軌跡~-_科学と旅_-~

小中学生を対象としたロボット競技会と総合理科教育

A Robot Contest for Children and Comprehensive Science Education


ロボット競技の実施状況


 古来,人間のロマンの象徴的存在であったロボットであるが,科学技術の進展と共に身近なものとなってきている.この傾向と相俟って,自作ロボットの性能等を競う競技会が盛んになってきており,本章では,そのサーベイを行う.

ロボットの普及

 ロボットは昔から人間の夢の象徴である.とりわけ,子供達にとって強い興味の対象である.このことは,玩具やアニメ等によく現れている.

 近年,メカトロニクス技術や情報処理技術等の進展に伴い,この夢が現実化してきている.産業分野では従来,工場等で自動車組み立て等をこなす実用ロボット(産業用ロボット)が活用されてきたが,2000年前後から,本田技研工業のASIMO(アシモ)やソニーのQRIO(キュリオ)等,二足歩行の人型ロボットが多数発表されている.最近では,家庭内にも普及し始め,ソニーのAIBO(アイボ)に代表されるペット用途や,家事支援用途等がある.2007年3月には,ついに,二足歩行ロボットキットG-ROBOTSがエイチ・ピー・アイ・ジャパンから発売された.これは,高級玩具とも言える.こうして,ロボットは,コンピュータと同じ歴史を辿りつつある.すなわち,パーソナル化である.

 このような背景の中で,ロボットは,教育用としても注目されてきており,そのためのキットも市販されている.ここまで来ると,自分たちの創作したロボットの機能や性能を競いたいというのは,ごく自然の流れである.

ロボット競技会

 創作ロボットの機能や性能を競う競技会は,1980年代から開催され始めている.ロボットの概念は非常に広く,したがって,ロボット競技会についても,その対象とするロボットや競技内容は様々である.

 まず,いくつかの観点から,ロボット競技会で使用されるロボットを分類してみる.

(1) 制御方法による分類

 (a) 手動制御…リモコン/ラジコンによる指示に基づく動作
 (b) 自動制御…人手を介さずに動作するものであるが,そのレベルにより,さらに細分可能である.境界はあいまいであるが,ここでは,次のように2つに大別する.
   (b-1) 自動制御…(固定の)プログラム論理に基づく判断・動作
   (b-2) 自律・自動制御…汎用知識ベースに基づく状況判断(推論)・動作

(2) 形態による分類

 (a) (車輪走行)車両型
 (b) 多足歩行動物型
 (c) 二足歩行人型

(3) 使用部品による分類

 (a) 専用キット
 (b) 汎用/任意部品

また,競技内容や参加対象等からもロボット競技会を分類することができる.

 以上の観点から,主なロボット競技会を整理すると,表-1のようになる.

 比較的初期の頃は,手動制御ロボットを使う競技会が中心であったが,その後,自動制御ロボットを使う競技会が増加し,最近では,自律・自動制御の二足歩行人型ロボットを使うものも出現している.また,多くの競技会は,高校生以上を参加対象とするものである.その中で,市販のロボットキットを使用する競技会に,小中学生を対象とするものが見られる.

 以下では,小中学生を対象とするロボット競技会の代表例の一つとして,FIRST LEGO League (FLL)[1]を採り上げる.

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表-1  主なロボット競技会一覧
(2007年5月現在)