自分自身の考えや言動の中に食い違いが生じ、矛盾(むじゆん)すること。自己の言動に自己を否定する要素を含んでいること。自家撞着(じかどうちゃく)ともいう。

・花子さん:この世界に『絶対』と言えるものなど、『何一つ無い』のだわ!
・愛子さん:『絶対が存在しない』ことが『絶対だ』なんて、あんた、言ってること、絶対おかしいわよ!

・花子さんは、「この世界に絶対といえるものは何一つ存在しない」と主張しつつ、自分のその発言が「絶対のものだ」と断言しているので、その主張は矛盾しています。「あの子、いつも他人の批判ばかりするからダメなのよ(自分自身が『あの子』の批判をしている)」という主張も「自己矛盾の例」として覚えておくとよいでしょう。

★(39)拡大解釈(かいしゃく)(意味広げたでしょ)
・「休憩(きゅうけい)してよい」を「遊んでもよい」と解釈するなど、ある事柄(ことがら)についての説明や、選択肢の説明そのものが、本来の意味内容を都合よく広げた解釈となっている。本文中のある事柄について一般化、抽象(ちゅうしょう)化して説明されている場合においても、本文の内容における適正な意味内容を超えていないかどうかを厳密に把握(はあく)できるようにしよう。(31)「論理的飛躍」の一種。

★(40)単純化(単純な話さ)
・例えば、「国語学習では漢字の習得がとても大切だ」という一説を、「国語学習では漢字が書ければよい」と再解釈するように、背景や事情等の重要な要素を意図的に省略し、簡略化して説明する。「単純化」は「抽象化」や「一般化」、あるいは「要約」とは全く異なるが、一見わかりやすく類型化され、また、受け入れやすいものにも思えるため、安易に飛びついてしまわぬよう注意しよう。(12)「論点違い」、(31)「論理的飛躍」の一種。
※単純化:物事の重要な要素を意図的に削除(さくじょ)して、単純、かつ類型的な説明にすり替えること。正確性を欠き、本質を外した底の浅い説明となる。
※類型的:型にはまっていて、個性や特色が見られないさま。
※抽象化:多くのものごとが共通して持っている性質だけを抜き出し、それらを同類のものごととして捉(とら)えること。
※一般化:一部の事例をもとに、それを普遍(ふへん)的な概念に拡張すること。普遍化。
※要約:文章の要点を取りこぼさずに、短くまとめること。

*1:無理な一般化(例外は無いのけ?)
・「ポチも、ゴンも、モモも、人なつこい犬だ。(AもBもCも▲だ)」、「だから、犬はみんな人なつこい動物だ。(だから、全体も▲だ)」のように、例外の存在を前提とせずに、一部の事例をもとに、全てが同じであるかのように一般化して説明する。(31)「論理的飛躍」の一種。

・花子さん:「スズメも、ハトも、カラスも、空を飛ぶことができるわ」
・愛子さん:「鳥という生き物は、みんな空を飛べるのね」

・愛子さんは、ペンギンや駝鳥(だちょう)のように飛べない鳥がいることを前提に置かず、「一部の性質」を「全体の性質」として無理やり「一般化」し、「飛躍した判断」を下しています。 「一部の性質」がそうであるからといって、「全体の性質」も同じであるとは限りません。

【レッテル貼(は)り】
・「太郎は真面目(まじめ)だ。」、「花子はおしゃれだ」というように、人物や事物(じぶつ)について主観的に一般化し、評価を与えることを「レッテル貼(は)り」という。また、「俺って、天才!」、「私って、ダメ人間なの」のように、自分で自分にレッテル貼りをする場合もある。
◎「健太君は嘘(うそ)つきだ」、「幸子は意地悪だ」のように、良くない情報のみをもとに主観的に一般化し、一方的に悪い評価を与える場合には、皮肉を込めて相手を非難するにとどまらず、「対人攻撃」として「悪口」や「いじめ」、「差別的言動」に繋(つな)がる場合も少なくない。

*2:逆は必ずしも真ならず(逆(さか)立ち飛躍)
・「海には魚がたくさんいる(AはBだ)」を逆立ちさせて、「魚がたくさんいるのが海だ(BはAだ)」と言い換えても、同義とはならない。これを、「逆は必ずしも真ならず」という。(31)「論理的飛躍」の一種。

・花子さん:「海にはね、魚がた~っくさん、いるのよ!」
・愛子さん:「逆に言えば、魚がた~っくさんいるところが海! ってことよね!」

・「魚がたくさんいるところ」は「海」に限らず、「川や湖」、「水族館」なども考えられます。しかし、愛子さんはそうした「他の可能性」を前提に置かずに、花子さんの主張を「単純に逆立ち表現」することによって、それがあたかも真実であるかのように「飛躍した判断」を下しています。

*3:裏返しの飛躍(AでないならBでない?)
・「自分がされて嫌(いや)なことは、人にすべきでない(Aならば、Bである)」を裏返して、「自分がされて嫌でなければ、人にしても良い(Aでなければ、Bでない)」と言い換えても、同義とはならない。このように、本文における「ある表現を裏返して利用」することで、いかにも正しい説明であるかのように偽装(ぎそう)する。選択肢の説明に反対表現や否定表現があると正確な意味を取り違えてしまう恐れがあるので、よく注意しよう。(31)「論理的飛躍」の一種。


【前提操作】

★(41)前提のすり替え(聞いてないよ!) ※基本的な論理③『前提のすり替え』参照!
・本文における「正しい前提(正しい事実内容)」を「正しくない前提」にすり替えたうえで論理展開している。本文における「前提(正しい事実内容)」と「解答者の把握した前提内容」とが合致(がっち)していないと、その都度判断が揺(ゆ)れを起こす。本文を通読せず、また、本文との照合もせずに、専(もっぱ)ら記憶に頼(たよ)って選択肢どうしの読み比べによって判断しようとする受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。「この説明は、前提がすり替わっている」と見抜けるようになろう。
※前提:論理を支える土台。因果関係や論理を組み立てるための土台となる重要な条件。
※すり替え:人に気づかれないように、こっそりと別のものに取りかえること。

■「前提のすり替え」は、日常における冗談(じょうだん)、励(はげ)ましや勇気づけなど、善意に基(もと)づく会話術の一手段としても意識的、無意識的に用いられるが、詭弁(きべん)や詐欺(さぎ)、悪意に基(もと)づく心理操作などの一手法としてもしばしば利用される。「前提のすり替え」による教育やマスコミ(マスメディア)の情報操作によって知らないうちに思想誘導されたり、特定の価値観を植えつけられたりしてしまわないよう、十分に注意しなければならない。「前提をまず疑い、前提となる事実を自分自身でよく確かめ、自分の頭を使って考え、判断する」ことが大切だ。

■国語を得意とする者は、様々な視点を駆使(くし)して多角的に物事を把握(はあく)する能力が高いため、たった一回の本文通読時に、広範囲に及ぶ重層的な多くの情報を一気に収集することができ、しかも、分析力や類推力、検討力も優れて高い。そのため、問われている箇(か)所の近辺を瞬時確認するだけでも正確な判断をすることが可能であり、処理スピードも極めて速い。しかし、その域にまで達していない者が、「本文を通読もせずに、問われている箇所の前後数行の内容から判断を下す」といった形ばかり真似た手法にすがり続けていても、読解と解答の精度を実質的に向上させていくことは極めて困難だ。「時間が足りない」という受験生は、「頭脳の高速処理訓練」や「時間短縮訓練」、「速読訓練」を普段の学習に導入し、日々の継続的訓練により脳の機能的向上と思考作業の高速化を図ろう。
※「本文を通読せず、問われている箇所の前後数行の内容から判断する」といった手法でどの程度得点できるかを実際に試してみたり、ゲームとして競ってみたりするのは、それはそれで面白いだろう。
※本資料巻末に掲載した「高速トレース(全脳型高速処理訓練)」、「時間短縮訓練」、「時間配分のしかた」、「速読訓練(フラッシュリーディング)」等の資料も併(あわ)せて参照してください。

★(42)暗黙(あんもく)の前提(暗黙の了解(りょうかい)) ※基本的な論理②『暗黙の前提』(p.4)参照!
・本文には直接表現されてはいないが、筆者(作者・登場人物)が「暗黙の前提」としている事柄(ことがら)をもとに説明されている。本文に直接書くまでもない「当たり前の事柄」や、「筆者の主張の根底にある思想」などを「暗黙の前提」として説明されるため、まさかと思うような内容の説明となる場合があり、正解でありながら「明らかな誤り」として早々に除外(消去)してしまう恐れがある。判別難度が高く、正答率を極端に下げるのに有効な手法。本文の内容把握の学習においては、「明示された前提」と「表現の裏にある前提」に加え、「暗黙の前提」の三つをしっかりと押さえ、そのうえで「前提と結論との関係=因果関係」を捉(とら)える訓練をしっかりと積んでおこう。

※暗黙の前提:特に言明せずともわかりきった事柄。
※表現の裏にある前提:例えば、選択肢の説明内に「決心した」という表現があったとすると、それはその人物が「それまで迷っていた、それまで決心せずにいた」といった意味が考えられ、また、「仲直りした」とあれば、それは「それまで仲違(なかたが)いしていた、仲直りするかどうか迷っていた」といった意味が考えられるが、それが実際に前提として本文の内容に合致(がっち)するのかどうかを正しく掴(つか)んでおく必要がある。

★(43)人物像不一致(人物像のすり替え/あんた誰?)
・登場人物や作者・筆者の「人物像」とは「異なる人物像」にすり替えたうえで説明されている。「人物像(人柄や性格)」という「前提」をすり替えたうえでの説明であるため、本文全体を通して人物像を把握(はあく)しておかないと、判断が揺(ゆ)らぐ恐れがある。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。(41)「前提のすり替え」、(42)「暗黙の前提」の一種。

★(44)人物関係のすり替え(関係性が違(ちが)くね?)
・本文における「登場人物同士の関係」、もしくは、「作者(筆者)とある他者との関係」が「異なる関係性」にすり替えられ、それを前提として説明されている。「人物像」だけでなく「人物関係」や、さらに「人物同士の関係性の度合い」までをも含(ふく)め、本文に直接に明記されていない「見えない前提」を正確に捉(とら)えられるようになろう。(41)「前提のすり替え」、(42)「暗黙の前提」の一種。
※違(ちが)くて/違く:俗語(ぞくご)。正しくは「違って/違い」とする。また、「違かった」、「違くない」も、それぞれ「違った」、「違わない」と正すこと。

★(45)条件トラップ(『条件』作ってみた!)
・【[A]雨が降ると(条件)+[B]湿度(しつど)が上がる】、【[A]宿題を済(す)ませたが(条件)+[B]遊べない】、【[A]仲良くなるとともに(条件)+[B]理解が深まる】のように、《Aを条件として+B(となる/である)》の形式で説明されるが、[A]という条件がそもそも虚偽(きょぎ)であったり、不正確であったり、あるいは、誘導に都合のよい情報であったりする。《虚偽の条件[A]》を「前提」として、しれっと[B]が続くため、よく注意して文脈把握(はあく)しないと《条件[A]》の虚偽に気づくことが難しい。本文を照合せずに、「記憶に頼(たよ)って選択肢どうしの読み比べだけで判断」する受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、「見せかけの説得力」と「虚偽の論理」によりまんまと誤答に誘導されてしまわぬよう注意。(41)「前提のすり替え」の一種。
※しれっと:けろっとして。平然として。もと俗語(ぞくご)か。
※聞き手や読み手は、まず最初に提示される【条件(前提)A】を踏まえたうえで後の文脈をたどって思考する傾向が強いため、【条件(前提)A】にウソや誤りがあっても却(かえ)ってそれに気づきにくく、いっそう相手の意図に沿(そ)った方向に誘導されやすくなる。マスメディアによる世論調査などにおいても、調査結果の比率を高めたり低めたりして操作する必要のある場合にこの手法がよく利用され、また、誘導しやすい文脈や表現を調整、操作するために、特定の分野における一部の学者もこれに協力している。

★(46)仮定トラップ(『仮定文』作ってみた!)
・【[A](もし)雨が降れば(仮定条件)+[B]湿度(しつど)が上がる】、【[A](もし)宿題を済(す)ませても(仮定条件)+[B]遊べない】、【[A](もし)仲良くなれるなら/仲良くなれたら(仮定条件)+[B]うれしい】のように、《Aを仮定条件として+B(となる/である)》の形式で説明されるが、[A]という仮定条件自体がそもそも虚偽(きょぎ)、もしくは不正確な内容である。《虚偽の仮定条件[A]》を「前提」として、しれっと[B]が続くため、よく注意して文脈把握(はあく)しないと《仮定条件[A]》における虚偽に気づくことが難しい。本文を照合せずに、「記憶に頼(たよ)って選択肢どうしの読み比べだけで判断」する受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、「見せかけの説得力」と「虚偽の論理」により誤答に誘導されてしまわぬよう注意。(41)「前提のすり替え」、(45)「条件トラップ」の一種。

★(47)因果トラップ(『理由』作ってみた!/イントラ) ※(62)『偽装因果』参照!
・【[A]雨が降るから(原因・理由)+[B]湿度が上がる】、【[A]宿題を済(す)ませたので(原因・理由)+[B]遊べる】、【[A]仲良くなれたため(原因・理由)+[B]うれしかった】のように、《Aを原因・理由として+B(となる/である)》の形式で説明されるが、[A]という条件(原因・理由)自体がそもそも虚偽(きょぎ)、もしくは不正確な内容である。《虚偽の条件(原因・理由)[A]》を「前提」として、しれっと《結果[B]》が続くため、よく注意して文脈把握しないと《条件(原因・理由)[A]》における虚偽に気づくことが難しい。本文を照合せずに、「記憶に頼(たよ)って選択肢どうしの読み比べだけで判断」する受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、「見せかけの説得力」と「虚偽の論理」により誤答に誘導されてしまわぬよう注意。(41)「前提のすり替え」、(45)「条件トラップ」の一種。

★(48)基準トラップ(『基準』作ってみた!)
・「一般的に」、「常識的に」、「世代によって」、「文化として」、「世界的に見て」、「伝統的に」のような言葉が用いられ、それが「説明における一つの基準、もしくは視点」となっているが、そもそもその「基準要素(視点要素)」自体が本来の説明において「無関係」であるか、「虚偽(きょぎ)」である。「余計な基準や虚偽の基準要素」を「前提」としてしれっと説明が続くため、よく注意して説明内容を捉(とら)える必要がある。本文を照合せずに、「記憶に頼(たよ)って選択肢どうしの読み比べだけで判断」する受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、「見せかけの説得力」と「虚偽の論理」により誤答に誘導されてしまわぬよう注意。(11)「視点違い」、(41)「前提のすり替え」、(45)「条件トラップ」の一種。
◎尚(なお)、「基準要素」はその時々によって内容や表現が様々であるだけでなく、文脈上、それが「前提」、もしくは「前提の一部」となっていることに気づくことが難しい場合が多いので注意。

★(49)推定妥当(だとう)(確かにありうる!)
・本文における主題や要旨(ようし)を前提として、物語文などでは「登場人物のその後の生き方」、説明的文章では「筆者の発展的な考え」等、推定しうる展開や事柄(ことがら)を「断定的に」説明してある。本文には直接書かれていなくとも、主題や要旨、展開等を踏まえると論理的には推断(すいだん)が可能であり、正答となる。(42)「暗黙の前提」の一種。

★(50)主題違(ちが)い(要旨(ようし)違い/主題トラップ)
・「主題(要旨)を捉(とら)える問題」において、「本文全体に底流する『本来の主題や要旨』とは無関係な説明」となっている。また、「主題(要旨)の意味内容を微妙(びみょう)にずらしてある」場合や、「主題(要旨)そのものではなく、それに深く関連する副次的な事柄(ことがら)についての説明」にすり替えられている場合もある。(41)「前提のすり替え」、(42)「暗黙の前提」の一種。
※「主題(要旨)を捉(とら)える問題」は一般に最終問題(付近)に設けられるが、それ以前の「経過問題」においても「本来の主題(要旨)」を前提としていないと判別が困難な場合があるので注意。
※主題:主に文学的作品等において、作者がその作品全体を通して最も強く訴(うった)えたい事柄(ことがら)。
※要旨(ようし):主に論理的な文章において、筆者がその文章全体を通して最も強く訴えたい事柄。
※副次(ふくじ)的:主要なものに対して、従属した関係にあるさま。二次的。

★(51)肯定(こうてい)前提/肯定的心情前提(肯定してたっけ?/肯定的心情だったっけ?)
・ある事柄(ことがら)について、登場人物(筆者・作者)の考えや心情が『否定(ひてい)的』であるにもかかわらず、選択肢では『肯定的』であることを前提として説明されている。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。(41)「前提のすり替え」の一種。
■逆に本文での「肯定前提(肯定的心情前提)」が『否定前提(否定的心情前提)』にすり替わっている場合もあるので注意。

★(52)前向き前提(前向きだったっけ?)
・ある事柄(ことがら)について、登場人物(筆者・作者)の「心情や考え」が『後ろ向きか、前向きでない』にもかかわらず、選択肢では『前向き』であることを前提として説明されている。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。(41)「前提のすり替え」の一種。
■逆に本文での『前向き前提』が『後ろ向き前提(前向きでない前提)』にすり替わっている場合もあるので注意。

★(53)受け入れ前提/受け止め前提(受け入れてたっけ?/受け止めてたっけ?)
・ある事柄(ことがら)について、登場人物(筆者・作者)がそれを『受け入れていない(受け止めていない)』にもかかわらず、選択肢では『受け入れている(受け止めている)』ことを前提として説明されている。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。(41)「前提のすり替え」の一種。
■逆に本文での『受け入れ前提(受け止め前提)』が『受け入れていない前提(受け止めていない前提)』にすり替わっている場合もあるので注意。

★(54)理解前提(理解してたっけ?)
・ある事柄(ことがら)について、登場人物(筆者・作者)がそれを『理解していない』にもかかわらず、選択肢では『理解している』ことを前提として説明されている。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。(41)「前提のすり替え」の一種。
■逆に本文での『理解前提』が『理解していない前提』にすり替わっている場合もあるので注意。

★(55)認識前提(認識してたっけ?)
・ある事柄(ことがら)について、登場人物(筆者・作者)がそれを『認識していない』にもかかわらず、選択肢では『認識している』ことを前提として説明されている。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。(41)「前提のすり替え」の一種。
■逆に本文での『認識前提』が『認識していない前提』にすり替わっている場合もあるので注意。

★(56)好意前提(好きになってたっけ?)
・登場人物(筆者・作者)が異性の他者に対して『好意を特に抱(いだ)いているわけではない』にもかかわらず、選択肢では『好意』を前提として説明されている。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。少年、少女の恋心(こいごころ)を描(えが)いた作品や、男女間の心の機微(きび)を描いた作品にも是非触れておきたい。(41)「前提のすり替え」の一種。
※機微(きび):表面上は分かりにくい、人の心の微妙な趣(おもむ)きや事情。
■逆に本文での『好意前提』が『好意を抱いていない前提』にすり替わっている場合もあるので注意。

★(57)期待・願望前提(期待してたっけ?/望んでたっけ?)
・登場人物(筆者・作者)がある事柄(ことがら)について特に『期待していない(望んでいない)』にもかかわらず、選択肢では『期待している(望んでいる)』ことを前提として説明されている。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。(41)「前提のすり替え」の一種。
■逆に本文での『期待・願望前提』が『期待していない前提(望んでいない前提)』にすり替わっている場合もあるので注意。

★(58)つまみ食い論法(チェリーピッキング/いいとこ取り)
・「今度のテストで敬語の問題が出るよ。幸一君も洋子ちゃんも、同じこと言ってるもん。」のように、多くの情報の中から都合の良い情報だけを選び出し(切り出し・切り取り)、それを根拠(前提)として自分に有利な主張をする。(41)「前提のすり替え」の一種。
※チェリー・ピッキング:おいしい「サクランボ(チェリー)」だけを「選び取って(ピッキング)」食べることから、つまみ食いの意。

★(59)ダミー論法(わら人形論法/ダミー攻撃(こうげき)/架空(かくう)論法) ※歪曲(わいきょく)・曲解(きょっかい)・誇張(こちょう)
・本文におけるある言説をわざと歪(ゆが)めて引用し、その「ダミーの論点」に対して批判をする。

・先生:勉強は大事なんだから、毎日しっかりと勉強するんだぞ!(前提:励(はげ)まし)
・生徒:「泣こうがわめこうが、引きずり回してでもお前を勉強漬(づ)けにしてやる!」だなんて、そんなひどいことを平然と言う教師がどこにありますか!(話をねじ曲げて「スパルタ教育」に論点(前提)をすり替えて非難し、ついでに人格攻撃)
・先生:誰がそんなこと言ったかね、このスッタコが!
・生徒:……てへぺろっ (・ω<)!

・本文における論点と、その論点についての主張や説明内容を正確に捉(とら)えたうえで、選択肢の説明が歪曲(わいきょく)、もしくは不当に誇張(こちょう)されていないかどうかを見極めよう。(12)「論点違い」、(31)「論理的飛躍」、(41)「前提のすり替え」の一種。
※歪曲(わいきょく):事実をわざと歪(ゆが)め、曲げること。
※わら人形論法:相手の主張を都合良くわざと歪(ゆが)めて引用し(切り取り/切り出し)、その「架空の論点(わら人形/ダミー)」に対して反論する。相手がそもそも言ってもいない論点を作り上げ、その「架空の論点」を標的(わら人形)として反論、攻撃し、自説を有利に導く詭弁(きべん)。

*4:道徳主義トラップ(道徳をダシにせよ!)
・「カンニングをするのは悪いことだ(道徳的価値観)。だから、僕がカンニングなんてするはずがないじゃないか(事実にすり替え)」のように、「Aは道徳的に善である(悪である)、だから、Aは▲が事実だ」という形式で、「道徳的な価値観を事実にすり替える」論法。「道徳」をはじめから「良いもの・正しいもの」と前提し、そのうえで、「だから、~が事実だ」と、誤った結論を導く。(*5)「自然主義トラップ」の逆パターン。(41)「前提のすり替え」、(31)「論理的飛躍」の一種。

*5:自然主義トラップ(自然に倣(なら)え!)
・「人間は本来、夜には眠る動物だ(自然界の事実)。だから、人間は深夜にまで勉強をすべきではないんだ(価値判断にすり替え)。」のように、「Aは自然界の事実である。だから、Aは▲であるべきだ(価値判断)」という形式で、「自然界の事実を価値判断にすり替える」論法。「自然界の事実」をはじめから「良いもの・正しいもの」と前提し、「だから、自然に逆らわない行動が正しい」と、誤った結論を導く。(*4)「道徳主義トラップ」の逆パターン。(41)「前提のすり替え」、(31)「論理的飛躍」の一種。

*6:新規主義トラップ(新しければいいの?)
・「この教材は改訂(かいてい)された(新しいものごと)。だから、内容も優(すぐ)れているんだ(価値判断)」、「ざんぎり頭を叩(たた)いてみれば、文明開化の音がする」のように、「『新しいものごと』は無条件に『良いもの・正しいもの』」であると前提し、「過去のものごと」を否定する。新しいものごとが常に正しいとは限らない。(*7)「伝統主義トラップ」の逆パターン。(41)「前提のすり替え」、(31)「論理的飛躍」の一種。

*7:伝統主義トラップ(古ければいいワケ?)
・「人類は数千年にわたり神を信じ続けてきた。だから、神は存在するんだ」、「以前は誰もがテレビや新聞、ラジオなどから情報を得ていた。だから、インターネットの利用はふさわしくないんだ」のように、「『伝統や習慣』は無条件に『良いもの・正しいもの』である」と前提し、「現在のものごと」を否定する。昔のやり方が常に正しいとは限らず、また、昔のやり方が正しかったとしても、現在に通用するとは限らない。(*6)「新規主義トラップ」の逆パターン。(41)「前提のすり替え」、(31)「論理的飛躍」の一種。



【偽装論理】

★(60)因果の逆転 ※基本的な論理④『因果関係』参照!
・「受験をする子どもが多いので、この地域は塾が多い(Aだから、Bである)」を「この地域は塾が多いので、受験をする子どもが多い(Bだから、Aである)」のように、因果関係を逆転させて説明してある。「要素の有無」や「要素の正否」だけが判断基準だと瞬時には「逆転」に気づかない恐れがある。
◎「ので・から・ため(に)」等の「原因・理由」を示す語を使用すると「因果の逆転」に気づかれやすいため、「~ことで」や「~ことにより」、「~によって」などの表現に言い換えられていたり、因果関係そのものを捉(とら)えづらくするために巧妙(こうみょう)に表現が調整される場合も少なくない。

・花子さん:アンタ、勉強しないから(原因)、成績が悪いのよ。(結果)
・愛子さん:違うわよ。成績が悪いから(原因)、勉強する気になれないのよ。(結果)

・花子さんと愛子さんの主張は、互いに「因果関係が逆転」しています。文章を読む際だけでなく、文章を書く際や会話をする際においても、正しい因果関係を強く意識するよう心掛けよう。
※因果関係:原因と結果との関係。「原因や理由」が「前提」となって「結論」が導かれる。

★(61)因果要素の倒置(とうち) ※基本的な論理④『因果関係』参照!
・「風邪を引いたから、学校を休んだ(Aだから、Bだ)」を、「学校を休んだのは、風邪(かぜ)を引いたからだ(Bであるのは、Aだからだ)」と倒置しても因果関係は変わらず、意味は全く同じである。このように、本文中の「AだからBである」という語順を、選択肢において「Bであるのは、Aだからだ」と倒置して説明されると、因果関係そのものに気づかなかったり、因果関係の確認に手間取る恐れがあるので注意。(2)「カモフラージュ」の一種。

★(62)偽装(ぎそう)因果(因果関係作ってみた!) ※(47)『因果トラップ』参照!
・本文中の、もともと因果関係の存在しない「ある内容《A》」と「ある内容《B》」とを、【A~ので(理由・原因)+Bである(結果)】のように機械的に連結し、因果関係を偽装(ぎそう)する。「見せかけの根拠」や「見せかけの説得力」によって誘導されないよう注意しよう。(45)「条件トラップ」の一種。

★(63)無関係(関連性無し/虚偽(きよぎ)の関連付け)
・本文中における本来無関係な複数の事柄(ことがら)を無理やり関連づけて、それらしい説明に仕立ててある。本文を照合せず、記憶に頼(たよ)って選択肢どうしの読み比べだけで判断しようとする受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。「見せかけの説得力」によって判断を誤(あやま)らぬよう、「事柄どうしの関連性」についてよく吟味(ぎんみ)し、判断しよう。

★(64)踏(ふ)み込み不足(寸止(すんど)め/あと一歩) ※(16)『表面的説明(形式的説明)』参照!
・選択肢の説明内容が、(16)「表面的説明」のような「上辺(うわべ)をなぞっただけの説明」よりは踏み込んでいるが、「本質や核心にまではあと一歩(あと一段階/寸前)」というところで止(とど)まっている。(16)「表面的説明」の一種。
※踏(ふ)み込む:物事の本質や核心(かくしん)に一段と深く迫(せま)る。
※寸止め:剣道や空手などで、強烈(きょうれつ)な打撃(だげき)を相手の体に当たる寸前(すんぜん)で止めること。

★(65)類比(るいひ)論法(その喩(たと)えは無関係!) ※基本的な論理⑩『類推(るいすい)(類比推論)』参照!
・筆者(作者・登場人物)の考えに沿(そ)うと見せかけた「喩(たと)え」を引用して説明し、それを根拠(前提)の一つとして、いかにも正当な説明であるかのように偽装(ぎそう)してある。「説明内容に類似した喩(たと)え(類比)」は、抽象的な事柄(ことがら)や難解な事柄(ことがら)を理解する一助になるうえ、その説明に説得力を与える効果を持つが、元来説明そのものとは「別物」であるため、その「喩(たと)え」に本質的に異なる点(相違点)が無いかどうか、また、その「喩(たと)え」が説明における正しい根拠や補完情報として機能しているかどうかをよく検討する必要がある。
※「慣用句」や「ことわざ」が類比として引用される場合もある。そのことわざや慣用句の正しい意味や用法を知っていないと、それが適切な「類比」であるかどうか自体の判断が困難になるので注意。


★(66)比較(ひかく)トラップ(別に比べてないし!)
・本文中でそもそも比較対象とされていない「ある内容《A》」と「ある内容《B》」とを、【AよりもBが~】、【Aに比べてBは~】のように比較する形にして説明し、見せかけの説得力により誤答に誘導する。本文に「対比的な事柄(ことがら)」があったとしても、それが即(すなわ)ち「比較される内容」であるとは限らない。また、【Aと違ってBは~】、【Aと異なりBは~】、【Aとは対照的にBは~】、【A以上にBは~】のように表現を変えて比較に気づかれないよう調整してあることが多いので注意。

★(67)価値トラップ(価値判断してないし!)
・本文においては、ある事柄(ことがら)について特に「良い・悪い」等の「価値や評価」を与えているわけではないのに、選択肢の説明においては作為(さくい)的に価値(評価)を与えた意味内容とし、見せかけの説得力により誤答に誘導する。「良い・悪い」、「正しい・間違っている」、「大切だ・重要ではない」、「素晴らしい・最低だ」、「好ましい・好ましくない」のように、物事について価値や評価を与える言葉を「価値語(評価語)」という。本文において、「筆者(作者・登場人物)は何に『価値』を置いているのか」、あるいは、「そもそも『価値や評価』が読み取れるのかどうか」などを正確に把握(はあく)しよう。

★(68)比較(ひかく)価値トラップ(比較と価値の合体!)
・本文中の「ある内容《A》」と「ある内容《B》」とを比較し、そのうえで、さらに【Aに比べてBは良い(悪い)】のように「不必要な評価や価値」を与え、見せかけの説得力により誤答に誘導する。本文に「対比される事柄(ことがら)」があったとしても、それを比較形式によって必ずしも「両者いずれかに評価や価値を与えている」とは限らないので注意。(66)「比較トラップ」と(67)「価値トラップ」を複合した手法。

★(69)同語反復(循環(じゆんかん)論法/おんなじこと言ってる!/オウム返し) ※(98)『前後同一』参照!
・「世界平和のためにはどのような社会にすべきだと筆者は考えていますか」という問いに対し、「戦争の起きない社会にすべきである」といった一見もっともらしい説明が書かれてある。しかし、これは、「戦争が起きない社会を実現するためには、戦争が起きない社会を実現する必要がある」と言っているのと同じことなので、実は設問の要求には何も答えていない。設問の内容がそのまま選択肢の説明において無意味に繰り返されていないかどうかを確かめる視点を持とう。
※同語反復:「善人は善い人だ」、「雨が降る日は天気が悪い」のように同語や類義語を無意味に繰り返すことを「同語反復」(同義反復・類語反復)という。トートロジー。

■循環(じゅんかん)論法:「彼は勤勉(きんべん)だ(結論)。なぜなら、彼は真面目(まじめ)だからだ(根拠)」は、「彼は真面目だ(結論)。なぜなら、彼は勤勉だからだ(根拠)」と同じ意味であり、このように、「結論と根拠とが単純に循環し、証明とならない」論法を「循環論法」という。選択問題において、「Aであるのはなぜか」と問われているのに、「それはAだからだ」といかにも理由らしく説明されていないかどうかを確かめる視点を持とう。また、「消しゴム貸して。だって、消しゴム貸してほしいから」のように、日常においてもうっかりと循環論法によって言い訳をしたり反論したりすることがあるので注意しよう。※p.26を参照!
※本項とは別に、「『選択肢の説明文内』において『同語反復や循環論法』が用いられている場合」については、(98)『前後同一(ダブり/同語反復/循環論法)』を参照のこと。

★(70)偽装(ぎそう)飛躍(ひやく)(これ正解かよ!)
・説明における表現や文脈を巧妙(こうみょう)に調整することで、正しい内容でありながら、飛躍した、もしくは飛躍した印象を与える説明となっている。一般に多くの小学生(受験生)が消去するよう指導されている、「『言い過ぎ』の印象や『大げさ』な印象を与える表現」を作為(さくい)的に組み込んで誤認を図(はか)る場合も少なくないので注意。(2)「カモフラージュ」の一種。

★(71)屁理屈(へりくつ)(ああ言えば、こう言う)
・無関係な事柄(ことがら)を無理やり関連づけて主張される、まるで筋(すじ)の通らない理屈(りくつ)。日常においては、自分の非を認めたくないときや言い逃れをするときに、咄嗟(とっさ)に屁理屈を言ってしまうことがあるかもしれない。自分で面白い屁理屈の例文を考えてみよう。

・警官:この牛泥棒(どろぼう)め、逮捕(たいほ)する!
・犯人:だんな! 誤解ですぜ! あっしはたまたま綱(つな)を拾(ひろ)っただけで、そしたら牛が繋(つな)がっていましてね、牛のやつが勝手に付いて来ただけですってば!

*8:前後即(そく)因果(祈(いの)ったから合格した!)
・「入試前日に必死に合格を祈(いの)ったら、本当に合格した。だから、合格したのは祈ったからに違いない。」のように、「『ある事柄(前件A)』が起きた後に、続いて『別のある事柄(後件B)』 が起きた」という連続的な事実を捉(とら)えて、そもそもそこに因果関係が存在しないにもかかわらず、「《前件A》が《後件B》の原因(理由)である」と無理やり因果づけることを「前後即(そく)因果」という。選択問題においては、本文におけるある事柄どうしが自然な形で連続していても、それが即(すなわ)ち因果関係を示しているとは限らないので、「見せかけの説得力」に引きずられないよう、論理的に文章を読み、理解し、また、記憶に頼らず、本文との照合、検討を徹底しよう。

*9:疑似(ぎじ)相関(見せかけの相関)
・「(A)アイスクリームの販売量が上がった。」、「(B)夏の間、電気代が増えた。」、「だから、アイスクリームの販売量の増加が、夏の電気代が増えた原因だ。」のように、本文中のある内容(A)と(B)との間に相関関係が認められる場合に、無理やりそこに因果関係をこじつけて説明してある。
・ちなみに例文の場合、実際には(A)と(B)は「別の要因(C=気温の上昇)」によって変化しているのだが、それがはっきりと目に見えるものではないために、(A)と(B)とが「因果」によって関連づいている印象を与えてしまう。

※相関関係:一方の値と別の一方の値とに関連性があること。
※因果関係:原因と結果との関係。因果関係のあるものには相関関係があるが、相関関係があるからといって、それがそのまま因果関係を示しているとは限らない。
※疑似相関:見せかけの相関。ある事柄(A)が変化するとともに他のある事柄(B)も同時に変化している場合、その(A)と(B)との「相関関係に因果関係があるように誤(あやま)って捉(とら)えてしまうこと」。


【すり替え一般】

★(72)主語のすり替え(えっ、マジか!)
・選択肢の説明における主語(主部)が別のものにすり替わっている。また、逆に主語や視点・論点が正しくとも、それに続く説明が虚偽(きょぎ)の内容や無関係な内容にすり替わっている場合もあるので注意。普段、「主語と述語の係り受け」をほとんど意識せずに文章を読んだり書いたりしている受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。「主語と述語の係(かか)り受け」、「語句と語句との係り受け」を意識し、「文脈」を正しく把握しながら読み、書き、話す習慣を持とう。
※主語:「何が」「誰が」に当たる言葉。他に、「は・も・の・こそ・だって・さえ・まで」などの助詞は「が」に替(か)えて用いられるので注意。(空が泣いている=空は/も/だって/さえ/まで泣いている)

★(73)心情違(ちが)い(気持ちが違う)
・人物の心情に合致(がっち)しない心情にすり替えてある。「不思議に思っている」、「予想外に思っている」、「驚(おどろ)いている」、「願っている」、「興味を引かれている」等の表現によって人物の「共感度や受け止め具合」を低めたり、ぼかしたりする場合や、逆に、「絶望している」、「決意している」等の表現によって「共感度や受け止め具合」を高めてある場合もあるので注意。普段の生活においても、「なんとなくそのような気持ち」といった感覚で済ますのではなく、「対象への共感や理解」を深め、それを「ふさわしい言葉で表現する」心掛けを持つことが大切だ。

★(74)理由違(ちが)い(理由のすり替え)
・説明における『理由(根拠)』が、本文における本来の「理由(根拠)」とは異(こと)なったものにすり替えてある。この『理由を示す部分』の説明は、本文中からの引用である場合や、変造や捏造(ねつぞう)による場合もある。また、「~から(ので・ため)」のような表現を用いるとそこが『理由を示す部分』であることに気づかれやすいため、「~ことで(によって)/~わけで/~せいで(おかげで)」のように言い換えられることが多い。
※変造:既存(きそん)のものを加工して、形状や内容を不正なものに作り変えること。

★(75)目的違(ちが)い(目的のすり替え)
・説明における『目的』が、本文における本来の「目的」とは異(こと)なったものにすり替えてある。この『目的を示す部分』の説明は、本文中からの引用である場合や、変造や捏造(ねつぞう)による場合もある。また、「~ために」のような表現を用いるとそこが『目的を示す部分』であることに気づかれやすいため、「~に向けて」、「~をしに」、「~となるように」のように言い換えられることが多い。

★(76)対象違(ちが)い(対象のすり替え)
・ある事柄(ことがら)についての「対象」が、別の事柄や人物にすり替わっている。記憶に頼(たよ)って判断しようとせず、本文との照合作業によって、「何に対して」、あるいは「誰(だれ)に対して」なのか、対象となるその内容を正確に捉(とら)えるようにしよう。

★(77)定義のすり替え(定義ちがくね?)
・筆者、あるいは作者によって「特に定義づけられた概念(がいねん)や語句」を、それとは異なる意味合いにすり替えて説明してある。本文中の概念や語句については、筆者(作者)によって「特定の意味合い」で使用されているのか、あるいは「一般的な意味合い」で使用されているのかをきちんと区別しよう。
※定義:用語の意味や概念(がいねん)の内容を明確に限定すること。その意味・内容。
※概念(がいねん):認識した内容の本質や性質。物事の大まかな意味内容。 ※(82)を参照のこと。
※違(ちが)くて/違く:俗語(ぞくご)。正しくは「違って/違い」とする。また、「違かった」、「違くない」も、それぞれ「違った」、「違わない」と正すこと。

★(78)趣旨(しゅし)違(ちが)い(脱線(だっせん)/意味違い/意味ズレ)
・「仲直りして、握手(あくしゅ)した(事柄の前後関係を示す文脈)」と、「握手して、仲直りした(並行(へいこう)的状況を示す文脈)」とでは意味が異なるように、説明の趣旨や文脈が正確でなかったり、ずらされていたりする。「記憶に頼(たよ)って選択肢の読み比べだけで判断」しようとしても、あるいは、「要素の有無」や「要素の正否」だけを基準に判断しようとしても、趣旨や文脈を巧妙(こうみょう)に調整してあるため、一見しただけでこれに気づくことは難しい。普段から速く、正確に文脈を辿(たど)り、文意を掴(つか)む訓練を積み、また、文章を書くときや話をするときにも、正しい文意・文脈を強く意識するようにしよう。
※趣旨(しゅし):言おうとしている中心的な内容。趣意(しゅい)。主旨(しゅし)。
※文脈:「文章中の文と文」や、「文中の語と語」の論理的なつながり具合。

★(79)説明不足(具体性欠如(けつじよ)/過度な抽象(ちゅうしょう)化/テキトーだな)
・趣旨(しゅし)や方向性はほぼ正しいが、具体性に欠けていたり、あるいは、過度に抽象化されていたりするため、説明として不十分、もしくは不完全となっている。その説明が「具体的でわかりやすいかどうか」、「的確であるかどうか」、「曖昧(あいまい)な所は無いかどうか」をよく検討できるようになろう。
・「十代の若者(または高齢者)に自動車を運転させるのは非常に危険だ」という主張は、「運転をする若者(または高齢者)自身が事故等の危険な目に遭(あ)いやすい」という意味と、「若者(高齢者)の運転によって他者が危険にさらされる可能性が高い」という意味のいずれにも解釈ができ、曖昧である。
※曖昧(あいまい):意味内容が二通り、または二通り以上に解されること。意味内容をしっかりと捉(とら)えにくく、はっきりしないこと。

★(80)換言(かんげん)トラップ
・選択肢の説明において本文中のある内容や表現が言い換(か)えられている場合に、本来の意味内容を変えてあったり、微妙にずらしてあったりする。「抽象化」や「一般化」により「言い換え」がなされている場合、それが本文の意味内容と合致する表現であるかどうかをよく検討しよう。
※換言(かんげん):言い換(か)えること。

★(80)語のすり替え
・日常においては、例えば「共感」、「同情」、「理解」は感覚的に似た意味の語として捉(とら)えられることがあるが、そのような一般的傾向を利用し、本文の内容に合致(がっち)しない意味の語にすり替えてある。

※共感:他人の考えや感情について、自分もその通りだと感じること。他人が抱いている感情と同じ感情を自分が持つこと。
※理解:内容や意味などがわかること。他人の気持ちや立場に立って思いやること。
※同情:他人の苦悩や不幸を気の毒に思い、自分のことのように思いやっていたわること。
※他に、「反省⇔後悔」、「認識(知ること)⇔理解(分かること)」、「真面目(まじめ)⇔素直・正直」、「嫌(いや)だ⇔嫌(きら)いだ」、「絶望⇔希望を持てない」、「疑う⇔信じられない」、「信頼が揺(ゆ)らぐ⇔信頼を損(そこ)ねる」、「中立⇔無関心」、「中途半端⇔いい加減」、「負い目⇔引け目」、「意外だ⇔不思議だ」などはそれぞれ同義ではないので、うっかりと捉(とら)え違えてしまわぬよう注意。

■日常においては、それぞれの語を意味や用法を厳密に区別せず感覚的に用(もち)いて済(す)ませてしまうことがある。国語学習においては、言葉の辞書的な意味や用法を適宜(てきぎ)国語辞典を用いて確認するなど、言葉に関わる取り組みや言語生活への姿勢をより強く意識することが大切だ。
■国語辞典を使用して言葉の意味を調べる際には、意味が分からない言葉があったら何も考えずに即座に辞書を引くのではなく、まずは文脈や言い回し、その言葉に含まれている漢字等を手掛かりに、知識や語感、また、それまでの生活体験等にも照らし、自分なりに意味を推定し、そのうえで本来の正しい意味や用法を確認するという手順を踏むほうがよい。そして、何より、その言葉を単に知識事項や暗記項目として済ますのではなく、今後自分が生きていくうえで使いこなしていく言葉の一つとして、あるいは、これからの「自分」というものを作り上げてくれる大切な素養の一つとして捉(とら)え、積極的に自分の中に取り込み、生活の中で活用していく姿勢で学ぶことが大切だ。

★(81)換言(かんげん)トラップ
・選択肢の説明において本文中のある内容や表現が言い換(か)えられている場合に、本来の意味内容を変えてあったり、微妙にずらしてあったりする。「抽象化」や「一般化」により「言い換え」がなされている場合、それが本文の意味内容と合致(がっち)する表現であるかどうかをよく検討しよう。
※換言(かんげん):言い換(か)えること。

★(82)ぼかし語トラップ(概念(がいねん)語によるはぐらかし)
・「不思議な出来事/経験」、「奇跡的な経験/出会い」、「未知の世界/未知との出会い」、「正反対の結果/考え」、「本質的な価値/意義」、「本物の価値/関係」、「次元の異なる経験/段階」のように、本文中のある内容が「概念語(抽象語)」によって言い換(か)えられている場合に、その「概念語」が本文の内容に即(そく)した適切な意味としてではなく、単に「意味のぼかし/説明のはぐらかし」として利用されている。「概念語」を感覚的に「何となくそんな意味」で捉(とら)えていると、印象による誘導にかかる恐れがある。
※概念(がいねん):物事の本質や性質について、抽象的、普遍(ふへん)的に捉(とら)えた意味内容。

■概念(がいねん)語
・物事の本質や性質について、その内容を抽象化して表す語。
・例:友情・信頼・共感・理解・同情・喜び・悲しみ・安心・不安・好意・愛情・決意・親切・希望・失望・
絶望・疑問・正義・対比・比較・対立・矛盾(むじゅん)・客観・主観・絶対・相対・文化・習慣・自然・個人・社会・人生・教育・情報・技術・現在・過去・未来・時間・空間・理想・現実・直接・間接・平和・自由・思考・認識・判断・論理・価値・評価・可能性・表面的・合理的・多様性・因果関係、民主主義、など。
※自身の「言葉の引き出し」にしまい込まれている様々な言葉を適宜(てきぎ)引き出して自在に使いこなせるよう、普段から記述や口述によって意識的にアウトプットする訓練を継続することが大事だ。

★(83)結論違(ちが)い(ゴール間違えた!)
・論理的な筋道は正しいが、そこから導き出される結論が誤(あやま)っていたり、ずれていたり、不完全だったり、あるいは、「可能性の一部」に過ぎない内容だったりする。普段から「自分の頭をよく使い、論理的に文章を読み、論理的に考え、検討し、適切な結論を導く訓練」を怠(おこた)りなく。

★(84)道筋(みちすじ)違(ちが)い(コース間違えた!)
・選択肢の説明における結論自体は正しいが、そこに至(いた)るまでの論理的な筋道に誤(あやま)りがある。結論の正しさに引きずられて慌(あわ)てて判断してしまわぬよう注意。普段から「自分の頭をよく使い、論理的に文章を読み、論理的に考え、検討し、適切な結論を導く訓練」を怠(おこた)りなく。

★(85)きっかけ違(ちが)い
・本文中に書かれた「きっかけ」とは異なった不正確な「きっかけ」にすり替えて説明してある。「確か本文にはそのように書いてあったはずだから」と、「不確かな記憶や思いこみによって判断」したり、本文との照合無く「選択肢の読み比べだけで判断」したりせぬよう注意しよう。

★(86)いきさつ違(ちが)い(経緯(けいい)違い)
・本文中に描かれた「経緯(成り行き)」とは異(こと)なった不正確な「経緯」にすり替えて説明してある。「確か本文にはそのように書いてあったはずだから」と、「不確かな記憶や思いこみによって判断」したり、本文との照合無く「選択肢の読み比べだけで判断」したりせぬよう注意しよう。
※経緯(けいい):ことの成り行きや、それに伴(ともな)う様々な事情。

★(87)あらすじトラップ
・本文における「ある部分の粗筋(あらすじ)や要約文が書かれてあるだけ」で、設問の要求には何も答えていない。粗筋や要約文としては正しい内容であっても、「設問の要求」を正しく捉(とら)えずに「選択肢の読み比べだけで判断」したり、「不確かな記憶や思いこみによって判断」したりせぬよう注意。

★(88)比喩(ひゆ)説明不適 ※実在トラップ
・本文中の指定部分における比喩表現についての解釈(かいしやく)が本文の内容に即(そく)しておらず、「単にその比喩表現が与える一般的なイメージの説明」、「主観的な印象の説明」、「単に辞書的な意味の説明」となっている。また、「単に別の比喩への言い換え」をして誘導を図る場合もあるので注意。比喩表現をいくつかの部分に「視点分割(要素分け)」し、それぞれの意味やニュアンス、文脈などが「本文の内容や主題等に即した具体的、かつ適切な解釈」となっているかどうかを慎重に検討しよう。
■『実在トラップ』… 例えば、「闇(やみ)」という語が本文では「真実を秘(ひ)めるもの」のように象徴(しようちよう)的な意味合いを与えられているとして、それが選択肢においては「暗くて見えないところ/部分」のようにぼかしながら単に「実在・物理的存在」として、あるいは、単に「辞書的な意味」にすり替えて説明されている。

★(89)暗示・象徴(しょうちょう)トラップ ※(30)『象徴・暗示』参照!
・単なる光景等の描写(びょうしゃ)について、無理やり主題や心情を投影(とうえい)させた「暗示」、もしくは「象徴的な意味」を与えた説明となっている。「暗示」や「象徴」を捉(とら)える視点は必須(ひっす)であるが、単なる光景や事物(じぶつ)の描写にまで無理やり意味付けをしてしまわぬよう注意。
※暗示:その後に起こる「事件」や「展開」を情景描写や種々の事象によって予(あらかじ)め読者にそれとなくほのめかしておく手法。伏線(ふくせん)。
※象徴:本文の内容において、一見さほど重要でなく思われる部分的な描写であるが、実はその作品の「主題」や「人物の心情」等と深く関連づく、作品上重要な意味や役割を与えられたものごと。

★(90)事実の主張へのすり替え
・本文では「花子さんは女性だ」と書かれているものが、選択肢の説明では「花子さんは女性らしくあるべきだ」のように、「事実」を「主張」にすり替えて説明されている。本文における「事実」と「意見(主張)」とをしっかりと区別して読むようにしよう。(12)「論点違い」の一種。

★(91)具体例照合(落ち着いて慌(あわ)てろっ 💛◝(⁰▿⁰)◜💛)
・「本文中の具体例は重要ではないので読み飛ばせ」と指導されている受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、そこで、具体例をあらためて照合しないと選択肢の検討に進めないようにしてある。本文の通読段階において、具体例は速やかに内容を整理しつつ、本文全体におけるその意味や機能、また、筆者(作者)の主張との関連性などを総合的な観点から確かめよう。

★(92)非主要(後回しでよくね?)
・「設問における論点」とは異なる、「主要(中心)とは言えない論点」について説明されている。「設問における論点」から外(はず)れ切っているわけではなく、あるいは、『主要な論点に深く関連する内容』であることが多いため、判断に迷う恐れがある。「設問における論点」については、感覚的に「何となく」ではなく、「本旨(ほんし)」をしっかりと捉(とら)え、そのうえで「正しく方向づけて思考する」ことが大事だ。(12)「論点違い」の一種。
※本旨(ほんし):本来の趣旨(しゅし)。趣旨とは、言おうとしている中心的な内容のこと。

★(93)一般論(一般論はさておき)
・本文の内容に沿(そ)わない、無関係な一般論が書かれてある。説明内容自体は「一般論として正しい」ために否定(ひてい)できないので、本文の内容をよく把握(はあく)をせずにいると誘導に陥(おちい)る恐れがある。「一般論としてはそのとおりだが、筆者の主張、本文の内容とは無関係である」と見抜けるようになろう。(109)「おびき寄せ」の一種。
※一般論:個々の具体的な事柄を考えず、広く全体を論じる議論。世間一般に広く認められると考えられる論。「自然保護は大切だ」、「適度な運動は健康によい」、「勉強すれば将来の役に立つ」など。

★(94)常識・道徳論
・「常識」や「道徳」としての説明となっている。常識として、あるいは道徳的に正しい事柄(ことがら)に対しては否定(ひてい)しづらく、逆にそれにふさわしくない事柄に対しては肯定(こうてい)しづらい一般心理を作為(さくい)的に利用する。「常識的、道徳的にはそのとおりだが、本文の内容とは合致(がっち)しない」と見抜けるよう、本文内容をあくまで客観的に把握する訓練を積んでおこう。(109)「おびき寄せ」の一種。
※常識:健全な一般の社会人が共通に認めている、普通の知識や思慮(しりょ)分別。社会通念。
※道徳:社会生活を送るうえで、個人が守るべき規範(きはん)。人が踏(ふ)み行うべき正しい道。尚(なお)、倫理(りんり)と道徳とは同義であり、根本的な相違はないが、現代の日本では、道徳の場合、「『徳』という意味合いを強く含意(がんい)し、自発的に正しい行為へと促(うなが)す個人の内面的原理として働く」というニュアンスを含む。

★(95)迂言(うげん)法
・例えば、「親友」のような「直接表現」ではなく、「①仲がよく+②相談し合える関係」のように、「複数の語を組み合わせて直接表現と同意となるよう言い換(か)えて正答肢に用い、逆に誤答肢にはわかりやすい「直接表現」を用いて目立たせ、誤答への誘導を図る。「言い換え」に気づいたら、それが文脈上正しい内容の適切な表現であるかどうかをよく確かめよう。(2)「カモフラージュ」の一種。
※迂言(うげん)法:あることを、単一の語句で直接言い表さず、複数の語句を用いて同意となるよう間接的に表現すること。
※他の例:幸福(=恵まれた状態に満ち足りた心持ち)、勇気(=恐れずに立ち向かおうとする思い)

★(96)要素倒置(とうち)(要素不足誤認)
・線部等、問われている箇所(かしょ)の内容が、例えば「A-B-C」の要素に分解できるとして、それを選択肢の説明では「C-A-B」のように要素の順序を変えて文脈構成し、一見したところでは「要素不足」であるかのように誤認させる。また、順序そのものは「A-B-C」と一致させながら、表現を調整することで「要素不足」であると誤認させる場合もあるので注意。(2)「カモフラージュ」の一種。

★(97)半分ずっこ(ハーフ&ハーフ)
・選択肢の説明が内容的に大きく二つに分けられるような場合に、前半か後半のいずれかは完全に正しい内容であるが、一方が完全に間違っているか、あるいは、意味があやふやである。「本文中のキーワード」や(4)「キラキラワード」などを巧(たく)みに組み込み、直感の誘発(ゆうはつ)や印象操作によって誤答への誘導を図(はか)る。検討が不十分だと、あやふやな記憶に頼(たよ)って判断してしまったり、「ハロー効果」による直感頼(だよ)りの判断に落とし込まれたりするので注意。
※半分ずっこ:半分ずつにする、の意。
※ハロー効果:ある対象を評価するとき、その「一部の特徴的な印象」に引きずられて、全体について歪(ゆが)んだ評価をしてしまう心理現象。「halo(ハロー)」とは聖像などの頭部や全身を包みこむ後光(ごこう)や光輪(こうりん)。また、太陽や月の周囲を取り巻く「かさ」のこと。後光効果。

★(98)前後同一(ダブり/同語反復/循環(じゅんかん)論法) ※(69)『同語反復(循環論法)』参照!
・説明を成立させるための要素が本来二つ必要であるのに、前半の説明内容と後半の説明内容とが同一となっている。「AはAである(善人は善い人だ)」のような前後を同内容とした説明であることが露見(ろけん)しないよう、表現や言い回しを巧(たく)みに調整し、見せかけの説得力により誤答へと誘導する。また、「AだからAだ(彼は真面目だから勤勉だ)」のように、前後で同内容となる「同語反復」であるとともに「因果関係」の形式をとる「循環論法」となっている場合もあるので注意しよう。
※「同語反復や循環論法」が本項のように「『選択肢の説明内』で用いられている場合」とは別に、「『設問文』と『選択肢の説明文』との間で用いられている場合」については、(69)『同語反復(循環論法)』を参照のこと。
※露見(ろけん):秘密(ひみつ)や悪事など、隠(かく)していたことが表に現れること。
※ダブり:「重複」の意の俗語。「二倍・重複」等の意味を持つ英語の「double(ダブル)」に由来する。

★(99)別の事柄(ことがら)の説明(別件の説明/不正流用)
・設問の要求する事柄(ことがら)についての正当な説明そのものではなく、本文中の無関係な別件(別の事柄)についての説明にすり替わっている。「確か本文にはそのように書いてあったはずだから」と、不確かな記憶や思いこみによって判断してしまわないよう注意。また、本文との照合なく、「選択肢の読み比べだけで判断」するのも危険だ。(12)「論点違い」の一種。
※流用:本来の使途(しと)を外れて別の使途に用いること。

★(100)替(か)え玉(だま)(身代(みが)わり)
・「『筆者、あるいは登場人物は』どう考えているか」のように問われているにもかかわらず、その当人ではなく、本文に引用されている、もしくは本文に登場する別の人物の考えや気持ちを、筆者自身のものとしてすり替えて説明されている。
※替え玉(かえだま):本人だと偽(いつわ)って別人を使うこと。また、その人。
※身代わり(みがわり):他人のかわりになること。また、その人。

★(101)偽証(ぎしょう)トラップ
・本文中に書かれてある、「登場人物が本心を隠(かく)して述べる気持ちや考え」、あるいは、「筆者自身が想定する他者の反論」等を引用し、それが「登場人物(筆者・作者)本人の本心や考え」であるかのようにすり替えて説明してある。「確か本文にはそのように書いてあったはずだから」と、不確かな記憶や思いこみによって判断しないよう注意。また、本文との照合なく、「選択肢の読み比べだけで判断」するのも危険だ。
※偽証(ぎしょう):真実でないことを真実であるかのように述べた証明。

★(102)反対語トラップ
・「満足」を、反対語である「不満」を使って「不満ではない」と言い換(か)えても、同義とはならない。このように、本文におけるある語句の「対義語」を用いて「反対表現にする」ことで、いかにも正しい説明であるかのように偽装(ぎそう)する。選択肢の説明に反対表現や否定表現があると正確な意味を取り違えてしまう恐れがあるので、よく注意しよう。(31)「論理的飛躍」の一種。

★(103)可能性トラップ
・ある事柄について、本文では「▲の可能性が『ある』」と述べられているのに対し、選択肢の説明においては「▲の可能性が『高い』」といった内容にすり替えてある。「可能性の有無」と「可能性の程度(高さ・低さ)」とは別問題であるため、「可能性」という言葉につい引っ張られて判断を誤(あやま)らないように注意しよう。(41)「前提のすり替え」、(12)「論点違い」の一種。

★(104)回想部の変造(思い出作ってみた!/思い出作り)
・本文における「回想部」を説明に引用する際、さり気なく回想部の時系列や内容等を改変してある。読解作業においては、回想部の内容や展開も正確に掴(つか)むことを忘れずに。
※回想部:過去を振り返って、あれこれと思い出す部分や場面。
※変造:文書、通貨など既存(きそん)のものを加工して、その形状や内容などを変えること。
※改変:内容を変えて、もとと違(ちが)ったものにすること。

★(105)語句矮小(わいしょう)化(なんか意味弱まった…)
・「いじめ」を「不仲(ふなか)」と表現するように、本来説明にふさわしい的確な語句や表現を用いるのではなく、「本質を外した、意味を弱めた表現」にすり替えて説明してある。一見しただけでは微妙な意味の違いが区別できず、判断を誤る恐れがある。受験学習においても、普段の言語生活においても、感覚的に読み、書き、話すばかりでなく、言葉の意味や使い方、また、正確性や論理性、伝わりやすさについて、もっと意識するようにしよう。(12)「論点違い」の一種。
※矮小化(わいしょうか):物事や、物事の重要性を小さく見せること。

★(106)論点矮小(わいしょう)化(大した問題かよ!)
・「いじめというのは、子どもの悪ふざけの一形態である」のように、ある問題(論点)について、それをわざと小さく取り上げたり、重要性を低めたりして説明する。論点についての方向性が一致していても、問題の本質が不明確であり、説明として不完全である。(12)「論点違い」の一種。
※矮小化(わいしょうか):問題を小さく見せること。物事の重要性を小さくしたり、物事の一部だけを断片的に捉(とら)えて問題を小さくしたり、小さく見せたりすること。日常においては、ある問題について、それが「大した問題ではない」と、言い逃れや責任回避(かいひ)をする時などに用いられる場合が多い。

★(107)成り済まし(偽装(ぎそう)理由)
・「なぜですか」という「理由説明を求める問題」でありながら、「問われている箇所(かしよ)の意味内容を説明してあるだけ」となっており、実は設問の要求である「理由」については何も答えていない。設問の要求をよく確認もせずに取り掛(か)かると、「それはどういうことですか」といった「内容説明を求める問題」と勘違(かんちが)いしてしまいやすい。また、「問われている箇所の表現を別表現に書き改めてあるだけ」の場合もあるので注意。本文の読解訓練だけでなく、「設問で何が要求されているか」や、「設問文そのものの読解」もしっかりとできるよう訓練しておこう。(109)「おびき寄せ」の一種。

★(108)それってあなたの感想ですよね!
・本文における「ある箇(か)所の意味内容を問う問題」等において、「本文の内容を踏(ふ)まえた適切な解釈」ではなく、「単にその表現や内容から抱(いだ)きそうな主観的な感想や印象を述べ連(つら)ねてあるだけ」となっている。そもそも、求められているのは「感想や印象」などではないはずだ。「自分の抱(いだ)いた感想(印象)と同じことが書いてあるから正解だ!」と見当外(はず)れの判断をしてしまわぬよう、本文の読解訓練を基本として、「設問の要求」を正しく把握(はあく)し、かつ、「設問文そのものの読解」もしっかりとできるよう訓練しておこう。(12)「論点違い」の一種。

*10:論点混在(めまいがするわ)
・説明内に複数の異なる「論点」が組み込んである。それぞれの論点自体は重要なことかもしれないが、「何を中心の論点としているのか」が不明確で、焦点がぼやけてしまっている。「設問における論点」を正確に掴(つか)み、その「中心となる論点」に正しく沿(そ)って思考する訓練を積んでゆこう。

*11:単純例示
・本文中に挙げられている具体例、またはその一部がそのまま選択肢の説明に組み込まれているだけで、説明として成立していない。冷静に対処すれば、例示の引用だけでは説明にならないことにすぐに気づけるはずだ。

*12:否定(ひてい)不能(消極的肯定(こうてい))
・最後の二択での「絞(しぼ)り込み」において、「積極的に肯定(こうてい)されうる選択肢」と「消極的に肯定されうる選択肢」とがあり、その判別が非常に困難となっている。いずれの選択肢も内容的には否定できず、際(きわ)どい見極めが必要となる。設問の要求はもとより、思考の方向性、視点、論点、諸要素の有無や正否(せいひ)、因果関係、前提の正否、暗黙の前提、論理的飛躍、踏み込みの度合い、換言の適否(てきひ)、表現やニュアンスの調整等、さまざまな角度からの検討力が求められる。


【おびき寄せ(印象操作)】

★(109)おびき寄せ(つぎはぎ/コラージュ作品)
・本文における「キーワード」や「文中語句」を説明内に複数使用して目立たせ、誤答におびき寄せる。「キーワードに注目!」、「よく出てくる言葉に注目!」といった単眼的な判断の仕方をせず、国語学習においては、本文の内容把握(はあく)にまず重点を置き、種々(しゅじゅ)の視点と検討力とをもって選択肢の正誤を確実に判断できるよう訓練しよう。
※おびき寄せ:騙(だま)して誘(さそ)い寄せること。
※コラージュ:現代絵画(かいが)の一技法。印刷物や写真の切り抜き、布や針金などの雑多(ざつた)なものを台紙に貼(は)り付けて一枚の作品とするもの。もとはフランス語で「のりで貼(は)る」という意味。

★(110)おとり(また引っかかったもん💛)
・本文の内容上、解答者が最も誤解しやすいと推定される解釈(かいしやく)を説明し、誤答におびき寄せる。また、「そうだったらいいな」、「そうであってほしいな」のように、解答者自身がいかにも抱きやすい願望や「希望的観測」が説明内容とされていることもあるので注意。(109)「おびき寄せ」の一種。

※希望的観測:「そうだったらいいな」、「そうであってほしい」のように、根拠や事実等によるのではなく、自分の願望を優先して都合の良いように事の成り行きを推測すること。「今日の組分けテスト、前回よりもすごくよくできた。今度こそクラスアップできそうだ」など。例文の場合、「テスト結果という事実(根拠)」が明らかとなる前に、「都合よくクラスアップするという自身の願望を推測に反映」させている。他に、「最近、いろいろと運がいいから、お小遣(こづか)いを多めにもらえそうだ」など。

★(111)正答もどき(ゴースト/パラレルワールド/トワイライトゾーン/蜃気楼(しんきろう))
・「正答肢」の要素・文脈・表現等に非常によく似せ、真偽(しんぎ)の判断を困難にする。本文との照合において、問われている箇所とその前後近辺の情報を単眼的に確認しただけでは「正しい内容や要素」を読み取ることができない場合があるため、本文における前提内容、論理構造、文脈、表現、ニュアンス等を含め、厳密(げんみつ)かつ総合的に判断する必要がある。(109)「おびき寄せ」の一種。
※ゴースト:多重像。幽霊(ゆうれい)。亡霊(ぼうれい)。
※パラレルワールド:並行(へいこう)世界。現実の世界と並行して存在するとされる別の時空世界。
※トワイライトゾーン:昼でも夜でもない曖昧(あいまい)な時間帯である夕暮(ゆうぐ)れ時。二者間の境界が曖昧な領域。時空の歪(ゆが)みに陥(おちい)ったり、超能力や心霊(しんれい)現象などの超常現象を経験したり、あるいは、宇宙人、タイムトラベラー、透明(とうめい)人間、地底人などの異世界の存在と遭遇(そうぐう)したりといった怪異(かいい)が起こるとされる時間帯。アメリカで制作されたSFテレビドラマのタイトルが語源。
※蜃気楼(しんきろう):光の異常屈折(くっせつ)によって地上の物体が浮き上がって見えたり、逆さまに見えたりする現象。海上や砂漠で起こる。ミラージュ。


【心理操作術】
(1)確証バイアス
・自分が信じている考えや判断を裏付ける情報にばかり注目し、逆に不都合な情報については無視する心理傾向。バイアスとは、偏見のこと。選択問題においては、結論に見当を付けること自体は大事だが、「はじめに結論ありき」で都合の良い情報にばかり目を向け、判断を誤らせてしまうことのないよう注意しよう。

(2)初頭効果
・選択肢の説明において、後半部に誤った内容を述べながら、前半部に正しい内容を述べることで目立たせ、正解としての印象を強く与えて誤答に誘導する。「人間は最初に与えられた情報ほど信じやすい傾向をもつ」という、心理学でいう「初頭効果」を作為(さくい)的に利用する。選択肢の説明文を最後まで読まず、時間節約のため特に前半部に書かれた内容によって正否(せいひ)を判断する傾向の強い解答者を誘導しやすい。

初頭効果:最初に提示された特性が印象に残り、その後の評価に影響を及ぼす心理的作用。逆は「新近効果(心理学用語としては、表記は「親近」ではなく「新近」が正しい)」。

(3)新近効果
・選択肢の説明文において、前半部に誤った内容を述べながら、後半部や末尾に正しい内容をべることで目立たせ、正解としての印象を強く与えて誤答に誘導する。「人間は最後に与えられた情報ほど信じやすい傾向をもつ」という、心理学でいう「新近効果」を作為(さくい)的に利用する。選択肢の説明文にさっと目を通し、時間節約のため特にその後半部や末尾に書かれた内容によって正否(せいひ)を判断する傾向の強い解答者を誘導しやすい。
新近効果:最後に与えられた情報や、直前に与えられた情報が特に印象に残り、その後の評価に影響を及ぼす心理的作用。尚、心理学用語としては、表記は「親近」ではなく「新近」が正しい。逆は「初頭効果」。

(4)アンカリング(初期値提示誘導)
・例えば、「ピザ」という語を相手に10回繰(く)り返させた後、「肘(ひじ)」を指差して「これは何か」と問うと、相手がつい「ヒザ」と答えてしまう現象を経験することがある。あるいは、ある商品の値札に書かれてある「元の値段」が二重線で消され、併(あわ)せて「割引価格」や「値下げ価格」が書かれてあると、それを見て「この商品は得だ」という印象を抱(いだ)いてしまうこともある。このように、「最初に提示された情報(初期値)」が「アンカー=基準」となって、その後の判断に影響が及ぶ心理現象を「アンカリング」という。論理的には「前提操作」の一種。
※アンカー:船の錨(いかり)のこと。最初に与えられた情報が「アンカー」となって心にとどまり、その後の思考や判断がその「アンカー」に引っ張られてしまう心理現象を「アンカリング」という。
※本資料の最後のほうに『消えた1,000円の謎』という論理パズルを掲載(けいさい)しています。「アンカリング」による心理操作と「前提操作」を念頭に、是非問題解決に挑(いど)んでみてください。

(5)誤前提暗示(二分法の罠《わな》)
・「サイドメニューはポテトになさいますか、それとも、サラダになさいますか。」のように、「いずれか一方を必ず選択する」ことを「前提」として二者択一を提示し誘導する暗示手法(二分法の罠《わな》)。もっともらしい選択肢が与えられると、限定されたその選択肢の中から判断をしがちであるという人間の心理傾向を作為(さくい)的に利用する。選択問題においては、説明文中に「否定できない二つの要素を選択的に並列」することで暗示をかけ、誤答へと誘導する。
※日本のマスコミ(マスメディア)による世論調査やアンケート等においても、(4)「アンカリング」、(5)「誤前提暗示」などの暗示手法や、(41)「前提のすり替え」、(45)「条件トラップ」などの「論理操作(前提操作)」によって質問項目の表現や文脈を巧妙(こうみょう)に調整し、回答者の心理と判断を意図的に一定の方向へ誘導しようと図るケースがしばしば見受けられる。

(6)イエス誘導法
・選択肢の説明文に、解答者が「YES(イエス)!」と肯定せざるをえない語句や表現を複数仕込み、「肯定の認知を連続させる」ことで誤答に誘導する。「同意の積み重ね」により自然と反論意識が弱まっていく人間の心理傾向を作為(さくい)的に利用する。選択問題では、「肯定要素が多数あるから正解だ」、「本文に書かれてあることが沢山含まれているから正解だ」といった、頭を使わない安直な判断の仕方をしないよう注意しよう。

イエス誘導法によるセールストーク
・「今日は本当に天気がいいですね!(はい。)」、「ところで、お子さんの受験サポート、大変ですね!(はい。)」、「お子さんの将来のために、親御さんとして大変ご立派だと思います!(はい、ありがとうございます!)」、「いい教材があったら、お子さんもいっそうやる気を出すでしょうね!(はい。)」、「やる気があれば何でもできる! なんてね!(はあ・・・)」、「偏差値を一気に20も上げる、夢のような教材があったらいいですよね!(はい。)」、「この教材は国語の大家が作ったものですので、子どもの人生を思う親御さんとしては、さぞご興味をお持ちのことと思います!(はい。)」、「子どもの将来を真剣に考えている親御さんがこういった教材を活用している理由も、ご想像いただけますよね!(はい。)」、「成績が上がるなら、お子さん、相当やる気を出しますよ(はい。)」、「いつの日か、立派に成長されたお子さんが、『お母さん、ありがとう!』とお礼を言っている様子がありありと目に浮かびますよ…(うるうる)」、「お子さんの明るい未来と豊かな人生を築くために、50万円を惜しむ親がどこにいますか!!(はい…)」、「通常価格の50%引きの教材だなんて、お子さんには知らせないほうがいい!(50%引きなんですか!?)」、「特別セール期間の特別価格だなんて、お子さんに伝えては絶対いけませんよ!(はい。)」、「私にもあなたのような子ども思いの母親がいたらどんなによかったか・・・(うるうる)」、「お名前をご記入いただくのはこの欄です。(はい。)」
※このような「論理トリック」や「心理トリック」を駆使したセールストークによって高額な教材を売りつける悪徳会社はいくらでもありますので注意してください。

(7)事後情報効果
・ある出来事を経験した後に、実際の出来事には含(ふく)まれていなかった情報を与えられると、その誤った情報に沿うように記憶が変容する現象。「本文を通読している時間が無い」、「選択肢を吟味している時間が無い」と嘆(なげ)く受験生は多いが、「本文と照合せず、記憶に頼って解く」という方法をとり続けていては、いつまでたっても「精度の向上」は望めない。もともと国語力の素地が高い受験生や、国語の得意な受験生には国語的センスの高い者が多いが、現状、そうでもないのに印象や感覚、機械的手法に頼るばかりでは、やはり精度の向上は望めない。「時間短縮訓練」や、「頭脳の高速処理訓練」に真剣に取り組み、自身の変革を図ってみてはどうだろう。

(8)催眠(さいみん)誘導(トランス誘導/幽体離脱誘導)
・哲学的な内容の文章や、抽象表現の多用された難解な文章、間接描写(びようしや)が多く意味が捉(とら)えづらい作品、あるいは、筆者(作者)独自の世界観に基(もと)づく極(きわ)めて個性的な内容の文章などが素材文として扱(あつか)われると、選択肢の説明も必然難解となり(かつ長文化する場合もある)、解答者が文面を見つめるうちに朦朧(もうろう)とし、やがて催眠状態に陥(おちい)ってしまう。あるいは、トランス状態や幽体離脱に陥り、浮遊感や快感を伴(ともな)いながら「ホゲー」となる危険性もある。平常より難解な文章に対しても全力で食らいつき、頭脳をフル回転させて問題解決に取り組む訓練を積み、対応力をしっかりと強化しておこう。
※催眠(さいみん):眠気(ねむけ)を催(もよお)すこと。
※朦朧(もうろう):意識がおぼろげで、はっきりしないさま。
※トランス:魂(たましい)が抜けてうっとりとした状態。
※幽体離脱(ゆうたいりだつ):意識や霊魂(れいこん)が肉体から離れている状態。体外離脱。

(9)ゾンビ効果
・一度誤答であると確信を抱いて消去したにもかかわらず、悪霊(あくりよう)に取り憑(と)りつかれたかのように、その後も、「もしかしたら本当は正解なのではないか」、「手招きする方へ行けば自分は楽になれるのではないか」という観念に度々(たびたび)襲われては、いよいよ増幅する不安の中で、やがてふいに正常な判断力を失い、気が付くとまんまと誤答へと引きずり込まれてしまっていたのかよ! という、それはそれは恐ろしい現象。

※ゾンビ:邪悪な霊力などによって、生きた姿を与えられた死体。蘇生(そせい)死体。
※取り憑(つ)く:霊などが乗り移る。

(10)サブリミナル効果(隠し誘導文)
・「こっちへおいでよ」、「正解はこれだよん」、「もうお前を離さないもんね」のような、受験生の潜在(せんざい)意識に強く働きかける文言(もんごん)をいくつかの要素に分解したうえで、それを選択肢の説明文中に巧妙に埋め込み、誤答へと暗示誘導する。咄嗟(とっさ)には認識不可能な潜在情報を説明内に密(ひそ)かに仕込むことで受験生を誤答へと誘導する、恐ろしい暗示手法。

サブリミナル効果:映画やコマーシャル等において、例えば「コーラを飲もう」、「ポップコーンを食べよう」といったメッセージを表示した一コマをフィルムの中に何枚か挟(はさ)み込んで映写すると、視覚では通常認識できない数千分の1秒という極めて短い時間に繰り返して表示されるそのメッセージが、コーラやポップコーンの売り上げ増加に反映するとされる現象。ある知覚刺激が非常に短時間であるなどの理由で意識としては認識できないが、潜在意識に対して一定の影響を及ぼすことができるとされる、心理的効果。心理学や認知科学の分野での実証が困難とされているが、心理操作や暗示誘導、洗脳、マインドコントロール等に悪用される恐れがあるため、日本では90年代にNHKや民放がこの手法を使用しての放送を禁じ、海外でも同様に禁止している国が多い。
※洗脳:暴力的な手段など強制力により、相手の思想や主義を根本的に変えさせること。
※マインドコントロール:暴力的な手段などを用いずに相手の心理状態を制御し、特定の意思決定や行動へと誘導すること。

その他

だって論法
・相手の主張とは別の論点を持ち出し、自分の言動を正当化したり、言い逃(のが)れをしたり、自分の責任を帳(ちょう)消しにしようとしたりして強弁(きょうべん)する論法。

①お前だって論法(ブーメラン論法)
・ジョン:おい、カンニングするなよ!
・ポール:お前だって、今、俺の答え見てるし!(論点のすり替え/言い逃れ)

②あいつだって論法
・警官:あれま、20キロも速度オーバーだぁ。今日はツイてなかったねぇ…(^O^)/」
・運転手:そんなぁ、勘弁(かんべん)してよぉ……。あっ! ほら、見てよ! あいつだって
 すっごいスピード出してるじゃん! 早くあいつ捕(つか)まえてよっ!(論点のすり替え
 /言い逃れ)

③みんなだって論法
・ママ:いけません。ゲームなんか買ってあげません!
・子ども:ねえぇ、買ってよぉ。みんなだって持ってるんだからぁ!(正当化/強弁)

※「だって」に代えて「~も/~の場合も」等が用いられることも多い。
※強弁(きょうべん):無理に理屈をつけて言い張ること。強く言い訳(わけ)をすること。
※基本的な論理⑧『論点のすり替え』参照!


悪魔の証明
・晋三(しんぞう)君:この世に悪魔(あくま)なんか存在しない
・清美さん:それじゃあ、悪魔が存在しないことを証明してみせなさいよ!
・晋三君:むぐぐっ……
・清美さん:証明できないんだから、悪魔は存在するってことじゃないの!
・晋三君:どうやって調べれば証明できるんですかっ!!
・清美さん:疑惑はさらに深まった!
・晋三君:ずるいよ! 悪魔の罠(わな)だ!

・「悪魔の証明」とは、証明することが困難な事象に対して「存在しないこと」の証明を求める詭弁(きべん)。「あること=存在すること」を証明するには実際に事例を集めればよいが、「ないこと=存在しないこと」を証明する事例を集めるのは事実上不可能である。
・清美さんは、論議以前に「悪魔は存在する」という自説をはじめから結論として決めており、「不在がもし証明されるなら、悪魔が存在しないと認めてもよい」という証明困難な選択肢をダミーとして敢(あ)えて提示することで、相手を「二分法の罠(わな)」に掛け(『心理操作術』《5》の『誤前提暗示』を参照)、人身攻撃の手段としても利用しています。
・本当は前提となる二つの選択肢以外にも、「存在するかどうか分からない」という別の選択肢もあるのですが、詭弁として批判や反論に利用されるだけでなく、人身攻撃や印象操作等の目的にも利用される「悪魔の証明」では、こうした「他の可能性」については完全に無視します。
※詭弁(きべん):誤っていることを、意図的に正しいと思わせるように仕向けた誤魔化(ごまか)しの議論。
※排除(はいじょ):受け入れられないものをその場から無くすこと。
※排斥(はいせき):受け入れられないものをその場から遠ざけること。

◎例文の「悪魔」という語を「宇宙人」や「歌って踊(おど)れるタヌキのポン太郎君」などに読み替えてみよう。また、「僕はカンニングをしていない」、「私は犯人ではない」といった論題についても、読み替えて論法の不適切さを確かめよう。


疑似相関(見せかけの相関)
・友紀夫(ゆきお)君:(A)アイスクリームの販売量が、上がっていますな!
・進次郎君:(B)熱中症になる人も、増えている!
・友紀夫君:アイスクリームの販売量の増加が、熱中症増加の原因ですな!
・進次郎君:今のままではいけない! だからこそ、日本は今のままではいけない!
・ひろゆき君:それって、あなたの感想ですよね!
・竜兵君:くるりんぱ!
・たけし君:ちょっと何言ってんのかわからない

・ある事柄(A)が変化するとともに他のある事柄(B)も同時に変化しているとき、そこに「相関関係がある」というが、単に相関関係を示しているだけのものに「因果関係」を捉(とら)えてしまうことを「疑似相関(ぎじそうかん=見せかけの相関)」という。
※相関関係:一方の変化とともに、他方も変化するような関係。

・例文の場合、実際には(A)と(B)は「別の要因(C=気温の上昇)」によって変化しているのだが、それがはっきりと見えるものではないために、(A)と(B)とが「因果」によって関連づいている印象を与えてしまう。「因果関係のあるものには相関関係がある」が、相関関係があるからといって、それが因果関係を示しているとは限らない。


循環論法
・友紀夫(ゆきお)君と進次郎君とは特殊(とくしゅ)な通信方法を使って互いに自由に意思疎通(そつう)できるようですが、二人の会話は論理が破綻(はたん)していて、一般の人たちには全く意味不明ですね。竜兵君もたけし君も呆(あき)れてしまいました。ちなみに進次郎君の、「今のままではいけない! だからこそ、日本は今のままではいけない!」のような論法を「循環論法」といいます。同語を無意味に繰り返して、いかにも根拠に基づいた主張らしく見せかけるだけの論法ですから、話の中身が空っぽで、何の問題解決にもなりません。
※(69)、(98)『同語反復(循環論法)』を参照!

・そこで、ひろゆき君は、堂々と「空(から)っぽの主張」をして誇(ほこ)らしげな進次郎君に対し、「問題に対して真摯(しんし)に向き合いもせず、平然と論点をはぐらかし、明確な根拠も具体案も示さず、虚勢(きょせい)を張っては自己満足に浸(ひた)っているばかりで、ただ当たり障(さわ)りのないその場限りの感想を述べて能天気に受け流して済まそうとする言動は、実にいい加減、かつ無責任であり、人を馬鹿にしている」と非難しているのです。
※破綻(はたん):物事が修復不可能な状態にまで壊(こわ)れること。
※虚勢(きょせい)を張る:実際よりも優(すぐ)れたものに見せかける。空(から)いばりする。
※真摯(しんし):真面目(まじめ)に、ひたむきに物事に取り組むさま。
※能天気(のうてんき):何事も深く考えず、常に呑気(のんき)で気楽なさま。また、その人。


曖昧語法(二重語法)
・「十代の若者(または高齢者)に自動車を運転させるのは非常に危険だ」という主張は、「運転をする若者(または高齢者)自身が事故等の危険な目に遭(あ)いやすい」という意味と、「若者(高齢者)の運転によって他者が危険にさらされる可能性が高い」という意味のいずれにも解釈ができ、曖昧である。
※曖昧(あいまい):意味内容が二通り、または二通り以上に解されること。意味内容をしっかりと捉(とら)えにくく、はっきりしないこと。


ダブルスタンダード(二重基準)
・基準となる事柄(ことがら)が二つあり、「同じことをして兄は怒られたのに、弟は何も咎(とが)められなかった」のように、立場やそのときの状況によってそれぞれの基準を都合よく使い分けること。。
※二重基準(ダブルスタンダード):同じ一つの事柄について、状況によって二つの異なる基準を使い分けること。日常における身近な例としては、「倫理(りんり)に基(もと)づき、公正、中立に、事実を正確、かつ客観的に報道する」ことを責務として掲(かか)げながら、特定の思想や主義の上に立った偏向(へんこう)報道や歪曲(わいきょく)報道、捏造(ねつぞう)報道などによって世論誘導を図ったり、自らに都合の悪いことは一切報道しなかったりするなど、状況によって姿勢や見解を都合良く変える日本のマスメディア(マスコミ)の活動が挙(あ)げられる。
※マスメディア:テレビ・新聞・ラジオ・雑誌・インターネットなどの、マスコミ(大衆伝達・大量伝達)の手段となる、大量の情報伝達が可能な媒体(ばいたい)。また、マスメディアにより情報を発信する組織。


※『論理パズル』、および『各種論理(弁証法・類推・仮説形成など)』の記事は、『論理パズルと、各種論理』のページに移動しました。

小手先テクニック・感覚判定法の例

例年、当方が指導を担当する生徒たち数名から、国語の選択問題は以下に挙げたような方法で解決するよう塾の先生や家庭教師から指導されたという話を聞かされます。読解を前提としない機械的判別法や、感覚や印象によって解決を導く「小手先テクニック」と呼ばれる合理性の無い手法ですが、作問者はこのような手法によって選択肢の判定を行う受験生が相当に存在することを承知のうえで作問していることを念頭に置いて学習する必要があります。

(1)「選択肢に書かれてある説明を前半と後半とに分け、前半を棒線で消し、後半の内容のみを比較して判断しなさい」
(2)「短い説明のものは選んではいけない。具体的な内容で、しかも説明が長めの選択肢を選びなさい」
(3)「極端に長い説明や、極端に短い説明のものは選んではいけない」
(4)「いかにも立派なことがらや正論が書かれているものは選んではいけない」
(5)「少しピントが外れた説明がされているものが正解である」
(6)「『断定的な表現』がされているものは選んではいけない」
(7)「傍線部に最も近い部分の説明を利用した選択肢は選んではいけない」
(8)「『音の似た語』が使用されている二つの選択肢を探して、どちらか一つを選びなさい」
(9)「本文中のキーワードが使用されていない説明の選択肢は選んではいけない」
(10)「二つの相反する説明があったら、どちらか一方が必ず正解である」
(11)「五択であれば1番目と5番目を選んではいけない。四択であれば3番目を選びなさい(2番という説もある)」
(12)「選択肢を検討する際、『大げさ』と感じるもの、『言い過ぎ』と感じるものは選んではいけない」
(13)「選択問題で直感力を最大限に発揮できるよう、普段からしっかりと鍛えておきなさい」
(14)「『暗い印象』の説明が書かれた選択肢は選んではいけない」
(15)「プラスイメージとマイナスイメージに分け、設問の方向性に合うほうを選びなさい」
(16)「選択肢の説明を本文の中に当てはめた時、『自然な印象』を与えるものを選びなさい」
(17)「作問者が一番最初に作った選択肢が正解なので、それを推定して答えなさい」
(18)「選択肢で最後に迷ったら、『比較的地味な説明』のほうを選びなさい」
(19)「選択肢で最後に迷ったら、『後のほう』の選択肢を選びなさい」
(20)「選択肢で最後に迷ったら、『正しそうに見えない説明』のほうが正解である可能性が高い」
(21)「選択肢で最後に迷ったら、『強い』と感じるものを選びなさい」
(22)「選択肢で最後に迷ったら、『常識的な説明』だと感じるものを選びなさい」
(23)「選択肢で最後に迷ったら、『まじめな印象を与える説明』のものを選びなさい」
(24)「選択肢で最後に迷ったら、『まじめすぎる印象を与える説明』のものは選んではいけない」
(25)「選択肢で最後に迷ったら、『穏やかな印象を与える説明』のものを選びなさい」
(26)「選択肢で最後に迷ったら、『正解だ』と思えるほうを信じなさい」
(27)「選択肢で最後に迷ったら、最初に『正解だ』と感じたものを信じなさい」

※現在、その他各種小手先テクニック、感覚や印象による「マル秘裏技」が蔓延し、これが大手・中小を問わず相当に多くの塾講師の方々、あるいは家庭教師の方々によって指導されています。選択肢の説明が設問の要求に対応しているかどうか、また、選択肢の説明の趣旨自体が正しいかどうかといったごく基本的な検討さえが一切行われず、形式的作業や感覚、印象に依るだけで誰でも簡単、確実に判定できるかのように指導されるので注意が必要です。子どもに未発達な視点を新たに付与するという意味では「テクニック」もまた全否定されるものではありませんが、「読む力」や「考える力」、「獲得する力」の育成、「精度の向上」が念頭に置かれないままにただ形式的な作業に陥ってしまってはいないか、今一度見直してみてはいかがでしょう。

■以下は多くの小学生(中学受験生)たちが指導を受けている非本質的な小手先テクニックの事例です。これをしたり顔で伝授する指導者の様子も含め、ご参考に是非動画をご覧になってください。(YOU TUBE)
『文章理解のコツ』テクニックだけで問題を解く方法教えます!(26分)
※多くの小学生(中学受験生)たちがこうした手法を『文章が速く正確に読める魔法のテクニック』として指導を受け続けています。
『センター試験』ズルい選択肢の選び方! 分からなくても答えが出る!(12分)
※こちらも多くの小学生(中学受験生)たちが『印象や感覚、機械的作業だけで解ける魔法のテクニック』として指導され続けています。

当サイトのコンテンツを剽窃しているサイトが複数存在します

剽窃について
・当サイトのコンテンツを剽窃しているサイトが存在します。
当サイトの記事、「枕詞一覧表」を剽窃しているサイト
・2018年7月現在、本サイトはコンテンツを改編中ですが、「枕詞30種の表」が改編前の内容と完全に同一です。ネット記事をコピー&ペーストしただけで作成されているサイトのようです。※枕詞一覧表
本ページ、「時間配分」の記事を剽窃しているサイト
・多少文面が加工されていますが、内容は完全に同一です。やはりネット記事をほぼコピー&ペーストしただけで作成されているブログのようです。
当サイトの「俳句・短歌の通釈」を剽窃しているサイトがあります。
・他にも本サイトの記事をコピー&ペーストしただけで作成されているブログやサイトが多数あるようです。※俳句の通釈:「は行」

※他にも本サイトの記事、その他を剽窃したブログやサイトが多数あるようです。


■作成:2010年(平成22年)11月30日
■追補・加筆・修正:随時