おまけ

最近の悩み事

2011.6.15

日本は相変わらず大震災そっちのけで,原発やら政局で盛り上がっているようですが,先日東京新聞にハッとさせられるコラムがありました.

福島第一原発の大規模な崩壊は,地震や津波に対する備えが不足していたから,という見方は恐らく誰も否定しないでしょう.しかしその責任が,危険性がわかっていたにもかかわらず長年目をつむってきた政府や東電の一部の人にある,という帰着の仕方は,果たしてそんなに単純だろうか,という論調でした.というのも,日本は実際に起きたら恐ろしいような事を,たとえ可能性であっても口にすることを良しとしない文化があり,声を大にして危険性をうたう事自体が協調性という美徳に反するからです.

次元は違うかもしれませんが,昨今の学生に対する珍策ぶりも同じだなぁ,と変に共感してしまいました.

はっきり言って僕は,ここ5年くらいのうちの学部における学生の研究者(の卵)としての質の低さに,かなり激昂してますし同時に危機感を抱いています.ゆとり世代は論外だけれど,その数年上までもかなり末期的に見えます.奈良女子大の学生が備えていた研究者としての基本的な性質すら,多くの東大生は備えていない.質が低いなら,定員を減らすとかオーバードクターをさせるとか,それを改善するように組織が動けば問題ないのだけれども,そういう学生を更正させるどころか,研究室に来ているという出席点だけで(実際にはひきこもっていても裏発表会という闇のルートを使って)博士や修士の学位をほいほい渡してしまう.全く厳しい質問の出ない名ばかりの学位審査発表会が,学生側の質の低下を明白に物語ってます.

「うちの学部は世界で一番学位を取るのが簡単だ」なんて聞こえてくる黒い噂に,内心「まさにそのとおりだよ」なんて思えるから終わってますよね.

今は,上司も学生もいないポジションになってしまったのでその機会がないんですけど,昔は教授にも学生にも「あんなのに学位をあげたら教育機関として間違っている」とか「研究者としての能力や責任感がなさ過ぎる」って言ってたんです.でも,こんな社会ですから将来の崩壊を憂う意見なんてまず聞き入れられませんよね(苦笑).完全に組織から浮いてしまいます.

結局,日本人って平均的にリスクマネジメントが下手なんだと思います.例えば,東大に入ることがどれだけリスキーか,本人も周囲もわかっていない.今後,そういう人たちが現れたときに,どう接して優れた研究チームを作っていくか.更正させるかその世代を捨てるか.アカデミックに籍を置くものとして避けて通れない深刻な問題です.研究社会はかなりフェアに動いていて一切ごまかしが効かないですので.