軌跡~-_科学と旅_-~

小中学生を対象としたロボット競技会と総合理科教育

A Robot Contest for Children and Comprehensive Science Education


小中学生向けの総合科学教育としてのロボット競技会


 FLLは,小中学生向けの総合科学教育プログラムであり,本章では,その概要を説明する.

教育プログラムとしてのFLL

 FIRST LEGO League (FLL)[1]は,米国のNPO法人FIRST (For Inspiration and Recognition of Science and Technology)とLEGO社とが連携し,1998年から始められた,子供達のための教育プログラムである.当初は米国内でスタートしたが,徐々に各国に拡がり,日本は,2004年から参加している.日本での運営は,NPO法人青少年科学技術振興会(FIRST Japan)[2]が行っている.参加資格は,新年時点で9〜14歳(地域によって若干異なる)の子供であり,10人まででチームを構成する.日本では各地区予選を経て全国大会において,世界大会に出場する代表チームを選抜する.世界大会には,米国内各州と各国からの代表チームが参加する.なお,米国では,6〜9歳を対象とするJFLL (Junior FLL)という大会もある.

 ここで,「教育プログラム」と書いたのは,FLLが単にロボット競技だけの大会ではないからである.FLLは,リサーチ・プロジェクトとロボット競技の2項目から構成される.

 リサーチ・プロジェクトでは,毎年世界で社会的に話題となっている課題が設定され,子供達は,その課題について調査し,自ら問題の解決策を考え,その結果を周りの人たちと共有する活動が求められる.ちなみに,FLL2004では,"No Limits"というタイトルで障害者支援が,FLL2005では"Ocean Odyssey"というタイトルで海洋環境問題が,FLL2006では"Nano Quest"というタイトルでナノテクが,それぞれ課題として設定された.課題は,毎年新年早々に発表されるが,FLL2007の課題も既に,"Power Puzzle"というタイトルで代替エネルギー問題と設定されている.
 ロボット競技では,LEGO社から市販されているロボットキット”マインドストーム(MINDSTORMS)”[3]を用いて製作したプログラム制御のロボットを使用する.そして,リサーチ・プロジェクトの課題にちなんだ,指定箇所を押す・引く,物体を運ぶといったミッションが複数設定されており,制限時間内での,その遂行状況に応じた得点が与えられる.

FLL競技会の内容

 FLLの競技会では,(a)リサーチ・プロジェクトの成果に関するリサーチ・プレゼンテーション,(b)ロボットに関するテクニカル・プレゼンテーション,(c)チームの活動に関するチームワーク・プレゼンテーション,(d)ロボット競技,の4種を行い,それらの総合得点を競う.

(a) リサーチ・プレゼンテーション

 リサーチの具体的なテーマ,調査に基づく問題の抽出,問題解決のためのアイデア,コミュニティでのリサーチ結果の共有活動等について,5分間程度で説明する.調査・創造・共有が活動の3本柱である.

(b) テクニカル・プレゼンテーション

 ロボットの構造,プログラム,ミッションの遂行方法(戦略)等を5分間程度で説明する.会場には競技用と同じフィールドが配置されており,実際にロボットを動かして説明することもできる.

(c) チームワーク・プレゼンテーション

 FLLの活動において,チーム内でどのような役割分担を行い,どのようにしてプロジェクトを遂行したか,問題の解決に当たり,チームメンバがどのように協力したか,等を評価するものである.5分間程度での評価であるが,日本大会と世界大会とでは評価方法が異なる.前者ではチームが活動内容を発表することによるが,後者では,FLL2005の場合,その場でチームに与えられた課題を遂行する様子を審査員が観察することにより行われた.この時の課題は,レゴブロックを用いて橋を造ること,であった.

(d) ロボット競技

 10個程度のミッションが設定され,それらを2分30秒以内でどこまで遂行できるかを競う.ミッションの難易度に応じた得点が設定され,合計点が競技の得点となる.時間をあけて3回のラウンドを行い,最も高い得点が採用される.具体的内容については,次章で詳説する.得点の内訳は,FLL2006日本大会の場合,3つのプレゼンテーションが各200点,ロボット競技が400点で,合計1,000点満点であった.また,FLL2005ヨーロッパ大会の場合,全て50点であった.プレゼンテーションの比重が比較的高い.

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