研究者の聖地ボストンより研究を真面目に考える
暑い東京を離れ,ACSシンポジウム参加のためボストンに来ています.
自分自身,留学したのがイギリスだし,投稿論文を除いてはアメリカっていう国にあまり縁がないんです.アメリカの人を蹴落とす競争スタイルも好きではないですし.ということで,研究をやり始めてから14年くらい経つんですけれど,アメリカで開催される学会に初めての参加になります.
来てみて改めて思うのは,やっぱりアメリカっていう国はスケールが大きいですよね.全てを飲み込む力があると思います.プログラムを見ても,いつもJACSの論文で目にする研究者が,自分の投稿論文に鬼レフェリーと化しそうな有名研究者が,普通にその辺で講演しています.なるほど,このレベルの高さと懐の広さがアメリカの良さなんだと再認識しました.
ところで春先に申請していた助成金ですが,結果がでました.最初に申請していた「先端計測」というプログラムにめでたく採択され,これから3年半チームリーダーとして研究に勤しむ機会を与えられました.
他の可能性もあった中で,このプログラムを選択したのですが,それには大きな理由があります.このプログラムのみ,若手というくくりではなく,教授や准教授に混じっての選考だったからです.ここ数年の自分を取り巻く環境を冷静に見てみて,自分の研究の価値や意義,自分の研究に対する姿勢が,内容はおろか経験面でさえ,今の教授や准教授陣に劣るとは到底思えないんです.だから,どうしてもその中に入って研究費を獲得できる事を証明したいと思いました.自己満足で良いのです.同時に,前にも言っているかもしれませんが,研究における日本の選考システムは意外とフェアだということを再認識しました.年が少なくても,立場が助教でも,大事なところはきちんと正しく評価されています.
団塊の世代がリタイアした今,研究に真面目に取り組んでいる,と言える教授,准教授がいったいどのくらいいるでしょうか?残された遺産を食いつぶし,大して責任感も持たないまま,無意識にとはいえ若い世代の邪魔をし,自分の保守のみを考える.そんなスタッフが特にトップクラスの大学に多すぎる気がします.ずっと,研究室にのさばるゆとり世代の学生の問題ばかり考えてきましたが,最近本当の問題はその親のポンコツ世代にあったのだと,痛感しています.
少しずつですが,自分らの世代が研究を支えなくては,日本の研究界が崩壊するという危機感を持つようになりました.幸いにして,我らが先端計測事業のチームは今のところ,純粋に研究を追求できる絶好の人達のみで構成されています.もちろん僕は,硬派な体育会系からかけ離れた軟派系人間なので,「楽しみながら」「女の子と一緒に」の基本路線を捨てるつもりはさらさらありません.自信を持って望む研究チームの成果が本物になるよう,帰国後から早速真剣に取り組みます.