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■詩の種類と表現技法

詩の種類と表現技法
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・指導用の教材として利用される場合は、生徒に教材を渡しっぱなしにして済まさず、暗記させたうえで口頭テストを実施するなど、生徒にとって有効な活用法をご考慮願います。

詩の種類

・詩の種類は、「用語」、「形式」、および「内容」のうえから、次のように分類される。

 用語上の種類
 口語詩  現代に使われている言葉(口語)で書かれた詩。

〈例〉
『比喩』(堀口大学)
それは砂漠の中の一輪のばらでした
少女(おとめ)よ それは私の恋でした
ばらは乾いて死にました

 文語詩  昔に使われていた古い言葉(文語)で書かれた詩。

〈例〉
『初恋』(島崎藤村)
まだあげ初(そ)めし前髪の
林檎(りんご)のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛(はなぐし)の
花ある君と思ひけり


※「あげ初めし」、「見えし」、「さしたる」、「思ひけり」等の動詞を中心とした表現に注目しよう。
※口語詩であっても、馴染みのない言葉や熟語等が多く使われていると文語詩だと捉え違える傾向が学年が下がるほど強くなる。「急がば回れ」、「光陰矢のごとし」、「雉も鳴かねば打たれまい」等の文語体で表現されたことわざや慣用句、また、俳句や短歌に触れることで、文語独特の言い回しに対する知識や感覚が身につく。


 形式上の種類
 定型詩 ・音数に一定の決まりがある詩。
・七五調(七音・五音のくり返し)や五七調(五音・七音のくり返し)のものが多い。七五調はやわらかく流れるようなリズムを生み、「女性的」と形容され、五七調は重々しく力強いリズムを生み、「男性的」と形容される。

七五調の例
『耳』(ジャン・コクトー作、堀口大学訳)
私の耳は(七音)
貝のから(五音)
海のひびきを(七音)
なつかしむ(五音)


五七調の例
『椰子(やし)の実』(島崎藤村)
名も知らぬ 遠き島より(五音+七音)
流れ寄る 椰子の実一つ(五音+七音)
故郷(ふるさと)の 岸を離れて(五音+七音)
汝(なれ)はそも 波に幾月(いくつき)(五音+七音)


※「五七調と七五調の違い」については「枕詞一覧表」のページで説明しましたので、併せてご参照ください。

※定型詩には五音と七音で組み立てられた作品が多いが、それ以外の音数であっても一定の音数によるリズムを意図した作品であれば、やはり定型詩と言える。
※俳句や短歌に「字余り」や「字足らず」があるように、一部音数が崩れていても、全体として一定の音数によるリズムが保たれている詩は定型詩である。

〈例〉
『水彩風景』(佐藤春夫)
あんず咲く さびしきいなか(五音+七音)
川ぞいや 家おちこち(五音+
六音
入り日さし 人げもなくて(五音+七音)
麦畑に ねむる牛あり(五音+七音)


※上の詩の形式を生徒に問うと、五音と七音以外に「六音」が一か所含まれているため、ほとんどの生徒が「自由詩」であると答える。「定型詩」であると判断できる生徒はごく一部だが、その理由を問うと、「俳句や短歌にも『字余り』や『字足らず』があるから」、「全体的には定型詩になっているから」などと答えた。「一音でもずれたら定型詩ではない」という二分法的な理解のしかたではなく、原則は原則としつつ、ものごとを柔軟、かつ総合的に判断する視点を持つようにしたい。
文字数と音数とを混同している生徒が多い音数を数えるには、文字を平仮名に改めて字数を数える。

〈例〉
・立身出世(りっしんしゅっせ)…七音(り・っ・し・ん・しゅ・っ・せ)
・ジャッキー・チェン… 六音(じゃ・っ・き・い・ちぇ・ん)
(1)拗音(ようおん):「きゃ・しゅ・ちょ」などは一音で数える。
(2)特殊音(とくしゅおん):外来語に由来する「ファ・トゥ・シェ」などは一音で数える。
(3)促音(そくおん):小さな「っ」は一音で数える。
(4)撥音(はつおん):「ん」は一音で数える。
(5)長音(ちょうおん):「ー」は一音で数える。また、「おかあさん」の「」や「おねえさん」の「」なども長音としてやはり一音で数える。(オカーサン・オネーサンに同じ)

※((1)、(2)、(3)、(4)、(5)の五種全ての音が含まれている「ジャッキー・チェン」の語で音数の数え方をしっかりと確認しておこう。「ファッションショー」の語でもいいですね。
※「定型詩」を「定形詩」「定型詞」と誤って書く生徒も多いので注意しよう。
 自由詩 ・音数に一定の決まりがない詩。

※いちいち指で音数を数えて確認するのではなく、声に出して詩を読み、その詩その詩のリズム感を味わい、捉えられるようにしたい。
 散文詩 ・短い語句ですぐに改行せず、散文(普通の文章)のように文を続けて書く詩。以下は散文詩の例。

①『村』(三好達治)
鹿は角に麻縄(あさなわ)をしばられて、暗い物置小屋にいれられていた。 何も見えないところで、その青い眼はすみ、きちんと風雅(ふうが)に坐(すわ)っていた。


そとでは桜の花が散り、山の方から、ひとすじそれを自転車がしいていった。背中を見せて、少女は藪(やぶ)を眺(なが)めていた。羽織(はおり)の肩に、黒いリボンをとめて。

②『兄弟』(丸山薫)
電車と機関車と衝突(しょうとつ)した。噛(か)み合ったまま庭の築山(つきやま)をころがってゆき、電車は池におっこちた。機関車は躑躅(つつじ)の根で止まって、ちょっとの間、ゼンマイのから音をたてていた。


 内容上の種類
 叙情詩 ・作者の感動や心情、メッセージが込められた詩。

※ 自然の風景が描写されていても、「作者の感動や心情」が中心にうたわれていたり、「作者のメッセージ」が込められている作品は、叙景詩ではなく叙情詩である。自然の風景や風物にのみとらわれて機械的な判断をせず、あくまで詩の内容や鑑賞によって判断できるようにしよう。

〈例〉
『われは海の子』(作者不詳)
われは海の子白波の、
さわぐいそべの 松原に、
煙たなびく とまやこそ、
わが なつかしき 住家(すみか)なれ。(第一連)

波にただよう氷山も、
きたらば きたれ おそれんや。
海まき上ぐる たつまきも、
おこらば おこれ おどろかじ。(第六連)

※第一連には、「海」、「白波」、「いそべ」、「松原」、「煙たなびく」、「とまや(粗末な家)」、「住家」などの視覚的な風物が目立ち、ほとんどの生徒たち(小学生)はそれをもとにこの詩を「叙景詩」と判断する。ところが、第六連では、「海の子が自身に立ちはだかるあらゆる困難に打ち勝とうとする強い意志や漲(みなぎ)る活力、人生への固い決意が歌われており、その点では叙景詩というより叙情詩に分類されてよい。
 叙景詩 ・自然の風景などを写生的・客観的にありのままに描写する詩。

※作者の心情より「風景や風物の描写」に重点が置かれており、視覚的な要素が強く絵画的になる。

〈例〉
『水彩風景』(佐藤春夫)
あんず咲く さびしきいなか
川ぞいや 家おちこち
入り日さし 人げもなくて
麦畑に ねむる牛あり


風景が「中心に」描写されていても作者の心情がどうしてもにじみ出てしまうため、叙景詩を叙情詩に含める考え方がある。上記の詩の場合、全体としては「田舎の春の、のどかで寂しい風景を客観的に絵に写し取るように描かれた」点で叙景詩と言えるが、「さびしき」という作者の心情が直接に明記されているだけでなく、「のどかさや寂しさ」といった作者の抱いた情感がそのまま読み手にもしみじみと伝わってくる点では叙情詩と言える。
※「空、雲、川、海…」など、作品中に自然の風景や風物を示す語句が目に付いただけで機械的に「叙景詩」と判断する生徒が非常に多い。自分の頭で考えたり感じたりすることをせずに機械的な判断をして済ますのではなく、作品そのものを鑑賞したり、内容について考える心の余裕も持ちたい。
※四谷大塚の基幹教材である『予習シリーズ』では「叙景詩」という項目が現在扱われていないため、特に四谷大塚の生徒はこの用語を知らない。中学入試や模試では、詩の出題に限らず説明的文章や随筆文等において「叙景詩」という言葉が引用されたり、知識問題として扱われたりすることもあるため、「子どもたちに新たな知識や視点を付与する」という意味で、この一語を学んでおいても損は無いだろう。
 叙事詩 ・歴史上の事件や人物、神話などを客観的にうたった詩。

※古代ギリシャで起きた雄大な事件、英雄の伝記、建国などをテーマにして作られた詩に始まる形式。ホメロスの「オデュッセイア」や「イーリアス」、ダンテの「神曲」、ミルトンの「失楽園」などがその典型。日本では中世の「平家物語」、「太平記」、アイヌ伝説の「ユーカラ」などが叙事詩の性質を強くもつ。
※「叙事詩」が出題されることはないと断言される塾講師の方が少なくないが、かつて模試で出題された事実を確認しているので、「子どもたちに新たな知識や視点を付与する」意味でも基本事項に関しては触れておいてもよいだろう。


※ 用語上の種類と形式上の種類を合わせて、「口語自由詩」「文語定型詩」などということが多い。次のような形式で出題されることがある。

  『われは海の子』
われは海の子、白波の
さわぐいそべの 松原に、
煙(けむり)たなびく とまやこそ
わが なつかしき 住家(すみか)なれ
(以下、略)

※ とまや…粗末(そまつ)な家

・出題例:上の詩は、用語上および形式上どのような種類の詩に分類されるか、漢字五字で答えなさい。
・答え:文語定型詩

※塾によって、あるいは講師によっては「詩の分類が問われたら『口語詩・自由詩・叙情詩』と解答するように」とテクニック的に指導して済ませてしまうケースが少なくない。確かに出題割合としては9割以上がそのとおりであるが、現実にはこれまで「文語詩」や「定型詩」、「散文詩」、「叙事詩」の出題も確認しているので、子どもたちには考えたり感じたり、あるいは学んだり応用させたりといった本質的な学習を疎かにしないよう意識づけしたい。

詩の表現技法

詩の種類と表現技法
PDFのダウンロード(詩の種類と技法) (全2ページ)
・指導用の教材として利用される場合は、生徒に教材を渡しっぱなしにして済まさず、暗記させたうえで口頭テストを実施するなど、生徒にとって有効な活用法をご考慮願います。
   表現技法  説明  例
1 行分け  ・文を短い語句で区切って改行し、情景や感動の高まりを生き生きと描く。
うまれるまえはきっと
みなみのしまにさいた
あまいかおりにみちた
はなびらだったみたい
(『おもいで―あげは ゆりこ』工藤直子)
2 ・内容上共通する何行かをまとめて、一連とする。散文(普通の文章)での段落に当たる。
すずめが とぶ
いちじるしい あやうさ

はれわたりたる
この あさの あやうさ
(『朝の あやうさ』八木重吉)
3 体言止め   ・「名詞止め」ともいう。文末を名詞で止め、印象を強めたり余韻(よいん)を残したりする。

※余韻とは、言外に感じさせるしみじみとした味わいのこと。余情。
母馬子馬、ぬまの
夏の夕(ゆうべ)の柳(やなぎ)かげ
4 比喩(ひゆ) ・「たとえ」ともいう。性質の似た他の何かに言い換(か)えることで印象を鮮明にし、わかりやすくする。

直喩(ちょくゆ)
比喩であることを示す「ようだ」「みたいだ」「ごとし」などの言葉を直接用い、何を何にたとえるのかを明らかにする。明喩(めいゆ)ともいう。
※「ようだ・みたいだ」といった語が用いられることで間接的な表現となり、隠喩に比べて与える印象はソフトとなる。「先生は(まるで)鬼のようだ!」

隠喩(いんゆ)
直喩で用いられる「ようだ」「みたいだ」「ごとし」などの言葉を用いずに他のものに言い換える。暗喩(あんゆ)ともいう。
※直喩よりも鋭く、強い印象を与える。「先生は、鬼だ!」
 
直喩
きりきりともみ込むような冬が来た
(『冬が来た』高村光太郎)

隠喩
公孫樹の木も箒(ほうき)になった
(『冬が来た』高村光太郎)
5 擬人法(ぎじんほう) ・人間でないものを、人間がしたことのように表し、生き生きとした印象を残す。活喩法(かつゆほう)ともいう。

※ 擬人法は比喩(ひゆ)の一種であることも覚えておくこと。
 
菜の花が風にゆすられて
うなずきながら聞いている
(『春の岬にて』三越左千夫)

船が散歩する
煙草(たばこ)を吸いながら
船が散歩する
口笛を吹きながら
(『海の風景』堀口大学)

※「人間ではない主語(赤字)」と「人間の動作(青字)」とを組み合わせて表現されていることを確認しよう。
6 対句(ついく) ・内容の対立する言葉や似た言葉、対照的な言葉などを並べて、調子を整えたり感動を強調したりする。

※ 三行続きの対句表現もある。
むこうから かけてくる村の人
こちらから かけていく町の人
(『夕だち』村野四郎)

美しい妹もつ人
女の友もつ人
もつ人
7 倒置法 ・言葉の順序をかえることで、意味を強調したり感動を強くうったえたりする。

※ 強くうったえたいことがらを先にもってくる。
どうだろう
この沢鳴りの音は
(『北の春』丸山薫)
※普通の語順では「この沢鳴りの音はどうだろう」となる。普通の語順と倒置文とを読み比べて印象の違いを比べてみよう。
8 反復法(くり返し) ・同じ言葉や、ほぼ同じ表現を二度以上繰り返し、調子を整えたり、感動を強調したりする。リフレインともいう。
冬よ
僕に来い僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食(えじき)だ
(『冬が来た』高村光太郎)
9 呼びかけ ・呼びかけるような言葉や表現を用いて親しみの気持ちを表し、印象を強める。
ああ、自然よ
父よ
僕を一人立ちにさせた広大な父よ
(『道程』高村光太郎)
10 省略法 ・あるべきはずの言葉をわざと省(はぶ)き、すべてを言いきらずに文を終えることで、余情を残し、印象を強める。
・点線「……」や棒線「―」で示されることが多いが、「。」で締めくくられる場合もある。
波の後ろを走る波……
波の前を走る波……
海には白い馬が群れている
(『白い馬』高田敏子)

※上の例は「対句」にもなっている。
11 押韻(おういん) 行のはじめ、または終わりに同じ響きの音を置いてリズムを生み、印象を強める。

① 行の初めに同じ音をそろえて置く。(頭韻:とういん)
② 行の終わりに同じ音をそろえて置く。(脚韻:きゃくいん)

※ 押韻(おういん)することを、「韻を踏む」ともいう。詩にリズムを与え、調子を整える効果がある。
頭韻
君(み)が瞳(ひとみ)はつぶらにて
君(み)が心は知りがたし
(『少年の日』佐藤春夫)
※行のはじめを「き」の音でそろえている。
脚韻
野ゆき山ゆき海辺ゆ
真ひるの丘(おか)べ花を藉(し)
(『少年の日』佐藤春夫)
※行の終わりを「き」の音でそろえている。
12 中止法 ・文をいったん止めた形で表現し、余情を残す。

育ちながらゆれ
よるひるを生にめざめ

※生(せい):生きていること。いのち。



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