おだまき


もう一人の大好きな詩人は中原中也。立原とは正反対といってもいい程、違いますが・・・
どちらも好きなんです

立原は東京生まれ。東大出の優等生。中也は家が医者で遅く出来た子供で、放蕩息子。
年は中也の方が上で、二人が遭遇した時、道造さんは中也に「からまれた」そうです。
さもありなん




汚れつちまつた悲しみに・・・・・・  中原中也


汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる

汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の皮衣
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる 
                  
                 汚れつちまつた悲しみは
                 なにのぞむなくねがふなく
                 汚れつちまつた悲しみは
                 倦怠のうちに死を夢む
        
                 汚れつちまつた悲しみに
                 いたいたしくも怖気づき
                 汚れつちまつた悲しみに
                 なすところもなく日は暮れる

     

生ひ立ちの歌


  T

    幼 年 時

私の上に降る雪は
真綿のやうでありました
 
     少 年 時

私の上に降る雪は
霙(みぞれ)のやうでありました

     十七ー十九

私の上に降る雪は
霰(あられ)のように散りました

     二十ー二十二

私に上に降る雪は
雹(ひょう)であるかと思われた

     二十三

私の上に降る雪は
ひどい吹雪とみえました

     二十四

私の上に降る雪は
いとしめやかになりました・・・・・



  U

私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差し伸べて降りました

私の上に降る雪は
熱い額に落ちもくる
涙のようでありました

私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生したいと祈りました

私の上に降る雪は
いと貞潔でありました



中也のお母さんは,新聞に短歌を投稿していましたが、
ある時、自分のより先に中也のが載ったと、悔しがっていました。
なんてかわいい人なんだろうと、私は思いました


中也のお母さんの聞き書き『私の上に降る雪は・・』という本に書いてありました。
表紙に、中也によく似た面立ちで、小柄で楚々とした可愛らしい和服姿の母上の写真がありましたが、
その本が今見つかりません。





サーカス



幾時代かがありまして
     茶色い戦争ありました

幾時代かがありまして
    冬は疾風吹きました

幾時代かがありまして
        今夜此処での一と殷盛り
                     今夜此処での一と殷盛り 

サーカス小屋は高い梁
        そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ

頭倒さに手を垂れて
        汚れ木綿の屋根のもと
       ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

それの近くの白い灯が
         安価いリボンと息を吐き

観客様はみな鰯
          咽喉が鳴ります牡蠣殻と
        ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

    
   屋外は真ッ闇 闇の闇
  夜は劫々と更けまする
     落下傘奴のノスタルヂアと
         ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん


          



      
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