1999年01月01日(金)
鳴門巻き
お雑煮こそ、地域や家で異なり、こんなに楽しくバラエティに飛んだものはないと思う。
去年、料理MLで、お雑煮自慢大会を行ったら、全国各地から、本当に、美味しそうなお雑煮が出てくるは、出てくるは、とても楽しかった。
ぶり味とか、いくらを入れるとか、きっと、美味しいのだろうなと思ったが、こういうお母さんの味的なものをレシピだけで、仕上がりの味がわからないまま作るのは、ちょっと、無謀のような気がした。
作り慣れた人の作を食べたら、自分で作ろうという気になるだろうなと思う。
そんな中で、親以前の代から東京に住んでいる3名の家のお雑煮に、共通点があったのだ。
それがなんと、「鳴門巻き」がお雑煮に入ることであったのだ。
(他にも、三つ葉を入れる、柚子を入れる、小松菜を入れる、餅は角で、汁はすまし汁とか、共通点はあるのだが、それらは、お正月料理用の雑誌にも載っているありきたりの共通点である。
今まで、想像したこともない「東京地元っ子」の共通点が「鳴門巻き」だったのである。)
そうか、戦前から東京に住んでいた証拠は、「このお雑煮の中の鳴門巻きが見えないのか!」ということになるのかと思った。
鳴門巻きは、いつ発明されたもので、どこの名物なのだろう。 江戸時代なのか、明治なのか、全くわからない。
昔は、流行した食べ物だったのかも知れないが、今や、すたれつつある食材である(と、私は思っている)。
考えてみれば、生まれて初めて食べた鳴門巻は、ラーメンに浮いていたと思う。
だから、日本古来の食材ではなく、ラーメン用に開発されたものとの、私の勝手なイメージができてしまったのだと思う。
鳴門巻きについて、昔「貧乏臭いし、美味しくないから、入れるのをやめよう」と父に提案したが、受け入れられなかった。
「うちのお雑煮には、昔から鳴門巻きが入っているのが当たり前なのだ。」とのこと。
そういう思い出があると、父が亡くなった今、余計に、鳴門巻きを外したら、父が頑なに守っていたものを捨てるような気がして外せなくなった。
去年のMLのお雑煮大会で、我が家のお雑煮は、東京風に岐阜が加わったものと判明した。
どこが東京風かというと、小松菜と鳴門巻きにお餅、三つ葉、柚子、お澄ましである。
岐阜風はその上に、もみ海苔と削りかつおを入れるのだ。
岐阜は、祖母の出身地である。
とてもさっぱりしている、昔、雑誌で見た東京風雑煮に鶏肉が入っていたので、入れたかったが、これも父に蹴られた。(お正月から生臭いとのことだった。なんでかつお節が生臭くなくて、鶏が生臭いのか?などという理屈は、戦前生まれには通じない。)
鶏を入れない代わりに、もみ海苔と削りかつおで味を補っているので、美味しい。
削り節を入れることは、追いかつおに通ずるから、美味しいのはわかると思う、海苔もいい味を汁に与える。
2日目は、母のふるさとである山梨風となる。(しかし、ここにも、もみ海苔とけずり節と柚子と三つ葉を椀に盛った後、入れるから、東京・岐阜に影響を受けた山梨風である。)
山梨は、大根・人参・里芋を出汁で煮た醤油味の中に焼いた餅を入れる。
野菜たっぷりで、ここにも肉っ気はない。
これは、これで美味しい。
甥たちは、元旦、一緒に食事をしないので、我が家のお雑煮を食べるチャンスがない。
いつの日か、このエッセイで、我が家のお雑煮の作り方を読んで興味を持ってくれたらなと思う。
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