研究内容

3 水やアルコール中にて蛍光強度が増加する環境応答性蛍光団 詳細

2005年4月〜 東京大学大学院薬学系研究科 薬化学教室 助教 > 投稿論文

nvironment-sensitive fluorophore emitting in protic environments
S. Uchiyama, K. Takehira, T. Yoshihara, S. Tobita, and T. Ohwada
Org. Lett., 2006, 8, 5869-5872

 Abstract

The unusual fluorescence properties of 8-methoxy-4-methyl-2H-benzo[g]chromen-2-one (1) are described. The fluorophore 1 is almost nonfluorescent in aprotic solvent (e.g., fluorescence quantum yield < 0.0003 in n-hexane), whereas it strongly fluoresces at long wavelengths (>450 nm) in protic solvent (e.g., fluorescence quantum yield = 0.21 in methanol). The fluorophore 1 also shows good applicability in developing a new fluorogenic (fluorescent "off-on") sensor.

 内容
親水的環境でのみ強い蛍光を発する新規蛍光団の報告です. 環境応答性の蛍光団は数多く利用されていますが,それらのほとんどが疎水的環境でのみ強い蛍光を発するもので,今回の報告のような親水的環境でのみ蛍光を発する蛍光団は非常に珍しいといえます(おそらくアクリジン,ピレニルアルデヒド,メトキシクマリンに続く4例目です). 今回開発した蛍光団は,前3例と比較して,安定性が高い,長波長の励起・蛍光波長を示す,誘導体化が容易といった利点を持っています.

 ひとこと
JACS Reject → Chem. Commun. Reject → Org. Lett. publish as is でアクセプト. JACS に蹴られるのはまだ分かる. しかし JACS に 1vs2 で蹴られた論文が,Chem. Commun. にまで蹴られるのはおかしいでしょ. 僕のネームバリューが無いからといって適当にあしらいすぎですよ,エディター・審査員の皆さん. 学生の頃からベンゾフラザン骨格ばかり使ってきましたが,ポスドク時代にアントラセンをさわって,他の蛍光団を題材とすることにようやく抵抗が無くなりました. せっかく他の蛍光団を使うわけですから,当然ベンゾフラザンには逆立ちしても出せない特徴に焦点をあてました. この蛍光団はわずか一工程で合成できるのですが,そんな簡単な化合物の蛍光特性が報告されていないなんて,意外ですよね. 助手になってからの栄えある1報目になりますが,自分の実験にかける時間が少なくなるとともに,雑誌のランクも落ちていくという荒廃の美学を味わってます. 何とかこの新機軸でもう一花咲かせたいところです.