おまけ

教育論 その2

2012.2.14

あっという間にイギリス旅行も終わりが近づいてきました.24時間後には時差9時間の日本に逆戻りです.帰国後はそれなりに忙しくて,このコーナーの更新も出来ないでしょうから,波にのって連続アップしてみます.

引き続き「教育論」です.前回は比較的,目に見える制度面での意見を述べたんですけれど,今回は精神面の話です.

こういう(一見)難しい社会を乗り切るための方法としては逆説的になるんですけれど,「頑張ったから報われる」っていう考え方を自分の研究グループから排除したいと思っています.この考え方自体が間違っていると思っているわけではありません.しかし,若い人の能力とやる気が下降する現在において,この考え方は学生やポスドクの現状をより悪化させると考えているからです.

そもそも研究職なんていうのは実験が好きな人が就くものです.そういう人達にとって実験をすることが,「頑張る」なんていう目標になるとは思えません.もし,実験や研究をすることが「頑張る」対象になるのならその人達は研究職に向いていません.

ほんの一昔前,僕らが学生だった頃は,博士課程の学生が「頑張りすぎる」のをスタッフが止めなくてはいけない時代でした.学生が過労で倒れるなんていうケースもたまに聞くものでした.それが今やどうでしょう.ほんの数ヶ月実験に勤しんだくらいで,「頑張った」見返りを求める学生やポスドクがどれだけ多いことか...さらに状況を悪化させているのが,横並びが好きな友達に加え,本当は戒めなきゃいけない先輩までもその「頑張ったと思しき人」に心から同情したりして,根本的なその人の性質の「研究者」からの解離に気づく機会を与えないことです.僕からすれば,友達同士で研究面の悪いところを指摘せず,慰め合うしなんて真逆の蛮行です.

言ってしまえば,現在の研究室で行われている多くのやりとりはおままごとです.確かに,アカハラなんていうのは程度の低いスタッフと学生・ポスドクの研究ごっこのなれの果てみたいなものなのですしね.

研究職として勤めている人からすれば,実験を「頑張る」なんて言うまでもなく当たり前.問題はそこではなく,その費やしたエネルギーと時間をどうやって,優れた成果に変えていくかです.実験が無駄になるなんて普通のことですから,それを受け入れられなければ研究者として身を立てることはできません.ですから実験をし続けることのできない人なんて,そもそもこの世界にいてはいけない人達なのです.

僕自身,後輩に対してはあめとムチを使いたがるタイプだと自覚しています.しかし,研究者として学生やポスドクに接するときに,甘やかしは一切致しません.その決意を記したところで,このテーマを終わりにします.