おまけ

大震災に思うこと

2011.3.25

3月11日の大震災は,生まれて初めて実感する大きな自然災害でした.東京でも,これまでに経験したことのない揺れを感じ,ちょうどニュージーランドでの地震によるビル崩壊のニュースが流れている頃だったので,周りの建物が崩れるかもと思ったくらいです.

幸いにして,研究室ではスライド収納式のメスシリンダーが1本割れただけの被害で済みました.また,研究員の子を仙台に出張させていたのですが,数日間の避難所生活ののち無事に帰ってきました.色々と心配して頂いた方には感謝しています.ありがとうございました.

日頃から僕自身は,今の日本の社会が自然や地球を軽視しすぎている(人間が自然をコントロール出来るものだと無意識に錯覚している)事に違和感を感じているので,自然の脅威に対しては驚くこともないのですが,さすがに軽口を叩くには被害が大きすぎました.問題になった都知事の「天罰だ」発言ですが,しかるべき事を猛省してこれからの社会に活かさなければならないというその真意には賛成しています.もちろん被災をした方々にはお見舞いの気持ちもありますし,出来る範囲での支援をしていくつもりです.

東京は地震や津波の被害という点では,中途半端な被災地だったのですが,ニュースにもあるように大規模な電力不足に陥っていて,本当の混乱はこれから本格化しそうです.東大は東京の中でも最大の電力を消費する機関なので,実験のような取り立てて急ぐでもない活動を自粛した方がよいのかどうか,非常に難しい問題に直面しています.

こういう時こそ上層部の毅然とした判断が重要であると思うのですが,東大本部からは「原則,大規模な電力を消費する実験の停止」という正直よく分からないお達しが出ました.「原則」と「大規模な~」で二段階のぼかしが効いています.今後の事態に対しては何にしても自己責任であり上は責任とらないよ,というように感じられ情けない限りです.このように対外的には意味のあるものの,実務的にはほとんど意味をなさない通達なので,僕の属する薬学部では,「こんな状況なのに実験をやれって強要された」とか「実験を止めろと言われたから研究が進められなくなった」というどちらの嫌疑も一切かからない大人のやり方によって,結局普通に実験が行われています.(ちなみに,他学部は本当に研究をストップしているようです.なお薬学部でも電気の消灯や,エレベーター,暖房の停止などは学部をあげてきちんとちゃんとやっていますのでその点は誤解の無いように.)

やはり我々の仕事は実験(研究)をする事であるとは思っていますが,こういう事態だからこそコソコソ振る舞うのではなく堂々とやるべきだと思っています.自分の研究グループは4月4日まで休み,5日から通常通りの研究体制に戻ることに決定しました.まだまだ,電力不足の影響は色濃く残りそうですが,少しずつ日常生活に戻っていけることを願っています.