食品需要予測の方法

 『家計調査』を資料として、最も近い時点から1年先までの、食品別消費を四半期別に予測してみました(以下では平成17年第1四半期~平成17年第4四半期を例にとって説明します)。値はすべて1人当たりにしてありますから、これは家計の1人当たり食品購入計画と考えてください。この購入計画を説明するものとしては、経済条件に家計の実質所得と食品の相対価格、気象条件に気温と台風上陸回数、嗜好条件に消費者の習慣と心理を考慮しました。

 気象条件の食料消費への影響は、食料や外食を全体としてみた場合や各個別品目でも、かなりの品目に統計的にある程度の値が検出されます。

 消費習慣は過去のどの時期を根拠にして購入しているかに着眼してみました。消費者は一般に1年(4期)前の自己消費水準を維持しようとする傾向があります。また、消費水準のバランスをとるため、1期前と5期前(1年前のさらに1期前)の水準を考慮に入れているようです。これは消費者が意識的にそうしているとは思いませんが、資料を統計的に処理すると、ほとんどの食料消費について以上のような期間配慮のパターンが摘出されます。

 その配慮が上記3期間より多い期間にわたる場合、消費者が「季節的平準化」をしているのだと解釈しました。また、特定季節だけを配慮している場合は「季節特化」をしているとみました。しかし、いずれにせよ、その効果は依存している時期の水準より高くなるということはありません。

 消費者心理は経済条件への反応力(弾力性)で推定しました。それがプラスでもマイナスでも1以上の値をとるときは、その食品の購入には経済条件を超えた人気の強弱や価格への関心度の高低が伺えると考えました。

 予測に当たっては、気象条件は予報がよほど確実でない限り、1年先の気象を平年並みとみなしました。価格も確かな見通しのない限り、1年先の価格を対前年同期値に固定しました。これらの要因を操作することはできないわけではありませんが、中途半端な将来への判断はかえって事態を混乱させますので、以上のような処置をとりました。

 実質所得については、所得の資料が『家計調査』全世帯からは得られませんので、『家計調査』の「消費支出」で代用してあります。その予測値は『国民経済計算』の家計最終消費支出(実質額)の予測に関係させて求めています。

 今回は『国民経済計算』の値が予測全期間でわずかに上昇しているにもかかわらず、『家計調査』の平成17年第1、第2、第3四半期の「消費支出」は実質額ではほとんど横ばいで、ほんのわずか低下気味です。第4四半期もほとんど横ばいですが、わずかに上昇しています。これは政府がGDPを修正する前の値を用いても、同じような結果になっています。家計の「消費支出」には今回はあまり大きな変動は期待できないようです。

 食品の購入が実質所得と平行してなされるなら、食品購入計画も4期間とも横ばい、ないし微小変化をするはずですが、それはその食品の所得に対する反応力や以上述べた諸要因によって違ってきますから、必ずしも所得と同じ動きをするとは限りません。

 さて、家計の1人当たり購入計画を対前年同期比でみて、それに基づいて見通しを立ててみました。食料全体は習慣に支配されることが多く、経済条件への反応力があまり大きくないこともあって、平成17年第1、第2、第3、第4四半期ともわずかに減少します(上記グラフ)。つまり、平成17年は食品価格を前年並みとみれば、所得の増減に関係なく、食料は全体としてわずかに減少します。

食料システム