おまけ

夢と希望 2013

2013.5.30

10日前の分析化学討論会@函館に続き高分子学会@京都に来ています.なんか学会とか出張とか東京から離れている時に良く更新していますが,長い時間一人で過ごすと色んな事を見つめ直せますので・・・

学会に参加して他の参加者やその発表を観察していると,反面教師になるからかもしれませんが,「自分は研究者としてこうありたい」みたいなものが明確になってきます.

今の学生や若者が研究に興味を示さないのは,時代とか世代によるのかなぁ,なんて思っていましたが,最近は,自分も含めた先輩にあたる人々が,夢のある仕事っぷりを発揮していないからなのかもしれない,と感じるようになりました.研究の世界って実力主義の厳しい面があるとは言え,こんな破落戸でも今年も難なく科研費に採択されたように,国からの若い人(もう全然若い人ではないけど)へのサポートが少ないなんて大嘘です.

学会に参加すると,食事の時とかにお年を召した方の雑談がいやでも聞こえてくるんですけど,景気の良い話がほとんど聞かれません.やれ雑務が忙しいとか,学生とのトラブルに巻き込まれたとか.でもみんな自分で職業として研究者を選択したわけですから,もっともっと楽しむべきだと思うんですよね.まさか大学に所属している人は実は事務処理要員で,研究者ではないんです,なんてオチではないでしょうし.研究者という職業に憧れるような,そういう姿がほとんど見えてこないから,若い人達が研究の世界に魅力を感じなくなっているんだと思います.

夢とか魅力なんて人それぞれなので,もちろん面白い研究成果を発表して世界から注目を集めるとかはベタな夢だし,まあ給料の良さは望めないので,例えばあちこち旅行に行って色んな文化に触れられるってのもいいかもしれません.

僕自身,ここ5年くらいは研究に100%時間を使えるにも関わらず,やりたいことややるべきことが自分のキャパシティーをはるかに超えてしまっているので,逆に項目を以前の2/3くらいに間引き,逆にそれぞれの時間を1.5倍に増やす,という方法を選択しています.良いものを創ろうと思ったら,結局時間をかけなければならず,締め切りを前に設定しても意味が無い,って事を最近痛感しますけど,それが35くらいにならないと分からないなんて,なんて愚かなのかと思ったり.

現在は,本の執筆にとにかくエネルギーを割かれてますが,1冊目の「分子論理ゲート」をステップにして2冊目の「蛍光プローブ」まで,なんとか生きてる間に書ききりたいと思っています.どちらも普段あまり触れられない問題点とかも漏れなく記載して,濃すぎるくらい中身の濃い教科書にしたいのです.特に蛍光プローブなんて,科学的に真に正しい現象を捉えると言う点においては吹聴されすぎな故,生物系の人にはかなり歪められて伝わっているので,後進に「現状をありのまま伝えたい」,そして50年は残る教科書にしなければならない,と自分にプレッシャーをかけてます.もう老い先短いのに,その中から年単位の時間をかけて至極の教科書を出版してしまう.これが今の僕の壮大な夢です.少しも妥協したくないので何年かかるか分かりませんが,必ず世に出すよう頑張っていますので,ぜひ期待していて下さい.