軌跡~-_科学と旅_-~

プログラムオフィサー制度の現状

The Story and Present State of Program Officer System



● 実施課題の評価

 科学技術振興調整費における評価には,中間評価,事後評価および追跡評価の3種がある.追跡評価は,終了後しばらく(5年程度)経過した課題を対象に,その直接の成果(アウトプット)から生み出された効果・効用(アウトカム)や波及効果(インパクト)を評価するものである.


 中間/事後評価では,まず,文部科学省が運営する科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会研究評価部会(以下「評価部会」)の定める評価要領に基づき,JSTが,外部有識者から成る評価作業部会(評価WG)を設置・運営する.評価WGは,対象課題のプログラムや研究分野に対応して設置され,POもその専門分野等に応じ分担して各WGに対応する.各評価WGでは,書面評価およびヒアリング評価の2段階により,プログラムの趣旨・目的等を踏まえ,科学的・技術的な視点や社会的・経済的な視点からの調査・検討を行い,評価案を作成する.次に,評価部会では,評価案の内容や評価WGでの議論等についての各WG主査からの報告を踏まえて総合的な視点で検討を行い,評価結果を取りまとめる.


 追跡評価では,まず,評価部会の定める評価要領に基づき,POが,プログラムの趣旨・目的等を踏まえ,科学的・技術的な視点や社会的・経済的な視点からの調査・検討を行い,評価案を作成する.具体的には,サンプル抽出した対象課題の実施者へのアンケートやインタビュー,外部専門家へのインタビュー,文献調査等に基づき,評価内容をまとめる.次に,PD・PO会議において,各担当POにより検討された内容が適切であることをPDが確認して取りまとめ,評価部会に提出する.その後,評価部会では,評価案の内容やPD・PO会議での議論等についての文部科学省からの報告を踏まえて総合的な視点で検討を行い,評価結果を取りまとめる.

 ちなみに,平成19年度は,全6プログラムにおける中間20,事後47の対象課題について,9つのWGにより評価が行われた.また,追跡評価は,2プログラムの計76課題を対象に実施された.


 以下では,中間/事後評価におけるPOの実務について詳説する.


(1)成果報告書様式(案)の作成

 成果報告書は,評価に際して,その確認対象となる最も重要なものであり,評価結果とともに,公開され記録に残る.したがって,課題の目的と計画および実施内容や成果が漏れなく,正確かつ明確に記載される必要がある.また,評価者が短期間でこれらの内容を把握できるように,簡潔かつ明瞭に記載されていなければならない.POとしては,そのように記載されるような適切な様式を,前年度の評価における反省も踏まえつつ提案する.また,作成される様式には,当該項目を記載する目的や,具体的に何を記載するか,例を示した説明や,記載に際しての注意事項等を付記する.様式は,文部科学省の確認を経て,最終決定される.


(2)評価項目・基準(案),評価委員選定基準(案)の作成

 POが作成し,文部科学省が確認する.評価項目・基準は評価部会にて決定し,事前に被評価者に伝えられる.評価委員選定基準は,プログラムの趣旨・目的と評価対象課題の内容に基づいて作成される.


(3)評価WG構成の提案,WG主査・評価委員候補の推薦

 POが提案・推薦し,文部科学省が確認した後,評価部会が決定する.また,各WGの評価委員候補は,主査も確認する.

 評価委員候補の推薦における考え方は,審査委員候補推薦の場合と同様であるが,採択時の審査委員や,事後評価に対しては中間評価時の評価委員をも極力含める.特異なテーマの課題がある場合には,当該評価WG内に十分な人数の専門家を用意できないことが考えられるため,「メールレビュー」の仕組みが用意されており,WGの枠外でメールレビュアを推薦する.

 また,推薦に際しては,入念な調査を行い,利益相反に留意する.


(4)評価委員への説明

 評価においてPOが担う最も重要な役割の1つであり,公正で適切な評価のために,全評価WG委員に対して,科学技術振興調整費の特徴,対象プログラムの趣旨・目的,対象課題の内容,評価項目と評価基準,評価方法等に関する説明を行う.


(5)成果報告書の読込み

 評価委員による書面評価に先立ち,POは,成果報告書について,当初計画の内容,実施内容や成果が,正確かつ明確に記述されているか,評価委員に提供する情報として過不足はないか,表現は分かりやすいか,といった点を確認する.その結果,修正の検討を求めることがある.

 また,POの評価WGにおける役割の1つに情報提供があるが,実施課題のフォローアップを行ってきたことを踏まえ,補足情報をまとめて提供する.なお,成果報告書では不明確な事項について,現地調査を行うことがある.


(6)評価WGの運営

 審査WGの運営と同様であるが,評価においては,POが評点を付けることはない.これは,POは評価対象課題の実施をフォローしてきたことから,ある意味では,マネジメント面での評価を受ける立場にあるとも言えるからである.


(7)評価結果案の作成

 評価委員のコメントおよびWGにおける議論の内容に基づき,評価報告書案を作成する(一次案をPO補佐担当が作成することもある).

 評価コメントは,受領した被評価者が評点の根拠と改善の助言内容等について十分理解し得るよう明確に伝える必要がある.評価委員のコメントの中には,言葉が省略されていて分かりにくい文章となっているものもある.あるいは,誤解に基づくもの(たとえば,報告書に記載されているにもかかわらず見落とされているケース,記載内容が十分理解されていないケース,等)もある.このような場合には,その内容を補ったり採用を除外したりする.

 このようにして作成された後,文部科学省および評価WG主査・委員の確認を経て,評価部会に報告される.


(8)事実誤認の照会対応

 評価部会における評価結果の決定後,その公開に先立ち,評価コメントの内容について事実誤認がないか,被評価者に確認してもらう.POは,被評価者からの確認結果への対応を行う.この際,評価コメントの微修正を行うこともあるが,必要に応じ,文科省および評価WG主査に修正案を確認する.


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