【 かつては戻る場所など持たなかった −お題2− 】




【 殺生丸 】


―――― かつては戻る場所など持たなかった。


…いや、持たなかったのではなく、捨てた。
この世に生れ落ちた時より、この『生き方』は定められたもの。
潰える一族の裔(すえ)なれば、戻る場所など無用の長物。

今でも、戻る場所などは持たぬ。

いつ果てるとも知らぬこの『彷徨−たび−』の……
泡沫の、道連れ。


―――― いつか来る、その時に。




……お前は、私の『戻る場所』などには成り得ない。

私を置いて逝く、お前は ――――




ただ、刹那の『瞬間−とき−』を重ねるばかり




【 神 楽 】


戻る場所?
はっ! 戻りたくはねぇ場所ならあるけどさ。

そう…、あいつの所。

あたしを目に見えない『絆−いと−』で雁字搦めにしやがって!!

……なんであんな奴の所に生まれたんだろうねぇ ――――



今?

ああ、今は『自由』さ。
あいつがその『絆』をぶち切ってくれたからね。
もう、二度とあんな所へは戻るもんか!!

あたしは、風―――
もう、どこへでも行ける。

もう、何処にもあたしは……

何? あたしが寂しそうに見えるって?
一緒に旅をしようって……
また、それかい? りん。


良いんだ。
良いんだよ、りん。


あんたが、そして……
少しでもあたしの事を思い出してくれたら……



そこがあたしの戻る場所。




【 犬夜叉 】


戻る場所なんか、持ってなかった。


そうお袋が死んで、あいつの所を飛び出して。
中途半端な俺。
人間でもなく、妖怪でもない。
…だから、どちらにも行けなかった。

俺は、一人。

孤独(ひとり) ――――


ああ、だからお前に惹かれた。

桔梗。

お前も、孤独。


あの時、俺達は何を求め合ったのだろう?
自分の居場所なのか。
傷を舐めあう仲間か。

それとも、生まれ変わる為の一歩?


結局、あの時……
俺もお前も、互いを戻る場所には出来なかった。


あれから……

俺の周りには、仲間達が『かごめ』が居る。
俺の帰りを待っててくれる。
『今』は、ここが俺の戻る場所 ―――

桔梗、お前は今も彷徨っている。
いつかお前も『還る−もどる』のか? 
どこへ……

その時、俺はどうするのだろう?



俺の戻る場所は ――――




【 かごめ 】


……私はどっちなんだろう?

私の『戻る場所』 ――――


犬夜叉やみんなの居るこの時代?
ママやじいちゃん、学校の友達が居る現代?

どっちもなんて、虫が良すぎる。
どこかで決めなきゃ。
そう思っているのに……


何時までも、この旅が続けばいいと思ってる。
終わりなんて来なければ良いと。
そうしたら、答えはまだ出さなくてもいいんだよね?

わたしがどっちかなんて……
犬夜叉がどっちかなんて……


ねぇ…?



【 桔梗・琥珀 】


桔梗様。

なんだ、琥珀。

俺、人を殺しすぎました。
最初は奈落に操られて。
後からは、一族の仇を取る為に
奈落に操られるふりをして。

そうか……

人の心って、案外頑丈なんですね。

……?

気が狂うかと、心が壊れるかと思ってました。
でも……

楽だろうな、それは。

はい。そうは行かないものですね。
罪が深ければ深いほど……

帰りたいのか? お前を待つ者達の所へ ―――



その者は小さく、しかしはっきりと横に首を振る。
墓土と骨で作られた死人の巫女と
穢れし四魂の欠片でこの世に繋がれた退治屋と。

戻りたい場所はあった。
帰りたい場所もある。

しかし、今はもう……


戻る場所などない ――――


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