軌跡~-_科学と旅_-~

小中学生を対象としたロボット競技会と総合理科教育

A Robot Contest for Children and Comprehensive Science Education



理科教育の展望

 FLLの理念は,「活動を通して,アイデアを出し,問題を解決し,障害を乗り越える」こととされている.FLLに参加する子供達は,ロボット競技を通して,創造力を養い,ロボットのハード・ソフト技術を学ぶ.同時に,リサーチ・プロジェクトを通して,指定テーマの学習を行う.また,チームとしての競技であることから,協調性,コミュニケーション能力やリーダシップ能力を,発表を通してプレゼンテーション能力を養うことができる.さらに,活動全体を通して,プロジェクト管理の一端についても体験できる.

 これらが,多くのロボット競技会や科学オリンピック等とは異なる,教育プロクラムとしてのFLLの最大の特徴である.子供達は,ロボットの製作や競技に際しては,わくわくしながら,一生懸命取り組む.マインドストームを教材として使用している学校(大学,大学院を含む)が多いのは,このような理由によるものと思われる.FLLが,これにリサーチ・プロジェクトを組み合わせている点は,極めて巧妙と言えよう.欲を言うならば,プレゼンテーション審査結果のフィードバックが期待される.ロボット競技は,結果について明快に知ることができるが,プレゼンテーションの評価結果はほとんど分からない.改善のためには,評価結果が不可欠である.

 FLLを教育プログラムと捉え,その設計者の意図に沿った最大限の教育的効果を得ようとするならば,実践の現場では,醸成しようとする個々の能力に応じた工夫が必要となる.たとえば,コミュニケーション能力について言えば,正確な意思疎通が重要となる契機をあらかじめ想定し,活動中に適宜設定する振り返り時に,想定した契機においてどのような意思疎通・情報交換が行われたかを確認すること等である.そして,ここでの実体験と,普段の学習(座学)とのリンクを設けることにより,さらなる教育的効果が期待できる.ただし,これは,競技において高い成績を収めることと相反するかもしれない.

 大学生や社会人の場合には,「場」を与えることにより,彼ら自身が学習する.しかし,小中学生の場合には,単に「場」を与えるだけでは学習を期待できないことが多く,「気づき」を促す,自ら発見するようにし向ける,必要がある.大学生の場合には,好きなことや得意なところを伸ばすことが重要と考えられる.しかし,小中学生の場合には,好き嫌いや得手不得手に関わらず,一通り経験しておくことが重要である.

 研究者や技術者は,子供達が科学技術に興味を持つようにその内容を伝えることは十分できる.しかし,上記のような能力を高めるための工夫は,教育の専門家の力を借りるのがより有効であろう.

[2007-03-23]




文献

[1] FIRST LEGO League InternationalのWebサイト.
[2] NPO法人青少年科学技術振興会のWebサイト.
[3] レゴマインドストーム公式サイト


注)レゴ(LEGO), ROBOLAB,マインドストーム(MINDSTORMS)は,LEGO Groupの登録商標です.FIRST LEGO League (FLL)は,FIRSTとLEGO Groupの登録商標です.


|< << >> >| (7/7)