軌跡~-_科学と旅_-~

小中学生対象のロボット競技 世界大会レポート

〜 FLL Open Asian Championship 2008 〜

Report of a World Robot Contest for Children
- FLL Open Asian Championship 2008 -


テクニカル・プレゼンテーション

 FLLの対象とするロボットは,基本的には車両型であるが,コントローラ,モータやセンサの種類と数等,使用部品に一定の条件が課されている.各チームは,光センサ等を駆使しつつ,ミッション攻略戦略に応じた最適なロボットを製作する.全てのミッションを遂行可能な,人間の手のような汎用のロボットを作ることはできないので,ミッションの内容に応じた操作機構(アタッチメント)を複数製作し,ミッションごとに着脱することになる.コントローラにダウンロードするプログラムの開発環境としては,ROBOLAB,LabVIEWという2種のツールが用意されている.プログラムは,フローチャートのように,用意された機能ブロック(アイコン)を線で結び,必要なパラメータ等を設定することにより作成する.

 テクニカル・プレゼンテーションでは,自分たちの製作したロボットの構造・デザインやプログラム,ミッション攻略の戦略がいかに優れたものであるかをアピールする.

 プレゼンテーションの形態はチームに任されており,画用紙等に描いた図面やPowerPointのスライドを用いた一般的なものや実際にロボットを動かすもの,それらを組み合わせたもの等,様々であった.また,PC上の作成プログラムを表示して見せるチームもあった.テクニカル・プレゼンテーションの模様を図-7に示す.


マインドストームには,従来型のRCXと高性能版のNXTの2つのタイプがあるが,ほとんどのチームは2006年に発表されたNXTタイプを使用していた.ロボットはまさに千差万別であり,それぞれのチームの工夫が窺えた.特に,アタッチメントには,ばね仕掛けで子ロボットが飛び出すものや,折り畳んだアームを瞬時に伸ばすもの等,ミッションの攻略時間短縮を目的としたユニークなものがあった.センサについても,ほとんど使用しないロボットもあれば,前方の物体検出にNXTタイプから装備された超音波センサを用いるロボットもあった.プログラムに関しては,スタート時のタッチセンサのオン/オフを検知して動作するサブプログラムを選択するものが多かったが,これは,切替え時間の短縮に有効である.また,中には,4つのミッションを1回の走行で遂行するようにしたものも見られたが,その実現にはロボットの走行距離や方向転回角度の制御にかなりの精度が要求され,高度なプログラムといえる.

 テクニカル・プレゼンテーションの審査項目・基準は,表-1に示す通りである.各項目につき,Excellent,Good,Fair,Needs Improvementの4段階で評価する.各審査項目における4つの評価段階の基準が定められており,たとえば,表-1の”Locomotion and Navigation”の「走行距離の正確さ」については,
- Excellent:規定距離を効率よく走行
- Good:多くの場合に規定距離を走行
- Fair:時々規定距離を走行
- Needs Improvement:規定距離を繰り返し走行することは困難
となっている.すなわち,審査員はマトリクスシートをチェックすることになる.プレゼンテーションで評価するに十分な説明が得られなかった場合には,それを引き出すための質問が行われた.質問文のサンプルはあらかじめ審査員に示されており,たとえば,次のようなものである:

・最も困難なミッションはどれであり,それをどのように解決したか?
・あなた方のチームで最もユニークと考えている部分はどこか?
・どのようなセンサを用いているか?
・コーチはどのような手助けをしてくれたか?

 プレゼンテーションで優れていると判断された複数のチームについて,翌日のロボット競技の内容を確認することにより,実際に説明の通りに動作するかがチェックされた.この時,できる限り,他のグループに属するチームのロボット競技も確認された.最終評価は,上記審査結果の数値化はなされず,全審査員の合議により行われた.

 以上の結果として,3種のAwardが次の優秀チームに与えられた:

・Technical Award: Lego Extremチーム(ノルウェー)
・Robot Dependability Award:奈良教育大学付属中学チーム
・Innovative Design Award: 7 de sec+2チーム(スペイン)


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図-7 テクニカル・プレゼンテーションの模様
図-7 テクニカル・プレゼンテーションの模様


表-1 テクニカル・プレゼンテーションの審査項目・基準