中国御伽草子 西遊記

西遊記 第一章解説

(*1)東勝神州
仏教では須弥山<しゅみせん>という巨大な山を中心に世界が成っており、回廊状に7つの山脈が連なっている。その外側の東西南北の海に大陸が浮かんでいる。東勝神州の他、西牛貨州<さいごけしゅう>、南贍部州<なんせんぶしゅう>、北倶盧州<ほっくるしゅう>がある。地図はこちら

(*2)兄弟ザル
西遊記にはこの兄弟ザルや名称を持ったサルは登場しない。以降、花果山において固有名詞を持つサルは創作である。よって、原作にはないエピソードが多数ある。

(*3)祟り
祟りというのは創作で、岩山のてっぺんにある石は天地の霊気を受けて卵となり、風を受けて一匹のサルとなった。

(*4)石ザル
なぜサルをカタカナで書いたのか。中国にはサルを表す漢字が二つある。「猿」と「猴」で、石ザル、つまり悟空を表しているのが日本に馴染みのない「猴」だ。これはニホンザルのようなサルのことをいい、「猿」はおもにテナガザルを示すそうである。挿し絵を見てもわかるが、悟空は人間と同じくらいの手足の長さをしている。

(*5)サルの仲間
原作では石ザルはサルの群に友好的に迎えられ、滝壺を見つけたとき、ここに飛び込めたら大王を名乗ることができるという取り決めのもとに飛び込んだ。

(*6)花果山福地 水簾洞洞天
「福地」や「洞天」とは道教の世界観で、上天から使わされた者が治める場所。中国では仏教の入ってくる前からある、道教や儒教の思想もあり、西遊記でもその世界観が多く登場する。

(*7)美猴王
中国で「猴」という字はニホンザルのような手の短いサルをさす。ちなみに、石ザルの毛並みだが、金色をしているというような描写はどこにもないそうだ。

(*8)閻浮世界
南閻浮提の略で、仏教でいう人間世界。四大部州の南贍部州がこれにあたる。

(*9)さる・漢字表記
さる

(*10)てんこうすう・漢字表記
てんこうすう

(*11)ちさつすう・漢字表記
ちさつすう

(*12)印を結ぶ
密教に印契<いんげい>という言葉があり、印を結ぶともいう。両手の指10本で様々な形で表す仏の象徴。仏像の手といったらわかりやすいだろうか。斛斗雲を呼ぶときにどのような印を結ぶのか、残念ながらわからない。

(*13)ヤォとサイショウ
水簾洞を荒らされた悟空は攻め入り、身外身の法で小猿を操り、魔王の刀で一刀両断にしたが、ヤォとサイショウのエピソードは創作である。

(*14)閻魔大王
このとき悟空を森羅殿で迎えたのは冥界の十王だった。閻魔とはそのうちのひとりで、閻羅王のこと。

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