正常の性周期は月に一つの成熟卵胞ができて卵を一つ排卵させますが、その制御が上手にできないのが多嚢胞性卵巣 (PCO) です。

典型例では超音波検査で左の写真のような「ネックレスサイン」が認められます。

小さい未成熟卵胞が真珠のネックレスのように卵巣周辺に観察されます。

 これは卵胞の皮が厚く固くなることによって起こります。したがって排卵率はかなり低下します。黄体化非破裂卵胞 (LUF) の発生率も高くなります。

LHの分泌異常や糖代謝の異常とも関係しており、病態は大変複雑です。

この図は日本オルガノン・Evaluation of Fertility(IVF news編集委員会監修)のものを引用させていただきました。


参考までに多嚢胞性卵巣(症候群)の診断基準をあげておきます。

 

(日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会,2007)


I. 月経異常
II. 多嚢胞性卵巣
III. 血中男性ホルモン高値 または LH基礎値高値かつFSH基礎値正常

注1) IからIIIの全てを満たす場合を多嚢胞性卵巣症候群とする.
注2) 月経異常は無月経,稀発月経,無排卵周期症のいずれかとする.
注3) 多嚢胞性卵巣は,超音波断層検査で両側卵巣に多数の小卵胞がみられ,少なくとも一方の卵巣で2〜9mmの小卵胞が10個以上繞存在するものとする.
注4) 内分泌検査は,排卵誘発薬や女性ホルモン薬を投与していない時期に1cm以上の卵胞が存在しないことを確認のうえで行う.また,月経または消退出血から10日目までの時期は高LHの検出率が低い事に留意する.
注5) 男性ホルモン高値は,テストステロン,遊離テストステロンまたはアンドロステンジオンのいれかを用い,各測定系の正常範囲上限を超えるものとする.
注6) LH高値の判定は,スパック―Sによる測定ではLH≧7mIU/ml(正常女性の平均値+1×標準偏差)かつ LH≧FSHとし,肥満例(BMI≧25)ではLH ≧ FSHのみでも可とする.他の測定系による測定値は,スパック―Sとの相違を考慮して判定する.
注7) クッシング症候群,副腎酵素異常,体重減少性無月経の回復期など,本症候群と類似の病態を示すものを除外する.