農業を法人が行うことのメリットは? |
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法人で農業を行うと聞くと、大規模・多角化による近代営農と捉えがちですが、自営農業を法人形態にしている家族経営法人や近隣農家からなる小規模法人も多く存在します。
政策的には、農業経営基盤の強化として法人経営の推進が基本施策として位置づけられ、農地法の一部改正もあって株式会社も農業生産法人として農業参入できる等の背景もあり、平成16年時点の農業生産法人数は全国約7,500法人となっています。
なぜ法人化するのか?
それは、遊休農地等の有効利用を増進するための農業支援緒施策と相まって、個人農家を法人とすることには、次に挙げるメリットがあるからです。
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法人が農業を営むには? |
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しかしながら、法人が事業として農業を営む場合、農地法の制約がでてきます。
農地法(第3条)では、「農地(又は採草放牧地)について、売買・貸借等の権利の設定、移転をしようとする場合には、農業委員会または都道府県知事の許可を受けなければならない。」とされており、許可を受けないでした行為は無効となります。
そして、農地法の許可要件として、権利の設定、移転ができる法人として農業生産法人が規定されています。
つまり、ただ会社を作っただけでは、その会社で農地を保有したり賃借して農業を事業として行うことはできず、特殊な形態の法人が必要になります。
なお、特例として、市町村等と農業を行う協定を締結した場合は農地等について貸借権を設定することができる等、農業生産法人以外でも許可される場合があります。(ただし、遊休農地や耕作放棄地の賃貸借が主であり、なかなか集約的経営とならないのが現状です。)
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農業生産法人とは? |
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農業生産法人とは農地法上の呼び名で、「農地(又は採草放牧地)を使用して、農業経営を行うことができる法人」と定義され、農協法を根拠とする「農事組合法人」と、会社法を根拠とする「会社法人」(株式会社、合同会社、合資会社、合名会社)の形態があります。
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農事組合法人とは? |
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農事組合法人とは、農業生産についての協業をはかることにより、組合員の共同の利益を増進する目的を持ち、次の事業を行うものです。
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このうち、「2号法人」が、自ら農地を所有したり、賃借等できる農業生産法人となります。 |
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農業生産法人の形態比較 |
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合同会社、合資会社、合名会社は、農業生産法人としては実体がほとんどないことから省きます。 |
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農事組合法人 |
株式会社 |
構成員 |
- 農地の権利提供者
- 農業の常時従事者
- 農地を現物出資した農地保有合理化法人
- 農協、同連合会
- 法人と継続的取引関係にある個人・法人・新技術の提供を行う企業等
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- 同左
- 同左
- 同左
- 地方公共団体、農協、同連合会
- 同左
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発起人 |
3名以上の農民 |
1名以上 |
出 資 |
・出資1口の金額は均一、その金額及び総額には制限はない
・出資額を限度とする有限責任 |
・最低資本金の制限なし
・株式譲渡制限会社であること |
役 員 |
理事:1名以上(組合員でなければならない。)
監事:任意 |
取締役:1名以上
監事:任意
会計参与、会計監査人:任意 |
役 員
任 期 |
3年以内(設立時は1年以内) |
取締役:2年〜10年
監査役:4年〜10年
会計参与:2年〜10年 |
税 金 |
【法人税】
・協同組合等扱いの場合の税率
年800万円以下部分の所得…22%、 年800万円超部分の所得…30%
・普通法人扱いの場合の税率
30%
【事業税】
・農業生産法人の要件を満たしているものが行う農業に対しては非課税 |
【法人税】
・資本金1億円以下の場合の税率
年800万円以下部分の所得…22%、 年800万円超部分の所得…30%
【事業税】
・資本金1億円以下、所得2,500万円以下の場合の税率
年400万円以下部分の所得…5%
年400超800万円以下部分の所得…7.3%
年800超部分の所得…9.6% |
年 金 |
・農林年金、又は国民年金(農業者年金) |
・厚生年金 |
設 立
手 続 |
・定款について、公証人の認証は不要
・設立後、2週間以内に知事(農林水産大臣)に設立届出を提出 |
・定款について、公証人の認証を要す |
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農業生産法人(会社法人)ができる事業 |
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農業生産法人(会社法人)は、主たる事業が「農業とその関連事業」であれば、「その他の事業」も行うことができます。
つまり、売上高の50%未満であれば、農閑期の副業や他の営利事業を多角的に行って安定経営を図れこともできるのです。
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※ 農事組合法人の事業は、「農協法」により、共同利用施設の設置、農業経営及びそれらの附帯事業に限定されます。 |
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農業生産法人化で気をつけること |
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ただし、贈与税や相続税の納税猶予の適用を受けている農地等を農業生産法人に貸付けや譲渡した場合、納税猶予制度が打ち切りになり、納税猶予を受けていた贈与税額の全部又は一部の納付が必要となりますので注意が必要です。 |
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農業生産法人の設立要件は? |
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会社法人としての農業生産法人の設立要件には、構成員要件(株式会社では株主、農事組合法人では組合員)と役員要件(株式会社では取締役、農事組合法人では理事)があります。 |
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【構成員要件】 |
構成員要件 |
例示・説明 |
法人に農地の権利を提供する人 |
法人に農地を売る個人 |
法人に農地を貸す個人 |
法人の農業に常時従事する人 |
「農業」には関連事業を含みます。 |
「常時従事」とは、農業(経理等の事務を含む)、関連事業をあわせ、原則として年間150日以上従事することとされます。 |
農業協同組合等 |
農業協同組合、農業協同組合連合会 |
地方公共団体 |
農事組合法人には適用されません。 |
法人と継続的取引関係を有する者 |
法人から物資の供給・役務の提供を受ける者 |
法人に対し物資の供給・役務の提供を行う者 |
その他法人の事業の円滑化に寄与する者 |
「継続的」とは、3年以上の期間取引を行う内容の契約を締結する必要があります。 |
上記の者の「議決権」は、総議決権の1/4以下、1人当たり1/10以下の必要があります。 |
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【役員要件】 |
役員要件 |
例示・説明 |
農業に従事する者 |
農業又は関連事業に常時従事(原則として年間150日以上)する役員が、過半数でなければならない。 |
農作業に従事する者 |
上記「農作業に従事する者」の過半数の役員が、農作業に原則として年間60日以上従事するものであること。 |
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農業生産法人の設立手続きは? |
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農業生産法人の設立フロー(発起設立)は、おおむね次のようになります。
事前に農業委員会・農協等に設立要件について確認しておきます。 |
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農業生産法人を設立した後は? |
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農業生産法人は、毎年、事業年度の終了後3ヶ月以内に、農業委員会に事業の状況その他の事項を記載した農業生産法人報告書を提出しなければなりません。 |
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弊事務所は、農業生産法人に関する相談、事業計画作成、農業委員会・農協との調整、法人設立書類作成、農地法の転用許可申請を一貫して行うことができます。
また、設立後の諸手続・毎年の届出手続も行います。 |
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