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 農地を売買・農地以外に転用するには?

 農地法の規定により、農地等を売買したり、宅地などの農地以外に転用するには、都道府県知事の許可、あるいは農業委員会への届出が必要となります。

 これは、食料を安定的に供給するために、優良な農地を確保し、効率的に利用し、耕作者の地位の安定と生産力の増進を図ることを目的とする、農業政策によるためです。

< 農地等とは? >
  • ここでいう「農地等」とは、直接耕作の目的に供される土地を言います。

    • 登記簿上の地目が「田」、「畑」でなくても、現に農業生産活動を目的として耕作されている土地は農地とされます。(現況主義)


  • 休耕など、一時的に耕作していない状態にある「田」、「畑」も農地です。

    • これに対し、趣味で作っている家庭菜園等は農地ではありません。


  • 農地等の中には「採草放牧地」も含まれます。

    • 「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作または養畜の事業のための採草、または家畜の放牧の目的に供される土地をいいます。

  • 現況は宅地だが、登記簿上の地目は「田」、「畑」となっている土地については、売買等の所有権移転にあたり、慎重な調査の対象とされます。

  • 農地の転用に当たっては、農地法の規制以外にも関係する諸法令の手続きを踏む必要があります。



 農地法3条 (農地を農地として売買する場合)

 農地を農地として売買するには、農業委員会または都道府県知事の許可が必要です。

 許可を得ずして農地等の所有権の移転を行った場合、その所有権移転は無効になります。
さらに、3年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となりますので注意が必要です。(農地法第92条)

 農地は、原則として、農家か農業生産法人(農事組合や、主たる事業が「農業」である法人)しか取得できません。

 例外的に農業生産法人以外の法人に許可が認められるケースとして、法人の主たる事業の運営に欠くことのできない試験研究や農事指導と認められる場合に許可されることもあります。
(例えば、化学肥料の製造者が、自社開発の肥料の効能を検査するための実験農場を取得するなど。)



 また、買主が農家等であっても、次のような場合には許可されません。

  <許可されないケース>


  1. 小作地を譲渡する場合は、買主が小作人(含む世帯員)、あるいはその土地を使用している農業生産法人でない場合。

  2. 買主が、その土地について自ら耕作、養蚕の事業主体として農業経営を行うのでない場合。

  3. 買主(除く農業生産法人)、またはその世帯員の保有面積が、農地の取得後において50aに達しない場合。(除く北海道)

  4. 買主またはその世帯員の農業経営状況からみて、その取得しようとする農地を効率的に利用して耕作、養蚕できるとは認められない場合。



 許可権者は、農地の所在地と所有者の住所地が同じか異なるかで違ってきます。

  <許可権者>


  1. 農地等が売主の住所地の市町村に存在する場合

    • ・・・・農業委員会の許可が必要です。


  2. 農地等が売主の住所地以外の市町村に存在する場合

    • ・・・・都道府県知事の許可が必要です。

< 注  意 >
 農地法3条許可を取得後の当該農地の転用は、原則として登記簿の原因日付から起算して、3年3作後でないと転用できません。

 とりあえず農地として買い入れ、すぐそこに住宅等を建築するのは許可されませんので、注意が必要です。



 農地法4条 (自己所有の農地を農地以外に転用する場合)

  農地を、所有者が自ら農地以外に転用する場合には、原則として都道府県知事、または農林水産大臣(4haを超える場合)の許可が必要です。

 許可を得ずして転用を行った場合、その転用は無効となるばかりか、該当工事の中止、原状回復などの措置が処せられる可能性があります。
さらに、3年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となりますので注意が必要です。(農地法第92条、83条の2)


  • 長野県では、個人住宅の転用面積に上限があります。

    •  一般個人住宅 500u
       農家住宅 1,000u




  農地転用手続きの内容や要件は、都市計画の区域区分により違ってきます。


< 市街化区域内 >
市街化区域内の農地は転用届を農業委員会に届け出ればよく、許可は不要です。
< 市街化調整区域内 >
市街化調整区域内の農地については、立地基準が定められています。

<立地基準>
農地の種類 許可基準
農用地区内農地  農業振興地域整備計画で指定 ×  原則として許可されない
甲種農地  集団的優良農地 ×  原則として許可されない
乙種農地 第1種  農業生産力の高い農地 ×  原則として許可されない
第2種  街路が普遍的に配置されている農地  周辺に代替地がある場合、許可されない
第3種  区画整理施工地域の農地  転用許可される


また、次の一般基準を満たさない場合には許可されません。

<一般基準>

  1. 転用目的実現の確実性を欠く場合

  2. 周辺農地の営農条件に支障を生じるおそれのある場合

  3. 一時転用後に農地に復元されることが確実と認めらない場合



 農地転用許可の申請にあたっては、概ね次の書類が必要となります。

<提出書類>
書 類
許可申請書
定款又は寄付行為の写し、及び法人登記簿謄本 (法人)み)
公図の写し
転用候補地の位置及び付近の状況を表示する図面
建設予定建物・施設の配置図
土地所有者の同意があったことを証する書面、耕作者の同意があったことを証する書面
都市計画法等、関係法令の許認可に係わる申請書の写し
土地改良区の意見書
取水・排水に係わる水利権者等の同意書

   ※ 転用目的実現の確実性の審査につき、次の書類が求められる場合があります。
書 類
事業計画書
資金計画書又は予算書
工事予定表
地区内道水路の処置に係わる所管部局との調整を証する書面
その他参考書類 (住民票・戸籍謄本・相続関係書類・印鑑証明など)

< 許可通知 >
 転用の許可に際しては、転用を完了すべき期限等に関して条件が付されます。

 許可を受けた後、その土地が転用目的に供されないまま放って置かれているなどの場合には、その事情が調査され、許可の取り消しや許可条件の変更が命令される場合がありますので、注意が必要です。


 農地法5条 (自己所有の農地を農地以外に転用する目的の売買)

 農地を、第三者に農地以外に転用する目的で売買したり、賃貸する場合には、原則として都道府県知事、または農林水産大臣(4haを超える場合)の許可が必要です。

 許可を得ずして所有権移転等を行った場合、その移転は無効となるばかりか、該当工事の中止、原状回復などの措置が処せられる可能性があります。
さらに、3年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となりますので注意が必要です。(農地法第92条、83条の2)


  • 農地法5条許可 = 3条許可4条許可  となります。

  • 許可にあたっては権利移動の可否と、転用の可否を併せて審査されるため、5条許可を取れば4条許可(3条許可)をあらためて取得する必要はありません。

  • 4条許可が単独申請なのに対し、5条許可では当事者の共同申請が原則となります。(強制競売、遺贈、裁判上の調停などは例外)

 5条許可の許可基準は原則的に4条許可と同じですが、次のような場合には許可されません。


  1. 仮設工作物の設置、その他の一時的な利用に供するために所有権を取得しようとする場合

  2. 農地を採草放牧地にするため、3条許可をすることができない場合に該当すると認められる場合



 農地法以外の関係諸法令

■ 農振除外

 農用地区域内にある農地を指定された用途以外に転用する場合には、農用地区域からその農地が除外されることが必要となります。
農振除外の詳細はこちらへ



■ 開発許可

 農地を宅地等に転用する場合には、都市計画法に基づく開発行為の許可を受ける必要があります。
開発許可の詳細はこちらへ



■ 国土利用計画法の届出

 一定面積以上の土地について売買の契約をした場合、都道府県知事への届出が必要となります。

原 則 注視区域 監視区域
 届出対象となる面積  市街化区域  2,000u以上   「原則」に同じ。
 (契約対象の
 土地全体面積) 
 都道府県の規制
 で定める面積以上
 (契約対象の
 土地全体面積) 
 他の都市計画区域  5,000u以上 
 都市計画区域外  10,000u以上 
 届出義務者  権利取得者  契約当事者  契約当事者
 届出時期  契約締結後、2週間以内  契約締結前  契約締結前
 審査の対象  取引後の土地の利用目的  利用目的、
 及び取引価格
 利用目的、
 取引価格、
 投機性



■ 宅地造成規正法の工事許可

 宅地の造成をする場合であって、崖崩れや土砂の流出のおそれの大きい市街地等で行われる宅地造成に関する工事については、工事着手前に都道府県知事の許可を受ける必要があります。

 <宅地造成の定義>


  1. 切土であってその部分に2メートルを超える高さの崖ができるもの

  2. 盛土であってその部分に1メートルを超える高さの崖ができるもの

  3. 切土と盛土を同時に行う場合であって、盛土部分の崖の高さが1メートル以下でも盛土部分と切土部分を合わせた全体の高さが2メートルをこえるもの

  4. 盛土、切土により生じる崖の高さが上記に該当しない場合でも、盛土、切土する土地の面積が500uを超えるもの



■ その他調整が必要となる法令

 農地転用許可に関しては、その用途・土地の現況や転用目的に対して、様々な他法令との調整が必要となります。

 <関係法令の例示>
区分 規制の内容 根拠条文








 森林法  許可  地域森林計画対象民有林で
 1haを超える開発行為
 10の2条1項
 砂利採取法 許可  業として行う砂利の採取行為  16条
 採石法 許可  業として行う岩石の採取行為  33条
 温泉法 許可  温泉湧出目的の土地掘削  3条1項
み許
の可
確見
認込
 廃棄物の処理、清掃に関する法律 許可  廃棄物処理施設の設置  15条1項
 墓地、埋葬法 許可  墓地・納骨堂・火葬場の経営  10条
 大規模小売店舗立地法 届出  店舗面積1,000uを超える建物の建築  5条1項


調
 大気汚染立地法 届出  ばい煙発生施設の設置  6条
 建築基準法 建築
確認
 建築物の建築・工作物の設置  6条1項



 非農地証明

 登記簿上の地目が「田」、「畑」となっている土地について所有権移転等の登記をするには、原則として農地法の許可があったことを証する書面を添付しなければなりません。

しかし、土地の現況が宅地など農地以外のものである場合には、農地法の許可を得る必要がないため、所有権移転の前にあらかじめ土地地目を農地以外のものに変更する必要があります。

このような場合、農業委員会に農地でないことの証明書を発行してもらい、地目変更の登記をすることができます。


 非農地証明は、明らかに農地法上の農地、採草放牧地でないと認められる場合に限って申請により発行されます。
審査は現地調査にもとづき厳格に行われます。例えば、数年間耕作されずに荒地となっている土地であっても、耕作しようと思えばいつでも耕作できるような土地は非農地とは認められません。



非農地証明の対象となる土地については、その現況により、また自治体により基準は違います。

 <非農地証明対象の具体例>


  1. 農地法が適用された日以前から非農地であった土地

  2. 自然災害による災害地で農地への復旧が困難であると認められる土地

  3. 農業振興地域の整備に関する法律で定める農用地区域外の土地で、原則として20年以上耕作放棄され将来的にも農地として使用するのが困難であり、農地行政上も特に支障がないと認められる土地



弊事務所では、農地転用に関する相談、事業計画の策定をサポートし、申請書類の作成、提出を代行します。
立地、建築、事業許認可等一連の手続きを統轄できますので、速やかな土地利用が図れます。

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