研究内容

5 温度とpHを入力因子とする蛍光性論理ゲートを開発 詳細

2002年4月~2005年3月 日本学術振興会 特別研究員(PD) > 投稿論文

Fluorescent polymeric AND logic gate with temperature and pH as inputs
S. Uchiyama, N. Kawai, A. P. de Silva and K. Iwai
J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 3032-3033.

 Abstract
We illustrate a general polymeric design of fluorescent logic gates, for example, AND, using temperature and pH as inputs.

 内容
最近,二種類のイオンや分子がある状態になったとき(例えば両方存在したとき)に,応答を示す「論理ゲート」の開発が盛んに行われている. 本論文では,蛍光性温度センサーであるアクリルアミド系高分子の構造に,さらに三級アミン部位を導入することで,高温かつ高 pH のときにはじめて蛍光応答を示す論理ゲートを開発した. 本研究は,①温度を蛍光性論理ゲートの入力因子とした,②高分子を用いて論理ゲートを構築した,という二点において新規性があり,当該分野を大きく発展させると考えている.

 ひとこと
Nat. Mater. Reject → J. Am. Chem. Soc. Minor revision でアクセプト. ついに鬼門の JACS に掲載されました. うまくいくときはこんなものなのか,審査員のコメントも非常に好意的で,スペルミスと説明の一文追加のみでした. そもそもこの高分子は,僕が奈良女子大に行くのと入れ替わりで修士課程を卒業した河合さんが最初に手を付けた系でした. ところが,データの不安定さや解釈の難しさから彼女の中では???な高分子だったのではないかと思います. そこで,それを僕が引き継いで,英知を絞って,綺麗な形で研究をまとめたという訳です. ここで思うのは,「僕って素晴らしい!」ということではなく,「研究は,色々な角度で見ることによって劇的に質が良くなる事がある」ということです. 今回で言えば,河合さんが見出していた研究結果は,ダイヤの原石級の発見であったがそれがただの石ころに見えた,それを他の分野の知識をたまたま持っていた僕が磨くことによって,JACS まで到達したということです. おそらく,良い研究成果をあげるためには,どちらの過程も必要不可欠だと思います. そういう意味で,時間を超えた,良い形での共同研究が出来たと思っています. この論文で,奈良女時代の研究は終わりですが,自分がこの論文で果たした役割から「分野の違う人の意見を求める事」の重要さを改めて感じたという点は,JACS という名前以上に意味があったのではないでしょうか.