【 きんのおもい ぎんのきずな1 】





* ご注意を申し上げます *

これより以下の戯文は、週刊少年サンデー2006年18号〜(5月14日時点)での、当管理人杜による手前勝手解釈、改竄犬夜叉SSです。
滅多にやらないパラレル展開v 
「逢瀬」・「綾なす色は」より引き続き、桔梗様×かごちゃんv ←犬君、なアブない設定になっておりますので、
不純(?)同性交遊に対して免疫のないお客様は、これより回れ右にてお帰りくださいませ。
(…読まれた後に、こんなの犬かごじゃな〜いっっ!! とのクレームは受け付けられませんので(苦笑))






 ―――― 弥勒様を助けてくれたのは、桔梗。

 自分の身に、奈落の瘴気を取り込んでそれを浄化する。
 助けた後、何も言わずに立ち去った。
 密かに自分の身を傷付けてまで。

 私の胸に立つ、小さな漣(さざなみ)。


 ……こうしてあなたの姿を見たのは、いつかしら?


 いつもあなたは、自分の身を犠牲にしてまで誰かを、何かを救おうとする。
 今度の弥勒様の怪我にしても、もうずっと前の厨子鼠の時も。
 わたしは桔梗、あなたにはまだとても敵わない。

 なぜか、その事実が私の胸を苦しくする ――――


( 桔梗…、私には何も言ってくれないのね…… )


 思えば胸はまた違う想いで苦しくなり、唇が熱を持つ。
 ねぇ、桔梗。
 あの時、あなたは私にこう言ったのよね?


( ……ありがとう、かごめ。私を、選んでくれたのだな )


 だけど、どうして…?
 どうして、今 あなたは犬夜叉の腕の中にいるの!?

 蜘蛛の糸に触れた瞬間に見た、あの光景。
 五十年前の、犬夜叉と桔梗。
 本当に好きあってて、とても大事に思っていたのに。
 それを、互いで傷つけあって……

 犬夜叉に裏切られたと思って、絶望の縁で憎悪の焔に駆られていた桔梗。
 桔梗に裏切られて絶望し、自暴自棄になっていた犬夜叉。

 ……そうして、犬夜叉は桔梗に封印された。

 とても、悲しい…、哀しい光景。
 愛し合っていたのに、殺しあってしまった過去の二人。
 どんなにしても切る事は出来ない、二人の絆。


 今、わたしの胸に渦巻くものは ――――

 それが二人の絆だと判っているのに、私なんかの立ち入る問題ではないと判って居るのに……

 割り切れない想い。
 なぜか、許せない。

 そう、桔梗の側に犬夜叉がいる事が!

 かごめは思わず、ギロリとお堂の中の犬夜叉を睨みつけていた。
 睨みつけられた犬夜叉は、浮気現場を抑えられた甲斐性なしの旦那のように、かごめの次の出方を待っている。

「……やっぱり、二人一緒だったんだ」

 どこか冷たいかごめの声。
 犬夜叉のドギマギ具合はさらに募る。桔梗とかごめの二人の間に挟まれて。
 今となっては、この二人がこんな風になった元凶が奈落にある事をかごめはよ〜く知っている。
 奈落に嵌められ、不可抗力的に敵対させられたのだ、五十年前に。
 犬夜叉はあの時、全てが終ったら桔梗とともに逝くとかごめに告げた。
 かごめは出来ることなら、「生きている」事が素晴らしい事だと判って欲しいと願った。
 その為に、自分は犬夜叉の側にいたいと。

 今は……、そう、犬夜叉だけじゃない。
 桔梗にも、『生きて』いる事が素晴らしいと思って欲しいと願っている。

 犬夜叉のドキドキしている心臓の音がお堂いっぱいに響くよう。
 そんな空気の中で、静かにかごめと桔梗を視線を絡めた。

( 桔梗…… )
( かごめ、来てくれたのだな…… )

 かつて自分を憎み、殺そうとしていた桔梗とはもう違う。
 厳しくも深い思いやりで幾度となく助けてもらった。
 あの世とこの世の境の時の矢と言い、蓬莱島での巫女の弓と言い。

 『存在(いき)て』いる事は素晴らしい。

 桔梗はもう、それに気付いている。
 だからこそあの夜、かごめにそう告げた。
 かごめに口付けたあの夜に。

( ……私と犬夜叉は、同類。だからこそ、お互いに分かり合えた。側にいて楽だった。それを、私達は錯覚したのかも知れない )

 だから、と言葉を続けて。
 犬夜叉がかごめに魅かれたように、桔梗もまたかごめに魅かれている、と。

( ……今の私は、愛する事も憎む事も、こんなにも自由だ )

 生前であれば、『巫女』という宿命に縛られ、羽ばたく事の出来なかった桔梗。
 裏陶(うらすえ)の鬼術で、骨と墓土で出来た人器にかごめの陰の気を込めて目覚めた『死人』。
 しかし、かごめの『陰の気』は桔梗の魂と共鳴し、かごめがそうであるように自分の中の『負』の感情すら白日の下に晒す強さに導かれ、桔梗を在るべき姿へと変化させた。

 心が動く。
 想いが生まれる。

 『死』とは、何の変化ももたらさぬもの。

 桔梗は『死人』という、異形の『生』を生き始めていた。
 自分を変えてくれたかごめに、桔梗は素直にその想いを告げたのだった。


 そして、かごめも。
 今なら、犬夜叉の苦悩もわかる。
 どちらにも行けぬ、選べぬ心の苦痛が。

 だからこそ!!
 自分たちが真正面から見据えなければならない事に、あたふたしている犬夜叉がどこか腹立たしくもあり、その犬夜叉が桔梗に触れているのが、妙に癇に障る。

 ぎろりと嫉妬に燃えたかごめの瞳は、これを仕掛けた者の思惑を外れて犬夜叉の方へと向っていた。
 くるりと視線を桔梗に向けると、たちまちかごめの表情が曇る。

「桔梗…、その傷……」
「ああ…、白霊山で奈落に刻まれた瘴気の傷だ……」

 巫女装束の襟元から、たおやかな桔梗の首筋に向かい、忌まわしい瘴気の傷が這い回っている。

「蜘蛛の糸のせいで広がった。奈落の野郎……」

 かごめの中で、何かが煮詰まりかけていた。
 桔梗の側にいながら、こんな目にあわせてしまった犬夜叉にも、それを仕組んだ奈落にも!!

 ……それでも、二人は一緒。


「桔梗、その傷…。 私には治せるのよね……」
「かごめ……」

 桔梗には、今のかごめの心の動きが手に取るように判っていた。
 元は同じ魂を持つもの同士。
 言わば、表裏一体。

 『自己愛』と言うなら言えば良い。
 己を愛しく思えるようになって、生きている実感を感じた。
 その感情を与えてくれたのは、他でもないこのかごめなのだ。

 自分がなりたかった、なれたかもしれない未来の自分。
 だからこそ、愛しい。

 ……かごめはまだ、子どもだ。
 感情が素直すぎて、この場での心の動きはまさしく奈落の思う壺。
 ただし、その感情の向う方向がすこ〜し違うのだが。

( ……まずいな、これは。犬夜叉に向った嫉妬がかごめの心を曇らせている )

「この汚れを浄化するには…、私の弓を使うしか… ない……」

 桔梗はそれを確かめる為に、自分が手にした破魔弓をかごめに持たせた。
 心に迷いがあれば、弓が反応する。その迷いが大きいければ大きいほど……。


 バチッッ!! ――――


 かごめが弓を手にした瞬間、その弦は弾けとんだ。

「な、なに!? どうして……?」
「……それが、今のお前の心だ」

( 自分で気付かなければ、お前の本当の力は発動しない…… )

「桔梗、これはどういう事……」
「思ったとおりだ…。かごめ…、お前も奈落の蜘蛛の糸に汚されている……」
「私が…!?」
「……お前も見たのだろう? あの五十年前の光景を」


  ――――― !!!! ―――――


( 今のかごめが、どうしても立ち入る事の出来ない過去の幻影…… )

 衝撃を受けたような顔をしていたかごめだが、ふぃっと顔を上げ真正面から桔梗を見つめた。

「……判ったわ、桔梗の言いたい事。そうね、確かに今の私、か〜な〜り色んな事でぐらぐら来てるの。こんな気持ちじゃ、浄化出来るものも出来ないわね」
「かごめ……」
「私、どうしたらいいのかしら? 教えて、桔梗」

 強気な光を瞳に湛え、かごめが視線も反らさず桔梗に問いかける。

「……代わりの弦を梓山の霊廟に収めてある。私を本当に助けたいのなら、取って来る事が出来るはず。心に迷いがあっては、行き着く事も出来ぬであろうが」
「迷い? 大丈夫よ、桔梗。あなたは私が絶対助けてみせる! そして、奈落にこんな茶番を仕掛けた事を死ぬほど…、ううん もう死んじゃってもいいから後悔させてやるわっっ!!」
「か、かごめ…!?」

 かごめの豹変振りに、驚く犬夜叉。

「桔梗、待っていてね。今ほど、あなたが言ってくれたあの夜の言葉に答えたいと思うことはないの」
「かごめ……」

 他の誰にも見せたくはない桔梗の酷い傷にそっと手を触れ、柔らかな頬を冷たい桔梗の頬に押し当てる。
 そして、その瘴気に塗れた傷口にかごめは思いを込めて口付けた。

「かごめ……」

 かごめの唇が触れた所から、じんわりとした温かみが広がりほんの僅かだが瘴気の苦しみが薄らいだような気がする。
 怪我をした動物がその傷口を舐めて治すように、かごめの桃色をした柔らかな舌が、桔梗の首筋を這う瘴気の傷を舐めてゆく。
 その度ごとに、桔梗は感覚のないはずの体に疼く様な熱を覚えた。

「か、かごめ……」

 瘴気の傷が痛むからというよりも、かごめの施した行為の余韻で掠れ甘い声を零す桔梗。
 その桔梗の顔が、何かの異変を感じ取り僅かに眉を潜めた。
 傷口に触れていたかごめの唇が切れ、うっすらと血が滲んでいる。

「前に桔梗が私にこうして、『力』を注いでくれた事があったでしょう? 私にも出来るかな? って思ったんだけど、やっぱりこの瘴気を浄化しないとダメね」

 血の滲んだかごめの唇は、赤く濡れ艶かしく光っている。

「それじゃ、行って来るわ」
「かごめ、お前が真実私を助けたいと思わなければ……」

 念を押すように、またどこかかごめに縋るように桔梗の言葉が零れ落ちる。

「かごめ、俺は……」

 今の明らかに尋常ではない二人の様子を見せ付けられ、犬夜叉はかごめの顔をまともに見てはいられない。それでも何か行動する時、移動を伴う時には犬夜叉とかごめ、二人は一緒である。迷いは犬夜叉にもあった。

「犬夜叉、桔梗についててあげなさいよ」
「えっ…?」

 そう言われると先ほどの事があるだけに、桔梗と二人になるのがまた別の意味で息苦しくなる。
 その思いを察したのか、いつものかごめらしからぬ低いドスのきいた声でかごめが言った。

「それに…、しばらくあんたの顔、見たくないし」

 そう言い切るかごめ。
 目を丸くする犬夜叉。

「良い? 私が帰るまでちゃんと桔梗を護るのよ! それから、二人っきりだからってベタベタ桔梗の体に触ったりしたら、私が承知しないからねっっ!!」

 思わず零れる、かごめの本音。
 なんでこんなに苛付くのか、その理由。

( 二股かけてるくせに、情けないあんたなんかには、桔梗は渡さない! 桔梗は、私の…… )

 そう思った瞬間に、かごめは自分の気持ちに気が付いた。
 そう思ってしまったのは……

「……………」

 目の前には、だらだらと脂汗を流しながら固まっている犬夜叉の顔。

「やっぱり私…、汚されているのかしら」

 普段なら絶対口にしない事を口走った時点で、確かにかごめの心は千々に乱れていたのだろう。
 そんなかごめを思考の許容範囲を超えたせいで、もう何も考えられなくなった犬夜叉と、事の成り行きに一抹の不安を抱えつつも、自分の想いに応えてくれたかごめをますます愛しく想う桔梗。

 二人の複雑な視線を背に受け、かごめは梓山を目指す。


 愛しい桔梗の命を救うために ――――




【2へ続く】



久しぶりのパラレルと言うより、大改竄SS^^;
今回の内容は、ざっと流して18号〜22・23合併号の辺りまでの内容を、杜流に大幅改竄v
突発な上、ノリだけで書いてます♪
普通ならあまりしないスタイルですが、まぁ、こんな遊びも仕掛ける奴vvv

後半は、24号〜25号+先読みでとっとと纏めたいと考えています。
ですので、後半の方が改竄度が高くなるでしょう。
あくまでも、お遊びです♪ お遊び♪♪
(感想SSでも、考察まじりでもない、正真正銘の駄文です!!)
楽しんでもらえたら、それだけでOK! でございます(^^)






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