【 第3期拍手SS 】
― りんちゃんの朝 ―
―――― お空が白くなって、お日様の光が差してくる。
顔や足の先。
まだ朝早いから周りは冷たいんだけど、お日様の光は暖かくて。
冷たいけど、暖かい。
起きなきゃいけないのは判ってるんだけど……
でも、りん とってもくたびれちゃって。
身体のあちこちがひりひりするし、りんの真ん中はまだ熱くて痛いし。
腰から下の骨なんて、融けてなくなっちゃったみたい。
それに……
もこもこはとっても柔らかくて気持ち良いし。
ひんやりした白銀の髪も、あったかいこの腕も。
だから……
りん、もうちょっとこのまま眠っててもいい?
生まれたてのお日様と綺麗な朝の空気と。
冷たくて暖かい、この腕の中で。
ね? 殺生丸様 ――――
― 陽 光 ―
―――― りん
低くて綺麗な声がりんを呼んでる。
りんは半分、夢見てるみたい。
気持ち良くて、もっとその声を聞きたかったから……
眠ったふりをしちゃった。
そうしたら……
「…りん」
もう、一度 呼んでくれた。
りんは嬉しくて嬉しくて、眠ったふりを続けて―――
「りん」
今度はりんの耳の直ぐ側で、吐息がかかるくらいに。
りんの耳、真っ赤。
りんのほっぺ、真っ赤。
身体中、茹でた蛸みたいに真っ赤か。
りん…、身体が熱い……
あーっっ!!
殺生丸様、今 笑った!!
寝たふりしてたからお顔は見えなかったけど、絶対今、笑った!
りん、判るもん!!
そう思っていたら……
ころん。
りんが包まっていたもこもこを剥ぎ取られて、裸のまんまお日様の光の下。
「いつまで、そうしている」
他の人が聞いたらきっと判らないだろうけど、殺生丸様、お声も笑ってる。
「えへへっv だって今日はすごく気持ち良い日なんだよ!」
この時あたしには、どうして殺生丸様が笑ってらっしゃるか判らなかったんだけど……
「そうか。ならば……」
お日様はもう、随分高くなってたんだけど。
金と白銀(ぎん)
りんを包みこむ、『光』――――
りんは……
溺れる
この光に
一つに、溶ける。
この【光】に――――
― 花 抱 ―
細い指先 光に融ける
野の花のように 小さきもの
刹那 刹那に 花開き
切な 切なに 散ってゆく
散るが定めの 花ならば
この腕の中で 散ってゆけ
二度と咲かぬ その時まで
この腕で お前を抱きしめる
小さきものよ
光に還るものよ ――――
― 薫 風 ―
暖かい風。
春の昼下がり。
柔らかな、『陽−ひ−』の光。
「良い風ですなぁ」
眩しい空に手を翳し、『陽光−ひかり−』色の風を身に受ける。
「気持ち良いんだろうね。七宝、ぐっすり眠っちゃってるよ」
弥勒の懐を寝床に、すうすうと寝息を立てている七宝。
「……本当に。七宝ちゃんが眠っていて丁度良かったわ。『あれ』は小さい子に見せるには、教育上害があるもの!!」
険を含んだ、かごめの声。
無理やり引っ張ってこられて、居心地悪さ気な犬夜叉。
その顔には……。
「ほんっとうに、お前は隠し事が下手ですね。顔にそのまんま出てますよ」
「うるせーっっ!! 放っとけ!」
弥勒に言われ、ますます顔を赤くする。
こーゆー場合、犬夜叉が顔を赤くして行きたがらない方向へ方向へと進めば、出くわす確率は大で。
「……鼻が利き過ぎるのも考え物ですね」
「ふん!!」
風下から、八つの瞳がみつめるものは
自然の事象のようにそこにある、この世ならざる妖と人の子の姿。
薫風運ぶ『花』の香は、野の花、桜ばかりにあらず
今、咲き誇るこの小さきものもまた、『花』なりと
― さつき ―
……無粋な奴等。
『他人−ひと−』の濡れ場なぞ覗いて、何が楽しい。
一際不快な視線は、あの奇天烈な巫女のもの。
他の奴等のも、下衆で不快ではあるが。
さっさと失せろ!
りんが目覚めるその前に。
すぐにでも、お前等を引き裂く事は容易い事。
だが今は、この腕はりんのもの。
りんの眠りを妨げる事は、今はすまい。
殺気を込めて、風下を睨み付ける
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