1999年06月01日(火)
日本橋茅場町みかわ −八丁堀店−
天ぷらの名店は、東京に沢山ある。
よくわからないけれど、天ぷらの本場は、やっぱり東京なのだ。
江戸前天ぷらの世界があるのだ。
たいていの店は、戦前からの老舗であり、こういうお店は大変高い。
私のお気に入りは、お店としては、新しい部類に入る「みかわ」である。
早乙女さんという名人が始めたお店らしい。
場所は、茅場町駅からすぐだが、路地裏にあって初めての人にはわかりにくいかも知れない。
人によっては、路地裏で、しもたやの前に植木が並べられている風景を、下町情緒溢れるという。
土曜日に茅場町方面に行く用があり、久々みかわでランチが食べられることになった。
余り並んでおらず。「ラッキー!」と思ったのだが、甘かった。
普段のお昼は予約は受け付けないが、土日は予約を受け付けるので、今日は満席とのこと。
それでは今日はみかわの天ぷらが食べられないかと思いきや、八丁堀支店の方に案内してくれるとのこと。
道を教えてもらって、歩いて行った。
八丁堀のお店には、行ったことがないので、楽しみであった。
八丁堀の方の大通りから入ったところは、我が家の方に似ている。
碁盤の目の通りに、新しいビルと、昔からの古い家がごちゃまぜで、私としては、落ち着く風景である。
少し迷ったが、無事八丁掘店にたどり着く、本店から、だいたい5分程度の距離であった。
支店の方は、ぎっしり家が建ち並ぶ通りの間口が狭く奥が深そうな店で、両隣とぴったりくっついているから、正面しか窓や入り口がないのではないかと思う。
一歩中に入ると、落ち着いた粋なつくりになっていた。
4人用のテーブルが2つと、カウンターに7人、中二階にもテーブル席があるようだ。
すべての調度がつりあっていて、なんとなく落ち着く。
敢えて言えば、茶室の雰囲気と同じ感じの店だと思った。
余談であるが、下町の粋な店の作りというのは、茶室に通じるところが多いと思う。
カウンターの席についたが、カウンター席は、これまた、椅子がぎっしり並べられ、隣の椅子との間が5cmもない。
だからと言って、窮屈なのかといえば、なんていうのか、ここの天ぷらが好きで食べに来たいお客さんの数の多さと、みかわのご主人のできるだけ多くの人に不快でない程度のスペースでここの天ぷらを食べて欲しいという気持ちと、下町という大きい場所がとりにくい状況のちょうど折り合ったのが「椅子と椅子との間5cm」であるような気がして、納得できるのだ。
みかわと言えば、色々な有名人が推薦するお店で、もっと、広い店を構えようとすれば、いくらでもできるような気がするが、敢えて、下町の路地裏とか、狭い家を選んでいるような気がする。
もしかして、天ぷら揚げる人が一人として、その人が、神経を集中して天ぷらを揚げることのできる人数と、お客さんがかしこまらないで、気楽に天ぷらを楽しめることを狙って、下町のしもたやを選んでいるのかも知れない。
どちらにしろ、みかわのお店の広さと天ぷらには、ご主人の、天ぷらと下町のしもたやに対する美学というものがあるような気がする。
同じ下町育ちでも、私のように、ただの美味しいもの好きで、美意識のないものには、それがとても羨ましい。
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