軌跡~-_科学と旅_-~

プログラムオフィサー制度の現状

The Story and Present State of Program Officer System



《 日本の状況 》

(1)競争的資金制度の現状

 日本の平成19年度予算における科学技術関係経費は3兆5,113億円であり,そのうち競争的資金は4,766億円(13.6%)である.競争的資金の割合は平成15年度の9.7%に比べてかなり増加しているが,米国や英国と比較するとまだ低い.

 日本の競争的資金としては,各府省および関連する独立行政法人が担当するものを合わせて計44制度(平成20年4月現在)ある[4].それぞれ,各府省のミッションに対応する分野をカバーする.

 主な競争的資金とそのシェア(平成17年度)は,次の通りである:

・科学研究費補助金(文部科学省および日本学術振興会) 40%

・戦略的創造研究推進事業(科学技術振興機構) 10%

・科学技術振興調整費(文部科学省) 8%

・21世紀COEプログラム(文部科学省) 8%

・厚生労働科学研究費補助金(厚生労働省) 8%

 上記のうち,戦略的創造研究推進事業と科学技術振興調整費は委託費(米国におけるContract型),その他は補助金(同Grant型)である.


(2)PO制度の現状

 前述した各競争的資金やFAに対応してPO・PDが配置されており,CSTPの調査によれば,平成18年度には,PDが32制度(専任は10制度)で延べ52人,POが34制度(専任は18制度)で延べ459人となっている.しかし,PO・PDの多くは非常勤であり,かつ,人数が十分ではなく,一部の競争的資金制度では各府省職員が兼務しているという.

 PO・PDの位置づけや権限,役割等は,制度ごとに異なる.以下に,科学研究費補助金と戦略的創造研究推進事業におけるPO・PD制度について簡単に紹介する.科学技術振興調整費に関しては,次章で詳述する.


◇科学研究費補助金[5]

 科学研究費補助金の配分は,種目により文部科学省と独立行政法人日本学術振興会(JSPS)とが分担する.このうちJSPSでは,学術システム研究センターを設置し,PDとして,センター所長1名および副所長3名を,POとして,各研究領域に設けられている専門調査班を取りまとめる主任研究員17名および各研究分野に対応した専門研究員93名を,それぞれ配置している(平成20年4月現在).これらのPOは,大学や研究機関から推薦された候補者の中から運営委員会により選考される.勤務形態は,非常勤である.

 課題の公募・審査は2段階で行われ,POは,審査委員データベースに基づく審査委員候補者の選出,審査・評価に関する諸業務についての具体的な手順の策定,審査部会への情報提供等の業務を行う.また,JSPS事業に対する提案・助言や学術振興方策および学術研究動向に関する調査・研究をも行っている.


◇戦略的創造研究推進事業[6]

 戦略的創造研究推進事業の資金配分は科学技術振興機構(JST)が担当し,PDとして,理事および事業本部の研究主監を計5名(平成19年4月時点),POとして,研究領域ごとに原則1名の研究総括を計61名(平成19年5月1日時点),それぞれ配置している.POは,外部有識者による評価の上で理事長が選任する.また,もともと存在していた職に対応付けたものであり,その勤務形態は非常勤である.

 PDの主な業務は,新規研究領域・研究総括の提案,制度/運営/研究評価の点検・改革の立案検討,研究領域への資源配分決定である.POの主な業務は,研究課題の選定,中間・事後評価,研究進捗状況の把握と課題予算配分等の資源配分の実施である.公募・審査は書類選考および面接選考の2段階で行われ,POが領域アドバイザ等の協力を得て実施する.必要に応じ,外部評価者の協力を得る場合がある.

 なお,JSTでは,FAとして他にも多くの競争的資金を配分しているが,そのための独自のプログラムオフィサー資格認定制度を設けている.これは,JSTに雇用された,たとえば,科学技術政策やファンディングに関する知識とスキルを有するスタッフに対し,研究開発能力や研究開発評価等の研修を受けさせることにより,“FA-PO”として認定するものである.そして,この“FA-PO”と,資金が対象とする研究開発領域の各専門性と合致する非常勤の“アカデミアPO”とが,二人三脚で業務にあたることとしている.


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