研究内容

10 狭いpH領域で蛍光強度が変化する変なセンサー 詳細

2005年4月〜 東京大学大学院薬学系研究科 薬化学教室 助教 > 投稿論文

Digital fluorescent pH sensors
Seiichi Uchiyama, Yumi Makino
Chem. Commun., 2009, 2646-2648

 Abstract
We designed polymeric sensors that created a digital-type fluorescence response to pH variation in aqueous solution.

 内容
 高分子をモチーフにして,わずかな水素イオン濃度の変化に対して劇的な蛍光強度の変化を起こすデジタル応答型の pH センサーを開発しました.

 ひとこと
 Chem. Commun. minor revision でアクセプト.イオンセンサーに対する既成概念を超えた内容であるのは間違いなく,本質的には JACS も狙える内容なのでは?と思っているのですが(このまま通るとは思ってませんけど・・・),同系統の高分子を用いた温度センサーの論文が JACS でえらく目立っていたので,印象を打ち消し合わないように,Chem.Commun. に投稿しました.そもそもポリマーを使うと「適当な条件が揃ったときにデジタル型の応答を示す」という現象は,先行して Macromolecules に公表された研究内容に取り組んでいるときから気づいていて,この論文の草稿も出来ていたんですけど,当時,教授が「自分主体の論文にしたい」っていうからテーマごと提供したんですよ.で,教授は JACS やら Org.Lett. に投稿したんですけど,リジェクトされ続けてしまいそしたら一転,このプロジェクトを放り出したからさすがに「(元々は)僕の考えた内容なので丁寧に扱って頂きたいんですけど」って言ったら・・・その答えが秀逸.「君が書いた原稿だからリジェクトされるんだよ.あれじゃあ僕にも手の施しようが無い」ですって.それから気を取り直して 2 年間,合成も測定も全てやり直して(「自分(教授)の学生を使うな」も口癖でしたからそれに賛同する学生のデータは要りません)ようやく論文の形になりました.結果的には自分の予想を遙かに超える反響があって,ひとまずは満足してます.でも一般性とか詳細なメカニズムに関して足りないところだらけで,それを何とかしなくてはとも思ってます.皆さんがどう思うか分かりませんが,この論文の内容こそ僕が日本に帰ってきてから最初のオリジナルな仕事だと自負しています.その点に関しては温度センサーや水素イオン濃度のマッピングじゃないんですよ,分かる人には分かる話なんですけれど.