【 その後で殺したい 】
──── からみ合った肌と肌
きっと 誰かに見られてるね ────
─── どうして、そうなったのか分からない。
そう、きっとあの夜の中空に豊満な裸身を晒け出して輝く、あの月のせい。
さらさらと、素肌を流れる白銀の髪。
差し込む月の光に濡れるように、あなたに濡れてゆく。
首筋に触れるあなたの熱い唇。
快感の軌跡を描いておりてゆく、その指先。
躊躇ってるの?
まるで壊れ物を扱うように抱きしめる。
私はあなたの獲物。
美しいその牙で食まれたい。
鋭いその爪で引き裂いて。
「……どうなるか、わからねぇぞ」
答えのかわりに腕を搦める。
愛しい人、放しはしない。
おずおずと、そしてやがては貪欲に私をむさぼるあなた。
──── もっと もっと 指に力を込めて
もっと もっと いい気になってごらん ────
最初で最後かも知れない、この時。
今は、私だけを見て。
私だけを感じて。
──── 愛を独り占めしたいだけ
迷惑なやさしさで
あなたの舌をかんであげる ────
生身の剣が私を貫く。
私の内身(なか)いっぱいに、あなたが満ちる。
ねえ、感じてる? ねえ。
鮮紅(からくれない)に染めてあげる。
朱の海で二人、溺れたい。
──── もっと もっと 腕の中で抱いて
もっと もっと 打ち上げさせてごらん ────
痛みすらも、快感。
あなたが求める以上に、私も求めてる。
「─── 痛っ」
顔を顰めるあなた。
──── 愛を独り占めしたいだけ
忘れてた純情で
あなたの首に爪を立てて ────
あなたの中に存在(いる)あの女(ひと)は、決して消えない。
私の胸でまどろむあなた。
ねえ、犬夜叉。
思ってもないでしょ。
私が今、何を考えているかなんて。
暗闇の中、私の指先にぼうと破魔の光がともる。
その指先を、犬夜叉の胸に当てて。
──── 殺したい 殺したい 殺したい 殺したい
もう 誰にも渡さないわ
心臓が止まれば 私だけのあなたよ ────
暗闇の中、私は微笑む。
きっと今の私、ものすごく『女』の顔をしている。
──── その後で 殺したい
愛を 独り占めしたいだけ ────
ねえ、犬夜叉 ────
【終】
2003.3.15
【 あ と が き 】
…曲のイメージを先行させたので、思いっきりダークなかごめちゃん
になってしまいました。曲は15年くらい前の女性ハードロックバン
ドSHOW−YAのアルバムからです。タイトルもそのまま流用いた
しました。罫線で括ってある部分は歌詞を引用しています。
かなりダークな曲ですが、身を切られるような切なさも感じる曲なの
で、私のお気に入りの一曲でもあります。
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