中学受験専門 国語プロ家庭教師(東京23区・千葉北西部)

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■【国語 選択問題の判別法 111の視点】

・受験国語の選択問題でよく用いられる手法を、主に論理的アプローチにより111種に分けて整理しました。
※ご注意
:PDF版の随時改訂を優先しているため、本ページの更新作業は時期が遅れます。最新の内容は冊子(PDF/全60頁)をご確認ください。(本ページ最終更新:2023年11月13日)

「国語 選択問題の判別法 111の視点(全60頁)」:無料PDF(製本用)のダウンロード(2023年11月25日改訂版)
■製本
・両面印刷後、二つ折りにし、ページ順に揃え、回転式ホチキス(100均で入手可能)で「中(なか)とじ」します。
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・B4用紙 / 印刷の向き:横 / 両面印刷:短辺とじ
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記事:正味60ページ(約89,000字)
データ量:約7MB
本資料は一見難しい内容に思えるかもしれませんが、大人の助力により、手順を踏んで説明すれば、小学5、6年生にもしっかりと理解させることが可能です。また、内容的に中学生や高校生の学習にも利用できます。
指導用の教材として利用される場合は、「生徒に教材を与えっぱなし」にして済まさず、生徒にとって有効な活用法を考慮願います。


目次

【基本的な論理】
①三段論法(演繹法) ※図あり
②暗黙の前提
③前提のすり替え
④因果関係
・因果の逆転
⑤矛盾
・自己矛盾
⑥背理法 ※図あり
⑦飛躍(論理的飛躍)
⑧論点のすり替え

【選択問題の判別法 123の視点】
一般手法

(1)論外
(2)カモフラージュ(カモ/偽装)
(3)ファンタジー💛(お花畑)
(4)キラキラワード(キラキラフレーズ)
(5)ホイホイトラップ(撒(ま)き餌(え))
(6)意味不明(イミフ/ちょっと何言ってんのか…)
(7)読み取り不能(ヨミフ/書かれていない)
(8)方向違い(崖からバンジー/方向ズレ)
(9)ウソ(デタラメ/違うこと言ってる)
(10)展開無視(ワープ/展開不一致)
(11)コピペ(フェイク/ダミー)
(12)直前トラップ(直前に書いてあるもん💛)
(13)要素不足(部品不足/ポンコツ)
(14)余計(蛇足/異物混入/お邪魔虫)
(15)表面的説明(形式的説明)
(16)視点違い(視点ずれ/よそ見禁止)
(17)論点違い(ロンチ/論点のすり替え)
(18)主観(どっかの誰かさんの考え)
(19)真逆(逆のこと言ってる)
(20)根拠無し(根拠不明/前提欠如)
(21)誇張(盛ったでしょ)
(22)誇張カモ (言い過ぎ?/大げさ?)
(23)強調カモ(こそ?/まさに?)
(24)断定(言い切ったな/断言)
(25)断定カモ (絶対に?/必ず?)
(26)限定(そんだけぇ~💛/限定的一致)
(27)限定カモ(だけ?/のみ?/しか?)
(28)全称(全部が全部!)
(29)全称カモ(全て?/どれも?/みな?)
(30)お楽しみ箱(びっくり箱)
※視点人物・象徴暗示・比喩(直喩・隠喩・擬人法)・皮肉反語逆説・擬声(音)語・葛藤・両価性・歴史的現在・会話表現・呼称の変化・主観的と客観的・絶対的と相対的、など。

飛躍(論理的飛躍)
(31)飛躍(論理的飛躍)
(32)意志飛躍(そんなつもりないし!)
(33)意志調整(積極度・消極度の調整)
(34)二分法(白黒思考)
(35)カゼオケ論法(ドミノ/連鎖飛躍)
(36)好意飛躍(別に好きじゃないし)
(37)期待・願望飛躍(別に期待してないし)
(38)矛盾(ちぐはぐ/とんちんかん)
(39)拡大解釈(意味広げたでしょ)
(40)単純化(単純な話さ)
*1:無理な一般化(例外は無いのけ?)
*2:逆は必ずしも真ならず(逆立ち表現)
*3:裏返しの飛躍(AでないならBでない?)

前提操作
(41)前提のすり替え(聞いてないよ!)
(42)暗黙の前提(暗黙の了解)
(43)人物像不一致(人物像のすり替え)
(44)人物関係のすり替え(関係性が違くね?)
(45)条件トラップ(条件作ってみた!)
(46)仮定トラップ(仮定文作ってみた!)
(47)因果トラップ(理由作ってみた!)
(48)基準トラップ(基準作ってみた!)
(49)推定妥当(確かにありうる!)
(50)主題違い(要旨違い)
(51)肯定前提(肯定してたっけ?)
(52)前向き前提(前向きだったっけ?)
(53)受け入れ前提(受け入れてたっけ?)
(54)理解前提(理解してたっけ?)
(55)認識前提(認識してたっけ?)
(56)好意前提(好きだったっけ?)
(57)期待・願望前提(期待してたっけ?)
(58)つまみ食い論法(チェリーピッキング)
*4:ダミー論法(わら人形論法)※歪曲・曲解
*5:道徳主義トラップ(道徳をダシにせよ!)
*6:自然主義トラップ(自然に倣え!)
*7:新規主義トラップ(新しければいいの?)
*8:伝統主義トラップ(古ければいいワケ?)

偽装論理
(59)因果の逆転
(60)因果要素の倒置
(61)偽装因果(因果関係作ってみた!)
(62)無関係(関連性無し/虚偽の関連付け)
(63)踏み込み不足
(64)類比論法(その例えは無関係!)
(65)価値トラップ(価値判断してないし!)
(66)比較トラップ(別に比べてないし!)
(67)価値比較(価値と比較の合体!)
(68)同語反復(循環論法/オウム返し)
(69)偽装飛躍(また引っかかったもん💛)
(70)屁理屈(ああ言えば、こう言う)
*9:前後即因果(祈ったから合格した!)
*10:疑似相関(見せかけの相関)

すり替え一般
(71)主語のすり替え(えっ、マジか!)
(72)対象違い(対象のすり替え)
(73)目的トラップ(目的作ってみた!)
(74)理由違い(理由作ってみた!)
(75)心情違い(気持ちが違う)
(76)定義のすり替え(定義ちがくね?)
(77)趣旨違い(意味違い/意味ズレ)
(78)説明不足(テキトーだな/具体性欠如)
(79)語のすり替え
(80)換言トラップ
(81)ぼかし語トラップ
(82)結論違い(ゴール間違えた)
(83)道筋違い(コース間違えた)
(84)きっかけ違い
(85)いきさつ違い(経緯違い)
(86)あらすじトラップ
(87)論点混在(めまいがする)
(88)比喩説明不適(実在トラップ)
(89)暗示・象徴トラップ
(90)具体例照合(落ち着いてあわてろ)
(91)非主要(後回しでよくね?)
(92)一般論(一般論はさておき)
(93)常識・道徳論
(94)迂言(うげん)法
(95)要素倒置
(96)半分ずっこ(ハーフ&ハーフ)
(97)前後同一(前後同内容/前後同一要素)
(98)不正流用(別件の説明・理由)
(99)替え玉(身代わり)
(100)偽証トラップ
(101)反対語トラップ
(102)可能性トラップ
(103)回想部の変造(思い出作ってみた!)
(104)語句矮小化(なんか意味弱まった…)
(105)論点矮小化(大した問題かよ!)
(106)成り済まし(偽装理由)
(107)それってあなたの感想ですよね!
(108)事実の主張へのすり替え
*11:単純例示
*12:否定不能(消極的肯定)

おびき寄せ(印象操作)
(109)おびき寄せ(コラージュ作品)
(110)おとり
(111)正答もどき(ゴースト)

心理操作術
①確証バイアス
②初頭効果
③新近効果
④アンカリング(初期値提示誘導)
⑤誤前提暗示
⑥イエス誘導法
⑦事後情報効果
⑧催眠誘導
⑨ゾンビ効果
⑩サブリミナル効果 (隠し誘導文)

基本的な論理(続き)
⑨弁証法 ※図あり
⑩類推(類比推論/アナロジー) ※図あり
・類比論法
⑪仮説形成(アブダクション) ※図あり
⑫帰納法 ※図あり

その他
・自己矛盾(→基本的な論理⑤ 矛盾)
・レッテル貼り(→《40》)
・だって論法
・悪魔の証明
・疑似相関(見せかけの相関)
・同語反復(循環論法)
・二重語法(曖昧語法)
・のび太論法・ジャイアン論法

論理パズル
『背理法で犯人を見つけろ!』
『Aさんの帽子は何色か?』
『5人の宇宙人』
『今週のジャイアン当番』
『天使と悪魔と人間』
『二つの砂時計』※図あり
『消えた1,000円の謎』
『偽金貨はどれだ?』


はじめに
・選択問題(択一式問題)において、解答者を誤答に誘導するために作問者がよく用いる手法の一覧です。子どもたちは大人が当然備えているような様々な視点や検討力が未発達です。そのため、塾講師や家庭教師は子どもたちの未発達な能力を育成すべく、また、新たな視点を付与すべく、試行錯誤を重ね、様々な技術を工夫して指導しています。以下の手法を見抜くことで選択問題の全てが解決するというわけではありませんが、子どもたちに新たな視点を付与し、検討力を培うという意味で、一つの参考としていただければと思います。また、子どもたちにとっては、本文内容との十分な照合・検討の訓練を継続的に行い、正確な判断と解決が迅速に行えるよう、普段から本質的な学習を積み重ねてゆくことが大切です。

       

・これまでに当方が担当した生徒たちの話によると、国語における選択問題の解き方については、自分が習っている塾の先生や家庭教師から、「『言い過ぎ』であったり『大げさ』であったりすると感じられるものは除外しなさい」「残った二つのうち、『強い』と感じられるほうを選びなさい」、「『真面目な印象』、『明るい印象』を与える選択肢を選びなさい」「直感を信じ、普段から直感力を鍛(きた)えておきなさい」といった「感覚や印象による判別法」の他、「『断定表現』や『限定表現』のある選択肢は選ぶな」「『全て・どれも・みな』」のような包括(ほうかつ)表現が使われた選択肢は選ぶな」「選択肢の各文を前半と後半とに分け、前半を棒線で消し、後半や文末に書かれた内容のみで判断しなさい」「選択肢に書かれてある文を二~三の部分に分け、それぞれの部分が本文の内容に一致すれば正解である」といった「機械的な判別法」が指導されてきたというケースが相当数ありました。これは、高校受験や大学受験での指導においても一般のようです。
※消去法について:「(テストや入試では選択肢を検討するための十分な時間が無いため、)消去法によって最後に残った選択肢を(検討抜きに)自動的に正答と判断してよい」と指導されるケースが少なくない。

 「印象や感覚」、あるいは「機械的処理法」に頼って結論を出すというのは、「鉛筆やサイコロを転がして答えを決める」のと違いはありません。作問者もまた、多くの受験生がそのような手法によって国語の問題に当たるよう指導されていることを承知したうえで誤答に誘導しやすいよう工夫を加えながら作問をしています。

 中学受験を特に専門としているプロの指導者にはそのような手法を真面目に教授する人は多くありませんが、そうした指導を受けている生徒たちを見て感じるのは、「自分の頭を使って文章を読むための訓練を受けていない」、「自分自身の能力を発揮して問題を解決しようという姿勢が感じられない」、「国語は簡易な方法によればどんな問題でも解決するものと信じ込まされている」、「行き詰まるとすぐに安直な手法に逃げる」、といった傾向がとても強いことです。

 かつて、当方が担当した生徒の中に、「私は作問者と戦うつもりで問題に当たっています」と力強く言い切る者がいましたが、そのように直接には表現せずとも、その取り組みに「問題に真っ向から向き合う姿勢」、「問題を解決しようという姿勢」が現れている子どもたちと、逆に「問題を直視しようとせず、楽な道に逃げて済まそうとする」子どもたちとを比較してみると、大げさな表現にはなりますが、そこにはその時の子どもの「生き方の姿勢」がそのまま反映しているようにも思えて不安になります。

■中学受験を目指す小学生のみなさんは、中学校側が求めている生徒像がどのようなものかを今一度考え、それをよく心に受け止め、思考したり苦闘したりせずともあらゆる夢を楽に叶(かな)えてくれる「魔法の杖(つえ)」の存在を信じて安易にそれに飛びついてしまうのではなく、また、大人に自分の成長を任せきるのでもなく、「自分で自分を育てる姿勢」、「直面した問題を一つひとつ、自身の持てる力を最大限に発揮して解決してゆく姿勢」、「自分の人生を自分の力で築き上げていく姿勢」の大切さを忘れずにいてください。

 また、中学受験国語は、論理や思考力だけで全ての問題が解決するわけではありません。日がな一日机に向かうばかりでなく、時に外界へと視野を広げ、自然や世の中のさまざまな事象に目を向け、五感を働かせて、触れ、感じ、想像し、考えてみる。そして、人と人との関わりを大切にし、自分の未来にしっかりと目を向け、一つひとつ自分の生き方を見定めてゆくつもりで、自分自身を磨(みが)き、育(はぐく)んでゆく。そうした姿勢こそが、揺(ゆ)るぎない自分という存在の礎(いしずえ)を築き、人間としての幅を広げ、心の豊かさを培(つちか)うための大切な勉強であると言えます。そのことを常に胸の底に置いて、日々の学習に勤(いそし)んでもらいたいと思います。中学受験は、君たちが、君たち自身の人生における、その「生き方を学ぶ場」でもあるのですから。

■作問に携(たずさ)わる方々には、受験生の思考力や分析力、検討力を測る本来の目的に沿(そ)い、その場しのぎの安直な手法や機械的な手法によって容易(たやす)く崩(くず)されないよう、巧(たく)みに工夫を施(ほどこ)してもらいたいと思います。今後、『三択で迷う』形式や『不適切肢を選ぶ』形式の選択問題を増やすのも一手でしょう。
 また、塾講師や家庭教師の先生方にも、子供たちが論理的な思考力と多角的な検討力とを備え、自分の頭をよく使い、思考作業による判断と結果に確かな手応(てごた)えを得られるよう、精緻(せいち)な工夫を指導に施(ほどこ)してもらいたいと思います。

■以下は多くの小学生(中学受験生)たちが「正攻法」として指導を受けている非本質的な小手先テクニックの事例です。これをしたり顔で伝授する指導者の様子も含め、ご参考に是非動画をご覧になってください。(YOU TUBE)
『文章理解のコツ』テクニックだけで問題を解く方法教えます!(26分)
※多くの小学生(中学受験生)たちがこうした手法を『文章が速く正確に読める魔法のテクニック』として指導を受け続けています。
『センター試験』ズルい選択肢の選び方! 分からなくても答えが出る!(12分)
※こちらも多くの小学生(中学受験生)たちが『印象や感覚、機械的作業だけで解ける魔法のテクニック』として指導され続けています。

       

本項とは別件ですが、「就」の正しい字形について、第11画を「飛び出すのが正しい」と指導される先生がここ10余年の間に大分減ったように見受けられますが、現在でもまだ同様に指導されている先生がいらっしゃるようですので、以下のページを是非ご参照ください。(2019年1月21日追記)

「就」の正しい字形について
PDFのダウンロード(全1ページ)



基本的な論理① 三段論法


三段論法とは、「二つの前提」から「一つの結論」を導き出す推論形式で、論理展開の基本とされます。「前提」とは、「結論」を導くための「根拠となる条件」のことです。「前提」は、「論理の土台」となり、因果関係を組み立てるうえでの重要な要素です。
・読解においては、「思考の迷い」や「判断の揺らぎ」を起こさないために、正確な読解に基づいて「前提」をしっかりと固定する必要があります。

①【大前提】で「全体のことがら(一般法則)」を述べます。
 ・クモは8本脚(あし)だ。
②【小前提】で「一部のことがら(個別事例)」を述べます。
 ・コガネグモはクモだ。
③二つの前提を「根拠」として【結論】を導きます。
 ・だから、コガネグモは8本脚だ。

・「大前提」の「クモ」の中にはもともと「コガネグモ」が含まれているわけですから、「大前提の中に既に『結論』が含まれている」という捉え方ができます。

■国語の読解において本文の内容を正しく把握し、把握したその内容を「前提」として各設問に当たる必要がある。普段、部分的な読み方や機械的な読み方に傾注していると、大事な「前提」が踏まえられず、各問いに当たる度に「思考の迷い」や「判断の揺らぎ」を起こしてしまう。正しく「根拠」に基づかず、「感覚」や「推測」、「思い込み」に頼って解答を決めたり、断片的な情報に頼ってばかりいると、いつまで経っても「的確な判断」ができるようにはならない。「前提を把握し、固定する」こと、「筋道を立てて考える」こと、「根拠を構築する」こと、「多角的に検討する」ことの大切さについてよく認識し、「設問の要求」に正しく沿って問題解決に当たれば、選択問題だけでなく、抜き出し問題や記述問題等、その他の形式の問題においても解答精度は自ずと向上してゆくものだ。

基本的な論理② 暗黙の前提

言明されていない前提
・日常の会話等では、「クモは8本脚(あし)だろう。だから、コガネグモだって8本脚なんだね。」と表現しても、特に意思疎通に支障は無い。それは、「コガネグモはクモの一種だ」というもう一つの「前提」が当事者間で暗に「共有」されているためだ。

暗黙の前提:「特に言明せずともわかりきった前提」を「暗黙の前提(暗黙の了解)」という。中学受験国語の読解学習においては、本文の正確な内容把握により、「明示された前提」と「表現の裏にある前提」に加え、「暗黙の前提」の三つをしっかりと押さえることが大切だ。そして、両者を把握(はあく)するうえで大切なのが「本文の通読」であることは言うまでもない。筆者(作者・登場人物)、作問者、受験者との三者間で「前提を合致させておく」必要があるからだ。前提が合致していないと、判断はその都度揺れを起こす。
・また、日常の会話等においては、両者で前提となっている事柄の全てをいちいち確認し合っていては話が進まない。しかし、自分と相手との間で前提が一致していると思い込んで主張を進めてしまうと、「前提の不一致」による水掛け論(両者が自説にこだわって争い、いつまでも結論の出ない議論)に陥(おちい)ったり、齟齬(そご:意見などが食い違うこと)が生じたりして人間関係にまでひびが入ってしまうこともあるので注意しよう。

「暗黙の前提」による結論例
① クジラは海中にすむほ乳類である。
② ほ乳類であるクジラには、「飲み水=塩分を含まない水」が必要だ。
③ 一般に動物は、食べた食物の栄養分が分解される際に水ができる。
④ 特に脂肪を分解する際に多くの水を得ることができる。
⑤ クジラの食物には多量の脂肪分が含まれている。
⑥ クジラの体にもまた、多くの脂肪が蓄えられている。
⑦ よって、「クジラは自らの体内で水を作ることができる」と言える。
⑧ つまり、「人間は、自らの体内で水を作ることができる」ということだ。

・⑦までの文脈により「結論⑧」を導くのは「論理的飛躍」ではないかと思われるが、③にある「動物」には「陸にすむほ乳類である人間」が除外されているわけではない。ただ、小学生の場合、本文が「クジラの飲み水」についての説明文であることに強く引っ張られ、人間を無意識に除外して考えがちである。そこで、③については、「クジラと人間とはすむ環境がまったく異なる『動物』ではあるが、『ほ乳類であるという点で体のしくみが共通しており、体内で水を作るしくみもまた共通している』」と捉え直すことができ、本文で直接にはそのように言明されておらずとも、この内容を「暗黙の前提」として⑧の結論を導くことができる。選択問題での選択肢に⑧の説明がある場合、小学生の多くは「暗黙の前提」を捉えられず、この選択肢を消去してしまうため、正解率が極端に低くなる。

基本的な論理③ 前提のすり替え

前提のすり替え
・ある主張(結論)が成り立つための大もととなる「本来の前提」を、「それと一致しない別の前提」に作為(さくい)的に変更したうえで説明を展開することを「前提のすり替え」といいます。

・花子さん:「夏休みの宿題、もう全部終わったし!」(前提:自分は自力で宿題を処理した)
・愛子さん:「先生にバレなきゃいいね!」(前提:花子はズルい手を使って宿題を処理した)
・花子さん:「違うってば! もうっ! 意地悪!」(結論:信頼関係が深まる!)

・「花子さんは実際に自分一人の力で全ての宿題を早く片付ることができた(正しい前提)」のですが、愛子さんはこの「事実=前提」を承知しながら、「花子さんが何かズルい手を使って宿題を早く片付けることができた」という「別の前提」に「わざと変更=すり替え」を行ったうえで、意地悪く応答しました。

◎「前提のすり替え」は、選択問題においても誤答に誘導する手法としてしばしば用いられる。本文を拾(ひろ)い読みしただけでは「前提の誤り」を見抜くことができず、判別を困難にする。本文における「前提」と選択肢の説明における「前提」とが合致しているかどうかを見極められるよう訓練しておこう。

人物像のすり替え
・「
人物像のすり替え」は「前提のすり替え」の一種で、選択問題において誤答に誘導するための手段として用いられることがあります。

・太郎君:「パッパラッパッピ~‼ ホゲホゲ~‼」(前提:ふざけてみただけ)
・次郎君:「今、救急車呼んでやるからな!」(前提:太郎君は体調に異変が起きた人である)
・太郎君:「オレ、ビョーキじゃないし!」(結論:二人はより親密になる!)
・太郎君は、ちょっとおどけて、滑稽(こっけい)な仕草(しぐさ)をしながら唐突に奇声を上げました。次郎君は、それが「太郎君による故意の振る舞いであることがわかっていながら=太郎君が健常であるとわかっていながら(前提)」、わざと「太郎君の体調に異変が起きた」という「前提」に「変更=すり替え」て、「医者に診(み)てもらう必要」を訴(うった)えてみせました。
・日常においては、前提をすり替えた発言をわざとすることでユーモラスなジョークになることもあれば、相手を貶(おとし)めたり、責任追及を回避したりするための詭弁(きべん)として用いられることもあります。
※詭弁(きべん):相手を言いくるめるために、無理やりこじつけた論理で都合よく展開する弁論。

基本的な論理④ 因果関係

・ある事柄が「原因」(前提)となり、その「結果」として別の事柄が引き起こされる関係を「因果関係」という。

・太郎君:「この間、歩いていて木に頭をぶつけたよん!(原因)」
・次郎君:「そっか! だから、最近タロちゃんは勉強がよくできるのかあ!(結果)」

・読解学習においては、「原因」と「結果」との間の「関連性や連続性」をしっかりと掴(つか)みながら本文を読もう。また、日常においては、ものごとについて考える際に「論理的矛盾(むじゅん)や論理的飛躍」が起きないよう注意し、何か問題が起きた際には、「結果」から遡(さかのぼ)って「原因(前提)」を探り、確かめ、検討する、という手順を踏んで対処しよう。

因果の逆転:選択問題において、「受験生が多いから、塾が多い」を「塾が多いから、受験生が多い」のように、本文における「本来の因果関係を逆転」させて説明し、誤答への誘導を図る場合がある。「本文中に書かれてあるか、無いか」といった「要素の有無」のみを判断基準にしていると「因果の逆転」に気づかない恐れがあるので注意。

基本的な論理⑤ 矛盾

両立不可能

・昔、中国の楚(そ)の国で、矛(ほこ)と盾(たて)とを売っていた商人が、「この矛は、どんなにかたい盾をも突き通すことができる。また、この盾は、どんなに鋭利な矛であっても突き通すことができない」と言って誇(ほこ)った。すると、見物人が、「では、その矛でその盾を突いたらどうなるか」と問うたところ、商人は返答に窮(きゅう)してしまった。

矛盾:二つの事柄のつじつまが合わないこと。論理的な食い違いがあり、筋が通らないこと。撞着(どうちゃく)ともいう。
・上の例では、「この矛(ほこ)はどんなにかたい盾(たて)をも突き通すことができる」という主張[A]と、「この盾はどんなに鋭利(えいり)な矛であっても突き通すことができない」という主張[B]は、論理的に整合しない。つまり、「A」の主張を「正しい」と認めた場合は「B」の主張が「誤り」となり、逆に「B」の主張を「正しい」と認めた場合は「A」の主張が「誤り」となって、二つの主張を両立させることが不可能なのだ。

自己矛盾①
・花子さん:「この世界に『絶対』と言えるものなど、何一つ無いのだわ!」(何一つ=絶対に
・愛子さん:「『絶対が存在しない』ことが『絶対』だなんて、あんた、言ってること、絶対おかしいわよ」

・花子さんは、「この世界に絶対といえるものは存在しない」と言いつつ、自分のその発言が「絶対のものだ」と主張しているので、その主張は矛盾していると言えます。

自己矛盾②
・太朗君:「『インターネットの情報は信用してはいけない』って、ネット記事にあったよ」
・次郎君:「ということは、『インターネットの情報は信用してはいけない』というネット情報も信用してはいけない、ってことになるね」

自己矛盾:自分自身の考えや言動の中に食い違いが生じ、矛盾すること。自己の言動に自己を否定する要素を含んでいること。自家撞着(じかどうちゃく)ともいう。「あの子、いつも他人の批判ばかりするからダメなのよ(自分自身が『あの子』の批判をしている)」という主張も「自己矛盾の例」として覚えておくとよいだろう。

基本的な論理⑥ 背理法

背理法とは、「背理法」とは、「①:ある主張」について、「②:その主張を否定した仮定」を行い、それにより生じる「③:矛盾」を示すことで「仮定の誤り」を導き、結論として「④:当初の主張が正しい」ことを証明する方法です。ただし、主張(結論)が本当に正しいかどうかは、検証によって証明される必要があります。

①「お母さん、僕、勉強サボってないよ」(主張
②「もし勉強をサボっていたのなら…」(主張を否定した仮定
③「ほら、1時間でこれだけの宿題が終わるはずがないよ」(矛盾の指摘
④「だから、僕は勉強をサボってないよ」(結論=主張

※さぼる:フランス語の「サボタージュ(怠業/たいぎょう)」を語源とし、「怠(なま)ける」という意味で大正時代から使われているが、俗語なので、記述解答やあらたまった場面では使用すべきでない。
※俗語(ぞくご):あらたまった場面では用いられないような、品の無い、くだけた言葉。

・別の例文:①「私は犯人ではない」→②「もし私が犯人なら」→、③「犯行時刻に、犯行現場であるA町にいたはずだ。でも、その時私はB町にいた。証人もいる」→④「だから、私は犯人ではない」

・上記の例文と図を参考に、下の空欄に背理法を使った簡単な例文を考えてみてください。

①「                              」(主張)
②「                       」(主張を否定した仮定)
③「                           」(矛盾の指摘)
④「                           」 (結論=主張)

記号選択問題での消去例
・「もし『ア』が正しいとすると『▲』という矛盾が生じるので、『ア』は正解ではない」というように選択肢を背理法で消去できる場合があるので、是非練習してみてほしい。

①「空欄Aに選択肢『ア』は入らない」(主張
②「もしAに『ア』が入るなら」 (主張を否定した仮定
③「時間の経過上、文脈が不自然だ」(矛盾の指摘
④「だから、空欄Aに『ア』は入らない」(結論=主張


基本的な論理⑦ 飛躍(論理的飛躍)

論理の飛躍
・論理が正しい手順を追わずに飛び越して進むことを「論理の飛躍」という。「前提」と「結論」との間に隔たりがあり、その因果関係が不明確な場合が多い。一例に過ぎないものを強引に 「一般化 」したり、 「結論 」を導くために必要な 「前提 」が不十分だったり、関連性の無い「前提」をもとに強引に「結論」を導いたりと、「論理的飛躍」は日常的にも起こりやす く、相手との間で齟齬(そご:意見などの食い違い)が生じてしまうこともあるので注意しよう。

①花子はおしゃれだ。(大前提
②花子は女の子だ。(小前提
③だから、女の子はおしゃれだ。(結論

・①と②の「前提」いずれもが正しいとしても、「花子一人の性質」をそのまま「女の子全体の性質」として「一般化」して結論づけてしまうのは、「正しい筋道を踏み越えている」と言える。「花子以外の女の子の性質」を「前提に置かず」に、「女の子というものは皆おしゃれなものだ」と一方的に決めつけているからだ。「一部」に言えることを「全体」の傾向として結論づけるのは、「論理の飛躍」である。

※一般化:一部の事例をもとに、それを普遍的な概念に拡張すること。普遍化。
※抽象化:多くのものごとが共通して持っている性質だけを抜き出し、それらを同類のものごととして捉えること。

◎選択問題では、誤答に誘導するために「論理的飛躍」の手法がしばしば用いられる。思い込みが強かったり結論のみを急いでいたりすると「飛躍」に気づきにくく、判別も困難になる。「前提」と「結論」との間の「関連性・連続性・因果関係」を的確に捉(とら)え、また、「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」といった「可能性の視点」も持って、客観的、総合的に判断しよう。

◎選択肢の説明内容が「『言い過ぎ』、『大げさ』、『極端』だと感じられるものは選ぶな」、「『強い』印象やポジティブな印象を与えるものを選べ」、「『断定表現』や『限定表現』のあるものは選ぶな」、「『弱い』印象やネガティブな印象を与えるものは選ぶな」といった、「印象や感覚に依存(いそん)する手法」や「機械的処理法」が指導されているケースが非常に多く見受けられる。本文の内容(前提)に基づいて論理的に検討し判断するというのではなく、そうした処理法によって解答を判断するというのは、鉛筆やサイコロを転がして解答を決めるのと違いはない

基本的な論理⑧ 論点のすり替え

・論点とは、「議論の中心となる問題点」のこと。論点を意図的に変更することを「論点のすり替え」という。

・花子さん:「愛ちゃん、あんた、約束守ってねって、言ったでしょ!」(正しい論点)
・愛子さん:「ふんっ! 花ちゃんだって約束破ったことあるじゃん!」(別の論点)

・花子さんは「愛子さんが約束を守らなかったこと」を論点として追及(ついきゆう)しているのですが、愛子さんはその論点をかわし、「過去に花子さんが約束を守らなかったこと」を新たな論点として都合よく変更してしまいました。

◎日常においては、特に互いに意見を主張しあう議論の中で、つい論点が逸(そ)れてしまったり、そもそも論点が明確でなかったりといった経験をすることがあるだろう。自分の据(す)えた論点はもとより、相手が「何を論点として主張しているのか」をしっかりと押さえながら、感情に流されず事実に基づいて論理的に主張を展開するよう心掛けよう。
◎また、自分の誤った意見を正当化したり、正しい主張に見せかけたりするための詭弁(きべん)の一種として「論点のすり替え」が用いられることがあるので、議論をする際にはこれも念頭に置いておくとよい。
※詭弁(きべん):誤っていることを、意図的に正しいと思わせるように仕向けた誤魔化(ごまか)しの議論。
◎選択問題においても、誤答に誘導する手法の一つとして「論点のすり替え」がしばしば用いられる。「本文における各所の論点」、「設問における論点」、「各選択肢における論点」について、それぞれをしっかりと押さえ、それを軸(じく)に正しく方向づけて思考しよう。

■国語 選択問題の判別法 111の視点

■以下の判別法によって全ての選択問題が解決するわけではありません。視点や検討力が未発達な子どもたちに提示できる、ものごとを多角的に検討する際の視点の例としてご参考ください。
■作問に携(たずさ)わる方には、受験生の思考力や分析力、検討力を測る本来の目的に沿(そ)い、その場しのぎの安直な手法、機械的な手法によって容易(たやす)く崩(くず)されないよう、巧(たく)みに工夫を施(ほどこ)してもらいたいと思います。また、塾講師や家庭教師の先生方にも、子供たちが論理的な思考力と多角的な検討力とを備え、自分の頭をよく使い、選択肢の判別結果や思考作業の結果に確かな手応(てごた)えが得られるよう、高度で精緻(せいち)な工夫を指導に施(ほどこ)してもらいたいと思います。今後、『三択で迷う』形式や『不適切肢を選ぶ』形式の選択問題を増やすのも一手でしょう。
■一つの選択肢に複数の手法が用いられている場合があります。


印の項目を優先して確認してください。

【一般手法】

★(1)論外
・設問の要求に対し、選択肢の説明における内容が明らかに間違っている。「読み取れない」、「本文の内容に沿(そ)わない」、「嘘(うそ)」、「根拠無し」、「情報無し」、「無関係」、「趣旨違い」、「方向違い」など、比較的除外しやすい。
※「選択肢を全部検討する時間は無いので、消去法によって最後に残った選択肢を正答と判断してよい」と指導されている受験生が少なくないが、各選択肢の吟味(ぎんみ)が不十分だと、(2)「カモフラージュ」や、(42)「暗黙の前提」等、「正解でありながら正解と思えなくする手法」が用いられた正答肢を「確信を持って消去」してしまう恐れがあるので注意が必要。
※「設問で何が要求されているのか」を確かめもせずに、また、「本文を照合せず、記憶に頼って選択肢どうしの読み比べだけで判断する」受験生が相当に存在することを作問者が承知のうえで作問していることを忘れてはならない。

★(2)カモフラージュ(カモ/偽装(ぎそう))
・文中語句を敢(あ)えて使用せずに言い換(か)えたり、抽象(ちゅうしょう)化したり、あるいは一歩踏み込んだ説明をしたりすることで、「正解でありながら正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある」。十分な検討をせずに、専(もっぱ)ら「印象や感覚」、あるいは「機械的処理法」に頼って解答を決める受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。(1)「論外」として早々に除外してしまわぬよう注意しよう。普段から「言い換え」や「抽象化」、「踏み込み理解」の視点を持って読解学習や記述学習に取り組んでおきたい。
※カモフラージュ:偽装(ぎそう)。ある事実を覆(おお)い隠(かく)すために、他の体裁(ていさい)を装(よそお)うこと。カムフラージュ。(フランス語)

★(3)ファンタジー💛(お花畑💛)
・事実に基(もと)づかない空想的な虚構(きょこう)や、都合のよい勝手な解釈や突飛(とっぴ)な解釈が尤(もっと)もらしく述べ立てられている。素材文を「はじめに結論ありき=自分が期待する結論に沿うように都合よく想像しながら読む」のではなく、「事実を踏まえて客観的、論理的に読み、捉(とら)える」習慣を身に付けたい。(1)「論外」の一種。
※ファンタジー:現実にはありえない、幻想(げんそう)的、空想的な世界。
※お花畑:一面に広がるのどかな花畑から連想される、喜びと幸福に満ちあふれ、まばゆく、美しくきらめく愛と光の洪水(こうずい)の中で、うっとりとした気分に浸(ひた)りながら、希望の歌を口ずさみ、舞(ま)い、踊(おど)っては、心地よく安楽に暮らしてゆける、永遠の平和と安息が約束された、素晴らしい夢の世界。また、理想にとらわれて現実を認識することができない人が生きる、夢想や幻想(げんそう)の世界。
※突飛(とっぴ):常識からひどく外れていて、思いがけないさま。

★(4)キラキラワード(キラキラフレーズ)
・「くじけない・あきらめない・努力する・力を出し切る・力の限り・力いっぱい・力を合わせて・支え合う・全力で・精一杯・一生懸命に・自分を信じる・自分に打ち勝つ・立ち向かう・自分自身に向き合う・自分を見つめ直す・困難に向き合う・困難を乗り越える・現実に向き合う・現実を受け入れる・前向きに生きる・未来を見つめる・一瞬一瞬を大切に・人生の生き甲斐(がい)・信念を貫(つらぬ)く・意志を貫く・成長をとげる・自分を大切にする・自分に正直に生きる・自分らしさ・自分らしくありのままに生きる・ありのままの自分・相手の心に寄り添(そ)う・心のよりどころとする」などのように、精神力によればいかなる障害も克服(こくふく)できるとする「精神論」や、「人間の生き方・生きる姿勢」に通ずる表現等、情緒(じょうしょ/じょうちょ)や信念に訴(うった)えかける語句を目立つよう作為(さくい)的に使用し、誤答肢に誘導する。美しくキラめくものに幻惑(げんわく)されて正常な判断力を失わないよう注意。(109)「おびき寄せ」の一種。
※幻惑(げんわく):ありもしないことに惑(まど)わされること。

★(5)ホイホイトラップ(撒(ま)き餌(え))
・本文中の「キーワード」や「キーフレーズ」、また、(4)「キラキラワード」や「魅力的・理想的な語句」等を華(はな)やかに散りばめて目立たせ、逆に「正答肢」には「言い換えられた語句」を使用してカモフラージュ(偽装)して誤答肢におびき寄せる。「読む力」や「検討する力」が不足し、目立つ言葉や断片情報にばかり気を取られて感覚的な判断をしがちな受験生が誘導されやすい。自分から喜んで罠(わな)に掛かっていくようなマネが繰り返されぬよう、思考力をしっかりと身に着けよう。「何度も何度もやすやすと同じ手に引っかかりまくり!」でいてはいけない。(109)「おびき寄せ」の一種。
※ホイホイ(と):獲物(えもの)がたやすく、次々と罠(わな)に掛かって来るさまを表す擬態語。
※トラップ:罠(わな)。
※撒き餌(まきえ) :魚や小鳥などをおびき寄せるために、餌(えさ)をまくこと。

★(6)意味不明(イミフ/ちょっと何言ってんのか分からない/曖昧(あいまい))
・何が言いたいのか、意味がさっぱりわからない。あるいは、意味内容が曖昧(あいまい)で捉(とら)えにくい。ただし、正解でありながら言い換(か)え等により正解と思えなくする(2)「カモフラージュ」や、(42)「暗黙の前提」等の手法が用いられた「正答肢である可能性」も排除してはならない。(1)「論外」の一種。

★(7)読み取り不能(ヨミフ/述べられていない/書かれていない/情報無し)
・その説明内容を一切本文から読み取ることができない。ただし、正解でありながら言い換え等により正解と思えなくする(2)「カモフラージュ」や、(42)「暗黙の前提」等の手法が用いられた「正答肢である可能性」も排除してはならない。(1)「論外」の一種。

★(8)方向違い(崖(がけ)からバンジー/見当違い/的(まと)外れ)
・「設問の要求」に対し、「異なった方向性での見当違いの説明」となっている。「設問の要求」を正しく把握(はあく)せず、「思考の方向」を正しく定めぬままに判断しようとする受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。見当違いの方向に全力で突き進んで崖(がけ)から派手に転落せぬよう、設問の要求を正しく把握し、正しく方向付けて思考する訓練を怠(おこた)りなく。(1)「論外」の一種。

★(9)ウソ(デタラメ/違(ちが)うこと言ってる/内容違い/でっち上げ)
・説明内容そのものがデタラメである。表現や文脈の調整によって、それらしい、説得力のある説明に見せかけてあるので、「説明から受ける印象や感覚によって安直に判断」したり、あるいは「記憶に頼って選択肢の読み比べだけで判断」したりしないように。また、単眼的に「要素の有無」や「要素の正否」だけを基準として判断するのも危険だ。(1)「論外」の一種。
※でっち上げ:事実でないことを本当らしく仕立て上げること。捏造(ねつぞう)。

★(10)展開無視(ワープ/展開不一致(ふいっち))
・本文における「時系列」、あるいは、「展開や変化」に合致(がつち)しない説明となっている。「本文の情報を部分的、断片的に拾(ひろ)い上げていくような読み方」や、「記憶に頼って選択肢の読み比べをする」だけでは対処できないため、通読段階で本文全体における「大きな流れ=時系列や展開・変化、構成」等をしっかりと掴(つか)みたい。「この時点ではまだそのような心情を抱(いだ)いていない」、「この時点では以前の主張を修正している」というように、問われている箇所(かしょ)を「基点」として「それ以前に起きたこと(述べられていること)と、それ以後に起きること(述べられていること)」との連続性や関連性を全体視点で把握(はあく)できるよう訓練を積んでおこう。
※展開:時間や筋道に沿って出来事や話が進行していくこと。

★(11)コピペ(フェイク/ダミー)
・本文中から一部をそっくり引用して説明らしく見せかけてあるだけで、実は設問の要求には何も答えていない。「本文に書いてあるから」、「線部の近くに書いてあるから」といった安直な判断の仕方をせぬよう注意。(109)「おびき寄せ」の一種。
※コピペ:コピー・アンド・ペーストの略。俗語(ぞくご)。他の文章から必要な部分の写しを取り、それを別の場所に貼(は)り付けること。
※フェイク:偽物(にせもの)。本物に似せて偽装(ぎそう)した作り物。ダミー。

★(12)直前トラップ(直前に書いてあるもん💛)
・問われている箇所(かしょ)の「直前」に書かれてある内容をそっくり引用して説明してあるだけで、実は設問の要求には全く対応していない。問われている箇所の、特に「直前」に書かれてある事柄(ことがら)にしか注意が向かない受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。「線部の直前に書いてあるから」とか、「本文に書いてあるから」といった単純な理由で選択してしまわないこと。「自分の頭をよく使って読み、考えて解く」訓練を怠(おこた)りなく。(11)「コピペ(フェイク/ダミー)」、(109)「おびき寄せ」の一種。
※トラップ:罠(わな)。

★(13)要素不足(部品不足/ポンコツ)
・説明が完結するための要素が不足している。要素不足に気づかれないよう、表現や内容を微妙(びみよう)に調整してある場合が多い。また、問われている箇(か)所の前後数行を読むだけでは「求めるべき要素」を読み取れない可能性があるので、全体視野で本文の文脈や展開、構成等を捉(とら)える訓練を積んでおこう。

★(14)余計(蛇足(だそく)/異物混/入お邪魔虫)
・選択肢の説明は全体的には正しく思われるが、実は密(ひそ)かに「偽(にせ)要素」が埋め込まれている。埋め込みに気づかれないよう、表現や内容を微妙に調整してあることが多く、「正しい要素が全て含まれていれば正解」といった機械的、単眼的な判断法では見抜けない恐れがある。

★(15)表面的説明(形式的説明) ※(63)『踏み込み不足』参照!
・上辺(うわべ)をなぞっただけの表面的、あるいは形式的な説明がなされているのみで、設問の要求に対する「根本的・本質的な説明」にまで踏み込んでいない。

・太郎君:「あの倉庫、どうして火事になったのかなあ!」
・次郎君:「燃える物がそこにあったからに決まってるじゃないか!」

・上の例では、本質的な論点は「燃えるものがそこにあったかどうか」ではなく、「発火を引き起こす根本的・本質的な要因が何であったか」である。説明内容自体に矛盾や誤りがあるわけではないため、感覚的に誘導されてしまわぬよう注意しよう。

★(16)視点違い(視点ずれ/よそ見禁止)
・選択肢の説明文中に「無関係な視点要素」が組み込まれている。「設問の要求」に対し、そもそもその「視点要素」が「必要」なのかどうか、あるいは、「関連性」があるのかどうかについて検討しよう。
※視点:キーワードや概念(がいねん)など、ものごとを考えるうえで着目する点。

★(17)論点違い(ロンチ/論点のすり替え) ※基本的な論理⑧『論点のすり替え』参照!
・「設問における論点」とは「無関係な論点」にすり替えて説明されている。また、「論点」が微妙にずれている場合や、説明文中に「無関係な論点要素」が組み込まれている場合もあるので注意。「見せかけの説得力」に騙(だま)されないよう、「設問における論点」をまず正しく掴(つか)み、「正しく方向づけて思考する」訓練をしっかりと積んでおこう。
※論点:ものごとを論じるうえでの問題点。議論の中心となる問題点。

★(18)主観(どっかの誰かさんの考え)
・本文の内容に沿った客観的な内容とは異なる、無関係な主観的内容の説明であったり、主観的な「偽(にせ)要素」が組み込まれていたりする。客観的な視点や客観的な把握(はあく)力が未発達な小学生を誘導しやすい。相対的視点をもって「自分の見方」と「他者の見方」とを区別し、「この説明は不特定他者の主観であって、筆者(作者・登場人物)自身の考えとは無関係である」と見抜けるようになろう。(121)「おびき寄せ」の一種。
※主観:自分(その人)だけの考え。
※客観:自分の考えから離れて、他者の立場から考えること。

★(19)真逆(まぎゃく)(逆のこと言ってる)
・選択肢の「説明そのもの」、あるいは、「選択肢に含(ふく)まれる一部」が、本文とは「真逆(まぎやく)の内容」となっている。本文を照合せずに、専(もっぱ)ら記憶に頼って選択肢どうしの読み比べばかりに注意を向けていても正確な判断は困難なので注意。

★(20)根拠不明(根拠無し/前提欠如(けつじょ))
・説明自体が「根拠不明」であったり、説明内に「根拠不明の要素」が組み込まれている。「因果関係の成立・不成立」、「前提に基(もと)づく結論」を視点として吟味(ぎんみ)を徹底しよう。(31)「論理的飛躍」の一種。

・太郎君:「花子と愛子は、やっと仲直りしたようだね」
・次郎君:「二人は絆(きずな)を今以上に深めて、互いに支え合って生きていくのさ」

・次郎君は、花子と愛子二人の間に今後生起するさまざまな状況や変化を前提に置かずに(根拠なく)、今後の二人の発展的な人生について「飛躍した判断」を下しています。

★(21)誇張(こちょう)(盛(も)ったでしょ)
・説明の内容が、実際よりも程度を大きく捉(とら)え直して説明してある。小手先(こてさき)テクニックに見られるような、思考もせずに「言い過ぎだ、大げさだ。だから消去!」などと安直に判断せず、「意味や内容に正しく見合った説明となっているかどうか」を判断する思考力と検討力とを養(やしな)ってゆこう。
※誇張(こちょう):ものごとを過度に大きく、または小さく形容して表現すること。
※盛(も)る:上辺(うわべ)を飾(かざ)り繕(つくろ)って、実際よりも話を大きく見せかけること。俗語(ぞくご)。
※小手先テクニック:その場をしのぐための、普遍性のない、にわか仕込みの浅はかで安直な技術。

★(22)誇張(こちょう)カモ(言い過ぎ?/大げさ?/極端(きょくたん)?)
・小手先テクニックに見られるような、「『言い過ぎ・大げさ・極端』な印象を与える選択肢は選ぶな」といった、思考を前提としない「印象や感覚による安直な判別法」が指導されている小学生(受験生)が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手に取り、作為(さくい)的に誇張表現を用いて目立たせることで、正解でありながら正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある。「意味や内容に正しく見合った説明となっているかどうか」を判断する思考力と検討力とを養ってゆこう。(2)「カモフラージュ」の一種。
※誇張(こちょう):ものごとを過度に大きく、または小さく形容して表現すること。

★(23)強調カモ(こそ?/まさに?)
・小手先テクニックに見られるような、「『~こそ・~まさに』のような強調表現が用いられた選択肢は選ぶな」といった、思考を前提としない「機械的処理法」が指導されている小学生(受験生)が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手に取り、作為(さくい)的に強調表現を用いて目立たせることで、正解でありながら正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある。思考もせずに「強調表現があるから言い過ぎだ、大げさだ。だから消去!」などと安直に判断せず、「意味や内容に正しく見合った説明となっているかどうか」を判断する思考力と検討力とを養ってゆこう。(2)「カモフラージュ」の一種。

★(24)断定(言い切ったな!/断言) ※(25)『断定カモ』参照!
・本文においては「~だろう(推量)」、「~かもしれない(可能性)」、「~ようだ(推定)」といった「非断定的な認識や判断」が読み取れるにもかかわらず、選択肢では「断定(断言)」して説明されている。また、必ずしもその説明に『絶対に・決して・必ず・常に』といった明確な断定表現が用いられているとは限らないので、あくまで本文との照合により、「断定」と「非断定」との区別をしっかりとつけられるようにしよう。

★(25)断定カモ(絶対に?/決して?/必ず?/常に?) ※(24)『断定(断言)』参照!
・小手先テクニックに見られるような、「断定表現のある選択肢は選ぶな」といった、思考を前提としない「機械的処理法」が指導されている小学生(受験生)が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手に取り、『絶対に・決して・必ず・常に』のような断定表現を作為(さくい)的に用いて目立たせ、正解でありながら正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある。思考もせずに「断定表現があるから言い過ぎだ、大げさだ。だから消去!」などと安直に判断せず、「意味や内容に正しく見合った説明となっているかどうか」を判断する思考力と検討力とを養ってゆこう。(2)「カモフラージュ」の一種。

★(26)限定(そんだけぇ~💛 /限定的一致) ※(27)『限定カモ』参照!
・本文における内容について、その「一部」についてしか述べられておらず、限定的には一致しているが、本来求められる説明としては不完全である。説明内容の方向性自体が間違っていないため、本文の内容把握が不十分だと判別に迷う恐れがある。記憶に頼って選択肢どうしの読み比べだけで判断せず、本文との照合を徹底しよう。

★(27)限定カモ(だけ?/のみ?/しか?) ※(26)『限定(そんだけぇ~💛)』参照!
・小手先テクニックに見られるような、「『だけ・のみ・しか』などの限定表現のある選択肢は選ぶな」といった、思考を前提としない「機械的処理法」が指導されている小学生(受験生)が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手に取り、『だけ・のみ・しか』などの限定表現を作為(さくい)的に用いて目立たせ、正解でありながら正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある。思考もせずに「限定表現があるから言い過ぎだ、大げさだ。だから消去!」などと安直に判断せず、「意味や内容に正しく見合った説明となっているかどうか」を判断する思考力と検討力とを養ってゆこう。(2)「カモフラージュ」の一種。

★(28)全称(ぜんしょう)(全部が全部!) ※(29)『全称カモ』参照!
・ある事柄について、本文では「一部についてはそう(▲)である」のような、筆者の「限定的な認識や判断」が読み取れるにもかかわらず、選択肢においては「全てがそう(▲)である」といった説明内容にすり替えられている。記憶に頼って選択肢どうしの読み比べだけで判断せず、本文との照合を徹底しよう。
※全称:「全て・どれも・みな」のような、ある範囲全体の物事について断定する表現。

★(29)全称(ぜんしょう)カモ(全て?/どれも?/みな?) ※(28)『全称』参照!
・小手先テクニックに見られるような、「『全て・どれも・みな』のような全称表現のある選択肢は選ぶな」といった、思考を前提としない「機械的処理法」が指導されている小学生(受験生)が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手に取り、『全て・どれも・みな』のような全称表現を作為(さくい)的に用いて目立たせ、正解でありながら正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある。思考もせずに「限定表現があるから言い過ぎだ、大げさだ。だから消去!」などと安直に判断せず、「意味や内容に正しく見合った説明となっているかどうか」を判断する思考力と検討力とを養ってゆこう。(2)「カモフラージュ」の一種。
※全称表現:「全て・どれも・みな」のような、ある範囲全体の物事について断定する表現。

★(30)お楽しみ箱(びっくり箱/気絶フェスティバル)
・設問形式の一つとして、「本文全体の内容の説明」、「文章全体の表現上の特色」等について適切なものを選ぶといった問題については、通常大設問内の最終問題として設定されていることが多く、照合と検討に予定外に時間を取られてしまう恐れがるため、テストや演習などに取り組む段階で問題全体の構成や設定を確認する必要がある。

◎本文と照合、検討する必要のある項目については、「背景・事情」、「本文の内容」、「心情・心情変化」、「葛藤(かっとう)」、「人物像」、「人物どうしの関係性」、「視点人物」、「場面・構成」、「時間軸」、「回想部」、「展開・変化」、「成長・生き方」、「主題・要旨」等の読解関連についての他、「会話表現の特徴や効果」、「文章の特徴や効果」、「情景描写の特徴や効果」、「―(ダッシュ)」や「……(リーダー)」等の符合の使われ方等の描写全般について、さらに、「象徴」や「暗示」等の描写(びょうしゃ)技巧(ぎこう)について、「比喩の有無や使用頻(ひん)度」、「擬音(声)語・擬態語の有無や使用頻度」、「歴史的現在」、「皮肉」、「反語」、「逆説(パラドックス)」等の修辞(しゅうじ)に関するものなど多岐(たき)にわたる。普段から、知識の一面的な捉(とら)え方や暗記にとどめず、「生きた国語」のための総合的学習が求められる。
※修辞(しゅうじ):言葉を効果的に使って表現すること。その技術。レトリック。

視点人物
・筆者(作者)、主人公、第三者等、「誰の視点から語られているか(描かれているか)」を問われることが多い。

象徴
・本文において、一見さほど重要でなく思われる部分的な描写(びようしや)であるが、実は「主題」や「人物の心情」等と深く関連づく、作品上重要な意味や役割を与えられたものごと。情景描写以外にも、日常ありふれた器具、飲食物、色、形状、音、臭い、味、感触、人物の言動、様子、また、生き物の様子など、人間の五感や感情等を通して描かれる種々(しゅじゅ)のものが、作家の意図と工夫により「象徴素材」として利用される。「象徴する内容」については、その物事から受ける「一般的なイメージ」で説明できるわけではないので、あくまで「本文の内容との重ね合わせ」による精度の高い解読訓練が求められる。

象徴問題
・問題本文の最終行にある、主人公である「私」の「とりあえずウミガメのスープを仕込もう。」という言葉が、以下のように、「私」の今後の生き方への思いを象徴する。

【私が本当に求めている、見た人の胸に真に届き、生きていく気持ちを支える力を持った絵をいつか描けるようになるために、自分を支えてくれている人達やさまざまなものへの思いを胸に、一日一日を大切に生きてゆこう】

※『ウミガメのスープ』(宮下奈都)~『サピックス 10月度マンスリーテスト(平成30年/2018年10月実施)』の【大設問4番】、および、『四谷大塚 第3回 合不合判定テスト(平成30年/2018年9月実施)』の【大設問1番】にて同場面が出題。

暗示
・情景描写や種々(しゆじゆ)の事象描写(びようしや)によって、その後に起こる「事件」や「展開」を予め読者にそれとなくほのめかしておく手法。伏線(ふくせん)。暗示内容がその後に具体的な結果や役割として明らかとなる場合を、俗(ぞく)に「伏線回収」と呼ぶことがある。

比喩(ひゆ)(たとえ)
直喩(明喩):「Aは(まるで・あたかも)B~(ようだ・みたいだ)」等のように、「はっきりと比喩であることを示した言い方」。「ようだ・みたいだ」といった語が用いられることで、隠喩に比べて与える印象はソフトとなる。例:「先生は(まるで)鬼のようだ(鬼みたいだ)!」
隠喩(暗喩):「ようだ・みたいだ」のような「比喩であることを表す言葉」を用いずに、「AはBだ」のようにたとえて言い切る。直喩よりも鋭(するど)く、強い印象を与える。例:「先生は、鬼だ(鬼です)!」
擬人法(活喩):人間ではないものが、人間がしたことのようにたとえる方法。親近感や生き生きとした印象を与える効果がある。「救急車が(人間ではない主語)→悲鳴を上げている(人間の動作)。」、「冬将軍(冬の寒さの厳しさを、将軍の険しく厳しいさまにたとえている)」など。
皮肉
①遠回しに意地悪く相手を非難すること。アイロニー。「(宿題を大量に与えられた生徒が)先生は大変な生徒思いですね」など。
※中学受験国語では「皮肉①」に関連する出題が多いので、しっかりとこれを押さえておきたい。
②予想や期待とは反対の、良くない結果になること。「まさかあの最下位チームに負けてしまうとは皮肉だ」 など。
③自分に対する落胆(らくたん)した気分を表す。「雨天により運動会が中止と決定した直後に、皮肉にも雨が上がった」など。

反語
①「疑問文の形」をとりながら、暗に「強い否定」の意味を表す強調表現。「そんな不思議な話が本当にあるのだろうか(=そんな不思議な話が本当にあるはずがない)」 など。
※中学受験国語では「反語①」に関連する出題が多いので、しっかりとこれを押さえておきたい。
②ある語を本来の意味とは反対の意味に使うことで、皮肉を込める言い方。アイロニー。「(遅刻した人に)随分とお早い到着ですね。」など。

逆説
①「急がば回れ」、「負けるが勝ち」、「かわいい子には旅をさせよ」のように、一見矛盾(むじゆん)しているようだが、実は真理の一面を表す説。パラドックス。
※中学受験国語では「逆説①」に関連する出題が多いので、しっかりとこれを押さえておきたい。
②通常とは反対の方向からものごとを捉(とら)えたり、考えを進めたりするさま。「逆説的に言えば、苦労が多いほど、人生を豊かにするということだ」など。

擬声(音)語
・音や声を言葉に表したもの。オノマトペ。「お腹がゴロゴロと鳴る。」(片仮名表記)
擬態語
・ものごとの様子や感じを言葉に表したもの。オノマトペ。「日曜日は家でごろごろとしている。」(平仮名表記)

葛藤(かつとう)
・(つる性植物である葛《かずら》と藤《ふじ》がもつれ合うことから)二つの相反する感情の板挟(いたばさ)みとなり、迷い悩(なや)むこと。「葛藤する」「心の葛藤」
両価性
・「愛と憎(にく)しみ」のように、同一の対象に対して相反(あいはん)する感情を同時に持つこと。「(おいしそうなので)食べたいが、(太りたくないので)食べたくない」「(好みの容姿なので)好きだけれど、(性格的に合わなくて)嫌い」など。両面価値。両価価値。アンビバレンス。

歴史的現在
・過去の出来事を、今、目の前で起きているかのように「現在の時制」で表現する技法。史的現在。

会話表現
・「会話表現」について、その形式や特徴、効果等について検討が求められる場合がある。
呼称の変化
・相手を「あだ名」で呼んでいたものが「さん付け」に変化したり、自称が「オレ」から「ぼく」に変化したりするなど、「呼称の変化」の裏にある心情について検討を求められる場合がある。

主観的と客観的
・主観的:その人だけの見方、感じ方であるさま。
・客観的:当事者から離れて、第三者の立場から物事を観察して考えるさま。

絶対的と相対的
・相対的:他との比較によって成り立つ(存在する)さま。
・絶対的:他とは関係なく、それだけで成り立つ(存在する)さま。


【飛躍(論理的飛躍)】

★(31)飛躍(論理的飛躍) ※基本的な論理⑦『飛躍(論理的飛躍)』参照!
・正しい筋道を飛び越えた内容の説明がされている。論理上の飛躍の度合いが小さい場合や大きい場合など、さまざまに調整してある。論理的な思考訓練が不十分で、判断がその都度「印象や感覚」によって揺(ゆ)れやすい小学生を誤答に誘導しやすい。「前提」と「結論」との間の「関連性・連続性・因果関係」を的確に捉(とら)え、また、「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」といった「可能性の視点」も持って、客観的、総合的に判断しよう。
※飛躍(論理的飛躍):正しい筋道を飛び越えて結論づける論理的な誤り。「前提」と「結論」との間に隔(へだ)たりがあり、因果関係が不明確な場合が多い。

★(32)意志飛躍(そんなつもりないし!)
・筆者の考え、あるいは、登場人物の考えや気持ちに沿(そ)わない「意志表現」で説明してある。『言い過ぎだ、大げさだ、極端だ』のように「印象や感覚」によって判断するのではなく、あくまで「本文の内容に照らして、論理的な隔(へだ)たりがあるのかどうか」を客観的に検討し、「筆者(作者)、あるいは登場人物はそのような意志までは抱いていない」と見抜けるようになろう。(31)「論理的飛躍」の一種。

、「前提に基(もと)づく結論」を視点として吟味(ぎんみ)を徹底しよう。(31)「論理的飛躍」の一種。

・太郎君:「今回のテスト結果、どの教科も、まあまあの成績だったぜい!」
・次郎君:「次回のテストではクラス上位を狙(ねら)ってるってわけか!」(狙う=意志)
※動詞に注意! 意志を勝手に飛躍させている!

・次郎君は、太郎君自身の考えを前提に置かず、一方的に自分の考えだけを都合良く押し進めて、太郎君の「意志を飛躍させて判断」しています。

◎「歩(あゆ)もウとする」、「仲直りしヨウとする」、「逃げマイとする」のように、「意志を表す助動詞」である「う・よう・まい」が使用されている場合が多いが、ぱっと見では目立たないために「飛躍」に気づきにくい。
◎「~するために・~する目的で」や、「~しなければならない」、「~つもりだ」といった表現や、「認める・受け入れる・否定する」といった「もともと意志を含意(がんい)する表現」を使用することによって飛躍に気づかれないよう調整してある場合も少なくないので注意。

★(33)意志調整(積極度・消極度の調整)
・本文において、筆者(作者)、あるいは登場人物が、ある事柄(ことがら)について「意志を抱(いだ)いていることが間違っていない」場合に、選択肢においてその「意志の度合い」を微妙にずらして説明してある。また、「意志の積極度や消極度を正しくない度合いに調整」してある場合もあるので注意。

★(34)二分法(白黒思考)
・「仲間ではない」という説明は、必ずしも「敵である」ことを意味するわけではない。他に「中立」や「無関係」という立場が想定されるにもかかわらず、そのような「中間層の可能性」を排除し、「二者」のみを前提とした説明がされている。(31)「論理的飛躍」の一種。

、「前提に基(もと)づく結論」を視点として吟味(ぎんみ)を徹底しよう。(31)「論理的飛躍」の一種。

・太郎君:「今回のテスト、国語の成績が最悪だったよ」
・次郎君:「つまり、勉強をさぼったということだね」

・次郎君は、「勉強したか、勉強しなかったか」の「二つの選択肢」のみを「前提」に置き、太郎君が「努力したにもかかわらず苦手な出題分野だった」、「ミスを連発した」、「集中力が発揮できなかった」といった「他の可能性」を前提に置かずに、一方的に「飛躍した判断」を下しています。

★(35)カゼオケ論法(ドミノ/連鎖(れんさ)飛躍)

・風が吹けば桶屋(おけや)が儲(もう)かる
【強い風が吹くと、土ぼこりが立つ】→【土ぼこりが目に入って目を傷(いた)め、盲人(もうじん)が増える】→【盲人は三味線(しゃみせん)の演奏を生業とするので、三味線の胴(どう)に張るための猫の皮が沢山必要になる】→【猫が減る】→【猫を天敵とする鼠(ねずみ)が増える】→【鼠は桶(おけ)をかじるので、桶の需要(じゅよう)が増える】→【桶屋が儲(もう)かって喜ぶ】

・「風が吹けば桶屋(おけや)が儲(もう)かる」とは、「ある事柄(ことがら)が原因となって、まったく無関係と思われるところに影響が出る」という意味のことわざである。選択肢の説明においては、「複数の因果関係を無理やりつなぎ合わせて論理を好き勝手に飛躍させてはいないか」どうかを確かめる視点も備えよう。(31)「論理的飛躍」の一種。

★(36)好意飛躍(別に好きじゃないし)
・ある作品において、「男女間における親密な関係や友情」が描かれていても、それが必ずしも「男女間における好意や恋愛感情」を意味しているとは限らない。思い込みにより、心情や展開を都合よく飛躍させてしまわないよう注意しよう。(31)「論理的飛躍」の一種。

★(37)期待・願望(別に期待してないし/別に願ってないし)
・筆者(作者)、登場人物が抱いてもいない「期待や願望」を表現して説明されている。「きっと~だろう(ちがいない)」、「~してほしい・~を願う・~を望む」、「~たい・~たがる」のような表現によって「あることの実現を期待したり望んだりする内容」となっている。「筆者(作者)、登場人物はそのような願望・期待は抱(いだ)いていない」と見抜こう。(31)「論理的飛躍」の一種。

★(38)矛盾(むじゅん)(ちぐはぐ/とんちんかん) ※基本的な論理⑤『矛盾』(p.5)参照!
・選択肢に書かれた説明内容が、本文に書かれた意味内容と論理的に整合しない。選択肢の説明に「論理的な食い違い」は起きていないかどうか、「両立不可能な言説」が組み込まれていないかどうかをしっかりと検討できるよう訓練を積んでおこう。
※矛盾(むじゅん):二つの事柄(ことがら)のつじつまが合わないこと。筋道が通らないこと。

★(39)拡大解釈(かいしゃく)(意味広げたでしょ)
・「休憩(きゅうけい)してよい」を「遊んでもよい」と解釈するなど、ある事柄(ことがら)についての説明や、選択肢の説明そのものが、本来の意味内容を都合よく広げた解釈となっている。本文中のある事柄について抽象(ちゅうしょう)化して説明されている場合においても、本文の内容における適正な意味内容を超えていないかどうかを厳密に把握(はあく)できるようにしよう。(31)「論理的飛躍」の一種。

★(40)単純化(単純な話さ)
・例えば、「国語学習では漢字の習得がとても大切だ」という一説を、「国語学習では漢字が書ければよい」と再解釈するように、背景や事情等の重要な要素を意図的に省略し、簡略化して説明する。「単純化」は「抽象化」や「一般化」、あるいは「要約」とは全く異なるが、一見わかりやすく類型化され、また、受け入れやすいものにも思えるため、安易に飛びついてしまわぬよう注意しよう。(31)「論理的飛躍」の一種。
※単純化:物事の重要な要素を意図的に削除して、単純、かつ類型的な説明にすり替えること。正確性を欠き、本質を外した底の浅い説明となる。
※類型的:型にはまっていて、個性や特色が見られないさま。
※抽象化:多くのものごとが共通して持っている性質だけを抜き出し、それらを同類のものごととして捉(とら)えること。
※一般化:一部の事例をもとに、それを普遍的な概念に拡張すること。普遍(ふへん)化。
※要約:文章の要点を取りこぼさずに、短くまとめること。

*1:無理な一般化(例外は無いのけ?)
・「ポチも、ゴンも、モモも、人なつこい犬だ。(AもBもCも▲だ)」、「だから、犬はみんな人なつこい動物だ。(だから、全体も▲だ)」のように、例外の存在を前提とせずに、一部の事例をもとに、全てが同じであるかのように一般化して説明する。(31)「論理的飛躍」の一種。

・花子さん:「スズメも、ハトも、カラスも、空を飛ぶことができるわ」
・愛子さん:「鳥という生き物は、みんな空を飛べるのね」

・愛子さんは、ペンギンや駝鳥(だちよう)のように飛べない鳥がいることを前提に置かず、「一部の性質」を「全体の性質」として無理やり「一般化」し、「飛躍した判断」を下しています。 「一部の性質」がそうであるからといって、「全体の性質」も同じであるとは限りません。

【レッテル貼(は)り】
・「太郎は真面目(まじめ)だ。」、「花子はおしゃれだ」というように、人物や事物(じぶつ)について主観的に一般化し、評価を与えることを「レッテル貼(は)り」という。また、「俺って、天才!」、「私って、ダメ人間なの」のように、自分で自分にレッテル貼りをする場合もある。
◎「健太君は嘘(うそ)つきだ」、「幸子は意地悪だ」のように、良くない情報のみをもとに主観的に一般化し、一方的に悪い評価を与える場合には、皮肉を込めて相手を非難するにとどまらず、「対人攻撃」として「悪口」や「いじめ」、「差別的言動」に繋(つな)がる場合も少なくない。

*2:逆は必ずしも真ならず(逆(さか)立ち飛躍)
・「海には魚がたくさんいる(AはBだ)」を逆立ちさせて、「魚がたくさんいるのが海だ(BはAだ)」と言い換えても、同義とはならない。これを、「逆は必ずしも真ならず」という。(31)「論理的飛躍」の一種。

・花子さん:「海にはね、魚がた~っくさん、いるのよ!」
・愛子さん:「逆に言えば、魚がた~っくさんいるところが海! ってことよね!」

・「魚がたくさんいるところ」は「海」に限らず、「川や湖」、「水族館」なども考えられます。しかし、愛子さんはそうした「他の可能性」を前提に置かずに、花子さんの主張を「単純に逆立ち表現」することによって、それがあたかも真実であるかのように「飛躍した判断」を下しています。

*3:裏返しの飛躍(AでないならBでない?)
・「自分がされて嫌(いや)なことは、人にすべきでない(Aならば、Bである)」を裏返して、「自分がされて嫌でなければ、人にしても良い(Aでなければ、Bでない)」と言い換えても、同義とはならない。このように、本文における「ある表現を裏返して利用」することで、いかにも正しい説明であるかのように偽装(ぎそう)する。選択肢の説明に反対表現や否定表現があると正確な意味を取り違えてしまう恐れがあるので、よく注意しよう。(31)「論理的飛躍」の一種。


【前提操作】

★(41)前提のすり替え(聞いてないよ!) ※基本的な論理③『前提のすり替え』(p.5)参照!
・本文における「前提」となる事柄(ことがら)が、別の異なる「前提」にすり替えられたうえで説明されている。本文における「事実内容=前提」と「解答者の把握した前提内容」とが合致(がっち)していないと、判断はその都度揺(ゆ)れを起こす。本文を通読せず、あるいは、本文と照合もせずに専(もっぱ)ら記憶に頼って選択肢どうしの読み比べによって解答を判断しようとする受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。「この説明は、前提がすり替わっている」と見抜けるようになろう。
※前提:論理を支える土台。因果関係や論理を組み立てるための土台となる重要な条件。
※すり替え:人に気づかれないように、こっそりと別のものに取りかえること。

◎「前提のすり替え」は、日常における冗談(じょうだん)、励(はげ)ましや勇気づけなど、善意に基(もと)づく会話術の一手段としても意識的、無意識的に用いられるが、詭弁(きべん)や詐欺(さぎ)、悪意に基(もと)づく心理操作などの一手法としてもしばしば利用される。「前提のすり替え」による教育やマスコミ(マスメディア)の情報操作によって知らないうちに思想誘導されたり、特定の価値観を植えつけられたりしてしまわないよう、十分に注意しなければならない。「前提をまず疑い、前提となる事実を自分自身でよく確かめ、自分の頭を使って考え、判断する」ことが大切だ。

◎国語を得意とする者は、様々な視点を駆使(くし)して多角的に物事を把握(はあく)する能力が高いため、たった一回の本文通読時に、広範囲に及ぶ重層的な多くの情報を一気に収集することができ、しかも、分析力や類推力、検討力も優れて高い。そのため、問われている箇(か)所の近辺を瞬時確認するだけでも正確な判断をすることが可能であり、処理スピードも極めて速い。しかし、その域にまで達していない者が、「本文を通読もせずに、問われている箇所の前後数行の内容から判断を下す」といった形ばかり真似た手法にすがり続けていても、読解と解答の精度を実質的に向上させていくことは極めて困難だ。「時間が足りない」という受験生は、「頭脳の高速処理訓練」や「時間短縮訓練」、「速読訓練」を普段の学習に導入し、日々の継続的訓練により脳の機能的向上と思考作業の高速化を図ろう。
※「本文を通読せず、問われている箇所の前後数行の内容から判断する」といった手法でどの程度得点できるかを実際に試してみたり、ゲームとして競ってみたりするのは、それはそれで面白いだろう。
※本資料巻末に掲載した「高速トレース(高速頭脳処理)」、「時間短縮訓練」、「時間配分」、「速読訓練」等の資料も併(あわ)せて参照してください。

★(42)暗黙の前提(暗黙の了解) ※基本的な論理②『暗黙の前提』参照!
・本文には直接表現されてはいないが、筆者(作者・登場人物)が「暗黙の前提」としている事柄(ことがら)をもとに説明されている。本文に直接書くまでもない「当たり前の事柄」や、「筆者の主張の根底にある思想」などを「暗黙の前提」として説明されるため、まさかと思うような内容の説明となる場合があり、正解でありながら「明らかな誤り」として早々に除外(消去)してしまう恐れがある。判別難度が高く、正答率を極端に下げるのに有効な手法。本文の内容把握の学習においては、「明示された前提」と「表現の裏にある前提」に加え、「暗黙の前提」の三つをしっかりと押さえ、そのうえで「前提と結論との関係=因果関係」を捉(とら)える訓練をしっかりと積んでおこう。
※暗黙の前提:特に言明せずともわかりきった事柄を「暗黙の前提(暗黙の了解)」という。
※表現の裏にある前提:例えば、選択肢の説明内に「決心した」という表現があったとすると、それはある人物が「それまで迷っていた、それまで決心せずにいた」といった意味になるが、それが前提として実際に本文の内容に合致(がっち)するのかどうかを正しく掴(つか)む必要がある。

★(43)人物像不一致(人物像のすり替え/あんた誰?)
・登場人物や作者・筆者の「人物像」とは「異なる人物像」にすり替えたうえで説明されている。「人物像(人柄や性格)」という「前提」をすり替えたうえでの説明であるため、本文全体を通して人物像を把握(はあく)しておかないと、判断が揺(ゆ)らぐ恐れがある。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。(41)「前提のすり替え」の一種。

★(44)人物関係のすり替え(関係性が違(ちが)くね?)
・本文における「登場人物同士の関係」、もしくは、「作者(筆者)とある他者との関係」が「異なる関係性」にすり替えられ、それを前提として説明されている。「人物像」だけでなく「人物関係」や、さらに「人物同士の関係性の度合い」をも含(ふく)め、本文に直接に明記されていない「見えない前提」を正確に捉(とら)えられるようになろう。(41)「前提のすり替え」の一種。
※違(ちが)くて/違く:俗語(ぞくご)。正しくは「違って/違い」とする。また、「違かった」、「違くない」も、それぞれ「違った」、「違わない」と正すこと。


★(45)条件トラップ(『条件』作ってみた!)
・【[A]雨が降ると(条件)+[B]湿度(しつど)が上がる】、【[A]宿題を済ませたが(条件)+[B]遊べない】、【[A]仲良くなるとともに(条件)+[B]理解が深まる】のように、《Aを条件として+Bとなる(Bである)》の形式で説明されるが、[A]という条件がそもそも虚偽(きょぎ)の内容だったり、正しくない内容だったりする。《虚偽の条件[A]》を「前提」として、しれっと[B]が続くため、咄嗟(とっさ)には《条件[A]》の虚偽に気づくことが難しい。本文を照合せずに記憶に頼って選択肢どうしの読み比べだけで判断しようとする受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、「見せかけの説得力」や「虚偽の論理」により誤答に誘導されぬよう注意。(41)「前提のすり替え」の一種。
※しれっと:けろっとして。平然として。

★(46)仮定トラップ(『仮定文』作ってみた!)
・【[A](もし)雨が降れば(仮定条件)+[B]湿度が上がる】、【[A](もし)宿題を済ませても(仮定条件)+[B]遊べない】、【[A](もし)仲良くなれるなら/仲良くなれたら(仮定条件)+[B]うれしい】のように、《Aを仮定条件として+Bとなる(Bである)》の形式で説明されるが、[A]という仮定条件自体がそもそも虚偽(きょぎ)の内容だったり、正しくない内容だったりする。《虚偽の仮定条件[A]》を「前提」として、しれっと[B]が続くため、咄嗟(とっさ)には《仮定条件[A]》における虚偽に気づくことが難しい。本文を照合せずに記憶に頼って選択肢どうしの読み比べだけで判断しようとする受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、「見せかけの説得力」により誤答に誘導されないよう注意しよう。(41)「前提のすり替え」の一種。(45)「条件トラップ」の一種。

★(47)因果トラップ(『理由』作ってみた!)
・【[A]雨が降るから(原因・理由)+[B]湿度が上がる】、【[A]宿題を済ませたので(原因・理由)+[B]遊べる】、【[A]仲良くなれたため(仮定条件)+[B]うれしかった】のように、《Aを原因・理由として+Bとなる(Bである)》の形式で説明されるが、[A]という条件(原因・理由)自体がそもそも虚偽(きょぎ)の内容だったり、正しくない内容だったりする。《虚偽の条件(原因・理由)[A]》を「前提」として、しれっと《結果[B]》が続くため、咄嗟(とっさ)には《条件(原因・理由)[A]》における虚偽に気づくことが難しい。本文を照合せずに記憶に頼って選択肢どうしの読み比べだけで判断しようとする受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、「見せかけの説得力」により誤答に誘導されないよう注意しよう。(41)「前提のすり替え」の一種。(45)「条件トラップ」の一種。

★(48)基準トラップ(『基準』作ってみた!)
・「一般的に」、「常識的に」、「文化として」、「世代によって」のように、ある事柄(ことがら)について述べる際の「基準となる事柄」が、そもそも説明をするうえで無関係のものだったり、虚偽だったりする。「虚偽の基準事項」を「前提」としてしれっと説明が続くため、咄嗟(とっさ)には《基準事項の虚偽》に気づくことが難しい。本文を照合せずに記憶に頼って選択肢どうしの読み比べだけで判断しようとする受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、「見せかけの説得力」により誤答に誘導されないよう注意しよう。(41)「前提のすり替え」、(45)「条件トラップ」の一種。
◎「基準事項」はその時々によって内容や表現が様々であるだけでなく、文脈においてそれが「前提」、もしくは「前提の一部」となっていることに気づくことが難しい場合が多い。

★(49)推定妥当(だとう)(確かにありうる!)
・本文における主題や要旨(ようし)を前提として、物語文などでは「登場人物のその後の生き方」、説明的文章では「筆者の発展的な考え」等、推定しうる展開や事柄(ことがら)を「断定的に」説明してある。本文には直接書かれていなくとも、主題や要旨、展開等を踏まえると論理的には推断が可能であり、正答となる。(42)の「暗黙の前提」の一種。

★(50)主題違い(要旨(ようし)違い)
・「主題(要旨)を捉(とら)える問題」において、「本文全体に底流する『本来の主題や要旨』とは無関係な説明」となっている。また、「主題(要旨)の意味内容を微妙にずらしてある」場合や、「主題(要旨)そのものではなく、それに深く関連する副次的な事柄(ことがら)についての説明」にすり替えられている場合もある。(41」)「前提のすり替え」の一種。
※「主題(要旨)を捉(とら)える問題」は一般に最終問題(付近)に設けられるが、それ以前の「経過問題」においても「本来の主題(要旨)」を前提としていないと判別が困難な場合があるので注意。
※主題:主に文学的作品等において、作者がその作品全体を通して最も強く訴(うった)えたい事柄(ことがら)。
※要旨(ようし):主に論理的な文章において、筆者がその文章全体を通して最も強く訴えたい事柄。
※副次(ふくじ)的:主要なものに対して、従属した関係にあるさま。二次的。

★(51)肯定(こうてい)前提(肯定してたっけ?)
・本文では、ある事柄(ことがら)について登場人物(筆者・作者)の心情や考えが「否定的」か、または「肯定しているとは言えない」にもかかわらず、選択肢では「肯定的」であることを前提に説明されている。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。(41)「前提のすり替え」の一種。
※逆に本文での『肯定前提』を選択肢で『否定前提』や『非肯定前提』にすり替えてある場合もある。

★(52)前向き前提(前向きだったっけ?)
・本文では、ある事柄(ことがら)について登場人物(筆者・作者)の心情や考えが「後ろ向き」か、または「前向きではない」にもかかわらず、選択肢では「前向き」であることを前提として説明されている。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。(41)「前提のすり替え」の一種。
※逆に本文での『前向き前提』を選択肢で『後ろ向き前提』や『非前向き前提』にすり替えてある場合もあるので注意。

★(53)受け入れ前提(受け入れてたっけ?)※「受け止め前提」
・本文では、登場人物(筆者・作者)がある事柄(ことがら)について「受け入れていない(受け止めていない)」にもかかわらず、選択肢では「受け入れている(受け止めている)」ことを前提として説明されている。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。(41)「前提のすり替え」の一種。
※逆に本文での『受け入れ(受け止め)前提』を選択肢で『非受け入れ(非受け止め)前提』にすり替えてある場合もあるので注意。

★(54)理解前提(理解してたっけ?)
・本文では、登場人物(筆者・作者)がある事柄(ことがら)について「理解していない」にもかかわらず、選択肢では「理解している」ことを前提として説明されている。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。(41)「前提のすり替え」の一種。
※逆に本文での『理解前提』を選択肢で『非理解前提』にすり替えてある場合もあるので注意。

★(55)認識前提(認識してたっけ?)
・本文では、登場人物(筆者・作者)がある事柄(ことがら)について「認識していない」にもかかわらず、選択肢では「認識している」ことを前提として説明されている。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。(41)「前提のすり替え」の一種。
※逆に本文での『認識前提』を選択肢で『非認識前提』にすり替えてある場合もあるので注意。

★(56)好意前提(好きになってたっけ?)
・本文では、登場人物(筆者・作者)が異性の他者を特に「好意や恋愛感情」の対象としていないにもかかわらず、選択肢では「好意や恋愛感情」を前提として説明されている。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。少年、少女の恋心(こいごころ)を描(えが)いた作品や、男女間の心の機微(きび)や交流を描いた作品にも是非触れておきたい。(41)「前提のすり替え」の一種。
※逆に本文での『好意前提』を選択肢で『非好意前提』にすり替えてある場合もあるので注意。
※機微(きび):表面上は分かりにくい、人の心の微妙な趣(おもむ)きや事情。

★(57)期待・願望前提(期待してたっけ?/望んでたっけ?)
・本文では、登場人物(筆者・作者)がある事柄(ことがら)について「期待していない(望んでいない)」にもかかわらず、選択肢では「期待している(望んでいる)」ことを前提として説明されている。表現を支える「見えない前提」を見抜けるようになろう。(41)「前提のすり替え」の一種。
※逆に本文での『期待・願望前提』を選択肢で『非期待・非願望前提』にすり替えてある場合もあるので注意。

★(58)つまみ食い論法(チェリーピッキング/いいとこ取り)
・「今度のテストで敬語の問題が出るよ。幸一君も洋子ちゃんも、同じこと言ってるもん。」のように、多くの情報の中から都合の良い情報だけを選び出し(切り出し・切り取り)、それを根拠(前提)として自分に有利な主張をする。(41)「前提のすり替え」の一種。
※チェリー・ピッキング:おいしい「サクランボ(チェリー)」だけを「選び取って(ピッキング)」食べることから、つまみ食いの意。

*4:ダミー論法(わら人形論法/ダミー攻撃(こうげき)/架空(かくう)論法) ※歪曲(わいきょく)・曲解(きょつかい)・誇張(こちよう)
・本文におけるある言説をわざと歪(ゆが)めて引用し、その「ダミーの論点」に対して批判をする。

・先生:「勉強は大事なんだから、毎日しっかりと勉強するんだぞ!」(前提:励(はげ)まし)
・生徒:「先生は、『泣こうがわめこうが、無理やり僕を机(つくえ)に縛(しば)り付けて勉強漬(づ)けにしてやる』なんて言うけど、そんな教師がありますか!」(話をねじ曲げて「スパルタ教育」に論点(前提)をすり替えて非難し、ついでに人格攻撃)
・先生:「誰がそんなこと言ったかね、このスッタコが!」
・生徒:…てへぺろっ (・ω<)!

・本文における論点と、その論点についての主張や説明内容を正確に捉(とら)えたうえで、選択肢の説明が歪曲(わいきょく)されていないかどうかを見極めよう。(17)「論点のすり替え」、(31)「論理的飛躍」、(41)「前提のすり替え」の一種。
※歪曲(わいきょく):事実をわざと歪(ゆが)め、曲げること。
※わら人形論法:相手の主張を都合良くわざと歪(ゆが)めて引用し(切り出し・切り取り)、その「架空の論点(わら人形/替え玉/ダミー)」に対して反論する。相手がそもそも言ってもいない論点を作り上げ、その「架空の論点」を標的として反論、攻撃し、自説を有利に導く。

*5:道徳主義トラップ(道徳をダシにせよ!)
・「カンニングをするのは悪いに決まっている(道徳的価値観)。だから、僕がカンニングするはずなどないじゃないか(事実にすり替え)」のように、「Aは道徳的に善だ(悪だ)、だから、Aは▲が事実だ」という形式で、「道徳的な価値観を事実にすり替える」論法。「道徳」をはじめから「良いものは~べきものだ」と前提したうえで、「だから、▲は~が事実だ」と、誤った結論を導く。(*6)「自然主義トラップ」の逆パターン。(41)「前提のすり替え」、(31)「論理的飛躍」の一種。

*6:自然主義トラップ(自然に倣(なら)え!)
・「人間は本来、夜には眠る動物だ(自然界の事実)。だから、人間は深夜にまで勉強をすべきではない(価値判断にすり替え)。」のように、「Aは▲が自然界の事実である。だから、Aは▲であるべきだ(価値判断)」という形式で、「自然界の事実を価値判断にすり替える」論法。「自然界の事実」をはじめから「良いもの・優れたもの」と前提し、「だから、自然に逆らわない行動が正しい(自然に逆らった行動は正しくない)」と、誤った結論を導く。(*5)「道徳主義トラップ」の逆パターン。(41)「前提のすり替え」、(31)「論理的飛躍」の一種。

*7:新規主義トラップ(新しければいいの?)
・「このテキストは新しい。だから内容もすばらしい」、「ざんぎり頭を叩いてみれば、文明開化の音がする」のように、「新しいものごと」は無条件で「正しいもの・良いもの」であると前提し、それに基づいて「過去のものごと」について誤った結論を導く。新しいものごとが常に正しいとは限らない。(*8)「伝統主義トラップ」の逆パターン。(41)「前提のすり替え」、(31)「論理的飛躍」の一種。

*8:伝統主義トラップ(古ければいいの?)
・「人類は数千年にわたり神を信じ続けてきた。だから、神は存在する」、「以前は誰もがテレビや新聞、ラジオなどから情報を得ていた。だから、インターネットの利用はふさわしくない」のように、「伝統や習慣、しきたりなど」が無条件に「良いもの・正しいもの」であると前提し、それに基づいて「現在の思想や行為」について誤った結論を導く。昔のやり方が常に正しいとは限らず、また、昔のやり方が正しかったとしても、現在に通用するとは限らない。(*7)「新規主義トラップ」の逆パターン。(41)「前提のすり替え」、(31)「論理的飛躍」の一種。


【偽装論理】

★(59)因果の逆転 ※基本的な論理④『因果関係』参照!
・「受験をする子どもが多いので、この地域は塾が多い(Aだから、Bである)」を「この地域は塾が多いので、受験をする子どもが多い(Bだから、Aである)」のように、因果関係を逆転させて説明してある。「要素の有無」や「要素の正否」だけが判断基準だと瞬時には「逆転」に気づかない恐れがある。
◎「ので」や「から」、「ため(に)」等の「原因・理由」を示す語を使用すると「因果の逆転」に気づかれやすいため、「~ことで」や「~ことにより」、「~によって」などの表現に言い換えられていたり、因果関係そのものを捉(とら)えづらくするために巧妙(こうみょう)に表現が調整される場合も少なくない。

・花子さん:「あなた、勉強しないから(原因)、成績が悪いのよ(結果)」
・愛子さん:「違うわよ。成績が悪いから(原因)、勉強する気になれないのよ(結果)」

・花子さんと愛子さんの主張は、互いに「因果関係が逆転」しています。文章を読む際だけでなく、文章を書く際や会話をする際においても、正しい因果関係を強く意識するよう心掛けよう。
※因果関係:原因と結果との関係。「原因や理由」が「前提」となって「結論」が導かれる。

★(60)因果の倒置 ※基本的な論理④『因果関係』参照!
・「風邪を引いたから、学校を休んだ(Aだから、Bだ)」を、「学校を休んだのは、風邪を引いたからだ(Bであるのは、Aだからだ)」と倒置しても因果関係は変わらず、意味は全く同じである。このように、本文中の「AだからBである」という語順を、選択肢において「Bであるのは、Aだからだ」と倒置して説明されると、因果関係そのものに気づかなかったり、因果関係の確認に手間取ってしまったりする恐れがあるので注意。(2)「カモフラージュ」の一種。

★(61)偽装因果(因果関係作ってみた!)
・本文中の、もともと因果関係の存在しない「ある内容《A》」と「ある内容《B》」とを、【A~ので(理由・原因)+Bである(結果)】のように機械的に連結し、因果関係を偽装(ぎそう)する。「見せかけの根拠」や「見せかけの説得力」によって誘導されないよう注意しよう。(45)「条件トラップ」の一種。

★(62)無関係(関連性無し/虚偽(きょぎ)の関連付け)
・本文中における本来無関係な複数の事柄を無理やり関連づけて、それらしい説明に仕立ててある。本文を照合せず、記憶に頼って選択肢どうしの読み比べだけで判断しようとする受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。本文中の事柄どうしが「関連付け」て説明されていると、「見せかけの説得力」により判断を誤る恐れがあるので注意。

★(63)踏み込み不足 ※(15)『表面的説明(形式的説明)』参照!
・選択肢の説明内容が「事の本質や核心にまで十分に迫(せま)っていない」点で不完全である。(15)「表面的説明」のような上辺(うわべ)をなぞっただけの説明よりは踏み込んでいるが、本質や核心にまではあと一歩というところで止(とど)まっている。「踏み込み不足」ではあっても方向性自体は間違っているわけでなはいないので、やや紛(まぎ)らわしく、誘導されやすい。(15)「表面的説明」の一種。
※踏み込む:物事の本質や核心に一段と深く迫(せま)る。

★(64)類比論法 ※基本的な論理⑩『類推(類比推論)』参照!
・筆者(作者・登場人物)の考えに沿(そ)うと見せかけた「たとえ」を引用して説明し、それを根拠(前提)の一つとしていかにも正当な説明であるかのように偽装(ぎそう)してある。「説明内容に類似したたとえ(類比)」は、抽象的な事柄(ことがら)や難解な事柄(ことがら)を理解する一助になるうえ、その説明に説得力を与える効果を持つが、元来説明そのものとは「別物」であるため、その「たとえ」に本質的に異なる点(相違点)が無いかどうか、また、その「たとえ」が説明における正しい根拠や補完情報として機能しているかどうかをよく検討する必要がある。
※「慣用句」や「ことわざ」が類比として引用された場合にも、それが適切な「類比」として機能しているかどうかを確かめよう。

★(65)価値トラップ(価値判断してないし!)
・本文においては、ある事柄(ことがら)について特に「良い・悪い」等の「価値や評価」を与えているわけではないのに、選択肢の説明においては作為(さくい)的に価値(評価)を与えた意味内容とし、見せかけの説得力により誤答に誘導する。「良い・悪い」、「正しい・間違っている」、「大切だ・重要ではない」、「素晴らしい・最低だ」、「好ましい・好ましくない」のように、物事について価値や評価を与える言葉を「価値語(評価語)」という。本文において、「筆者(作者・登場人物)は何に『価値』を置いているのか」、あるいは、「そもそも『価値や評価』が読み取れるのかどうか」などを正確に把握しよう。

★(66)比較トラップ(別に比べてないし!)
・本文中でそもそも比較対象とされていない「ある内容《A》」と「ある内容《B》」とを、【AよりもBが~】、【Aに比べてBは~】のように比較する形にして説明し、誤答に誘導する。本文に「対比的な事柄(ことがら)」があったとしても、それが即(すなわ)ち「比較される内容」であるとは限らない。また、【A以上にBは~】、【Aと異なりBは~】、【Aとは対照的にBは~】のように表現を変えて比較に気づかれないよう調整してあることが多いので注意。

★(67)価値比較トラップ(価値と比較の合体!)
・本文中の「ある内容《A》」と「ある内容《B》」とを比較し、そのうえで、さらに【Aに比べてBは良い(悪い)】のように「不必要な評価や価値」を与えてある。本文に「対比される事柄(ことがら)」があったとしても、それを比較形式によって必ずしも「両者いずれかに評価や価値を与えている」とは限らないので注意。(65)「価値トラップ」と(66)「比較トラップ」を複合した手法。

★(68)同語反復(循環(じゆんかん)論法/オウム返し/おんなじこと言ってる!)
・「世界平和のためにはどのような社会にすべきだと筆者は考えていますか」という問いに対し、「戦争の起きない社会にすべきである」といった一見もっともらしい説明が書かれてある。しかし、これは、「戦争が起きない社会を実現するためには、戦争が起きない社会を実現する必要がある」と言っているのと同じことなので、実は設問の要求には全く答えていない。オウム返しをするように設問の内容がそのまま選択肢において無意味に繰り返されていないかどうかを確かめる視点を持とう。
※同語反復:「善人は善い人だ」、「雨が降る日は天気が悪い」のように同義語を無意味に繰り返すことを「同語反復」(同義反復・類語反復)という。「消しゴム貸して。だって、消しゴム貸してほしいから」のように、日常においてもうっかりと同語反復によって言い訳をしたり反論したりすることがあるので注意しよう。
※循環論法:「彼は勤勉だ(結論)。なぜなら、彼は真面目だからだ(根拠)。」は、「彼は真面目だ(結論)。なぜなら、彼は勤勉だからだ(根拠)。」と同じ意味であり、このように「結論と根拠とが単純に循環し、証明とならない」論法を「循環論法」という。

★(69)偽装(ぎそう)飛躍(また引っかかったもん💛)
・説明における表現や文脈を巧妙(こうみょう)に調整することで、正しい内容でありながら、飛躍した、もしくは飛躍した印象を与える説明であるかのように誤認させる。一般に多くの受験生が消去するよう指導されている、「言い過ぎ」な印象や「大げさ」な印象を与える表現を作為(さくい)的に組み込んである場合も少なくないので注意。(2)「カモフラージュ」の一種。

(70)屁理屈(へりくつ)(ああ言えば、こう言う)
・無関係な事柄(ことがら)を無理やり関連づけて主張される、まるで筋の通らない理屈。日常においては、自分の非を認めようとしなかったり、言い逃れをしようとする際に屁理屈が使われることが多い。

・警官:「この牛泥棒(どろぼう)め、逮捕(たいほ)する!」
・犯人:「だんな! 誤解ですぜ! あっしはたまたま綱(つな)を拾(ひろ)っただけで、そしたら牛が繋(つな)がっていて、牛のやつが勝手に付いて来ただけですってば!」

*9:前後即(そく)因果
・「入試前日に必死に合格を祈(いの)ったら、本当に合格した。だから、合格したのは祈ったからに違いない。」のように、「ある事柄(A=前件)」 が起きた後に、「別のある事柄(B=後件)」 が起きたという事実を捉(とら)えて、「《前件A》が《後件B》の原因(理由)である」と無理やり因果づけることを「前後即(そく)因果」という。本文において事柄どうしの連続性が自然なものであっても、その前後関係において因果関係が示されているとは限らないので、記憶に頼らず、本文の内容照合を確実に行おう。

*10:疑似(ぎじ)相関
・「(A)アイスクリームの販売量が上がった。」、「(B)熱中症になる人が増えた。」、「だから、アイスクリームの販売量の増加が、熱中症増加の原因だ。」のように、本文中のある内容(A)と(B)との間に相関関係が認められる場合に、無理やりそこに因果関係をこじつけて説明してある。
・ちなみに例文の場合、実際には(A)と(B)は「別の要因(C=気温の上昇)」によって変化しているのだが、それがはっきりと目に見えるものではないために、(A)と(B)とが「因果」によって関連づいている印象を与えてしまう。
※相関関係:一方の値と別の一方の値とに関連性があること。
※因果関係:原因と結果との関係。因果関係のあるものには相関関係があるが、相関関係があるからといって、それがそのまま因果関係を示しているとは限らない。
※疑似相関:ある事柄(A)が変化するとともに他のある事柄(B)も同時に変化している場合、その(A)と(B)との「相関関係に因果関係があるように誤(あやま)って捉(とら)えてしまうこと」。


【すり替え一般】

★(71)主語のすり替え(えっ、マジか!)
・選択肢の説明における主語(主部)が別のものにすり替わっている。また、主語や論点そのものが正しくとも、それに続く説明内容が別の事柄についてのものにすり替わっていないかどうかも検討する必要がある。普段、「主語と述語の係り受け」をほとんど意識せずに文章を読んだり書いたりしている受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。普段から「主語と述語の係(かか)り受け」や、「語句と語句との係り受け」をよく意識して読み、書き、話す習慣を持とう。
※主語:「何が」「誰が」に当たる言葉。

★(72)対象違(ちが)い(対象のすり替え)
・選択肢の説明において、ある事柄(ことがら)についての「対象」が、別の人物や物事にすり替わっている。記憶にのみ頼って判断しようとせず、本文との照合作業によって、「誰(だれ)に対して」なのか、あるいは「何に対して」なのか、対象となるその内容を正確に捉(とら)えよう。

★(73)目的トラップ(目的作ってみた!/目的違い/目的のすり替え)
・本文からは読み取れない「ある『目的』を意味する事柄(ことがら)」を仕立て上げ、「見せかけの説得力」を利用して誤答に誘導する。あるいは、本文中に明示されている「ある事柄についての『目的』」が、選択肢においては「別の事柄についての『目的』」として説明されていることもある。「~ために」のような表現以外にも、「~に向けて」、「~をしに」、「~となるように」のような表現を用いて「嘘(うそ)の目的」や「目的のすり替え」に気づかれないよう調整してあることが多いので注意。記憶や断片情報に頼って判断するのではなく、本文との照合作業を徹底しよう。

★(74)理由違い(理由作ってみた!)
・ある事柄(ことがら)について、本文における本来の「理由・根拠」とは「異なった理由・根拠」に変造したり、すり替えたりしてある。記憶に頼らず、本文と照合しつつ吟味(ぎんみ)する習慣があれば、さほど難なく偽装(ぎそう)を見抜けるはずだ。

★(75)心情違い(気持ちが違う)
・人物の心情に合致(がっち)しない心情表現にすり替えてある。「不思議に思っている」、「予想外に思っている」、「驚いている」、「願っている」、「興味を引かれている」等のような表現を利用して人物の「共感度や受け止め具合」をぼかしたり、逆に「絶望している」、「決意している」等の表現を利用して「共感度や受け止め具合」を本来の心情に合致しない度合いにまで高めてある場合もある。日常生活においても、国語学習においても、「なんとなくそのような気持ち」といった感覚で済ますのではなく、「対象への共感や理解」を深め、それをふさわしい言葉で表現する心掛けが大切だ。

★(76)定義のすり替え(定義ちがくね?)
・筆者、あるいは作者によって「特に定義づけられた概念(がいねん)や語句」を、それとは異なる意味合いにすり替えて説明してある。本文中の概念や語句については、筆者(作者)によって「特定の意味合い」で使用されているのか、あるいは「一般的な意味合い」で使用されているのかをきちんと区別しよう。(41)「前提のすり替え」の一種。
※定義:用語の意味や概念(がいねん)の内容を明確に限定すること。その意味・内容。
※概念(がいねん):認識した内容の大まかな、あるいは本質的な表現。
※違(ちが)くて/違く:俗語(ぞくご)。正しくは「違って/違い」とする。また、「違かった」、「違くない」も、それぞれ「違った」、「違わない」と正すこと。

★(77)趣旨(しゅし)違(ちが)い(意味違い/意味ズレ)
・「仲直りして、握手(あくしゅ)した」と、「握手して、仲直りした」とでは趣旨(しゅし)が異(こと)なるように、説明の趣旨が正確でなかったり、ずれていたりする。文脈や表現を巧妙(こうみょう)に調整してあるため、「要素の有無」や「要素の正否」だけを基準にしていても的確に判断できない恐れがある。普段から文や文脈の正しい意味内容をよく捉(とら)えながら読み、書き、また、話すよう心掛(が)け、「その説明が正しい意味内容を伝えるものなのかどうか」を的確に判断する力を備えてゆこう。
※趣旨(しゅし):言おうとしている中心的な内容。趣意(しゅい)。主旨(しゅし)。

★(78)説明不足(テキトーだな/説明不十分/具体性欠如(けつじょ))
・趣旨(しゅし)としてはほぼ正しいが、その説明が詳(くわ)しくなかったり、具体性に欠けていたりする。正答肢(し)の説明と非常によく似(に)せてある場合にこの誤答肢に誘導されたり、あるいは判別に迷ったりする恐れがある。普段から文や文脈の正しい意味内容をよく捉(とら)えながら読み、書き、話そう。

★(79)語のすり替え
・日常においては、例えば「共感」、「同情」、「理解」は感覚的に似た意味の語として捉(とら)えられることがあるが、そのような一般的傾向を作為(さくい)的に利用し、本文の内容に合致(がっち)しない意味の語にすり替えてある。

※共感:他人の考えや感情について、自分もその通りだと感じること。他人が抱いている感情と同じ感情を自分が持つこと。
※理解:内容や意味などがわかること。他人の気持ちや立場に立って思いやること。
※同情:他人の苦悩や不幸を気の毒に思い、自分のことのように思いやっていたわること。
※他に、「反省」と「後悔」、「認識(知ること)」と「理解(分かること)」、「真面目」と「素直・正直」、「嫌(いや)だ」と「嫌(きら)いだ」、「絶望」と「希望を持てない」、「疑う」と「信じられない」、「信頼が揺(ゆ)らぐ」と「信頼を損(そこ)ねる」、「中立」と「無関心」、「中途半端」と「いい加減」、「負い目」と「引け目」、「意外だ」と「不思議だ」などはそれぞれ同義ではないので、捉(とら)え違えてしまわぬよう注意。
◎日常においては、それぞれの語を意味や用法を厳密に区別せず感覚的に用いていることがある。国語学習においては、言葉の辞書的な意味や用法を適宜(てきぎ)国語辞典を用いて確認するなど、言葉に関わる取り組みや言語生活への姿勢をより強く意識することが大切だ。

◎国語辞典を使用して言葉の意味を調べる際には、意味が分からない言葉があったら何も考えずに即座に辞書を引くのではなく、まずはその言葉に含まれている漢字や文脈を手掛かりに、知識や語感、また、それまでの生活体験等にも照らし、自分なりに意味を推定し、そのうえで本来の正しい意味や用法を確認するという手順を踏むほうがよい。そして、その言葉を単に知識事項として済ますだけではなく、今後自分が生きていくうえで使いこなしていく言葉の一つとして、また、これからの「自分」というものを作り上げていくための大切な素養の一つとして捉(とら)え、積極的に自分の中に取り込み、生活の中で活用していく姿勢で学ぶことが大切だ。

★(80)換言(かんげん)トラップ
・選択肢の説明において本文中のある内容や表現が言い換(か)えられている場合に、本来の意味内容を変えてあったり、微妙にずらしてあったりする。「抽象化」や「一般化」により「言い換え」がなされている場合、それが本文の意味内容と合致する表現であるかどうかをよく検討しよう。
※換言(かんげん):言い換(か)えること。

★(81)ぼかし語トラップ
・本文中のある内容や表現が、選択肢の説明において、「不思議な出来事」、「奇跡的な経験」、「未知の世界」、「正反対の結果」、「本質的な部分」、「本物の価値」、「異なる次元」といった「漠然(ばくぜん)とした意味の表現」が用いられ、本来の適切な言い換えとなっていない。ただし、こうした概念(がいねん)語による言い換えが妥当(だとう)である場合も当然あり、感覚的にではなく、あくまで内容によって的確に判断しよう。
※概念(がいねん):認識した内容の大まかな、あるいは本質的な表現。
※概念語:認識する対象の意味について、抽象的に捉(とら)えた言葉。例:友情・信頼・疑問・対立・喜び・不安・ためらい・人生・文化・自然・教育・価値・評価・情報、など。

★(82)結論違(ちが)い(ゴール間違えた)
・論理的な筋道は正しいが、そこから導き出される結論が誤(あやま)っていたり、不完全だったり、あるいは、「可能性の一部」に過ぎない内容だったりする。自分の頭をよく使って文章を読み、論理的に考えて結論を導く習慣を持とう。

★(83)道筋(みちすじ)違(ちが)い(コース間違えた)
・選択肢の説明における結論自体は正しいが、そこに至(いた)るまでの論理的な筋道が間違っている。十分な検討無く、結論の正しさに引きずられて慌(あわ)てて判断してしまわぬよう注意。自分の頭をよく使って文章を読み、論理的に考える習慣を持とう。

★(84)きっかけ違い
・本文中に描かれた「きっかけ」とは異なった「きっかけ」にすり替えて説明してある。不確かな記憶や思い込みにより判断を誤らないよう注意しよう。

★(85)いきさつ違い(経緯(けいい)違い)
・本文中に描かれた「経緯(成り行き)」とは異なった「経緯」にすり替えて説明してある。「確か本文にはそのように書いてあったはずだから」と、不確かな記憶や思いこみによって判断したり、本文との照合なく「選択肢の読み比べだけで判断」したりせぬよう注意しよう。
※経緯:ことの成り行きや、それに伴(ともな)う様々な事情。

★(86)あらすじトラップ
・本文におけるある部分の粗筋(あらすじ)や要約文が書かれてあるだけで、設問の要求には何も答えていない。粗筋や要約文としては正しい内容であっても、設問の要求を正しく捉(とら)えずに選択肢どうしの読み比べだけで判断したり、記憶に頼って判断したりせぬよう注意。

★(87)論点混在(めまいがする)
・説明における「論点」が複数組み込んである。その論点自体は重要なことかもしれないが、「設問の要求」に対して「何を論点としているのか」、焦点がぼやけてしまっている。「設問における論点」を正しく掴(つか)み、その論点に正しく沿(そ)って思考し、正しく対応した説明を判断できるようになろう。

★(88)比喩(ひゆ)説明不適(実在トラップ)
・本文中の指定部分における比喩表現についての説明が、「本文から読み取ることのできない誤(あやま)った内容」となっている。「単に比喩表現が与える一般的な印象を説明しただけのもの」や、「単に辞書的な意味が説明されているもの」、あるいは「別の比喩に言い換えられているだけ」の場合もあるので注意。比喩表現をいくつかの部分に「視点分割(要素分け)」し、それぞれの意味やニュアンス、文脈などが「本文の内容や主題等に即(そく)した具体的、かつ適切な解釈」となっているかどうかを的確に判断しよう。
※『実在トラップ』… 例えば、「闇(やみ)」という語が本文では「真実を秘めるもの」のように象徴的な意味合いを与えられているとして、それが選択肢においては「暗くて見えない場所」のように「実在」、「物理的存在」として説明されている。

★(89)暗示・象徴トラップ ※『象徴・暗示』参照!
・単なる光景等の描写について、無理やり主題や心情を投影し、意味付けて説明してある。「暗示」や「象徴」を捉(とら)える視点は必須(ひっす)であるが、単なる光景や事物(じぶつ)の描写にまで無理やり意味付けをしてしまわぬよう注意。
※暗示:その後に起こる「事件」や「展開」を情景描写や種々の事象によって予め読者にそれとなくほのめかしておく手法。伏線(ふくせん)。
※象徴:本文の内容において、一見さほど重要でなく思われる部分的な描写であるが、実はその作品の「主題」や「人物の心情」等と深く関連づく、作品上重要な意味や役割を与えられたものごと。

★(90)具体例照合(落ち着いて慌(あわ)てろ💛)
・「本文中の具体例は重要ではないので読み飛ばせ」と指導されている受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、そこで、具体例をあらためて照合しないと選択肢の検討に進めないようにしてある。本文の通読段階において、具体例は速やかに内容を整理しつつ、本文全体におけるその意味や機能、また、筆者(作者)の主張との関連性などを総合的な観点から確かめよう。

★(91)非主要(後回しでよくね?)
・「選択肢の設問における論点」に対し、「主要(中心)とは言えない内容」の説明となっている。主要(中心)ではないにせよ、方向的には外れきっているわけではないため、判断に迷う恐れがある。設問文における「論点」について、「何となく」ではなく、「本旨(ほんし)」をしっかりと捉(とら)え、「正しく方向づけて思考」しよう。(17)「論点のすり替え」の一種。
※本旨(ほんし):本来の趣旨(しゅし)。趣旨とは、言おうとしている中心的な内容のこと。

★(92)一般論(一般論はさておき)
・本文の内容に沿(そ)わない、無関係な一般論が書かれてある。説明内容自体は「一般論として正しい」ために否定できず、本文の内容把握をせずに問題に当たっていると判断に迷う。「一般論としてはそのとおりだが、筆者の主張、本文の内容とは無関係である」と見抜けるようになろう。(109)「おびき寄せ」の一種。
※一般論:広く世間一般に認められると考えられる論。「自然保護は大切だ」、「適度な運動は健康によい」、「勉強すれば将来の役に立つ」など。

★(93)常識・道徳論
・「常識」や「道徳」に関わる説明が含まれている。常識、あるいは道徳的に正しい事柄に対しては否定しづらく、逆にそれにふさわしくない事柄に対しては肯定(こうてい)しづらい一般心理を作為(さくい)的に利用する。「常識的、道徳的にはそのとおりだが、本文の内容とは合致(がっち)しない」と見抜けるよう、本文内容をあくまで客観的に把握する訓練を積んでおこう。(109)「おびき寄せ」の一種。
※常識:健全な一般の社会人が共通に認めている、普通の知識や思慮(しりょ)分別。社会通念。
※道徳:社会生活を送るうえで、個人が守るべき規範。人が踏(ふ)み行うべき正しい道。尚(なお)、倫理(りんり)と道徳とは同義であり、根本的な相違はないが、現代の日本では、道徳の場合、「『徳』という意味合いを強く含意(がんい)し、自発的に正しい行為へと促(うなが)す個人の内面的原理として働く」というニュアンスを含む。

★(94)迂言(うげん)法
・例えば、「親友となる」のように直接的でわかりやすく表現するのではなく、「①友として信頼し+②支えあう」のように間接的に表現し、直接表現と同意となるように複数の語を組み合わせて言い換えてある。逆に誤答肢に直接表現を用いて誤答への誘導が図られることが多い。「言い換え」については、「迂言(うげん)法=複数の語による間接表現」にも注意し、その内容の適否を吟味(ぎんみ)したうえで判断しよう。(2)「カモフラージュ」の一種。
※迂言(うげん)法:あることを、単一の語句で直接言い表さず、複数の語句を用いて同意となるよう間接的に表現すること。

★(95)要素倒置
・線部等、問われている箇所(かsyo)の内容が、例えば「A-B-C」の要素に分解できるとして、それを選択肢の説明では「C-A-B」のように要素の順序を変えて文脈構成し、一見したところでは「要素不足」であるかのように誤認させる。また、順序そのものは「A-B-C」と一致させながら、表現を調整することで「要素不足」であると誤認させる場合もあるので注意。(2)「カモフラージュ」の一種。

★(96)半分ずっこ(ハーフ&ハーフ)
・選択肢の説明が内容的に大きく二つに分けられるような場合に、前半か後半のいずれかは完全に正しい内容であるが、一方が完全に間違っているか、あるいは、意味があやふやである。「本文中のキーワード」や(4)「キラキラワード」などを巧(たく)みに組み込み、直感の誘発(ゆうはつ)や印象操作によって誤答への誘導を図(はか)る。検討が不十分だと、あやふやな記憶に頼って判断してしまったり、「ハロー効果」による直感頼(だよ)りの判断に落とし込まれたりするので注意。
※半分ずっこ:半分ずつにする、の意。
※ハロー効果:ある対象を評価するとき、その「一部の特徴的な印象」に引きずられて、全体について歪(ゆが)んだ評価をしてしまう心理現象。「halo(ハロー)」とは聖像などの頭部や全身を包みこむ後光(ごこう)や光輪(こうりん)。また、太陽や月の周囲を取り巻く「かさ」のこと。後光効果。

★(97)前後同一(前後同内容/前後同一要素)
・説明を成立させるための要素が二つ必要な場合に、前半の説明内容と後半の説明内容とが同一となっている。前後の要素が同内容であることが露見(ろけん)しないよう、表現や言い回しを巧妙(こうみょう)に調整し、見せかけの説得力により誤答へと誘導する。まずは「一文の内容把握(はあく)」を疎(おろそ)かにしない心掛けが大切だ。

※露見(ろけん):秘密(ひみつ)や悪事など、隠(かく)していたことが表に現れること。
★(98)不正流用(別件の説明/別の事柄(ことがら)の説明)
・設問の要求する事柄(ことがら)についての正当な説明そのものではなく、本文中の無関係な別件(別の事柄)についての説明にすり替わっている。「確か本文にはそのように書いてあったはずだから」と、不確かな記憶や思いこみによって判断したり、本文との照合なく「選択肢の読み比べだけで判断」したりせぬよう注意しよう。
※流用:本来の使途(しと)を外れて別の使途に用いること。

★(99)替え玉(身代わり)
・「『筆者は』どう考えているか」、あるいは「『登場人物は』どう考えているか」のように問われているにもかかわらず、その当人の考えや気持ちではなく、本文に引用されている、もしくは本文に登場する別の人物の考えや気持ちを筆者自身のものとしてすり替えて説明されている。
※替え玉(かえだま):本人だと偽(いつわ)って別人を使うこと。また、その人。
※身代わり(みがわり):他人のかわりになること。また、その人。

★(100)偽証(ぎしょう)トラップ
・本文中に書かれてある、「登場人物が本心を隠(かく)して述べる気持ちや考え」や、「筆者自身が想定する他者の反論」等を引用し、それが「登場人物(筆者・作者)本人の本心や考え」であるかのようにすり替えて説明してある。「確か本文にはそのように書いてあったはずだから」と、不確かな記憶や思いこみによって判断したり、本文との照合なく「選択肢の読み比べだけで判断」したりせぬよう注意。
※偽証(ぎしょう):真実でないことを真実であるかのように述べた証明。

★(101)反対語トラップ
・「満足」を、反対語である「不満」を使って「不満ではない」と言い換えても、同義とはならない。このように、本文におけるある語句の「対義語」を用いて「反対表現にする」ことで、いかにも正しい説明であるかのように偽装(ぎそう)する。選択肢の説明に反対表現や否定表現があると正確な意味を取り違えてしまう恐れがあるので、よく注意しよう。(31)「論理的飛躍」の一種。

★(102)可能性トラップ
・ある事柄について、本文では「▲の可能性が『ある』」と述べられているのに対し、選択肢の説明においては「▲の可能性が『高い』」といった内容にすり替えてある。「可能性の有無」と「可能性の程度(高さ・低さ)」とは別問題であるため、「可能性」という言葉につい引っ張られて判断を誤らないように注意。(41)「前提のすり替え」、(17)「論点のすり替え」の一種。

★(103)回想部の変造(思い出作ってみた!/思い出作り)
・本文における「回想部」を説明に引用する際、さり気なく回想部の時系列や内容等を改変してある。読解作業においては、回想部の内容、展開も正確に掴(つか)むことを忘れずに。
※回想部:過去を振り返って、あれこれと思い出す部分や場面。
※変造:文書、通貨など既存(きそん)のものを加工して、その形状や内容などを変えること。
※改変:内容を変えて、もとと違(ちが)ったものにすること。

★(104)語句矮小(わいしょう)化(なんか意味弱まった…)
・「いじめ」を「不仲(ふなか)」と表現するように、本来説明にふさわしい的確な語句や表現を用いるのではなく、「本質を外した、意味を弱めた表現にすり替えて説明してある。一見しただけでは微妙な意味の違いが区別できず、判断を誤る恐れがある。受験学習においても、普段の言語生活においても、感覚的に読み、書き、話すばかりでなく、言葉の意味や使い方、また、正確性や論理性、伝わりやすさについて、もっと意識しよう。
※矮小化(わいしょうか):物事や、物事の重要性を小さく見せること。

★(105)論点矮小(わいしょう)化(大した問題かよ!)
・「いじめというのは、子どもの悪ふざけの一形態である」のように、ある問題について、それをわざと小さく取り上げたり、重要性を低めたりして説明する。論点についての方向性が一致していても、問題の本質が不明確で、説明として不完全である。
※矮小化(わいしょうか):問題を小さく見せること。物事の重要性を小さくしたり、物事の一部だけを断片的に捉(とら)えて問題を小さくしたり、小さく見せたりすること。日常においては、ある問題について、それが「大した問題ではない」と、言い逃れや責任回避(かいひ)をする時などに用いられる場合が多い。

★(106)成り済まし(偽装(ぎそう)理由)
・「なぜですか」という「理由説明を求める問題」でありながら、「問われている箇所の意味内容を説明してあるだけ」となっており、実は設問の要求である「理由」については何も答えていない。設問の要求をよく確認もせずに取り掛(か)かると、「それはどういうことですか」といった「内容説明を求める問題」と勘違いしてしまいやすい。また、「問われている箇所の表現を単に別表現に改めて説明らしく装ってあるだけ」である場合もあるので注意。本文の読解訓練だけでなく、「設問で何が要求されているか」や、「設問文そのものの読解」もしっかりとできるよう訓練しておこう。(109)「おびき寄せ」の一種。

★(107)それってあなたの感想ですよね!
・本文における「ある箇(か)所の意味内容を問う問題」等において、「本文の内容を踏まえた適切な解釈」ではなく、「単にその表現や内容から抱(いだ)きそうな感想や印象を述べ連(つら)ねてあるだけ」となっている。自分の抱いた感想や印象と一致するからと性急に判断してしまわぬよう注意。

★(108)事実の主張へのすり替え
・本文では「花子さんは女性だ」と書かれてあるものが、選択肢の説明では「花子さんは女性らしくあるべきだ」のように、「事実」を「主張」にすり替えて説明されている。本文における「事実」と「意見(主張)」とをしっかりと区別して読むようにしよう。

*11:単純例示
・本文中に挙げられている具体例、またはその一部をそのまま選択肢の説明に組み込んであるだけで、説明として不完全である。冷静に対処すれば、例示の引用だけでは説明にならないことにすぐに気づけるはずだ。

*12:否定不能(消極的肯定)
・最後の二択での「絞(しぼ)り込み」において、「積極的に肯定(こうてい)されうる選択肢」と「消極的に肯定されうる選択肢」とがあり、その判別が非常に困難となっている。いずれの選択肢も内容的には否定できず、際(きわ)どい見極めが必要となる。設問の要求はもとより、思考の方向性、視点、論点、諸要素の有無や正否(せいひ)、因果関係、前提の正否、暗黙の前提、論理的飛躍、踏み込みの度合い、換言の適否(てきひ)、表現やニュアンスの調整等、さまざまな角度からの検討力が求められる。


【おびき寄せ(印象操作)】

★(109)おびき寄せ(コラージュ作品/つぎはぎ)
・本文における「キーワード」や「文中語句」を複数使用して目立たせ、誤答におびき寄せる。国語学習においては、本文の内容把握にまず重点を置き、種々(しゅじゅ)の視点と検討力とをもって選択肢の正誤を判断できるよう訓練しよう。
※おびき寄せ:騙(だま)して誘(さそ)い寄せること。
※コラージュ:現代絵画(かいが)の一技法。印刷物や写真の切り抜き、布や針金などの雑多(ざつた)なものを台紙に貼(は)り付けて一枚の作品とするもの。もとはフランス語で「のりで貼(は)る」という意味。

★(110)おとり
・本文の内容上、解答者が最も誤解しやすいと推定される解釈を説明し、誤答におびき寄せる。また、「そうだったらいいな」、「そうであってほしいな」のように、解答者自身がいかにも抱きやすい願望や「希望的観測」が説明内容とされていることもあるので注意。(109)「おびき寄せ」の一種。
※希望的観測:「そうだったらいいな」、「そうであってほしい」のように、根拠や事実等によるのではなく、自分の願望を優先して都合の良いように事の成り行きを推測すること。「今日の組分けテスト、前回よりもすごくよくできた。今度こそクラスアップできそうだ」など。例文の場合、「テスト結果という事実(根拠)」が明らかとなる前に、「都合よくクラスアップするという自身の願望を推測に反映」させている。他に、「最近、いろいろと運がいいから、お小遣(こづか)いを多めにもらえそうだ」など。

★(111)正答もどき/ゴースト/パラレルワールド/トワイライトゾーン/幻覚(げんかく)/蜃気楼(しんきろう))
・「正答肢」の要素・文脈・表現等に非常によく似せ、真偽(しんぎ)の判断を困難にする。本文との照合において、問われている箇所とその前後近辺の情報を単眼的に確認しただけでは「正しい内容や要素」を読み取ることができない場合があるため、本文における前提内容、論理構造、文脈、表現、ニュアンス等を含め、総合的に判断する必要がある。(109)「おびき寄せ」の一種。
※ゴースト:多重像。幽霊(ゆうれい)。亡霊(ぼうれい)。
※パラレルワールド:並行(へいこう)世界。現実の世界と並行して存在するとされる別の時空世界。
※トワイライトゾーン:昼でも夜でもない曖昧(あいまい)な時間帯である夕暮れ時。二者間の境界が曖昧な領域。時空の歪(ゆが)みに陥(おちい)ったり、超能力や心霊(しんれい)現象などの超常現象を経験したり、あるいは、宇宙人、タイムトラベラー、透明(とうめい)人間、地底人などの異世界の存在と遭遇(そうぐう)したりといった怪異(かいい)が起こるとされる時間帯。
※蜃気楼(しんきろう):光の異常屈折(くっせつ)によって地上の物体が浮き上がって見えたり、逆さまに見えたりする現象。海上や砂漠で起こる。ミラージュ。


【心理操作術】
(1)確証バイアス
・自分が信じている考えや判断を裏付ける情報にばかり注目し、逆に不都合な情報については無視する心理傾向。バイアスとは、偏見のこと。選択問題においては、結論に見当を付けること自体は大事だが、「はじめに結論ありき」で都合の良い情報にばかり目を向け、判断を誤らせてしまうことのないよう注意しよう。

(2)初頭効果
・選択肢の説明において、後半部に誤った内容を述べながら、前半部に正しい内容を述べることで目立たせ、正解としての印象を強く与えて誤答に誘導する。「人間は最初に与えられた情報ほど信じやすい傾向をもつ」という、心理学でいう「初頭効果」を作為(さくい)的に利用する。選択肢の説明文を最後まで読まず、時間節約のため特に前半部に書かれた内容によって正否(せいひ)を判断する傾向の強い解答者を誘導しやすい。

初頭効果:最初に提示された特性が印象に残り、その後の評価に影響を及ぼす心理的作用。逆は「新近効果(心理学用語としては、表記は「親近」ではなく「新近」が正しい)」。

(3)新近効果
・選択肢の説明文において、前半部に誤った内容を述べながら、後半部や末尾に正しい内容をべることで目立たせ、正解としての印象を強く与えて誤答に誘導する。「人間は最後に与えられた情報ほど信じやすい傾向をもつ」という、心理学でいう「新近効果」を作為(さくい)的に利用する。選択肢の説明文にさっと目を通し、時間節約のため特にその後半部や末尾に書かれた内容によって正否(せいひ)を判断する傾向の強い解答者を誘導しやすい。
新近効果:最後に与えられた情報や、直前に与えられた情報が特に印象に残り、その後の評価に影響を及ぼす心理的作用。尚、心理学用語としては、表記は「親近」ではなく「新近」が正しい。逆は「初頭効果」。

(4)アンカリング(初期値提示誘導)
・例えば、「ピザ」という語を相手に10回繰り返させた後、「肘(ひじ)」を指差して「これは何か」と問うと、相手がつい「ヒザ」と答えてしまう現象を経験することがある。あるいは、ある商品の値札に書かれてある「元の値段」が二重線で消され、その下に「割引価格」や「値下げ価格」が書かれてあると、それを見て「この商品は得だ」という印象を抱(いだ)くこともある。このように、「最初に与えられた情報(初期値)」が基準となることで判断に歪(ゆが)みが生じ、その後の意思決定が無意識にその初期値に近づいてしまう行動心理を「アンカリング」という。論理的には「前提操作」の一種。

※アンカー:船の錨(いかり)のこと。最初に与えられた情報が錨となって心にとどまり、その後の判断がその「錨となった情報」に引っ張られてしまう心理現象を「アンカリング」という。
※本ページ下段に『消えた1,000円の謎』という論理パズルを掲載(けいさい)しています。「アンカリング」による心理操作と「前提操作」を念頭に、を念頭に、是非問題解決に挑(いど)んでみてください。

(5)誤前提暗示
・「サイドメニューはポテトになさいますか、それとも、サラダになさいますか。」のように、「いずれか一方を必ず選択する」ことを「前提」として二者択一を提示し誘導する暗示手法(二分法の罠《わな》)。もっともらしい選択肢が与えられると、限定されたその選択肢の中から判断をしがちであるという人間の心理傾向を作為(さくい)的に利用する。選択問題においては、説明文中に「否定できない二つの要素を選択的に並列」することで暗示をかけ、誤答へと誘導する。

※マスコミ(マスメディア)による世論調査やアンケート等においても、(4)「アンカリング」、(5)「誤前提暗示」などの暗示手法や、(41)「前提のすり替え」、(45)「条件トラップ」などの「論理操作(前提操作)」によって質問項目の表現や文脈を巧妙(こうみょう)に調整して回答者の心理と判断を意図的に一定の方向へ誘導しようと図るケースがしばしば見受けられる。

(6)イエス誘導法
・選択肢の説明文に、解答者が「YES(イエス)!」と肯定せざるをえない語句や表現を複数仕込み、「肯定の認知を連続させる」ことで誤答に誘導する。「同意の積み重ね」により自然と反論意識が弱まっていく人間の心理傾向を作為(さくい)的に利用する。選択問題では、「肯定要素が多数あるから正解だ」、「本文に書かれてあることが沢山含まれているから正解だ」といった、頭を使わない安直な判断の仕方をしないよう注意しよう。

イエス誘導法によるセールストーク
・「今日は本当に天気がいいですね!(はい。)」、「ところで、お子さんの受験サポート、大変ですね!(はい。)」、「お子さんの将来のために、親御さんとして大変ご立派だと思います!(はい、ありがとうございます!)」、「いい教材があったら、お子さんもいっそうやる気を出すでしょうね!(はい。)」、「やる気があれば何でもできる! なんてね!(はあ・・・)」、「偏差値を一気に20も上げる、夢のような教材があったらいいですよね!(はい。)」、「この教材は国語の大家が作ったものですので、子どもの人生を思う親御さんとしては、さぞご興味をお持ちのことと思います!(はい。)」、「子どもの将来を真剣に考えている親御さんがこういった教材を活用している理由も、ご想像いただけますよね!(はい。)」、「成績が上がるなら、お子さん、相当やる気を出しますよ(はい。)」、「いつの日か、立派に成長されたお子さんが、『お母さん、ありがとう!』とお礼を言っている様子がありありと目に浮かびますよ…(うるうる)」、「お子さんの明るい未来と豊かな人生を築くために、50万円を惜しむ親がどこにいますか!!(はい…)」、「通常価格の50%引きの教材だなんて、お子さんには知らせないほうがいい!(50%引きなんですか!?)」、「特別セール期間の特別価格だなんて、お子さんに伝えては絶対いけませんよ!(はい。)」、「私にもあなたのような子ども思いの母親がいたらどんなによかったか・・・(うるうる)」、「お名前をご記入いただくのはこの欄です。(はい。)」
※このような「論理トリック」や「心理トリック」を駆使したセールストークによって高額な教材を売りつける悪徳会社はいくらでもありますので注意してください。

(7)事後情報効果
・ある出来事を経験した後に、実際の出来事には含(ふく)まれていなかった情報を与えられると、その誤った情報に沿うように記憶が変容する現象。「本文を通読している時間が無い」、「選択肢を吟味している時間が無い」と嘆(なげ)く受験生は多いが、「本文と照合せず、記憶に頼って解く」という方法をとり続けていては、いつまでたっても「精度の向上」は望めない。もともと国語力の素地が高い受験生や、国語の得意な受験生には国語的センスの高い者が多いが、現状、そうでもないのに印象や感覚、機械的手法に頼るばかりでは、やはり精度の向上は望めない。「時間短縮訓練」や、「頭脳の高速処理訓練」に真剣に取り組み、自身の変革を図ってみてはどうだろう。

(8)催眠(さいみん)誘導(トランス誘導/幽体離脱誘導)
・素材文が哲学的な内容であったり、抽象表現の多い難解な文章であったりすることで、選択肢の説明も必然難解となりがちであり(かつ、長文化する場合もある)、解答者が判読に集中して取り組むうちに朦朧(もうろう)とし、やがて催眠状態(もしくはトランス・幽体離脱)に陥(おちい)る。平常より難解な文章に対しても全力で食らいついて読解と問題解決に取り組む訓練を積み、対応力をしっかりと強化しておこう。自力で理解することが困難な場合には、その時にこそ、大人の力を借りてほしい。

・難易にかかわらず、文章の文字を見た瞬間に気絶してしまう受験生は少なくない。また、集団授業などにおいても、国語の授業中に目を開けたまま気絶している受験生もしばしば見受けられることだろう。中学受験を人生のステップとして自ら選択した以上、自分一人の力ではどうにもならないなどと諦(あきら)めてしまわず、信頼できる先生や大人たちの力を借りながら、まずは自分にできることから始めよう。「未来の自分」の姿をはっきりと思い描(えが)き、それに強く、強く自分を引き付け、高めていくための努力を日々積み重ねていってほしい。「自分の力で自分を育てる」姿勢、「自分の力で自分を作り上げる」姿勢の大切さを忘れないこと。

※催眠(さいみん):眠気(ねむけ)を催(もよお)すこと。
※朦朧(もうろう):意識がおぼろげで、はっきりしないさま。
※トランス:魂(たましい)が抜けた状態。
※幽体離脱(ゆうたいりだつ):意識や霊魂(れいこん)が肉体から離れている状態。体外離脱。

(9)ゾンビ効果
・一度誤答であると確信を抱いて消去したにもかかわらず、悪霊(あくりよう)に取り憑(と)りつかれたかのように、その後も、「もしかしたら本当は正解なのではないか」、「手招きする方へ行けば自分は楽になれるのではないか」という観念に度々(たびたび)襲われては、いよいよ増幅する不安の中で、やがてふいに正常な判断力を失い、気が付くとまんまと誤答へと引きずり込まれてしまっていたのかよ! という、それはそれは恐ろしい現象。

※ゾンビ:邪悪な霊力などによって、生きた姿を与えられた死体。蘇生(そせい)死体。
※取り憑(つ)く:霊などが乗り移る。

(10)サブリミナル効果(隠し誘導文)
・「こっちへおいでよ」、「正解はこれだよん」、「もうお前を離さないもんね」のような、受験生の潜在(せんざい)意識に強く働きかける文言(もんごん)をいくつかの要素に分解したうえで、それを選択肢の説明文中に巧妙に埋め込み、誤答へと暗示誘導する。咄嗟(とっさ)には認識不可能な潜在情報を説明内に密(ひそ)かに仕込むことで受験生を誤答へと誘導する、恐ろしい暗示手法。

サブリミナル効果:映画やコマーシャル等において、例えば「コーラを飲もう」、「ポップコーンを食べよう」といったメッセージを表示した一コマをフィルムの中に何枚か挟(はさ)み込んで映写すると、視覚では通常認識できない数千分の1秒という極めて短い時間に繰り返して表示されるそのメッセージが、コーラやポップコーンの売り上げ増加に反映するとされる現象。ある知覚刺激が非常に短時間であるなどの理由で意識としては認識できないが、潜在意識に対して一定の影響を及ぼすことができるとされる、心理的効果。心理学や認知科学の分野での実証が困難とされているが、心理操作や暗示誘導、洗脳、マインドコントロール等に悪用される恐れがあるため、日本では90年代にNHKや民放がこの手法を使用しての放送を禁じ、海外でも同様に禁止している国が多い。
※洗脳:暴力的な手段など強制力により、相手の思想や主義を根本的に変えさせること。
※マインドコントロール:暴力的な手段などを用いずに相手の心理状態を制御し、特定の意思決定や行動へと誘導すること。

基本的な論理⑨(弁証法)


弁証法とは、
①【正】『命題(出発点となる問題)』から始まり、そこから
②【反】『矛盾(対立・葛藤)』が生じると、その【反】を捨てず受け入れたうえで(保持したまま)
③【合】『統合:より高次での克服・解決』へと至らしめる思考形式のことです。

 そして、【反(矛盾・対立・葛藤)】を受けて【合(高次での統合)】へと進化(深化)・発展させる、この最終段階を【止揚(しよう=アウフヘーベン/ドイツ語)】といいます。
・②の「【反】『矛盾(対立・葛藤)』は完全に否定し捨て去るのではなく、逆に反】を受け入れてこそ(保持してこそ)、③における「【合】統合=高次の克服・解決」の実現を可能としますから、弁証法は、一般に同様のものと解釈されている、「良い所」だけを取り上げて上手くまとめる『折衷(せっちゅう)案(良いとこ取り)』とも、双方が譲(ゆず)り合って一致点を見出す『妥協(だきょう)案』とも本質的に異なります
・令和四年(2022年)3月に実施された『サピックス 新小6・3月度組分けテスト』で扱われた文章(「スマホを捨てたい子どもたち―野生に学ぶ『未知の時代』の生き方(山極寿一)」を例に「弁証法的解釈」をすると、以下のようになります。
※筆者自身が『弁証法的思考法』により主張を展開しています。人類学者、霊長類学者である山極氏はゴリラ研究の第一人者であり、その著作からの素材文がテストや教材等によく使用されています。

弁証法の形式
①【正】命題:(出発点となる問題)
・「現代はAI(人工知能)が進化し、人間はAIへの依存(いそん)を強めている」
②【反】内包されていた矛盾(対立・葛藤)の現出
・「AIへの依存が強まるとともに、人間が持つ本来の能力や五感の働きが生かされず、ますますAIに操作され、人間らしさが失われていく」
③【合】統合:②の【反】を捨てず受け入れたうえで、より高次の克服・解決を実現する。
・「機械化、情報化が進展する現代、AIに依存(いそん)しすぎず、人間本来の能力や五感を積極的に生かしながら、自分の頭を使って考え、判断し、また、主体的に行動することで、AIと共存しつつ、真に人間らしい、より良い生き方を獲得し、実践すべきだ

※AI:人工知能のこと。自動車の自動運転技術、掃除ロボット、インターネットの検索エンジン、『チャットGPT』などの対話型ロボット、自動翻訳(ほんやく)、『シリ』や『アレクサ』などのバーチャルアシスタント、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での「お勧め記事」の表示機能、『アルファ碁ゼロ』などの囲碁(いご)AIプログラム、画像認識、音声認識など、人間の知的活動にAIが大きな役割(やくわり)を果たしつつある。AIの進化、普及によって今後消失する傾向にある仕事や、消失しない傾向にある仕事などについて調べておこう。

◎文学的文章の場合でも同様に、例えば、

①【正】『主人公の、周囲に流されるまま、自分を偽(いつわ)り、自分らしさを失った消極的な現在の生き方』から、
②【反】『今のままの自分であり続けてよいのか』という「矛盾(対立・葛藤)」が生じ、
何かのきっかけを経て、
③【合】『それまでの自分のあり方を否定せず、むしろそれをありのままに認め、受け入れて成長の糧(かて)とし、本当の自分らしさを求めて、自分に正直に、力強く前向きに生きてゆく』といった「高次の克服・解決=より良い生き方の獲得(かくとく)=人間性の成長」がもたらされる。

というように「弁証法の思考形式」を読解に適用できる場合があり、これにより、各種問題への解釈の仕方や記述答案の質にも大きな違いが出てきます。
◎日常においても私たちはさまざまな場面において無意識的に「弁証法的思考法」によって物事を考えたり、対処したりすることがあります。文章を書くとき、話し合いをするとき、図画や工作などの創作に取り組むとき、創造的な発想に挑(いど)むとき、困難を克服しようというとき、自分のあり方や生き方に悩(なや)むとき、未来への道筋を思い描(えが)くときなどにおいても、意識的に「弁証法的思考法」を活用してゆきましょう。

基的な論理⑩ 類推(類比推論)


・「類推(類比推論)」とは、ある事柄に対して、「Aは、Bと似ている」と「類似性」を認め、次に「Bが▲(という性質)なら」、「(多分)Aも▲(という性質)だろう」と推理する方法です。

類推の形式
①Aは、Bと似ている。【類似性の確認
・花子さん:「トラは、ネコに似ているところがあるね」
②Bは、▲だ。(Bは、▲という性質を持つ。)【具体例の提示
・愛子さん:「ネコは、木に登れるわ」
③だから、(多分)Aも▲だろう。(Aも▲の性質を持つだろう。)【類推結論
・花子さん:「きっと、トラだって木に登れるはずよ!」

・花子さんが①「トラは、ネコに似ている」と類似性を指摘したので、愛子さんは身近な存在であるネコの性質について考えてみたところ、②「ネコが木に登っている」姿を思い浮かべました。そこで、花子さんは、そうした情報を根拠(前提)として、③「トラがネコと類似した性質を持っているなら、きっとトラも木に登れるだろう」と類推したのです。ちなみに、トラやライオン、チーター、ヒョウ、ジャガー等のネコ科の動物は木に登ることができます。
◎「類推(類比推論)」は、「類比」、「アナロジー」とも呼ばれ、「既知(きち)の知識」をもとにして「未知の知識」を新たに得るための強力な思考法の一つです。日常においても私たちは、ものごとについて推測したり、仮説を立てたりする際に、無意識にこの「類推(類比推論)」という思考法を活用しています。

類比論法
・類似性のある例を挙げて、自分の主張に説得力を持たせる論法です。

・お母さん:[A]勉強はね、[B]スポーツと同じなの! 【類似性の確認
・健太君:[B]スポーツは、[▲]目標に向けて毎日練習することが大事だね。【具体例の提示
・お母さん:[A]勉強も、[▲]志望校合格を目標に毎日努力することが大事よ! 【類比結論

◎選択問題においては、「ことわざや慣用句」等も「類比論法」に利用される場合がある。厳密な読解と分析によって、それが「適切な類比」として機能しているのかどうか、単にダミー的に、つまり、見せかけの説得力のための類比となっていないかどうかを見極められるようになろう。

基本的な論理⑪ 仮説形成(アブダクション/リトロダクション)


・ニュートンは「リンゴが木から落ちる」のを見て、『万有引力の法則』を発見しました。ある「観察事実」について、その「原因」を探るため、「一般法則」や「知識・経験」等を照らし合わせ、これを前提として合理的な「仮説」を導き出す推論法を「仮説形成(アブダクション/リトロダクション)」といいます。

【仮説形成の例】
①地面のあちこちに水たまりがある。(観察事実
②雨が降ると、水たまりができる。(一般法則
③多分、雨が降ったのだろう。(仮説

仮説形成(アブダクション/リトロダクション):ある結果、つまり「観察事実」から遡(さかのぼ)って、そのもっともらしい「原因」を想定する推論法。ただし、「その仮説が観察事実について合理的な説明を与えることがが可能」だとしても、必ずしもその仮説が正しいとは限らないため、「検証」によって「仮説の正しさ」が確かめられる必要がある。

【誤った仮説形成の例】
  ・前提①:太郎君が珍しく学校を休んだ。【観察事実
  ・前提②:宇宙人にさらわれると、学校に来ることができない。【一般法則
  ・結論:太郎君は、宇宙人にさらわれたに違いない。【仮説
※宇宙人の存在が証明されていないにもかかわらず、その存在を「前提」として推論したために、「論理的に飛躍した(誤った)仮説」が導出されました。このような例文を自分でも考えてみましょう。。

◎物理学者のニュートンは、「リンゴが木から落ちる」という「観察事実」をもとに、一般法則に照らすのみならず、その「創造的な想像力」によって思索(しさく)をめぐらし、ついに「引力」という未知の作用を「創案=仮説形成」しました。創案(そうあん)とは、今まで誰も考えつかなかったことを最初に考え出すことです。また、理論物理学者のアインシュタインも、「科学的仮説や理論というものは、観察された事実を説明するために『発明されるもの』である」と述べ、一般法則に縛(しば)られず、「創造的な想像力」を発揮して合理的な「仮説」を創案することの重要性を指摘しています。仮説形成は、「既知(きち)の知識」をもとにして「未知の知識」を新たに得るための思考法であるとともに、科学においてだけでなく、日常生活においてもまた、さまざまな物事に対処したり、新しい考えを創案したりするうえで重要な役割を果たす強力な思考法の一つだと言えます。
※思索(しさく):物事の道理をたどり、秩序立てて深く考えを進めること。

基本的な論理⑫ 帰納法


三段論法と演繹法(えんえきほう)
・『四谷大塚 第二回 合不合判定テスト(令和二年/2020年7月実施)』、大設問2番にて「演繹法(えんえきほう)と帰納法(きのうほう)について説明された部分を含む素材文が扱われ、その関連問題(100字記述)が出題されました(出典:『日本史でたどるニッポン』本郷和人著)。

「一般法則」をもとにして「個別的結論」を導く推論形式を「演繹法」といいます。ですから、「三段論法」は演繹法の一種です。

演繹法と帰納法(きのうほう)
帰納法とは、「演繹法」とは逆に、「個別事例(複数の具体例)」をもとに「共通点(因果関係)」を見出し、それを「根拠」として「一般法則」を導き出す推論形式です。「一般法則」がスタート地点になるのが「演繹法」で、「一般法則」がゴールになるのが「帰納法」ということです。

【帰納法の例】
・前提①:【個別事例】
   A:あの湖にいる白鳥(はくちよう)は、白い。(具体例)
   B:その川にいる白鳥も、白い。(具体例)
   C:この池にいる白鳥も、白い。(具体例)
  ・前提②:どれも白鳥だから、白いのだ。【共通点/因果関係】
  ・結論:(恐らく)全ての白鳥は、白いだろう。【一般法則】

※帰納法では列挙される具体例以外に例外の出現がありうるため、③の「結論」に「恐らく」を付けてあります。もし例外が出現した場合には、帰納法による「結論」は「一般法則」とは言えず、むしろ「論理的飛躍」、もしくは「論理的な誤り」となってしまうからです。実際、ヨーロッパでは白鳥は白いものだという常識があったのですが、1697年、オーストラリアに固有種の「黒い白鳥(黒鳥=コクチョウ)」が発見され、この「帰納推論による仮説」は明確な誤りであったことが判明しました。

◎「A君はハムスターを、Bさんはウサギを、C君は亀を飼っている。みんな、小動物が好きなんだな」のように、日常においても私たちは無意識的に帰納法を用いて推理や推測をしたり、仮説を立てたりして、生活や発想などに役立てています。帰納法は、「既知(きち)の知識」をもとにして「未知の知識」を得るための強力な思考法の一つなのです。
◎以下に、帰納法を使った簡単な例文を自分でも考えてみましょう。(上図の前提②は省略して可)

【具体例:いくつか挙(あ)げる】   (                          )
【抽象化:まとめて捉(とら)え、一般化する】 (                     )

その他

だって論法
・相手の主張とは別の論点を持ち出し、自分の責任を帳(ちよう)消しにしようとしたり、言い逃(のが)れをしようとしたり、自分の言動を正当化しようとしたりして強弁(きょうべん)する論法。

①お前だって論法
・ジョン:「おい、カンニングするなよ」
・ボブ:「お前だって、今、俺の答え見てるし」
②あいつだって論法
・警官:「あぁあ、20キロも速度オーバーだぁ…… 今日はツイてなかったねぇ……」
・運転手:「そんなぁ、勘弁(かんべん)してよぉ……。あっ! ほら、見てよ! あいつだって
 すっごいスピード出してるじゃん! なんであいつ捕(つか)まえないのっ!」
③みんなだって論法
・ママ:「いけません。ゲームなんか買ってあげません!」
・子ども:「ねえぇぇ、買ってよぉぉ。みんなだって持ってるんだからぁぁ!」

※強弁(きょうべん):無理に理屈をつけて言い張ること。強く言い訳(わけ)をすること。
※基本的な論理⑧『論点のすり替え』(P.7)参照!


悪魔の証明
・晋三(しんぞう)君:「この世に悪魔(あくま)なんか存在しない!」
・清美さん:「それじゃあ、悪魔が存在しないことを証明してみせなさいよ!」
・晋三君:「むぐぐっ・・・」
・清美さん:「証明できないんだから、悪魔は存在するってことじゃないの!」
・晋三君:「どうやって調べれば証明できるんですか!!」
・清美さん:「疑惑はさらに深まった!」
・晋三君:「うるさいな、あっち行け!」

・「悪魔の証明」とは、証明することが困難な事象に対して「存在しないこと」の証明を求める詭弁(きべん)。「あること=存在すること」を証明するには実際に事例を集めればよいが、「ないこと=存在しないこと」を証明する事例を集めるのは事実上不可能である。
・清美さんは、論議以前に「悪魔は存在する」という自説をはじめから結論として決めており、「不在がもし証明されるなら、悪魔が存在しないと認めてもよい」という証明困難な選択肢をダミーとして敢(あ)えて提示することで、相手を「二分法の罠(わな)」に掛け(『心理操作術』《5》の『誤前提暗示』を参照)、人身攻撃の手段としても利用しています。
・本当は前提となる二つの選択肢以外にも、「存在するかどうか分からない」という別の選択肢もあるのですが、詭弁として批判や反論に利用されるだけでなく、人身攻撃や印象操作等の目的にも利用される「悪魔の証明」では、こうした「他の可能性」については完全に無視します。
※詭弁(きべん):誤っていることを、意図的に正しいと思わせるように仕向けた誤魔化(ごまか)しの議論。
※排除(はいじょ):受け入れられないものをその場から無くすこと。
※排斥(はいせき):受け入れられないものをその場から遠ざけること。

◎例文の「悪魔」という語を「宇宙人」や「歌って踊れるタヌキのポン吉君」などに読み替えてみよう。また、「僕はカンニングをしていない」、「私は犯人ではない」といった論題についても、読み替えて論法の不適切さを確かめよう。


疑似相関(見せかけの相関)
・友紀夫(ゆきお)君:「(A)アイスクリームの販売量が、上がっていますな!」
・進次郎君:「(B)熱中症になる人も、増えている!」
・友紀夫君:「アイスクリームの販売量の増加が、熱中症増加の原因ですな!」
・進次郎君:「今のままではいけない! だからこそ、日本は今のままではいけない!」
・ひろゆき君:「それって、あなたの感想ですよね!」
・たけし君:「ちょっと何言ってんのかわからない」

・ある事柄(A)が変化するとともに他のある事柄(B)も同時に変化しているとき、そこに「相関関係がある」というが、単に相関関係を示しているだけのものに「因果関係」を捉(とら)えてしまうことを「疑似相関(ぎじそうかん=見せかけの相関)」という。
※相関関係:一方の変化とともに、他方も変化するような関係。

・例文の場合、実際には(A)と(B)は「別の要因(C=気温の上昇)」によって変化しているのだが、それがはっきりと見えるものではないために、(A)と(B)とが「因果」によって関連づいている印象を与えてしまう。「因果関係のあるものには相関関係がある」が、相関関係があるからといって、それが因果関係を示しているとは限らない。


同語反復(循環論法)
・友紀夫(ゆきお)君と進次郎君とは特殊(とくしゆ)な通信方法を使って互いに自由に意思疎通(そつう)できるようですが、二人の会話は論理も脈絡(みゃくらく)も破綻(はたん)していて、一般の人たちには全く意味不明ですね。たけし君も呆(あき)れてしまいました。ちなみに進次郎君の、「今のままではいけない! だからこそ、日本は今のままではいけない!」のような論法を「同語反復(循環論法)」といいます。いかにも主張らしく見せかけるために同語を無意味に繰り返すだけですから、話の中身が全く無く、何の問題解決にもなりません。
※(73)『同語反復(循環論法)』参照!

・そこで、ひろゆき君は、堂々と「空(から)っぽの主張」をして誇(ほこ)らしげな進次郎君に対し、「問題に対して真摯(しんし)に向き合いもせず、明確な根拠も具体案も示さず、平然と論点をはぐらかし、ただ当たり障(さわ)りのないその場限りの感想を述べて能天気に受け流して済まそうとする言動は、実にいい加減、かつ無責任であり、人を馬鹿にしている」と非難しているのです。
※破綻(はたん):物事が修復不可能な状態にまで壊(こわ)れること。
※真摯(しんし):真面目(まじめ)に、ひたむきに物事に取り組むさま。
※能天気(のうてんき):何事も深く考えず、常に呑気(のんき)で気楽なさま。また、その人。


二重語法(曖昧語法)
・「十代の若者に自動車を運転させるのは非常に危険だ」という主張は、「運転をする若者自身が事故等の危険な目に遭(あ)いやすい」という意味と、「若者の運転によって他者が危険にさらされる可能性が高い」という意味のいずれにも解釈ができ、曖昧である。
※曖昧(あいまい):意味内容が二通り、または二通り以上に解されること。意味内容をしっかりと捉(とら)えにくく、はっきりしないこと。


ダブルスタンダード(二重基準)
・基準となる事柄(ことがら)が二つあり、「同じことをして兄は怒られたのに、弟は何も咎(とが)められなかった」のように、立場やそのときの状況によってそれぞれの基準を都合よく使い分けること。。
※二重基準(ダブルスタンダード):同じ一つの事柄について、状況によって二つの異なる基準を使い分けること。日常における身近な例としては、「倫理(りんり)に基(もと)づき、公正、中立に、事実を正確、かつ客観的に報道する」ことを責務として掲(かか)げながら、特定の思想や主義の上に立った偏向(へんこう)報道や歪曲(わいきょく)報道、捏造(ねつぞう)報道などによって世論誘導を図ったり、自らに都合の悪いことは一切報道しなかったりするなど、状況によって姿勢や見解を都合良く変える日本のマスメディア(マスコミ)の活動が挙(あ)げられる。
※マスメディア:テレビ・新聞・ラジオ・雑誌・インターネットなどの、マスコミ(大衆伝達・大量伝達)の手段となる、大量の情報伝達が可能な媒体(ばいたい)。また、マスメディアにより情報を発信する組織。


『のび太論法』


『ジャイアン論法』



消えた1,000円の謎(なぞ)
問題
・三人の客がレストランで食事をし、一人10,000円ずつ、合計30,000円を支払いました。客の一人が、「少しまけてよ」と持ちかけると、レジ係は店主から「5,000円を返金してよい」と言われました。するとレジ係は、5,000円だと3人で割り切れないと考え、こっそりと2,000円を自分のポケットに入れ、客には3,000円だけを返金しました。
・さて、客は一人9,000円ずつ支払ったことになるので、支払いの合計金額は27,000円です。これにレジ係がくすねた2,000円を足すと、合計29,000円になります。客が最初に支払ったのは30,000円だったはずです。1,000円はどこへ消えてしまったのでしょう。

答え
・近平君:店主が5,000円の値引きを認めたのだから、本来客側は25,000円を支払えば済(す)んだはずだ。にもかかわらず、客が支払った金額は27,000円となった。では、この2,000円分の金額は一体どこから現れたのか
・倍伝君:レジ係が2,000円をくすねさえしなければ、客は25,000円を支払うだけでよかったのだから、その「2,000円分はレジ係のくすねた金額」に当たるんだよね。
・近平君:だとすると、問題文にある「27,000円に2,000円を足す」という計算は、「レジ係のくすねた2,000円」を2回足すということになるだろう。
・倍伝君:なるほど。問題文自体にウソが仕込まれているんだ。
・近平君:本当の計算としては、「店の売り上げとなる25,000円」に「レジ係の手に渡(わた)る
2,000円」を加え、さらにそれに「客に返金された3,000円」を加えると、問題文にある「客が最初に支払った30,000円」と一致する。
・倍伝君:よし、問題文を正してみるよ。「客は一人9,000円ずつ支払ったことになるので、支払いの合計金額は27,000円です。ただし、この金額にはレジ係がくすねた2,000円分、つまり、本来レジ係が客に返金すべき2,000円分が含まれていますが、客側はそれを全く知りません。この、「客が支払った(店側に動いた)27,000円」に「実際に返金された(客側に動いた)3,000円」を加えると、合計金額は30,000円となり、客が店に最初に支払った金額と一致します。」

・倍伝君:ところで、問題文そのものに虚偽(きよぎ)が仕込まれていたことは確認できたけれど、どうしてそれに気づくことができなかったのだろう。不思議だなあ……。
・近平君:問題文にある「客の支払った27,000円」という表現は、つい「客側の視点」で捉(とら)えてしまう。それで、問題の読み手はそこに意識が強く引っ張られて、逆に「店側の視点」から見たお金の流れが把握(はあく)がしづらくなるんだ。
・倍伝君:確かに、さっきの説明のように、「客側が支払った27,000円は、店側が受け取った27,000円」だと視点を切り替えて捉(とら)え直せば、店側から見たお金の流れが確認できて理解が簡単だものね。計算上の誤(あやま)りがすぐにわかった。
・近平君:ところが、「視点の切り替え」ができずにいると、「客側が支払った27,000円にレジ係のくすねた2,000円分が含まれている」という「前提」が読み手の思考からすっぽりと抜け落ちてしまう。客側はレジ係の盗(ぬす)みを全く知らないんだからね。だから、読み手は「レジ係のくすねた2,000円」が二重に加算されていることに気づけず、混乱を深めてしまうんだ。
・倍伝君:はじめは訳(わけ)がわからなくて狐(きつね)につままれたようだったよ。「問題文自体に虚偽が仕込んである」だけでなく、「心理的な誘導(ゆうどう)トリック」も使われていたのか。作為(さくい)的に表現を操作して読み手の視点を固定し、暗示誘導によってその後の判断に歪(ゆが)みを生じさせる、というわけだね。
・近平君:おまけに、思考に筋道を立てるうえでの重要な情報である「前提」の一つを見失わせて混乱させる「論理トリック」も仕組まれている。
・倍伝君:いや、それにしても、ものごとを理解するには「視点の切り替え」や「相対的視点からの検討」が大事なんだね。
・近平君:そして、「国語力」と、「論理的思考力」もだ。
※心理操作術(4)『アンカリング(初期値提示誘導』、基本的な論理③『前提のすり替え(+41)』、『条件トラップ(45)』を参照!


Aさんの帽子は何色か?
問題
・赤い帽子(ぼうし)が二つ、白い帽子が三つあります。Aさん、Bさん、Cさんの三人の生徒が縦に順に並び、前を向いたまま椅子に腰かけました。その後、それぞれが5つの帽子の中のどれかを被(かぶ)りました。3人とも、自分が被っている帽子の色はわかりませんが、3番目にいるCさんには、前の二人が被っている帽子の色が見えており、2番目にいるBさんには、最前列にいるAさんの帽子の色が見えています。


・先生が、まずCさんに自分の帽子の色をたずねると、「わかりません」と答えました。次に、Bさんに同じ質問をすると、やはり「わかりません」と答えました。Aさんに同じ質問をすると、「わかりました」と答えました。
・そこで、「もしAさんとBさんが二人とも赤い帽子を被っていたなら」から始めて、最前列にいるAさんは自分が何色の帽子を被っているとわかったのかを考えてみましょう。

答え
①もしAさんとBさんが二人とも赤い帽子を被っていたなら、Cさんは「自分の帽子は白です」と答えたはずです。もともと赤い帽子は二つしかないからです。
②でも、Cさんは「わかりません」と答えたので、「AさんとBさんの二人とも白い帽子を被っていた」か、「AさんとBさんのそれぞれが、赤か白どちらかの帽子を被っていた」と考えられます。
③次に、もしAさんが赤い帽子を被っていたなら、Bさんは「自分の帽子は白だ」とわかったはずです。なぜなら、最初のCさんの言葉から「AさんとBさんが二人とも赤い帽子を被っている」ことが既(すで)に否定されているからです。
④ところが、Bさんは「わかりません」と答えました。
⑤そこでAさんは、「自分の帽子が赤でないのなら、白だ」とわかったのです。


『背理(はいり)法』で犯人を見つけろ!
・「①私は犯人ではない。②もし私が犯人なら、③▲という矛盾(むじゆん)が生じる。④だから、私は犯人ではない」のように、「①:ある主張」について、「②:その主張を否定(ひてい)した仮定」を行い、それにより生じる「③:矛盾」を示すことで、「④:当初の主張が正しい」ことを証明する方法を『背理法(はいりほう)』といいます。
※『基本的な論理⑥:背理法』を参照のこと。

『背理法』を使って、次の重大事件を解決してみましょう。
・あるクラスで、『やる気行方(ゆくえ)不明事件』が発生しました。一人の犯人(はんにん)だけがウソをつき、残りの二人は本当のことを言っています。では、三人の容疑者(ようぎしゃ)の供述(きょうじゅつ)を聞いてみましょう。

 A君:B君が犯人だよ。僕は『やる気』を隠(かく)していない。
 B君:C君が犯人だ。僕も『やる気』を隠していない。
 C君:僕は犯人じゃない。『やる気』なんか隠してないよ。

・この三人の中に、『やる気』をどこかへ隠した者が一人だけいます。『背理法』を使い、『もしA君が本当のことを言っているとしたら』から始めて、犯人を当ててみてください。

答え
・文雄君:「絶対に」なんて言ってるから、絶対にA君が怪(あや)しいよ!
・恋宝さん:印象や感覚で決めつけるものじゃないわ!!!
・那津男君:とにかく、解決しなくちゃ!
・健太君:まず、もしA君が本当のことを言っていると仮定すると、「C君が犯人だ」と言うB君はウソを言っていることになる。一人だけがウソを言っているのだから、残ったC君は本当のことを言っているんだ。この理屈だと、特に矛盾は起きないね。
・綾香さん:今度は、もしB君が本当のことを言っていると仮定すると、「自分は犯人ではない」と言うC君の言葉がウソになるわ。C君が怪しいわ。
・雄一郎君:ちょっと待った。でも、もしB君が本当のことを言っていると仮定すると、犯人ではないはずの「B君が犯人だ」と言うA君もウソを言っていることになるよ。一人だけがウソを言っているはずなのに、二人がウソをついているとなると、矛盾だよ
・清美さん:どうもB君が怪しいわ。疑惑(ぎわく)はさらに深まった!!!
・和夫君:うるさいな、いや、待て。一応、C君も調べてみるんだ。もしC君が本当のことを言っていると仮定すると、「C君が犯人だ」というB君はウソを言っている。一人だけがウソを言っているのだから、A君は本当のことを言っているんだ。この理屈で考えても、やっぱり矛盾は起きないぞ。
・太郎君:よし、B……
・宗男君:よし、B君を逮捕(たいほ)しろ!

・瑞穂さん:……ねえ、B君、『やる気』を一体どこに隠(かく)したの?
・B君:校庭の隅(すみ)に松の木が一本あるだろ? その下に穴を掘(ほ)って埋(う)めてあるよ……。


5人の宇宙人
問題
・・パッバブー(A)、ピピコペポ(B)、プルッパ(C)、ヨユギェー(D)、テレロレロ(E)という名の5人の宇宙人が地球にやって来ました。以下の情報③を最初の手がかりとして、どの宇宙人が何をしているかを特定しましょう。

①Dは地球儀を眺(なが)めているか、温泉につかっている。
②A、B、Cの3人は星を眺めてはいない。
③AかEのどちらかが、地球儀を眺めている。
④B、C、Dのうち1人が、宇宙船の修理をしている。
⑤居眠りをしているのは、Cではない。

■答え
※説明を簡略化するため、宇宙人の行動をキーワードのみで表記します。
(1)③により、地球儀がAかEであるのなら、①のDは地球儀ではない。よって、「Dは温泉」である。
(2)「Dが温泉」であるのなら、②は「星を眺めているのはDかE」なのだから、「Eは星」である。
(3)「Eが星」であるのなら、③の「Aは地球儀」である。
(4)ここまでで「Aが地球儀」、「Dが温泉」、「Eが星」と確定する。さらに⑤によりCは居眠りをしていないので、確定した「A、D、E」に「C」を加えたこの4人を除くBが居眠り」となる。
(5)以上により、最後に残った「Cは宇宙船」である。


今週のジャイアン当番

問題

・今週のジャイアン当番は、ルイ君、サラさん、メル君、ルルさん、レオ君の5人です。以下の情報をもとに、月曜日から金曜日まで、誰がジャイアン当番なのかを特定してください。

 ①ルイ君はレオ君の数日前が当番です。
 ②サラさんの当番はルルさんより後です。
 ③メル君の当番はルルさんの2日前です。
 ④レオ君は木曜日が当番です。

■答え
(1)④の情報により、レオ君の当番は木曜日で確定している。
(2)①によれば、ルイ君の当番はレオ君の「数日前」なので、「一日前」の水曜日ではなく、月曜日か火曜日のいずれかである。
(3)もしメル君が水曜日だとしたら、③によりルルさんが2日後の金曜日となるが、それだとサラさんが土曜日以降となってしまい、「当番は金曜日まで」という条件に合わない
(4)もしメル君が火曜日だとしたら、③によりルルさんが2日後の木曜日となってしまい、④の条件に合わない
(5)もしメル君が月曜日だとしたら、③によりルルさんは2日後の水曜日となり、また、②によりサラさんが金曜日であっても矛盾しない
(6)さらに、もしメル君が月曜日だとしたら、火曜日がルイ君であっても①と矛盾しない。また、ルイ君が火曜日でない場合には、その他の条件に一致しない
(7)以上により、月曜日はメル君、火曜日がルイ君、水曜日がルルさん、木曜日がレオ君、金曜日がサラさんと結論される。


天使と悪魔と人間
問題
・天使は常に本当のことを言い、悪魔は常にウソをつき、人間は本当のことを言うこともあれば、ウソをつくこともあります。A、B、Cの3人が、次のように言いました。

 A:「私はね、天使ではありませんよ」
 B:「私はね、人間ではありませんよ」
 C:「私はね、悪魔ではありませんよ」

・「もしAが天使なら」、「もしAが悪魔なら」のように仮定して矛盾はないか確かめながら、A、B、C3人の正体を明らかにしてみましょう。

■答え
①もしAが天使なら、天使がウソを言っていることになるので矛盾する。よって、Aは天使ではない
②また、もしAが悪魔なら、悪魔が本当のことを言っていることになるので矛盾する。よって、Aは悪魔ではない
③以上により、「Aは人間」であると考えられる。
④次に、もしBが天使なら、本当のことを言っていることになるので矛盾しない。よって、Bは天使である可能性がある。
⑤また、もしBが悪魔なら、悪魔なのに本当のことを言っていることになるので矛盾する。よって、Bは悪魔ではない
⑥以上により、「Aが人間」、「Bが天使」、「Cが悪魔」であるとわかる。三者それぞれの発言にも矛盾はない



二つの砂時計
問題
・ここに二つの砂時計があります。一つは「4分用」で、もう一つは「7分用」です。この二つの砂時計を用いて「9分」を計りたいのですが、どうすればよいでしょう。

■答え
①まず、二つの砂時計を同時にスタートさせます。
②「4分の砂時計」が終わったら、それを反転させます。この時点でスタートから4分経過しています。
③その3分後、「7分の砂時計」が終わったら、それを反転させます。この時点でスタートから7分経過しています。
④さらにその1分後、つまりスタートから8分後に「4分の砂時計」が終わります。そしてこの時、1分前に反転させたばかりの「7分の砂時計」を再び反転させます。「7分の砂時計」は、反転させたその時点で砂が「1分」の分量だけ残っているのですから、この砂が全て落ちた瞬間が、スタートからちょうど9分後となります。



偽(にせ)金貨はどれだ?

問題
・金貨が沢山(たくさん)入った袋(ふくろ)が三つあります。そのうちの一袋は全て偽(にせ)金貨です。本物の金貨は1枚100gですが、偽金貨は1枚当たり本物より10g重くなっています。偽金貨の袋がどれかを探したいのですが、秤(はかり)は一度だけしか使えません。偽金貨の袋を探すには、どうすればよいでしょう。


答え
・1つ目の袋から1枚、次に2つ目の袋から2枚、続けて3つ目の袋から3枚金貨を取り出し、計6枚の金貨を秤に載(の)せればよい。

①もし三つの袋が全部本物の金貨だとしたら、取り出した金貨6枚分の重さを足すと、600gちょうどになる。
②もし1つ目の袋に入っているのが偽金貨なら、取り出した偽金貨一つ分だけ、つまり、10gだけ重くなるから、秤では610gになる。
③もし二つ目の袋に入っているのが偽金貨なら、取り出した偽金貨二つ分、つまり、20g重くなるから、秤では620gになる。
④もし三つ目の袋に入っているのが偽金貨なら、取り出した偽金貨三つ分、つまり30g重くなるから、630gになる。

テレビドラマ『刑事コロンボ』~「殺しの序曲」より


小手先テクニック・感覚判定法の例

例年、当方が指導を担当する生徒たち数名から、国語の選択問題は以下に挙げたような方法で解決するよう塾の先生や家庭教師から指導されたという話を聞かされます。読解を前提としない機械的判別法や、感覚や印象によって解決を導く「小手先テクニック」と呼ばれる合理性の無い手法ですが、作問者はこのような手法によって選択肢の判定を行う受験生が相当に存在することを承知のうえで作問していることを念頭に置いて学習する必要があります。

(1)「選択肢に書かれてある説明を前半と後半とに分け、前半を棒線で消し、後半の内容のみを比較して判断しなさい」
(2)「短い説明のものは選んではいけない。具体的な内容で、しかも説明が長めの選択肢を選びなさい」
(3)「極端に長い説明や、極端に短い説明のものは選んではいけない」
(4)「いかにも立派なことがらや正論が書かれているものは選んではいけない」
(5)「少しピントが外れた説明がされているものが正解である」
(6)「『断定的な表現』がされているものは選んではいけない」
(7)「傍線部に最も近い部分の説明を利用した選択肢は選んではいけない」
(8)「『音の似た語』が使用されている二つの選択肢を探して、どちらか一つを選びなさい」
(9)「本文中のキーワードが使用されていない説明の選択肢は選んではいけない」
(10)「二つの相反する説明があったら、どちらか一方が必ず正解である」
(11)「五択であれば1番目と5番目を選んではいけない。四択であれば3番目を選びなさい(2番という説もある)」
(12)「選択肢を検討する際、『大げさ』と感じるもの、『言い過ぎ』と感じるものは選んではいけない」
(13)「選択問題で直感力を最大限に発揮できるよう、普段からしっかりと鍛えておきなさい」
(14)「『暗い印象』の説明が書かれた選択肢は選んではいけない」
(15)「プラスイメージとマイナスイメージに分け、設問の方向性に合うほうを選びなさい」
(16)「選択肢の説明を本文の中に当てはめた時、『自然な印象』を与えるものを選びなさい」
(17)「作問者が一番最初に作った選択肢が正解なので、それを推定して答えなさい」
(18)「選択肢で最後に迷ったら、『比較的地味な説明』のほうを選びなさい」
(19)「選択肢で最後に迷ったら、『後のほう』の選択肢を選びなさい」
(20)「選択肢で最後に迷ったら、『正しそうに見えない説明』のほうが正解である可能性が高い」
(21)「選択肢で最後に迷ったら、『強い』と感じるものを選びなさい」
(22)「選択肢で最後に迷ったら、『常識的な説明』だと感じるものを選びなさい」
(23)「選択肢で最後に迷ったら、『まじめな印象を与える説明』のものを選びなさい」
(24)「選択肢で最後に迷ったら、『まじめすぎる印象を与える説明』のものは選んではいけない」
(25)「選択肢で最後に迷ったら、『穏やかな印象を与える説明』のものを選びなさい」
(26)「選択肢で最後に迷ったら、『正解だ』と思えるほうを信じなさい」
(27)「選択肢で最後に迷ったら、最初に『正解だ』と感じたものを信じなさい」

※現在、その他各種小手先テクニック、感覚や印象による「マル秘裏技」が蔓延し、これが大手・中小を問わず相当に多くの塾講師の方々、あるいは家庭教師の方々によって指導されています。選択肢の説明が設問の要求に対応しているかどうか、また、選択肢の説明の趣旨自体が正しいかどうかといったごく基本的な検討さえが一切行われず、形式的作業や感覚、印象に依るだけで誰でも簡単、確実に判定できるかのように指導されるので注意が必要です。子どもに未発達な視点を新たに付与するという意味では「テクニック」もまた全否定されるものではありませんが、「読む力」や「考える力」、「獲得する力」の育成、「精度の向上」が念頭に置かれないままにただ形式的な作業に陥ってしまってはいないか、今一度見直してみてはいかがでしょう。

■以下は多くの小学生(中学受験生)たちが指導を受けている非本質的な小手先テクニックの事例です。これをしたり顔で伝授する指導者の様子も含め、ご参考に是非動画をご覧になってください。(YOU TUBE)
『文章理解のコツ』テクニックだけで問題を解く方法教えます!(26分)
※多くの小学生(中学受験生)たちがこうした手法を『文章が速く正確に読める魔法のテクニック』として指導を受け続けています。
『センター試験』ズルい選択肢の選び方! 分からなくても答えが出る!(12分)
※こちらも多くの小学生(中学受験生)たちが『印象や感覚、機械的作業だけで解ける魔法のテクニック』として指導され続けています。


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・2018年7月現在、本サイトはコンテンツを改編中ですが、「枕詞30種の表」が改編前の内容と完全に同一です。ネット記事をコピー&ペーストしただけで作成されているサイトのようです。※枕詞一覧表
本ページ、「時間配分」の記事を剽窃しているサイト
・多少文面が加工されていますが、内容は完全に同一です。やはりネット記事をほぼコピー&ペーストしただけで作成されているブログのようです。
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・他にも本サイトの記事をコピー&ペーストしただけで作成されているブログやサイトが多数あるようです。※俳句の通釈:「は行」

※他にも本サイトの記事、その他を剽窃したブログやサイトが多数あるようです。


■作成:2010年(平成22年)11月30日
■追補・加筆・修正:随時