軌跡~-_科学と旅_-~

プログラムオフィサー制度の現状

The Story and Present State of Program Officer System



《 POの実務 》

 POには,科学技術振興調整費における公募・審査,採択課題のフォローアップ(課題管理),実施課題の評価のそれぞれにおいて,定められた役割を果たすことが求められている.本節では,これら段階ごとに,具体的な実務内容を説明する.

 まず,年間の大まかなスケジュールを表-2に示す.

 科学技術振興調整費では年1回の公募が行われ,その開始時期もほぼ固定している.また,実施課題の評価も,毎年ほぼ決まった時期に行われる.採択課題のフォローアップは,これらの間隙を縫う形で,年間を通して行われることになる.


● 公募・審査

 科学技術振興調整費における公募は毎年末に開始され,次の審査過程を経て採択課題が選定される.

 まず,文部科学省が運営する科学技術振興調整費審査部会(以下「審査部会」)の定める審査要領に基づき,JSTが,外部有識者から成る審査作業部会(審査WG)を設置・運営する.審査WGは,公募プログラムや研究分野に対応して設置され,POもその専門分野等に応じ分担して各WGに対応する.各審査WGでは,書面審査およびヒアリング審査の2段階により採択候補課題を選定する.次に,選定された採択候補課題の内容が適切であることを,PDがPO全体の会議を開いた上で確認して取りまとめ,審査部会に提出する.審査部会では,採択候補課題の内容や審査WGでの議論等についての各WG主査からの報告を踏まえ,採択課題を決定する.

 ちなみに,平成20年度の公募では,全6プログラムに対して,総計247件の提案申請があり,8つの審査WGが設置された.審査では,97件についてヒアリングを行い,最終的に62件が採択された.プログラムによりさまざまであるが,採択率は8.3〜59.1%(平均25.1%)である.


(1)公募プログラムの設計

 CSTPおよび文部科学省が行い,POが関与することはないが,公募テーマの詳細について意見を求められることがある.また,公募要領(案)の確認を行う.


(2)公募要領,審査項目・基準(案),審査委員選定基準(案)の作成

 文部科学省が作成し,POは確認の上,必要に応じて意見を述べる.審査項目・基準は公募要領に盛り込まれる.審査委員選定基準は,公募プログラムの趣旨・目的と内容に基づいて作成される.


(3)審査WG構成の提案,WG主査・審査委員候補の推薦

 POが提案・推薦し,文部科学省が確認した後,審査部会が決定する.また,各WGの審査委員は,主査も確認する.

 審査委員候補は,公募プログラムの趣旨・目的およびテーマに応じて,必要とされる専門スキルや経験等を当該審査WGの構成委員全体でカバーするように推薦する.その上で,年齢・性別・地域・所属(産学官,大学の場合には国公私立,等)について,バランスよく構成されるよう配慮する.委員の数は,各WGにつき,10名程度である.ただし,委員を依頼しても都合がつかずに断られることを考慮し,各専門分野等のカテゴリで1〜2名程度の代替候補を推薦しておく.

 推薦は,PO自身の属する研究コミュニティ等で活躍している研究者や有識者等に加えて,著名誌に論文等が掲載されている研究者,科学技術振興調整費における過去の審査/評価委員,他の競争的資金や各種審議会・委員会における委員経験者,関連学会の委員経験者,各大学の研究教育活動従事者,既採択課題の実施者等を対象に,主として公開情報をもとに,審査委員選定基準に基づいて行う.


(4)審査委員への説明

 公募・審査においてPOが担う最も重要な役割の1つであり,公正で適切な審査のために,全審査WG委員に対して,科学技術振興調整費の特徴,対象プログラムの趣旨・目的,審査項目と審査基準,審査方法等に関する説明を行う.なお,正確を期すため,対象プログラムの趣旨・目的,すなわち,公募の意図等に関し,必要に応じ,CSTPおよび文部科学省に事前確認する.


(5)提案(申請)書の読込み

 POの審査WGにおける役割の1つに情報提供があるが,それを適切に行うために,審査委員と同様に提案書を読み込む.情報提供の主な目的は,審査委員が気付かないかもしれない事項の指摘であるが,それは,POの次の特徴によるものである:

・科学技術振興調整費の位置付けや特徴,公募プログラムの趣旨や目的を熟知していること・過去の同種プログラムの公募審査や採択課題の管理を通した課題に関する知見があること

・公募審査そのものの経験

 なお,平成19年度より,POの役割の見直しが行われ,POの代表各1名が主査あるいは主査補佐として各担当の審査WGに参画することになり,さらに,平成20年度より,そのPOが実際に審査する(評点を付ける)こととなった.したがって,提案書の読込みは書面審査そのものの意義をも持つ.


(6)審査WGの運営

 会議室の手配や会議資料の準備,委員への連絡等,ロジスティクスについてはJST事務局が行うが,POは,会議資料の内容確認,文部科学省および主査との事前の意識合わせ,議事進行シナリオの確認等を行う.主査補佐POは,事前の意識合わせ結果に基づき,議事において主査を補佐する.また,審査WGの議論において提案者への確認が必要となった場合には,その取りまとめを行う.

 なお,審査委員(およびPO自身)に関する利益相反の確認も,重要な役割の1つである.


(7)不採択理由案の作成

 審査において不採択となった各提案に対し,書面審査およびヒアリング審査における審査委員のコメントおよび議論の内容に基づき,不採択理由案を作成する(一次案をPO補佐担当が作成することもある).

 不採択理由は,受領した提案(申請)者が納得し得るよう明確に伝える必要がある.審査委員のコメントの中には,特に,記入する時間が限られているヒアリング時のコメントでは,言葉が省略されていて分かりにくい文章となっているものもある.あるいは,不採択理由としては適切でないもの(たとえば,提案書に明確に記載されているにもかかわらず,不明確であると断じているケース,プログラムの趣旨からは問題とはならないにもかかわらず,問題視しているケース,等)もある.このような場合には,その内容を補ったり採用を除外したりする.このようにして作成した後,文部科学省および審査WG主査・委員の確認を得る.

 なお,提案者からのクレームに対しては,基本的には,POが対応する.


(8)採択理由案の作成

 審査において採択候補として選定された各提案に対しては,ヒアリング審査における審査委員のコメントおよび議論の内容に基づき,採択理由案を作成する.

 採択理由案には,課題の実施に際して対応が必要な注文事項が含まれることがあり,以降の課題管理に大きな影響をおよぼすため,漏らさず明確に伝えるようにしなければならない.このようにして作成された後,文部科学省および審査WG主査・委員の確認を経て,審査部会報告に付される.


(9)採択候補課題の確認

 各審査WGにおける審査結果を取りまとめ,PD・PO会議で確認する.POは分担して審査WGに参画するが,これは全体会議の場である.このとき,公募・審査における反省点等についても合わせて議論する.


(10)提案書修正版の確認

 採択された提案に対して注文が付された場合には,提案者にその検討結果を反映して提案書を修正してもらい,POはその内容を確認する.この提案書修正版が,合意された実施内容の記録となり,以降のフォローアップや評価のベースとなる.


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表-2  科学技術振興調整費における年間スケジュール概要