■論理パズルと各種論理
①『消えた1,000円の謎』
・アンカリング効果
・前提操作
(1)前提のすり替え
(2)条件トラップ
(3)誤前提暗示
(4)カゼオケ論法(ドミノ論法/連鎖飛躍)
(5)チェリーピッキング(つまみ食い論法/いいとこ取り)
(6)わら人形論法(架空論法)
(7)循環論法
②『天使と悪魔と人間』
・背理法 ※図あり
・矛盾
③『犯人を見つけろ!』
④『魂を探せ!』
⑤『勝利をつかめ!』
⑥『ライオンと羊とキャベツを運ぼう!』
⑦『二つの砂時計』
⑧『Aさんの帽子は何色か?』
⑨『今週のジャイアン当番』
⑩『5人の宇宙人』
⑪『偽金貨はどれだ?』
■基本的な論理
・三段論法(演繹法) ※図あり
・帰納法 ※図あり
・弁証法 ※図あり
・類推(類比推論/アナロジー) ※図あり
・仮説形成(アブダクション/リトロダクション) ※図あり
・のび太論法・ジャイアン論法 ※図あり
無料! 受験国語 選択肢の判別 111の視点
■『受験国語 選択肢の判別 111の視点』(全64頁/B4用紙17枚/製本用):無料PDFのダウンロード(2024年版) ■問題 ■アンカリング効果(初期値提示誘導) ■問題 ■背理法 ■矛盾 ■問題 ■問題 ■問題 ■問題 ■問題 ■問題 ■問題 ■問題
■製本:
・両面印刷後、二つ折りにし、ページ順に揃え、『回転式ホチキス』で「中(なか)とじ」します。
・ホチキスは、背(外側)からノド(内側)に向けて打ちます。また、天地からそれぞれ6~7cmの位置に一か所ずつ打つと冊子が安定します。
■プリンター設定:
・B4用紙/印刷の向き(横)/両面印刷/短辺とじ
・B4枚数:全17枚/表紙1枚含む
※両面で上下反対に印刷されないよう、テスト印刷をしてください。
■記事:正味64ページ(約97,500字)
■PDFデータ量:6.77MB
■本資料は一見難しい内容に思えるかもしれませんが、大人の助力により、手順を踏んで説明すれば、小学5、6年生にもしっかりと理解させることが可能です。また、内容的に中学生や高校生の学習にも利用できます。
①消えた1,000円の謎
・三人の客がレストランで食事をし、一人10,000円ずつ、合計30,000円を支払いました。客の一人が、「少しまけてよ」と持ちかけると、レジ係は店主から「5,000円を返金してよい」と言われました。するとレジ係は、5,000円だと3人で割り切れないと考え、こっそりと2,000円を自分のポケットに入れ、客には3,000円だけを返金しました。
・さて、客は一人9,000円ずつ支払ったことになるので、支払いの合計金額は27,000円です。これにレジ係がくすねた2,000円を足すと、合計29,000円になります。客が最初に支払ったのは30,000円だったはずです。1,000円はどこへ消えてしまったのでしょう。
■答え
・近平君:店主が5,000円の値引きを認めたのだから、本来客側は25,000円を支払えば済んだはずだ。にもかかわらず、客が支払った金額は27,000円となった。では、この2,000円分の金額は一体どこから現れたのか。
・倍伝君:レジ係が2,000円をくすねさえしなければ、客は25,000円を支払うだけでよかったのだから、その「2,000円分はレジ係のくすねた金額」に当たるんだよね。
・近平君:「27,000円の中にその2,000円が含(ふく)まれている」というのなら、問題文の「27,000円に2,000円を足す」という計算は、「レジ係のくすねた2,000円」を2回足すということになるだろう。
・倍伝君:なるほど! 問題文自体にウソが仕込まれているんだ! しかも、「総額30,000円のお金の動き」として見るのなら、客側に返金された3,000円が計算に含まれていないのも、そもそもおかしい。
・近平君:本当の計算としては、「店の売り上げとなる25,000円」に「レジ係の手に渡る2,000円」を加え、さらにそれに「客に返金された3,000円」を加えると、問題文にある「客が最初に支払った30,000円」と一致する。
・倍伝君:よし、問題文を正してみるよ。「客は一人9,000円ずつ支払ったことになるので、支払いの合計金額は27,000円です。ただし、この金額には、レジ係がくすねた2,000円分、つまり、本来はレジ係が客に返金すべき2,000円分が含まれていますが、客側はそれを全く知りません。この『店側に動いた(客が支払った)27,000円』に『客側に動いた(実際に返金された)3,000円』を加えると、合計金額は30,000円となり、客が店に最初に支払った金額と一致します。」
・倍伝君:ところで、問題文そのものに虚偽が仕込まれていたことは確認できたけれど、どうしてそれに気づくことができなかったのだろう。不思議だなあ……。
・近平君:問題文にある「客の支払った27,000円」という表現は、つい「客側の視点」で一方向的に文脈を捉(とら)えてしまう。それで、問題の読み手はそこに意識が強く引っ張られて、逆に「店側の視点」から見たお金の流れが把握(はあく)がしづらくなるんだ。 ※アンカリング効果(初期値提示誘導)
・倍伝君:確かに、さっきの説明のように、「客側が支払った27,000円は、店側が受け取った27,000円」だと視点を切り替えて捉え直せば、店側から見たお金の流れが確認できて理解が簡単だものね。計算上の誤りがすぐにわかった。
・近平君:ところが、「視点が固定されて切り替えができずにいる」と、「客側が支払った27,000円にはレジ係のくすねた2,000円分が含まれている」という「前提条件」が読み手の思考からすっぽりと抜け落ちてしまう。だから、読み手は「レジ係のくすねた2,000円」が二重に加算されていることに気づけず、筋道を見失って宙(ちゅう)に浮いたようになってしまうんだ。 ※前提操作(『前提の消失/前提の隠匿:いんとく:かくすこと』)
・倍伝君:はじめは訳(わけ)がわからなくて狐(きつね)につままれたようだったよ。「問題文自体に虚偽が仕込んである」だけでなく、「心理的な誘導トリック」も使われていたのか。作為(さくい)的に表現を操作して読み手の視点を固定し、その後の判断に歪(ゆが)みを生じさせる「暗示トリック」にかかってしまった、というわけだね。 ※アンカリング効果(初期値提示誘導)
・近平君:おまけに、思考に筋道を立てるうえでの重要な情報である「前提」の一つを見失わせて混乱させる「論理トリック」も仕組まれている。 ※前提操作(『前提の消失/前提の隠匿』)
・倍伝君:「客側はレジ係の盗(ぬす)みを全く知らない」という状況も、「レジ係がくすねた2,000円を足す必要がある」という虚偽の計算を読み手に信じ込ませるための暗示材料となっているね。
・近平君:しかもだ、「これにレジ係がくすねた2,000円を足すと」のように「偽(にせ)の計算条件がさも当然のように直(ただ)ちに与えられる」と、読み手はこの誘導に乗せられて、新たなこの情報を前提の一つとして改めて筋道を立て直そうと試みる。だが、そもそも「偽の前提条件」を基(もと)にして計算が合うはずがない。これもまた、論理的誘導の一手法というわけだ。 ※前提操作(『条件トラップ』)
・倍伝君:物の怪(け)の変幻(へんげん)のように、妖(あや)し気(げ)に立ち現れたり消えたりを繰り返す「前提の変幻」に翻弄(ほんろう)されて、考えれば考えるほど、いっそう混迷(こんめい)の淵(ふち)に深く陥(おちい)ってしまうというわけか……。それにしても、ものごとを理解するには「視点の切り替え」や「相対的視点からの検討」が大事なんだね。
・近平君:そして、「国語力」と、「論理的思考力」もだ!
※物の怪(もののけ):人にとりついて祟(たた)りをする妖怪・死霊(しりょう)・生霊(いきりょう)の類。
※変幻(へんげん):出没や変化をすばやくすること。
※翻弄(ほんろう):思いのままにもてあそぶこと。
※『アンカリング効果(初期値提示誘導)』、『前提操作』、『条件トラップ』等については、以下を参照してください。
・例えば、「ピザ」という語を相手に10回繰り返させた後、「肘(ひじ)」を指差して「では、これは何か」と問うと、相手がつい「ヒザ」と答えてしまう現象を経験することがあります。このように、「最初に提示された情報(初期値)」が「アンカー=基準」となって、その後の判断に影響が及ぶ心理現象を「アンカリング効果」といいます。日常においても、相手の思考を一定の方向に誘導するための「心理操作」の一手法として意図的に「アンカリング効果」が利用されることがあります。
※アンカー(anchor):船の錨(いかり)のこと。最初に与えられた情報が「アンカー(基準)」となって心にとどまり、その後の思考や判断がその「アンカー」に引っ張られてしまう心理現象を「アンカリング効果」という。
■前提操作
・「前提」とは、「結論」を導くための「根拠となる条件」のことです。「前提」は「論理の土台」であり、因果関係を組み立てるうえでの重要な要素です。
・本来の『正しい前提』をわざと『正しくない前提にすり替え』て論理展開したり、「前提」をわざと限定したうえで論理展開したりする手法を『前提操作』といいます。
①前提のすり替え
・『前提操作』の中でも、意識的に、あるいは無意識的にもよく用いられているのが『前提のすり替え(前提の変更)』です。「前提のすり替え」は、日常における冗談や励まし、勇気づけなど、善意に基づく会話術の一手段として用いられたり、詐欺や詭弁、悪意に基づく心理操作などの一手法として利用されたりします。
例:
花子さん:「夏休みの宿題、もう全部終わったし!」(前提:自分は自力で宿題を処理した)
愛子さん:「先生にバレなきゃいいね!」(前提:花子はズルい手を使って宿題を処理した)
花子さん:「違うってば! もうっ! 意地悪!」(結論:信頼関係が深まる!)
・「花子さんは実際に自分一人の力で全ての宿題を早く片付ることができた(正しい前提)」のですが、愛子さんはこの「事実=前提」を承知しながら、「花子さんが何かズルい手を使って宿題を早く片付けることができた」という「別の前提」に「わざと変更=すり替え」を行ったうえで、意地悪く応答しました。
②条件トラップ
・例えば、【[A]宿題を済ませたが(条件/前提)+[B]遊べない】のように、《Aを条件(前提)として+B(となる/である)》のような形式で説明されますが、【条件要素(前提)A】の内容自体が、実はウソであったり不正確であったり、あるいは、誘導に都合の良い情報であったりします。聞き手や読み手は、まず最初に提示されるこの【条件要素(前提)A】を踏まえたうえで後の文脈をたどって思考する傾向が強いため、【条件要素(前提)A】をさも当然のように与えられると、そこにウソや誤りがあっても却(かえ)ってそれに気づきにくく、いっそう相手の意図に沿った方向に誘導されやすくなります。「前提のすり替え」の一種。
※マスメディアによる世論調査やインタビュー、アンケート等においても、調査結果の比率を高めたり低めたりして印象操作や世論操作を図る必要のある場合にこの手法がよく利用されます。また、誘導しやすい文脈や表現を操作、調整するために、特定の分野における一部の専門家や学者もこれに協力しています。
③誤前提暗示(二分法の罠)
・「サイドメニューはポテトになさいますか、それとも、サラダになさいますか」のように、「いずれか一方を必ず選択する」ことを前提として、二者択一を提示して誘導する手法です。提示する「前提」を意図的に二つに限定するため、「前提のすり替え」と同様の手法となります。世論調査のアンケートで、「あなたはA党を支持しますか、それとも、B党を支持しますか」と質問されると、その他にも存在する他党の選択ができなくなったり、判断そのものを保留したりすることができなくなったりします。
④カゼオケ論法(ドミノ論法/連鎖飛躍)
【風が吹けば桶屋(おけや)が儲(もう)かる】
【強い風が吹くと、土ぼこりが立つ】→【土ぼこりが目に入って目を傷(いた)め、盲人が増える】→【盲人は三味線の演奏を生業(なりわい・せいぎょう)とするので、三味線のに張るための猫の皮が沢山必要になる】→【猫が減る】→【猫を天敵とする鼠(ねずみ)が増える】→【鼠は桶(おけ)をかじるので、桶の需要が増える】→【桶屋が儲(もう)かって喜ぶ】
・「風が吹けば桶屋が儲かる」は、「ある事柄が原因となって、まったく無関係と思われるところに影響が出る」という意味のよく知られたことわざで、「AだからB、BだからC、CだからD…」のように、因果関係が次々と連鎖していきます。ただ、[A(強い風が吹く)]を「事実(前提)」としても、[B(土ぼこりが立つ)]という状況は、無数に考えうる可能性の一つに過ぎません。にもかかわらず、あえて[B]という状況一つを「限定」して結果とし、しかも、そのうえで、今度はその[B]を「前提」として、同様に[C]という状況一つを限定して結果とし、さらにまた…… のような論理展開を延々と進めてゆきます。そのため、ドミノ倒しのようにどんどん論理が飛躍してゆき、意想外の結論を導いてしまうことになります。[B]以下の状況が、それぞれ限定的な内容の「前提」となって論理展開するため、「前提のすり替え」、もしくは「条件トラップ」の一手法となります。
⑤チェリーピッキング(つまみ食い論法/いいとこ取り)
・「太郎も花子もX塾に通って成績が上がった。だから、X塾の指導はすばらしい」のように、多くの情報の中から都合の良い限定的な情報だけを選び出し(切り出し・切り取り)、それを「根拠(前提)」として自分に有利な主張をします。《Aを条件(前提)として+B(となる/である)》の形式をとるため、これも「条件トラップ」、もしくは「前提のすり替え」の一手法となります。
※チェリー・ピッキング:おいしい「サクランボ(チェリー)」だけを「選び取って(ピッキング)」食べることから、つまみ食いの意。
⑥わら人形論法(架空論法) ※歪曲(わいきょく)・曲解・誇張(こちょう)
・例えば、「太郎が描いた絵が気に入った」という相手の主張(論点)に対し、「あんな奴の描いた絵のどこが上手なのだ」と反論するように、相手の言説をわざと歪(ゆが)めて引用し、その「ダミーの論点」に対して反論したり、批判したりします。上の例文では、そもそも①「太郎の人格(あんな奴)」についても、②「太郎の絵の技量(絵が上手ではない)」についても全く論点とはなっていないのに、都合よくこの新たな論点を作り上げて批判の材料としています。「相手がそもそも言ってもいないことを都合よく作り上げ、それを条件(前提)として反論、批判する論法」であるため、これも「条件トラップ」、もしくは「前提のすり替え」の一手法となります。また、論点そのものも意図的に変更されるため、「論点のすり替え」にもなっています。
※わら人形論法:相手の主張を都合良くわざと歪(ゆが)めて引用し(切り取り/切り出し)、その「架空の論点(わら人形/ダミー)」に対して反論する。相手がそもそも言ってもいない論点を作り上げ、その「架空の論点」を「わら人形=標的」として反論、攻撃し、自説を有利に導く詭弁(きべん)の一種。
⑦循環論法
・「今のままではいけない。だからこそ、日本は今のままではいけない!(小泉進次郎氏談)」という主張は因果関係の形式をとっていますが、【A(すべき)である。だからこそ、A(すべき)である】と、単に同語を繰り返しているだけで、具体策は何一つ提示されておらず、中身が空っぽで、まるで説得力がありません。「雨が降っている。だからこそ、雨が降っているのだ」、「消しゴムを貸して。だって、消しゴムを貸してほしいから」も同様で、根拠(前提)と結論が単純に循環するだけで、まともな主張にも証明にもなりません。
②天使と悪魔と人間
・天使は常に本当のことを言い、悪魔は常にウソをつき、人間は本当のことを言うこともあれば、ウソをつくこともあります。A、B、Cの3人が、次のように言いました。
A:「私はね、天使ではありませんよ」
B:「私はね、人間ではありませんよ」
C:「私はね、悪魔ではありませんよ」
・「もしAが天使なら」、「もしAが悪魔なら」のように仮定して矛盾はないか確かめていくと、A、B、C3人の正体が明らかになります。では、問題の解明に挑(いど)んでみましょう!
■答え
①もしAが天使なら、天使がウソを言っていることになるので矛盾する。よって、Aは天使ではない。
②また、もしAが悪魔なら、悪魔が本当のことを言っていることになるので矛盾する。よって、Aは悪魔ではない。
③以上により、「Aは人間」であると考えられる。
④次に、もしBが天使なら、本当のことを言っていることになるので矛盾しない。よって、Bは天使である可能性がある。
⑤また、もしBが悪魔なら、悪魔なのに本当のことを言っていることになるので矛盾する。よって、Bは悪魔ではない。
⑥以上により、「Aが人間」、「Bが天使」、「Cが悪魔」であるとわかる。三者それぞれの発言にも矛盾はない。
■①「私は犯人ではない」→②「もし私が犯人なら」→、③「犯行時刻に、犯行現場であるA町にいたはずだ。でも、その時私はB町にいたし、証人もいる」→④「だから、私は犯人ではない」
・このように、「①:ある主張」について、「②:その主張を否定した仮定(『もし』をつけて反対表現にする)」を行い、それにより生じる「③:矛盾」を示すことで「④:当初の主張が正しい」ことを証明する方法を『背理法』といいます。ただし、主張(結論)が本当に正しいかどうかは、検証によって証明される必要があります。
①「お母さん、僕、勉強サボってないよ」(主張)
②「もし勉強をサボっていたのなら…」(主張を否定した仮定)
③「ほら、1時間にこれだけの宿題が終わるはずがないよ」(矛盾の指摘)
④「だから、僕は勉強をサボってない!」(結論=主張)
・昔、中国の楚(そ)の国で、矛(ほこ)と盾(たて)とを売っていた商人が、「この矛は、どんなにかたい盾をも突き通すことができる。また、この盾は、どんなに鋭利な矛であっても突き通すことができない」と言って誇(ほこ)った。すると、見物人が、「では、その矛でその盾を突いたらどうなるか」と問うたところ、商人は返答に窮(きゅう)してしまった。
・矛盾:二つの事柄のつじつまが合わないこと。論理的な食い違いがあり、筋が通らないこと。撞着(どうちゃく)ともいう。
・上の例では、「この矛はどんなにかたい盾をも突き通すことができる」という主張[A]と、「この盾はどんなに鋭利な矛であっても突き通すことができない」という主張[B]は、論理的に整合しない。つまり、「A」の主張を「正しい」と認めた場合は「B」の主張が「誤り」となり、逆に「B」の主張を「正しい」と認めた場合は「A」の主張が「誤り」となって、二つの主張を両立させることが不可能なのだ。
③犯人を見つけろ!
・あるクラスで、『やる気行方(ゆくえ)不明事件』が発生しました。一人の犯人だけがウソをつき、残りの二人は本当のことを言っています。では、三人の容疑者の供述を聞いてみましょう。
A君:B君が犯人だよ。僕は『やる気』を隠(かく)していない。
B君:C君が犯人だ。僕も『やる気』を隠していない。
C君:僕は犯人じゃない。『やる気』なんか隠してないよ。
・この三人の中に、『やる気』をどこかへ隠した者が一人だけいます。『もしA君が本当のことを言っているとしたら』から始めて『そこに矛盾(むじゅん)はないか』を確かめていくと、誰が犯人であるかがわかります。では、事件の解決に挑(いど)んでくだください。
■答え
・茂君:「絶対に」なんて言ってるから、絶対にA君が怪(あや)しいよ!
・佳彦君:印象で決めつけるものじゃないよ!!!
・恋宝さん:印象だけじゃダメなんですか?!
・伸幸君:当たり前だろ! とにかく解決しなくっちゃ!
・雄一郎君:まず、もしA君が本当のことを言っていると仮定すると、「C君が犯人だ」と言うB君はウソを言っていることになる。一人だけがウソを言っているのだから、残ったC君は本当のことを言っていると考えていい。この理屈だと、特に矛盾は起きないね。
・綾香さん:今度は、もしB君が本当のことを言っていると仮定すると、「自分は犯人ではない」と言うC君の言葉がウソになるわ。C君が怪しいわ。
・太郎君:ちょっと待った! でも、もしB君が本当のことを言っていると仮定すると、犯人ではないはずの「B君が犯人だ」と言うA君もウソを言っていることになるよ。一人だけがウソを言っているはずなのに、二人がウソをついているとなると、矛盾だよ。
・鉄夫君:やはりB君が怪しいな。
・尚樹君:疑惑は……
・清美さん:疑惑はさらに深まった!!!
・智子さん:あんたは一生お黙(だま)りなさい! 一応、C君も調べてみようよ。もしC君が本当のことを言っていると仮定すると、「C君が犯人だ」というB君はウソを言っている。一人だけがウソを言っているのだから、A君は本当のことを言っているのね。この理屈で考えても、やっぱり矛盾は起きないわ。
・僧兵君:世界を操(あやつ)っている闇(やみ)の組織の仕業(しわざ)だよ!
・宗男君:よし、B君を逮捕(たいほ)しろ!
・竜兵君:聞いてないよ!!!
・憲寿(のりとし)君:「どこが違うのか」、その「定義」を聞いているんです!!
・伸二君:……え? 『定義』の話ではなく、『相違点』の話でいいですよね?
・孝志君:ぶっこわーすを、ぶっこわーす!!
・ひろゆき君:それっていうのも、ありかなって思うんすよね。
・瑞穂(みずほ)さん:がんこに平和!! 級長守れ!! クラスが一番!!
・進次郎君:30年後の自分は一体何歳かなと、私はずっと考えていました。
・たけし君:ちょっと何言ってるのかわかんない。
④魂を探せ!
・あるとき、ラップにくるんで冷蔵庫に大事に保存しておいた『魂(たましい)』が、誰かに食べられてしまった。そこで、Aは次のように言い、BとCもまた、何かを言った。
A:「犯人はBだよ」
B:「……だ」
C:「……だよ」
・後(のち)に得られた情報は、以下の三つだった。
①犯人は、A、B、Cのうち、1人である。
②本当のことを言ったのは、犯人だけである。
③ウソをついているのは、無実の人である。
・『もしAが本当のことを言っているのなら』、『もしAがウソをついているのなら』のように仮定して『矛盾(むじゅん)がないか』を確かめていくと、真犯人をつきとめることができます。
■答え
(1)「もしAが本当のことを言っているのなら」、条件②により、「本当のことを言ったAが犯人」だ。
(2)そして、そのA本人による発言内容もまた本当なのだから、「Bも犯人」である。
(3)しかし、AとBが二人とも犯人であるというのは、「犯人は1人しかいない」という条件①と矛盾する。
(4)よって、条件③により、「ウソをついたA本人は無実」であるとわかる。
(5)逆に、「もしAがウソをついているのなら」、条件③により、「Aは無実」だ。これは(4)の結論とも一致する。
(6)そして、A本人による発言内容もまたウソなのだから、「Bは無実」である。
(7)よって、残された一人、「Cが犯人」であるとわかる。条件①、②、③の全てを満たす以上の考え方に矛盾はない。
⑤勝利をつかめ!
・「赤・青・黄・緑」の箱のどれかに、『勝利』が入っています。勝利は、一つの箱にだけ入っているのか、複数の箱に入っているのかは分かりません。勝利を手に入れたいあなたは、どれか一つの箱だけをもらえることになりました。
ただし、……
①赤の箱に勝利があるときには、青の箱にも入っている。
②緑の箱に勝利が無いときには、黄色の箱にも入っていない。
③緑の箱に勝利が無いときには、青の箱にも入っていない。
・情報②と③の、『緑の箱に勝利が無いときには』から始めて考えを進めてゆくと、『ある矛盾(むじゅん)』に突(つ)き当たります。そして、「その矛盾が生じた、そもそもの理由」に気づくと、答えがわかります。どの色の箱に勝利が入っているのか考えてみましょう。
■答え
(1)情報②と③により、「緑の箱に勝利が入っていないときには」、「黄色の箱にも、青の箱にも入っていない」。
(2)「緑の箱」にも、「黄色の箱」にも、「青の箱」にも入っていない」のであれば、勝利は「赤の箱に入っている」ことになる。
(3)しかし、「赤の箱に入っている」のであれば、情報①により、「青の箱にも入っている」ことになって矛盾する。
(4)この矛盾は、「緑の箱には入っていない」とする『前提』がそもそも誤りであることを示している。
(5)つまり、『誤った前提』をもとに考えを進めたために、この矛盾に突き当たったということだ。
(6)よって、当初の「前提を逆転」し、勝利が「緑の箱に入っている」と考えることで、この矛盾は解消される。
⑥ライオンと羊とキャベツを運ぼう!
・動物園の飼育員が、ライオン、羊、キャベツをボートで川の対岸に運ぼうとしています。
でも、……
(1)飼育員がそばにいないと、ライオンは羊を食べてしまう。
(2)飼育員がそばにいないと、羊はキャベツを食べてしまう。
(3)ボートには、飼育員の他にライオンか羊かキャベツのいずれか一頭(一つ) しかのせられない。
・『まず、羊をボートにのせ』から始め、ライオン、羊、キャベツを無事にすべて対岸に運ぶ方法を考えてください。
■答え
①まず、羊をボートにのせ、対岸に運ぶ。
②次に、飼育員が一人で戻り、ライオンをボートにのせて対岸に運ぶ。
③その後、羊をボートにのせて戻り、陸におろしてから、今度はキャベツを対岸に運ぶ。
④最後に飼育員がまた一人で戻り、羊をのせて対岸に運ぶ。
⑦二つの砂時計
・ここに二つの砂時計があります。一つは「4分用」で、もう一つは「7分用」です。この二つの砂時計を用いて「9分」を計りたいのですが、どうすればよいでしょう。
■答え
①まず、二つの砂時計を同時にスタートさせます。
②「4分の砂時計」が終わったら、それを反転させます。この時点でスタートから4分経過しています。
③その3分後、「7分の砂時計」が終わったら、それを反転させます。この時点でスタートから7分経過しています。
④さらにその1分後、つまりスタートから8分後に「4分の砂時計」が終わります。そしてこの時、1分前に反転させたばかりの「7分の砂時計」を再び反転させます。「7分の砂時計」は、反転させたその時点で砂が「1分」の分量だけ残っているのですから、この砂が全て落ちた瞬間が、スタートからちょうど9分後となります。
⑧Aさんの帽子は何色か?
・赤い帽子が二つ、白い帽子が三つあります。Aさん、Bさん、Cさんの三人の生徒が縦に順に並び、前を向いたまま椅子に腰かけました。その後、それぞれが5つの帽子の中のどれかを被(かぶ)りました。3人とも、自分が被っている帽子の色はわかりませんが、3番目にいるCさんには、前の二人が被っている帽子の色が見えており、2番目にいるBさんには、最前列にいるAさんの帽子の色が見えています。
・先生が、まずCさんに自分の帽子の色をたずねると、「わかりません」と答えました。次に、Bさんに同じ質問をすると、やはり「わかりません」と答えました。Aさんに同じ質問をすると、「わかりました」と答えました。
・そこで、「もしAさんとBさんが二人とも赤い帽子を被っていたなら」から始めて、最前列にいるAさんは自分が何色の帽子を被っているとわかったのかを考えてみましょう。
■答え
①もしAさんとBさんが二人とも赤い帽子を被っていたのなら、Cさんは「自分の帽子は白です」と答えられたはずです。もともと赤い帽子は二つしかないからです。
②でも、Cさんは「わかりません」と答えたので、この仮定は正しくないことになります。だとすると、「AさんとBさんは、二人とも白い帽子を被っていた」か、「AさんとBさんのそれぞれが、赤か白、いずれかの帽子を被っていた」のだと考えられます。
③次に、もしAさんが赤い帽子を被っていたなら、Bさんは「自分の帽子は白だ」とわかったはずです。なぜなら、最初のCさんの言葉から「AさんとBさんが二人とも赤い帽子を被っている」ことが既に否定されているからです。
④ところが、Bさんは「わかりません」と答えました。
⑤そこで、Aさんは、「自分の帽子が赤でないのなら、白だ」とわかったのです。
⑨今週のジャイアン当番
・今週のジャイアン当番は、ルイ君、サラさん、メル君、ルルさん、レオ君の5人です。以下の情報をもとに、月曜日から金曜日まで、誰がジャイアン当番なのかを特定してください。
①ルイ君はレオ君の数日前が当番です。
②サラさんの当番はルルさんより後です。
③メル君の当番はルルさんの2日前です。
④レオ君は木曜日が当番です。
■答え
(1)④の情報により、レオ君の当番は木曜日で確定している。
(2)①によれば、ルイ君の当番はレオ君の「数日前」なので、「一日前」の水曜日ではなく、月曜日か火曜日のいずれかである。
(3)もしメル君が水曜日だとしたら、③によりルルさんが2日後の金曜日となるが、それだとサラさんが土曜日以降となってしまい、「当番は金曜日まで」という条件に合わない。
(4)もしメル君が火曜日だとしたら、③によりルルさんが2日後の木曜日となってしまい、④の条件に合わない。
(5)もしメル君が月曜日だとしたら、③によりルルさんは2日後の水曜日となり、また、②によりサラさんが金曜日であっても矛盾しない。
(6)さらに、もしメル君が月曜日だとしたら、火曜日がルイ君であっても①と矛盾しない。また、ルイ君が火曜日でない場合には、その他の条件に一致しない。
(7)以上により、月曜日はメル君、火曜日がルイ君、水曜日がルルさん、木曜日がレオ君、金曜日がサラさんと結論される。
⑩5人の宇宙人
・パッブー(A)、ピコペポ(B)、プルッパ(C)、ヨーギェル(D)、テレロ(E)という名の5人の宇宙人が地球にやって来ました。以下の情報③を最初の手がかりとして、どの宇宙人が何をしているかを特定しましょう。
※ヒント:③の地球儀を踏(ふ)まえ、次に①、その次に②を検討してみるといいよ。
①Dは地球儀(ぎ)を眺(なが)めているか、温泉につかっている。
②A、B、Cの3人は星を眺めてはいない。
③AかEのどちらかが、地球儀を眺めている。
④B、C、Dのうち1人が、宇宙船の修理をしている。
⑤居眠(いねむ)りをしているのは、Cではない。
■答え
※説明を簡略化するため、宇宙人の行動をキーワードのみで表記します。
(1)③により、地球儀がAかEであるのなら、①のDは地球儀ではない。だから、「Dは温泉」である。
(2)「Dが温泉」であるのなら、②の「星を眺めているのがDかE」なのだから、「Eが星」である。
(3)「Eが星」であるのなら、③の「Aは地球儀」である。ここまでで「Aが地球儀」、「Dが温泉」、「Eが星」と確定する。
(4)⑤によりCは居眠りをしておらず、また、確定した「A、D、E」も居眠りをしていないのだから、この「A、C、D、E」以外の「Bが居眠り」となる。
(5)以上により、最後に残った「Cは宇宙船」である。
⑪偽金貨はどれだ?
■問題
・金貨が沢山入った袋(ふくろ)が三つあります。そのうちの一袋は全て偽(にせ)金貨です。本物の金貨は1枚100gですが、偽金貨は1枚当たり本物より10g重くなっています。偽金貨の袋がどれかを探したいのですが、秤(はかり)は一度だけしか使えません。偽金貨の袋を探すには、どうすればよいでしょう。
■答え
・1つ目の袋から1枚、次に2つ目の袋から2枚、続けて3つ目の袋から3枚金貨を取り出し、計6枚の金貨を秤に載(の)せればよい。
①もし三つの袋が全部本物の金貨だとしたら、取り出した金貨6枚分の重さを足すと、600gちょうどになる。
②もし1つ目の袋に入っているのが偽金貨なら、取り出した偽金貨一つ分だけ、つまり、10gだけ重くなるから、秤では610gになる。
③もし二つ目の袋に入っているのが偽金貨なら、取り出した偽金貨二つ分、つまり、20g重くなるから、秤では620gになる。
④もし三つ目の袋に入っているのが偽金貨なら、取り出した偽金貨三つ分、つまり30g重くなるから、630gになる。
※テレビドラマ『刑事コロンボ』~「殺しの序曲」より
三段論法(演繹法)
■三段論法とは、「二つの前提」から「一つの結論」を導き出す推論形式で、論理展開の基本とされます。
①【大前提】で「全体のことがら(一般法則)」を述べます。
・クモは8本脚(あし)だ。
②【小前提】で「一部のことがら(個別事例)」を述べます。
・コガネグモはクモだ。
③二つの前提を「根拠」として【結論】を導きます。
・だから、コガネグモは8本脚だ。
■暗黙(あんもく)の前提
・特に言明せずともわかりきった前提を「暗黙の前提(暗黙の了解(りょうかい))」という。
【大前提】太郎君:クモは8本脚なんだよ。
【結論】次郎君:だから、コガネグモも8本脚なんだね。
・日常の会話等ではこのように表現しても意思疎通(そつう)に支障はない。それは、「コガネグモはクモの一種だ」というもう一つの「前提」が当事者間で暗に「共有」されているためだ。
・両者で暗黙の前提となっている事柄(ことがら)の全てをいちいち確認し合っていては話が進まない。逆に、自分と相手との間で前提が一致していると思い込んでいると、「前提の不一致」により齟齬(そご:意見などが食い違うこと)が生じたり、水掛け論(両者が自説にこだわって争い、いつまでも結論の出ない議論)に陥(おちい)ったりして人間関係にまでひびが入ってしまうこともあるので注意しよう。
帰納法
■「一般法則」をもとにして「個別的結論」を導く推論形式を『演繹法(えんえきほう)』といいます。ですから、「三段論法」は演繹法の一種です。
■演繹法と帰納法(きのうほう)
・「演繹法」とは逆に、「個別事例(複数の具体例)」をもとに「共通点(因果関係)」を見出し、それを「根拠」として「一般法則」を導き出す推論形式を『帰納法』といいます。「一般法則」がスタート地点になるのが『演繹法』で、「一般法則」がゴールになるのが『帰納法』ということです。
【帰納法の例】
・【前提①】:個別事例
A:あの湖にいる白鳥(はくちょう)は、白い。(具体例)
B:その川にいる白鳥も、白い。(具体例)
C:この池にいる白鳥も、白い。(具体例)
・【前提②】:共通点/因果関係
:どれも白鳥だから、白いのだ。
・【結論】:一般法則
(恐らく)全ての白鳥は、白いだろう。
※帰納法では列挙される具体例以外に例外の出現がありうるため、③の「結論」に「恐らく」を付けてあります。もし例外が出現した場合には、帰納法による「結論」は「一般法則」とは言えず、むしろ「論理的飛躍」、もしくは「論理的な誤り」となってしまうからです。実際、ヨーロッパでは「スワン(swan=白鳥)」は白いものだという常識があったのですが、1697年、オーストラリアで「黒いスワン(固有種の黒鳥(コクチョウ)」が発見され、この「帰納推論による仮説」は明確な誤りであったことが判明しました。
弁証法
■『弁証法(べんしょうほう)』とは、①【正(せい)=命題(めいだい)(出発点となる問題)】がまずあり、その内部から②【反(はん)=矛盾(むじゅん)(対立・葛藤(かっとう)】が現れ出ると、その【反=矛盾】を捨てず、受け入れたうえで(保持したまま)、③【合=統合(高い次元での克服(こくふく)・解決)】へと至(いた)らしめる思考形式です。そして、【反】を受けて【合】へと進化(深化)・発展させる、この最終段階を【止揚(しよう=アウフヘーベン/ドイツ語)】といいます。
・【反=矛盾】は完全に否定し捨(す)て去るのではなく、むしろそれを認め、受け入れて発展のための糧(かて)としてこそ【合=統合(高次の克服・解決)】の実現を可能としますから、弁証法は、一般に同様のものと解釈されている、「対立するものを上手く融合(ゆうごう)して別の新しい発想を生む方法」のことではありません。また、「良い所だけを取り上げて上手くまとめる『折衷案(せっちゅうあん)(良いとこ取り)』」とも、「双方(そうほう)が譲(ゆず)り合って一致点を見出す『妥協案(だきょうあん)』」とも本質的に異なります。
■『サピックス 新小6・3月度組分けテスト(令和四年/2022)3月実施)』で扱(あつか)われた文章(『スマホを捨てたい子どもたち―野生に学ぶ「未知の時代」の生き方(山極寿一)』を例に「弁証法的解釈」をすると、以下のようになります。
※筆者自身が『弁証法的思考法』により主張を展開しています。人類学者、霊長類学者である山極氏はゴリラ研究の第一人者であり、その著作からの素材文がテストや教材等によく使用されています。
【弁証法の形式】
①【正】命題(出発点となる問題)
・「現代はAI(人工知能)が進化し、人間はAIへの依存(いそん)を強めている」
②【反】内包(ないほう)されていた矛盾の現出(対立・葛藤へ)
・「AIへの依存が強まるとともに、人間が持つ本来の能力や五感の働きが生かされず、
ますますAIに操作され、人間らしさが失われてゆく」
③【合】統合=【反】を受け入れて発展のための糧とし、高次の克服・解決を実現する。
・「機械化、情報化が進展する現代、AIに依存しすぎず、人間本来の能力や五感をもっと積極的に生かして、自分の頭を使って考え、判断し、また、主体的に行動することで、AIと共存(きょうそん)しつつ、真に人間らしい、より良い生き方を獲得(かくとく)し、実践(じっせん)すべきだ」
※AI:人工知能のこと。自動車の自動運転技術、掃除ロボット、インターネットの検索エンジン、『チャットGPT』などの対話型ロボット、自動翻訳(ほんやく)、『シリ』や『アレクサ』などのバーチャルアシスタント、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での「お勧め記事」の表示機能、『アルファ碁ゼロ』などの囲碁(いご)AIプログラム、画像認識、音声認識など、人間の知的活動にAIが大きな役割(やくわり)を果たしつつある。AIの進化、普及によって今後消失する傾向にある仕事や、消失しない傾向にある仕事などについて調べておこう。
◎文学的文章の場合でも同様に、例えば、
①【正】『主人公の、周囲に流されるまま、自分を偽(いつわ)り、自分らしさを失った消極的な現在の生き方』から、
②【反】『今のままの自分であり続けてよいのか』という「矛盾(対立・葛藤)」が生じ、何かのきっかけを経て、
③【合】『それまでの自分のあり方を否定せず、むしろそれをありのままに認め、受け入れて成長の糧(かて)とし、本当の自分らしさを求めて、自分に正直に、力強く前向きに生きてゆく』
といった「高次の克服・解決(より良い生き方の獲得(かくとく)=人間性の向上)」がもたらされる、というように「弁証法の思考形式」を読解に適用できる場合があり、これにより、各種問題への解釈の仕方や記述答案の質にも大きな違いが出てきます。
◎日常においても、私たちはさまざまな場面において無意識的に「弁証法的思考法」によって物事を考えたり、対処したりすることがあります。文章を書くとき、話し合いをするとき、図画や工作などの創作に取り組むとき、創造的な発想に挑(いど)むとき、困難を克服しようというとき、自分のあり方や生き方に悩(なや)むとき、未来への道筋を思い描(えが)くときなどにおいても、意識的に「弁証法的思考法」を活用してゆきましょう。
類推(類比推論)
■『類推(類比推論)』とは、ある事柄に対して、「Aは、Bと似ている」と「類似性」を認め、次に「Bが▲(という性質)なら」、「(恐らく)Aも▲(という性質)だろう」と推理する方法です。
【類推の形式】
①【類似性の確認】:Aは、Bと似ている。
・花子さん:「トラは、ネコに似ているところがあるね」
②【具体例の提示】:Bは、▲だ。(Bは、▲という性質を持つ。)
・愛子さん:「ネコは、木に登れるわ」
③【類推結論】:だから、(恐らく)Aも▲だろう。(Aも▲の性質を持つだろう。)
・花子さん:「きっと、トラだって木に登れるはずよ!」
・花子さんが①「トラは、ネコに似ている」と類似性を指摘したので、愛子さんは身近な存在であるネコの性質について考えてみたところ、②「ネコが木に登っている」姿を思い浮かべました。そこで、花子さんは、そうした情報を根拠(前提)として、③「トラがネコと類似した性質を持っているなら、きっとトラも木に登れるだろう」と類推したのです。ちなみに、トラやライオン、チーター、ヒョウ、ジャガー等のネコ科の動物は木に登ることができます。
◎「類推(類比推論)」は、「類比」、「アナロジー」とも呼ばれ、「既知(きち)の知識」をもとにして「未知の知識」を新たに得るための強力な思考法の一つです。日常においても私たちは、ものごとについて推測したり、仮説を立てたりする際に、無意識にこの「類推(類比推論)」という思考法を活用しています。
◎類比論法
・類似性のある例を挙げて、自分の主張に説得力を持たせる論法です。
・お母さん:[A]勉強はね、[B]スポーツと同じなの! 【類似性の確認】
・健太君:[B]スポーツは、[▲]目標に向けて毎日練習することが大事だね。【具体例の提示】
・お母さん:[A]勉強も、[▲]志望校合格を目標に毎日努力することが大事よ! 【類比結論】
仮説形成(アブダクション/リトロダクション)
■ある「観察事実」について、その「原因」を探るため、「一般法則」や「知識・経験」等を照らし合わせ、これを前提として合理的な「仮説」を導き出す推論法を『仮説形成(アブダクション/リトロダクション)』といいます。
【仮説形成の例】
①【観察事実】:地面のあちこちに水たまりがある。
②【一般法則】:雨が降ると、水たまりができる。
③【仮説】:だから、恐らく雨が降ったのだろう。
※仮説形成(アブダクション/リトロダクション):ある結果、つまり「観察事実」から遡(さかのぼ)って、そのもっともらしい「原因」を想定する推論法。ただし、「その仮説が観察事実について合理的な説明を与えることがが可能」だとしても、必ずしもその仮説が正しいとは限らないため、「検証」によって「仮説の正しさ」が確かめられる必要がある。
【仮説形成の例②】
・前提①:太郎を見つめる花子の目が💛(ハート)になっている。【観察事実】
・前提②:人が異性を好きになると、目が💛(ハート)になる。【一般法則】
・結論:だから、花子は太郎に恋(こい)しているぞっ!。【仮説】
※身近なものごとに目を向けて、このような例文を自分でも考えてみましょう。
【誤った仮説形成の例】
・前提①:太郎君が珍しく学校を休んだ。【観察事実】
・前提②:宇宙人にさらわれると、学校に来ることができない。【一般法則】
・結論:太郎君は、宇宙人にさらわれたに違いない。【仮説】
※都合よく無関係な「前提」を持ち出して推論したために、「論理的に飛躍した(誤った)仮説」が導出されました。このような例文を自分でも考えてみましょう。
◎物理学者のニュートンは、「リンゴが木から落ちる」という「観察事実」をもとに、一般法則に照らすのみならず、その「創造的な想像力」によって思索(しさく)をめぐらし、ついに「引力」という未知の作用を「創案=仮説形成」しました。創案とは、今まで誰も考えつかなかったことを最初に考え出すことです。また、理論物理学者のアインシュタインも、「科学的仮説や理論というものは、観察された事実を説明するために『発明されるもの』である」と述べ、一般法則に縛(しば)られず、「創造的な想像力」を発揮して合理的な「仮説」を創案することの重要性を指摘しています。仮説形成は、「既知(きち)の知識」をもとにして「未知の知識」を新たに得るための思考法であるとともに、科学においてだけでなく、日常生活においてもまた、さまざまな物事に対処したり、新しい考えを創案したりするうえで重要な役割を果たす強力な思考法の一つだと言えます。
※思索(しさく):物事の道理をたどり、秩序立てて深く考えを進めること。
のび太論法・ジャイアン論法
■『ジャイアン論法』
無料! 受験国語 選択肢の判別 111の視点
■『国語 選択肢の判別 111の視点』(全60頁/B4用紙17枚/製本用):無料PDFのダウンロード(2024年版)
■製本:
・両面印刷後、二つ折りにし、ページ順に揃え、『回転式ホチキス』で「中(なか)とじ」します。
・ホチキスは、背(外側)からノド(内側)に向けて打ちます。また、天地からそれぞれ6~7cmの位置に一か所ずつ打つと冊子が安定します。
■プリンター設定:
・B4用紙/印刷の向き(横)/両面印刷/短辺とじ
・B4枚数:全17枚/表紙1枚含む
※両面で上下反対に印刷されないよう、テスト印刷をしてください。
■記事:正味64ページ(約97,500字)
■PDFデータ量:6.77MB
■本資料は一見難しい内容に思えるかもしれませんが、大人の助力により、手順を踏んで説明すれば、小学5、6年生にもしっかりと理解させることが可能です。また、内容的に中学生や高校生の学習にも利用できます。