おまけ

2008 年の総括と 2009 年の抱負

2008.12.25

2008年はとにかく変化の年でした.そういえばご時世を一字で表す漢字も「変」でしたね.

まずはなんといっても所属研究室との完全なる離縁です.あり得ない事に,以前共同研究者だった人が研究費を不正使用したとの疑いを持たれ,大がかりな調査が入りました(多分現在でも調査中のはず).それ以前から,研究のことに関してもおかしな言動をしていたのですが,その領域まで踏み込んでいたとは思いませんでした.僕にとって痛恨なのは,科研費の基盤 S やら,特定やらの自分の研究費を不正に使っていたのはともかく,僕に交付されていた科研費若手スタートアップまでも,不正に処理した疑いがあるようです.

この一件があった後,よく調べてみると科研費の管理責任は交付されている本人にあるとのことなので,たとえ「上司から恫喝されて研究室に上納したような科研費」でも不正に使われたらその責任は僕もにありそうです.昨年度の科研費からは,その人の言動が不審になってきたことや秘書さんの助言(今から考えれば不正を臭わすような言い方でしたが,そのときは気づきませんでした.そもそも大学に所属する科学者として研究費の不正使用なんて晴天の霹靂です.)があったことにより,すべて僕の目の届くところで使っていますが,18 年度の科研費についてはどのように使われていたのか自信を持てません.

いずれにしろこの調査に対する最終報告を待っている段階なので,そのときが来たら僕自身もきちっと報告をしたいと思っています.この件に関して言えば,(僕に交付された科研費が結果的に不正使用されていたという点で)僕自身になんらかのペナルティーがあってもしかたない,と覚悟しています.いずれにせよ,研究者ぶった似非政治家とモラルのない研究環境にはほとほと懲りましたので,これからはもう一度襟を正し直して研究生活を送っていくつもりです.後に該当研究者とのこれまでの共著論文については,問題がなかったかどうか,その結果を報告いたします.

そういう経緯もあって,だいぶ知り合いの方々からは心配の声を頂いたのですが,少なくとも研究の方は,元・現学科長の温かいサポートもあって順調に進んでいるように思っています.特に,ナノ空間を探るための蛍光センサー(Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 4667)は,構想から 7 年を越す歳月をかけた新しい概念と夢一杯の研究成果です.また,細胞の温度変化測定(現在 JACS に投稿中)は2002年にスタートした蛍光性温度センサーに関する研究の一つの大きな目標でした.いずれもすぐに,とは思いませんが徐々にその概念や原理が広まっていくことを期待していますし,そうなるように来年以降もこれらの成果をベースに研究を進めていくつもりです.

研究室の事を言えば,「そんな環境なのにめげないねー」ってよく言われたんですけれど,僕にしてみればどこにめげる要素があるのか分からないです・・・そういう時にはいつもこういう趣旨の事を答えてます.「(究極的には)僕は投稿論文に対する審査コメントしか信用しない.だから身近な人にどんなに自分の研究をけなされても,自分の投稿論文に対する評価が高いうちは悩むこともない.非科学的な文句ばかり言って論文の投稿を邪魔してくる人間とは徹底的に戦う.そうこうしている間に相手の研究レベルがどんどん落ちていき,しまいにこうなった」と.あと,昔から「おまえの言うことは正論だけど,それは○○の環境(例えば日本)では通用しない」ってこれもまたよく言われてきたのですが,意外と(研究に関しては)正論だけ突き通してれば,何とかなるな,とも思ってます.むしろ汚れた組織に迎合すればその時点で研究者生命はアウト(大学教員は続けられますけれど).そういう意味では,この世界はクリーンかつピュアなんだと再確認しました.

僕にとって本当に頭を悩ませるのは上ではなく,むしろ下です.2008年は軋轢と結託の中,何とか一人無事に修士の学位を取っていきました.やっぱり,イギリスに残るという選択肢があった中で日本に帰ってきたのは,「学生を育てたい」っていう希望があったからなんです.最近は,本当の意味で芯の強い学生が少なくなってしまい,お眼鏡にかなう学生がほんのわずかなのはなんとも悲しい限りですが,こればかりは愚痴っているだけでは何も変わらないですね.

2009年は今一緒に研究を進めている大学院生も無事巣立っていく(はず)なので,春からは学生のつかないポスドク状態に逆戻りです.今更?って感じですけれど,この数年感じるのは「塞翁が馬」という事です.研究に対する意識がぶれない限り,まわりの環境が変わっても,もしくは変わらなくても,自分次第でどうにでも先に進めるような気がします.

なんで2009年は,今の自分のレベルで研究を再追求してみるつもりです.一言では「挑戦」.まあいつもそんなことを言っている(笑)のですが,結局挑戦し続ける事でしか到達できない領域ってあると思うんですよね.なんだかんだ言っても学生がいなくなっちゃうのは寂しいですけれど,これも「学生に時間を使わなくて済む」と捉えてすべての時間を純粋に自分のために使ってみようと思ってます(もちろん学生の指導も自分のためになる部分はあるんですけれど研究 10 では無いですよね.配分は研究 5 教育 5 くらいになる気がします).1 年なんて研究の世界では「あっ」という間の期間だし,そんな短期間に目に見える成長を遂げられる訳ではないですけれど,その一歩が踏み出せなければ,結局何も変わらず(むしろ退化しながら?)年を取っていくことになるのだし.それはないなぁ.待ってろ NPG .

いずれにしても,面白い研究成果を出せるよう,リフレッシュして頑張ります!