プログラムオフィサー制度の現状
The Story and Present State of Program Officer System
《 議論されている課題と取組み 》
平成15年の導入から丸5年が経過した科学技術振興調整費のPO制度であるが,その運用過程で明らかになったさまざまな課題が議論されている.多くのPO制度に共通の課題に関しては次章に譲ることにし,ここでは,科学技術振興調整費という競争的資金の性格に根差した課題について説明する.
(1)プログラム立案者と研究現場とのコミュニケーション
POの役割として最も重要なことの1つは,これまでの説明から分かるように,競争的資金によるプログラムの趣旨を研究者や評価者に適確に伝えることである.また,もう1つの重要な役割は,逆に,研究開発や評価の現場の声を取りまとめてプログラム立案者に伝えることである.科学技術振興調整費はCSTPの方針に基づく政策的な競争的資金であり,その運用を文部科学省が行い,事務処理の一部をJSTに委託していることは,前述した通りである.したがって,プログラム立案者とPOとの間には,CSTP ― 文部科学省 ― JST事務局 ― POと,かなりの距離がある.このため,上で述べたPOの重要な役割が効果的に果たされるためには,関係者間の距離を克服する円滑なコミュニケーションの工夫が必要である.関係者間の意見交換等はこれまでにも随時行われてきたが,現在,定例会議開催等のシステム化が検討されている.
(2)プログラムの性格とPOの資質・役割
科学技術振興調整費では,時代の科学技術政策をいち早く反映したプログラムが設定される.PO制度導入当時の平成16年度と現在とでプログラムを比較すると,次のようになる:
◇平成16年度の公募プログラム
1. 競争的研究資金配分機関構築支援
2. 重要課題解決型研究等の推進
(1) 重要課題解決型研究
(2) 科学技術政策に必要な調査研究
3. 産学官共同研究の効果的な推進
4. 戦略的研究拠点育成
5. 新興分野人材養成
6. 緊急に対応を必要とする研究開発等
7. 国際的リーダーシップの確保
(1) 我が国の科学技術活動の国際的リーダーシップの確保
(2) 政府間合意等に基づく重要課題協力の機動的推進
◇平成20年度の公募プログラム
1. 若手研究者養成システム改革
(1) イノベーション創出若手研究人材養成
(2) 若手研究者の自立的研究環境整備促進
2. 女性研究者支援モデル育成
3. 先端融合領域イノベーション創出拠点の形成
4. 地域再生人材創出拠点の形成
5. アジア・アフリカ科学技術協力の戦略的推進
(1) 戦略的環境リーダー育成拠点形成
(2) 国際共同研究の推進
6. 重要政策課題への機動的対応の推進
これらを見れば分かるように,当初は研究開発にかかわるプログラムがかなりあったが,現在では,若手研究者育成や女性研究者支援を始め,いわゆる“科学技術システム改革”のプログラムが大部分を占めるようになっている.このような状況において,POに求められる研究開発の経験や研究領域の専門性の度合いについても,以前と同じではないのではないかという議論が行われている.また,PO間の担当プログラム・課題の割振りも複雑になってきている.これに対しては,公募による新規POの選考や,POおよびPOを補佐する主任調査員の業務分担の整理等が試行されている.
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