研究内容

11 ゴマ成分セサモールの発蛍光試薬 詳細

2005年4月〜 東京大学大学院薬学系研究科 薬化学教室 助教 > 投稿論文

Low-cost fluorimetric determination of radicals based on fluorogenic dimerization of the natural phenol sesamol
Yumi Makino, Seiichi Uchiyama, Ken-ichi Ohno, Hidetoshi Arakawa
Anal. Chem. , 2010, 82, 1213-1220

 Abstract
A novel fluorimetric method for determining radicals using the natural phenol sesamol as a fluorogenic reagent is reported. In this assay, sesamol was reacted with aqueous radicals to yield one isomer of a sesamol dimer exclusively. The dimer emitted purple fluorescence near 400 nm around neutral pH, where it assumed the monoanionic form. This method was applied to the straightforward detection of radical nitric oxide (NO). The ready availability of sesamol should enable rapid implementation of applications utilizing this new assay, particularly in high-throughput analysis or screening.

 内容
ゴマ成分セサモールを利用する新たなラジカルの蛍光定量法を確立しました.セサモール自身はほとんど蛍光を発しませんが,ラジカル(ヒドロキシラジカル,メチルラジカル,一酸化窒素など)との反応生成物であるセサモールの二量体は,中性付近において強い蛍光を発します.そこでこの発蛍光型の化学反応をうまく利用することで,ラジカルの高感度定量が可能になります.原理の新規性だけでなく,セサモールは一般の試薬として市販されており入手容易なこと,ラジカルの中でも比較的反応性の低い一酸化窒素とも反応すること,などが特徴としてあげられます.

 ひとこと
東大に戻って1年経った 2006年4月に研究室に配属されてきた槙野さん(現アステラス製薬)の論文です.彼女のM論内容を論文として発表することで,僕の薬化学教室としての仕事は全て終わりました.結局,たった二人の学生しか無事に巣立っていかなかったのは複雑な心境ですけれど,まともな論文の出せる学生を研究者として二人送り出すことができたというのは,幸せなことだったかもしれません.進路の変更や研究室のゴタゴタがあったので基礎的な操作の修得を重視せざるを得ず,その結果このような古典的で新機軸のプロジェクトになりました.状況としてアメリカ化学会の雑誌しか許されない中,目標としていた Anal. Chem. に掲載されたのは大満足なのですが,実は開始当初からこっそり自分に対するアンチテーゼが入っている研究です.今後の変化をお楽しみに.