GPS機材を準備

RTKとCLAS

ここではGPSの大まかな仕組みについて説明します。

測量や自動運転で使用される誤差が数cmの高精度な位置情報を得るにはRTK方式とCLAS方式があります。
従来から行われているのがRTK方式で、観測地点の移動局の他に基準局が必要です。
基準局の観測データを移動局に送る事で水平方向の誤差が2~3cmで得る事ができます。

CLAS(Centimeter Level Augmentation Service/センチメーター級測位補強サービス)は 国土地理院が整備する電子基準点のデータを利用して補正情報を計算し、それを「みちびき」を経由して測位補強情報を受信します。
精度は水平方向の誤差が6~12cmとなります。

RTK方式は基準局のデータを移動局が受け取る通信機能(インターネットや無線)が必要になりますが、CLAS方式では「みちびき」から受信するので単独で運用ができるメリットがあります。ただし、やや精度が落ちますが農業機械の自動操縦には問題は無いと考えています。

今回はGPS衛星「みちびき」を利用したCLAS方式を使います。

ユーブロックス記事

ユーブロックス、準天頂衛星みちびき対応新製品で数センチの誤差の位置精度を安価に実現、
日本向けGNSS補強サービス・レシーバーで農機具やドローンまでを支援
(2021年11月24日、ユーブロックスジャパン株式会社)
https://www.dreamnews.jp/press/0000248484/

GPSから受信した信号から緯度・経度を得るモジュール(ZED-F9P)と
「みちびき」から発信されるCLASデータを受信するモジュール(NEO-D9C)の2つが1セットになります。

入手方法

(株)ジオセンス
https://www.geosense.co.jp/

メニューから「ショップ」を選択
ジオセンス ヤフー店 で購入できます。
○ D9CX1:みちびき CLAS L6受信用 NEO-D9C開発ボード
○ F9PX1:ZED-F9P RTKシステム開発用ボード 
○ アンテナについてはジオセンスさんのホームページを参考にして選んでください。
※ アンテナを固定する器具も必要かもしれません。

別途
○ PCとモジュール接続用USBケーブル(2本)。モジュール側(Micro USB Type-B)-(USB Type-A)PC側

基本的な情報

(株)ジオセンスさんのホームページに全て記載されています。
特に重要なページはメニュー「製品情報→F9PX1使用説明書」、「製品情報→D9CX1使用説明書」です。

ジオセンスさんの製品名があるのですが、D9CX1はNEO-D9C、F9PX1はZED-F9Pと呼ぶこととします。

※お願い
私の記事での不明な点をジオセンスさんに問い合わせる事は絶対にしないでください。
ジオセンスさんの迷惑になります。

u-centerについての説明
ユーブロックス社製のモジュールNEO-D9CもZED-F9Pも小さな独立したコンピュータが入っています。
電源を入れると勝手にプログラムが動き始めます。
NEO-D9CはCLAS補正データを出力しようとするし、ZED-F9Pは経度・緯度のデータを出力しようとします。
もし、アンテナに接続されていたら各モジュールからはデータが垂れ流し状態です。

これらのモジュールから出力されたデータを受け止めてモニタ表示するPC用プログラムがユーブロックス社製のu-centerです。
ZED-F9Pから出力される経度・緯度の情報や、衛星の状態などをモニターすることができます。
また、モジュールに対して観測の頻度(初期値は1秒毎)や受信する衛星の種類の設定などを行うこともできます。

アンテナ、2つのモジュール、USBケーブルが準備できたら次の作業に入ります。

1.WindowsPCにu-centerのプログラムをインストール

ジオセンスさんのホームページにインストール方法が書かれています。
https://www.geosense.co.jp/techinfo/zed-f9p_setting/

「u-centerのインストール」を参考にしてインストールまで行ってください。
できれば、ノートパソコンにu-centerをインストールする事をお勧めします。外へ持ち出せて便利です。
デスクトップ上にショートカットを作成しておくと便利です。

2.アンテナとNEO-D9C、ZED-F9Pのモジュールを接続する

ジオセンスさん「D9CX1使用説明書」を参考にしてください。
https://www.geosense.co.jp/d9cx1_manual/

アンテナのケーブルをNEO-D9Cのコネクタに接続します。
NEO-D9Cから出ている短いケーブルをZED-F9Pのコネクタに接続します。
それぞれのモジュールのマイクロUSB端子にUSBケーブルを差し込みます。

この時に、ZED-F9PのUSBケーブルのPC側に印を付けておいてください。
また、WindowsPCのUSBソケットを2つ決めて付箋を貼り付けます。
F9P、D9Cと記入しF9Pを○で囲みます。

3.各モジュールをWindowsPCに接続した時のポート名を確認する

WindowsPCのスタートボタンを右クリックしてメニューからデバイスマネージャーを選びます。(Windows10の場合)
デバイスマネージャーの画面が表示された状態で、
ZED-F9Pの印のあるUSBケーブルをWindowsPCの左のF9Pのソケットに差し込みます。
PCが反応して、デバイスマネージャーのポート(COMとLPT)を開くと
USBシリアルデバイス(COM3) が表示されました。(PCによって数字は変わります。)
付箋のF9Pの下に3と記入します。
続けて、NEO-D9CのUSBケーブルをWindowsPCの右のD9Cのソケットに差し込みます。
PCが反応して、USBシリアルデバイス(COM8)が増えました。(PCによって数字は変わります。)
付箋のD9Cの下に8と記入します。

これ以降は常に同じUSBのソケットに同じモジュールのコネクタを接続してください。
デバイスマネージャーは閉じてください。

WindowsPCのUSBソケット(差込口)毎にCOM番号が割り当てられています。どの番号が割り振られているかはPCによって異なります。
u-centerのプログラムはこのCOM番号でどのUSBケーブルに接続されているモジュールと通信するかを決めます。
混乱しないように付箋を見て常に同じUSBソケットに接続するようにしましょう。

4.ZED-F9Pのバージョン確認

u-centerを起動します。
メニューのReceiver→Connection→COM3(F9P)を選択
既にUSBケーブルで接続されているのでZED-F9Pがu-centerと通信を始めます。


u-centerのウィンドウの下部中央やや右の位置に
下部のCOM3 9600 が緑色に点滅していると思います。
初期値は1秒毎にデータを受信しているので1秒毎に点滅します。

ZED-F9Pの情報を確認します。(通信状態でないと情報は読めません。)
メニューのView→Messages View→UBX→MON→VER

FWVER=HPG 1.32

ここで一旦モジュールを停止します

u-centerのメニュー
Receiver→Connection→Disconnect
これによりZED-F9Pとu-centerの通信を遮断しました。
ZED-F9PのUSBコネクタをPCから引き抜いてください。

USBメモリーの時のような「安全な取り外し」はありません。
その代わりに、必ず通信をDisconnect(切断する)してから引き抜いてください。

NEO-D9Cはu-centerと通信を開始していないので、そのまま引き抜いてください。

5.ZED-F9Pのファームウェア更新

もし、バージョンが1.30より小さい場合は最新の状態にバージョンアップしてください。
ジオセンスさんのホームページを参考にしてください。
https://www.geosense.co.jp/tech_firmware_verup/

NEO-D9Cのファームウェアの更新は(2023/07時点では)ないようです。
「neo-d9c firmware update」で検索すると、NEO-D9C Integration manualのPDFが見つかります。
その中を検索すると「3.6 Firmware upload」の項目があり、翻訳ソフトによると「u-bloxにお問い合わせください。」となっています。

まとめ

〇 GPSアンテナ、NEO-D9Cモジュール、ZED-F9Pモジュールの入手
〇 u-centerプログラムをインストール
〇 ZED-F9Pのファームウェアの更新

これで、GPS衛星を観測するための準備ができました。
次回はNEO-D9CからCLAS補正データをZED-F9Pへ送ります。