ごま成分で有毒物質(フリーラジカル)を検知
ごま油に含まれる天然化合物「セサモール」が強い抗酸化作用を持ち,老化や動脈硬化などの一因ともされるフリーラジカルの検出に利用できることを東京大の内山聖一助教,昭和大の大野賢一助教らが明らかにした.一月二十七日付の米化学誌「アナリティカルケミストリー」オンライン版に発表した.
フリーラジカルは相手から電子を奪う「抗酸化作用」が強く,脂質やDNAと反応して性質を変えてしまうことがある.体内に存在するものでは活性酸素や一酸化窒素などが知られる.
フリーラジカルが体内に多くなりすぎると,がんや動脈硬化などの一因になると考えられている.また食品の腐敗を進める原因にもなる.
グループでは,食用油の中で参加しにくいごま油の成分に注目.成分の一つセサモールがフリーラジカルと反応しやすいことを突き止めた.セサモールは酸化されやすい水酸基と呼ばれる部分を持つ.自ら酸化されてフリーラジカルを消してしまうのだ.
セサモールは,強い抗酸化作用で知られるビタミンEより一割程度も強い作用を示す.大野助教は「フリーラジカルと反応しそうな構造を持つ物質を探したらセサモールが浮かび上がった.ごま油が酸化されにくいのもうなずける」と話す.
さらに,フリーラジカルによって酸化されたセサモールは二個一組でくっつき「セサモールダイマー」という化合物になることも分かった.このダイマーは紫外線を当てると紫色の蛍光を出す性質を持っていた.
この蛍光の強さを測れば,セサモールがどれだけ酸化されたか分かり,フリーラジカルの量が調べられる.いろいろなフリーラジカルを検出できるが,これまで直接測れなかった一酸化窒素を検出できるのが一番の特徴だという.
「天然物質というところに興味を持った.調べてみると非常にうまくできていると感じた.ゴマの防御反応としてフリーラジカルを取り除く機能が残ってきたのだろう」と内山助教は驚く.
人の血液の血漿の中でも,検出試薬として動くことも確かめられた.「製薬などの研究に使えるほか人の体がどれだけフリーラジカルにさらされているかを測る新しい手段になるかもしれない」(内山助教)という.