研究内容

2 詳細

2002年4月~2005年3月 日本学術振興会 特別研究員(PD) > 投稿論文

Fluorescence on-off switching mechanism of benzofurazans
S. Uchiyama, K. Takehira, S. Kohtani, K. Imai, R. Nakagaki, S. Tobita and T. Santa
Org. Biomol. Chem., 2003, 1, 1067-1072.

 Abstract
Many fluorescent reagents with a benzofurazan (2,1,3-benzoxadiazole) skeleton have been developed and widely used in bio-analyses. In this study, we try to elucidate the fluorescence on-off switching mechanism of three fluorogenic reagents and their derivatives. Ten 4,7-disubstituted benzofurazans were used for this purpose and the measurements of their fluorescence, phosphorescence, photolysis, and time-resolved thermal lensing signal in acetonitrile were obtained in order to understand the relaxation processes of these compounds. These results indicate that the competition of fluorescence with a fast intersystem crossing or fast photoreaction plays a key role in the fluorescence on-off switching. Semi-empirical molecular orbital calculations show that the existence of the triplet nπ* state is responsible for the fast intersystem crossing while the proximity of the reactive second singlet ππ* state to the first singlet ππ* state contributes to the fast photoreaction in the excited states.

 内容
代表的なベンゾフラザン骨格を有する発蛍光性試薬,NBD-Cl, NBD-F 及び ABD-F とそれらの誘導体について,蛍光量子収率の決定要因を解明しました. 光分解実験,リン光測定,熱レンズ測定などの結果から,アミノ基用試薬 NBD-Cl, NBD-F では項間交差により無蛍光性となる一方,アミンと反応した誘導体ではこの項間交差の過程が抑制されて蛍光性となることが分かりました. また,チオール基用試薬 ABD-F では光分解反応により無蛍光性となるものの,チオールと反応した蛍光性誘導体ではこの光分解反応が抑制されていました. これらの結果は,同じベンゾフラザン骨格を有する化合物でも,その置換基によって蛍光と競合する2種類の無輻射過程が存在することを意味し,なぜ NBD-Cl, NBD-F がアミンに選択的で,ABD-F がチオールに選択的な発蛍光試薬であるのかという問いに対する明確な答えであると考えています..

 ひとこと
J. Am. Chem. Soc. Reject → Org. Biomol. Chem. Minor revision でアクセプト. この論文で長らく続いた東大時代の研究報告は終わりです. この研究もほとんどが群馬大と金沢大で行わせていただきました. 将来的には,この論文の内容を使って何かできれば,とも思うのですが何分分野の違うところに行ってしまったのでそれも当分望めそうにありません. それは後々の楽しみということで. ところで,この論文は Org. Biomol. Chem. に投稿してからアクセプトまでの日時が1ヶ月と4日(しかも10日のクリスマス→年始休暇を挟む)しか掛からず,論文の書き方など随分うまくなったのではないかなぁ,という手応えを掴みました. それでも JACS は蹴られましたが...東大での仕事は,総説を除いて9報でした. 18回の投稿を経験しましたので,採択率はちょうど5割でした. もっと Reject されていると思ったのですが,思ったよりは高い採択率です. 世の中には Reject に耐えられない人もいるみたいですけど,僕はそんなことは無さそうです. 慣れすぎだという感じもしますが....