研究内容

9 蛍光性温度センサーで細胞の温度測定 詳細

2005年4月〜 東京大学大学院薬学系研究科 薬化学教室 助教 > 投稿論文

Hydrophilic fluorescent nanogel thermometer for intracellular thermometry
Chie Gota, Kohki Okabe, Takashi Funatsu, Yoshie Harada, Seiichi Uchiyama
J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 2766-2767

 Abstract

The first methodology to measure intracellular temperature is described.
A highly hydrophilic fluorescent nanogel thermometer developed for this purpose stays in the cytoplasm and emits stronger fluorescence at a higher temperature. Thus, intracellular temperature variations associated with biological processes can be monitored by this novel thermometer with a temperature resolution of better than 0.5 degree C.

 内容
ついに感熱応答性高分子を利用した蛍光性温度センサーを生細胞に応用し,温度測定を行いました. 細胞質には様々な分子やイオンが存在しているので,好ましくない相互作用を減らすために温度センサーの形状をナノゲルにし,さらに塩析(凝集)を防ぐために温度センサーの表面をイオン性のスルホ基で修飾しました. 結果として生細胞中で, 27 から 33 ℃の温度範囲を 0.5 ℃の分解能をもって測定することができました.

 ひとこと
郷田さん(現コーセー)の3報目です. ・・・あまりに思うところがありすぎますね. 結局なんだかんだいっても,研究者としての評価は結果(=論文)で決まるので,この論文を出した研究チームは一流だったのではないかと思ってます. 当時だらけた雰囲気の中で,M2だった郷田さんを限定的にかなりけしかけて研究させたので(研究職希望だったので当たり前ですけど),せめて Nature 姉妹紙には通したかったです. 色々投稿したんですけど,全部リジェクトされて,自分の力不足を痛感させられました(僕からしたらこの内容はJACS通って当たり前なので). 郷田さんの修士三部作(Analyst, J.Phys.Chem.B, そしてこのJACS)を振り返ってみると,僕もとんでもなく辛かった(まあお互いですよね)ですけど,良いモデルケースになったと思います. あり得ないと思いますけど,もう一度同じ様な状況に直面したとしても,どんなに問題が勃発しても,やっぱり僕はやる気のある学生に限定して研究を進めると思います. それが化学者(科学者)っていう職業を選んだ人の義務だと思ってますから.