おまけ

粉飾と傲慢を止めよう!

2010.11.25

最近の仕分け事業に対する大学や学会の対応には目を覆うばかりです.例えば最近来た日本化学会からのメールには,

日本化学会会員の皆様:

行政刷新会議による高等教育,科学・技術開発関連の事業仕分け(第3弾)が行われました.
これに対して,我が国の中・長期的国家戦略としての科学力・技術力強化とそのための若手人材育成強化などの将来への投資の展望に立ち,力強い多様な大学・研究機関の強化を実施すべきであるにもかかわらず,主に財政的観点からのみで事業仕分けを行うことに強く抗議し30学会長声明を発表しました.

日本化学会
岩澤康裕
とあります.これはほんの一例ですが,化学会の一会員という立場からみて,こういう馬鹿げた行為は本当に止めて欲しいと思います.国民の税金を湯水のように使っていることを何とも思わないこの文面は,学術界の質の低下を如実に物語っていると思いますし,そういうリーダーの下で次の世代を担うような若手が育つはずがありません.もう少し,社会の現実を見て頂きたいと思います.現在の研究支援体制は十数年前に比べたら格段に若手をサポートしてくれています.だいたい,質が低くやる気も無い学生やポスドクをそんなに研究の世界に繋ぎ止めておきたいなら,ぎゃあぎゃあ騒ぐ前に自腹を切ってみろ,という話です.教授陣なんて普通のサラリーマンからは考えられないほど良い給料を貰っているのですから.ここまで恥も外聞もなく人のお金に頼るなんてこれはもう完全に乞食ですよね.しかも30の学会長が一律に声明を出しているわけですから,この国の研究リーダーは乞食だらけというわけですか.小学校の学級崩壊がモンスターペアレントに因るところも大きいわけですが,それと同じ構図(親:教授,子:学生)が大学にも起きているといえそうです.

群れなきゃ何もできない,というのもさらにがっかりさせてくれます.しかも安易に群れる.例えば現状の問題点やその解決法を周囲の若手研究者と議論しても,まず同じ意見にはなりません.そのくらい難しい問題なのに,多数決の論理を持ち込むことに効果があると思っているとは悲しい限りです.

今,「若手」を伸ばすために何より必要なのは「お金」ではなく,自分の研究哲学,研究目標をしっかりと確立させるための十分な「時間」です.それをシニアの研究者である教授陣は理解しているのでしょうか?そして,本当に大学の環境を良くするためには,組織が強い意志を持って,まず研究と教育に対するそれぞれのエキスパートを育て,さらにその人達が強いコネクションを持つよう束ねていくことが必要ではないでしょうか.従って,お金に関しては,少なくとも現在無駄に使われている研究の予算を減らし,教育,特に地方大学の存続のために,その分を費やすべきだと思っています.

いずれにしてもせっかく団塊の世代が残してくれた遺産を,恐ろしいスピードで食いつぶしそうですね.出来もしないのに出来たように装う「粉飾アピール」は団塊の世代の悪い癖ですが,残された人達がそこを真似してどうするの?という話です.皆さん,怪しい研究予算には手を出さず地道に研究に励みましょう.

COE,たった一度が命取り,ですよ.