2007年 8月18日 長野県
太田切川
(C&R区間はちょっとだけ)
出撃!
前回、春に訪れた時は寒波襲来でふざけた天候に見舞われ、大敗退した太田切川。この川への遠征は、ここ数年、我が家の夏休み定番コースと化しつつある。
釣れなくったって気にならない。美味しい空気、抜群に綺麗な水が流れる太田切川、雄大な駒ケ岳、天の川だって見える夜空、名物のソースカツ丼、のど越しと香り抜群の地ビール、濃厚なすずらん高原アイスクリーム、泉質抜群の早太郎温泉、桃狩り、五平餅、そばetc...。
釣りはメインでなくたっていい。
ここには、家族旅行で楽しめる全ての要素が詰まっている。
ほんの少しの時間、家族がまだ寝ている早朝にこっそり抜け出し、2時間もロッドを振れたら十分だ・・・・。
・・・だったのは今日まで。
やってやる・・俺はやってやるぞ・・・。
家族が増えた。子供が生まれた。
学生時代、どんな川の最深部でも一人で突き進んだ無謀な勇気は影を潜め、ここ最近釣りに入る川は近場か、山が深くとも入渓しやすい人気河川ばかり。
もういいだろう? 男は絶えず挑戦と冒険を続ける生き物だ。止めたって俺は行くぜ?そんなに心配するなよ。
死亡保険は○千万に増額してあるからね(汗)
そんなわけで、暗殺の恐怖に怯える管理人が(←オイ)目指したのは太田切川C&R区間の上流部。
ロープウェイや観光バスが通っていて交通の便は良さそうだけど、さすがに2000m級の雄峰から流れる渓は甘くない。事前に脱渓ルート、予想される時間はしっかりシミュレーション。
朝の4時50分。入渓ポイントを目指して出発。山添の道をひたすら歩く・歩く・歩く・歩く・歩く・歩く・歩く・歩く・・・。
川が遥か下にチラリと見える入渓ポイントから、草で埋もれた道に突入。携帯電話が圏外になり、さらに歩き続ける。ようやく川に降り立つ。
この時点で既に5時半。「9時半までには戻る」という約束なので、モタモタしていられない。早速釣り開始。
挨拶代わりにパラシュートアント#16を結ぶ。管理人が(三重県の川では)最も信頼を寄せる夏の定番パターンだ。
即座に1匹。17cm程度だが、ヒレは当然ビシッと伸びた美形。
川幅の広いC&R区間と異なり、上流部の渓相は三重の川と大差ない。この選択で当たっていると信じていた。
さらに1匹。・・・あれ?おかしいな。これ程歩いたにもかかわらず、顔を出すのは決して大きいとは言えないサイズばかり。
フライのくわえ方、出かたを見る限りそれほどスレている印象は無い。
とすると・・三重県人からは想像できない、「デカイフライの方が反応が良い」状況なのだろうか。#12のパラシュートをつまみ出す。
フライを流すと、明らかに状況一変。
魚が反応する回数が格段に増え、デカイ影も底から浮上してくる。こいつらが待ってるご馳走は、アリではなくて大型の陸生昆虫のようだ。
同サイズを何匹か追加し、なんとなく状況は掴めた。時間があまり無いので、このフライ1本で一気に釣りあがる事にした。
え?フライは何かって?
・・・。
・・・・・・・・。
イワイ・イワナT(汗)
ざわざわざわ・・・
え?お前それでいいのかって?
・・・いや・・・・別にいいんじゃないですか? たかがフライですよ。
それに、大人になるって言うのは、そういうことなんだよ(どういうことだよ)。
ざわざわざわ・・・
( ̄◆ ̄;)ウッセェナァ!(←こら)
ハンピーとかフォームビートルでも良かったんだけどね。コロッとしたフライって、大抵フッキングが良くないじゃん?巻くのもオーバーボディかぶせる手順が面倒じゃん?
このフライ、ピーコックをグルグル巻きつけ、その上からフロス巻くだけで(※上の写真のフライは、フロスではなくサビキ用の「ウィリー」を巻いてある。強度重視)それなりにボリューム感が出るし、大量生産も楽なんですわ。
パターンUかVかWか知らんが、確かにTでも釣れますね。人気のUはもっと釣れるんけ?半沈みのテレストリアル・パターンとしては良く出来てますな。ドラグも掛かりにくい。
ところで最近、テレビで先生の御姿を久々に見たけど(北海道での釣り)、老けたねー。しかも明らかに腕が落ちてる。足元に速い流れがあっても全くメンディングしないってどうなん?
最近は海やらバス釣ってばかりだから、お忘れになられたか?(もしくはボケた?)
いずれにせよ、流行るだけあってフライの実力は本物ですわ。釣れるという事実は認めるしかありません。
フライフィッシャーではなく、タイヤーとして専念していれば、もっと長く活躍できたかもね(既に過去の人扱い)。
釣り上がりでフライパターンに悩んでしまうとペースが落ちる。パターンが決まった以上、条件の悪い場所は一気に飛ばし、好ポイントだけを叩いて行く。
所々に新しい崖崩れの後。左岸には近寄れない。
テンポ良く釣り上がる。アベレージはまだ10cm台だが、大きな影が時折走る。
4m四方の小さなプール状のポイント。手前に1〜2投して小型がいない事を確認。魚が最も付いていそうなポイントにフライを落とす。
ふわっと浮上した影が、ゆっくりフライをくわえた。
グワングワンとした手応え。沈んでいこうとする魚を強引に浮かせる。
20ジャストぐらいか?綺麗なイワナ。
徐々に落差も出てきて、いよいよ本格的な山岳渓流の様相となってきた。ここからが核心ポイント。フライ・ティペットをチェックし、いざ行かん。パラダイスはすぐそこだ。
ふと、砂地に目がいった。
!! え!? 足跡??
・・・マジかよ。こんな所で、この時間でも先行者との戦いかよ・・・。
ん?この足跡、つま先だけで歩いたのか?それにしても変わったウェーダーだな。
先端に爪がはえてるぞ(笑)
あーはいはい。左の茂みから出てきて・・この砂地を歩いて・・・あ、ここで滑ってやがる(笑)・・で、この浅瀬から川の反対側へ行ったのね。
カランカランガランカンカンカンカランガランカランガラン!!!
必死で熊避け鈴を鳴らし、恐い人間様がやって来たことをアピール。
「カランカラン、オーイ、ここだよー。カランカラン、僕はここにいるよー。カラカラン」(呼んでいる訳ではない)
装備品の中に、ホイッスルを追加する事を固く誓う。
大きさは12cm四方。実家の馬鹿犬の足跡がこれの3分の2ぐらいの大きさで、体重25kg。そうすると、40〜50kgの熊か?襲われたら無理だ。日本刀でも装備してなけりゃ勝てねーだろうな。
さて、俺は行かねばならぬのか。
先程までパラダイスへの入口に見えた前方の風景。険しすぎず、木に囲まれて薄暗く、大小落ち込みの続く好ポイント。
今となっては熊の巣の入口にしか見えん。
今いる場所は、入渓ポイントからも、脱渓予定ポイントからも遠い地点。もう行くしかない。男は絶えず挑戦と冒険を続ける生き物なんだよ(←本日2回目)。
何匹か17〜8cmクラスを追加し、少し水深のあるポイントの手前に到着。核心ポイントはちょうど岩の影になっていて見えない。つまり、魚からもコチラは見えないはず。
フライをポイント上流に落とし、上流側へメンディング。ゆっくり流れるフライが岩の陰に差し掛かる。顔を少しずつ出しながら、フライを目で追う。
バシャッ!
やはりいた。ロッドを立てると重い手応え。下流に走りそうなのを誘導しランディング・・・場所がねぇ(汗)
岩によじ登り、魚を浮かせ、オラァ!一気にごぼう抜き!
24cm。ぷりぷりの美形。よく8Xで引き抜けたもんだ。口元刺さったイワイイワナが良く見えるねー。
ここから少しだけ渓相が険しくなってきた。キャストの前にランディング場所を確認し、どの岩の上を移動して行くか事前にシミュレーション。
不安定な体勢・足場で魚を掛けても、結局何も出来ない。
ヒレの大きい20cm。三重県で釣れたら赤飯炊く大きさだけど、縮小画像扱い。なんでか?こいつは邪魔だから釣っただけ。
山肌に沿って流れるポイント、上の写真の岩魚が一番手前に定位していた。
その5mほど奥で、明らかにデカイ影がユラユラ。不用意に近付けば、手前の岩魚が走って気付かれる。
まずは手前の岩魚。フライを1m上流にキャストし、左に大きくリーチキャスト・ラインの着水を回避。
今までの状況から、ナチュラルに流れればガッチリ食うはず。
ためらいなくフライをくわえた魚。ロッドを水面ギリギリに倒し、水面で暴れないよう押さえ込みながらポイントから引っぺがす。すぐさま下流へリリース。
さてと。ティペットの強度を確認し、フライの水気を切って再度ドレッシング。
こういった状況、大抵は一発で決めなければ天を仰ぐだけ。魚の左斜め上流1mを狙い、フライをキャスト。
フライが流れ始める。
魚の真上あたりに来た瞬間、フワッと魚が浮上。しかし、追いつかずそのままフライは流れきってしまった。
これは・・釣れるだろ。
食わなかったというより、直前まで気付かなかった感じ。多分、もっと大きな餌を待っていたのだろう。
一呼吸置いて、同じ場所にフライを落とす。
その魚は、ゆっくり、ためらいなくフライを吸い込んだ。
ギリギリギリ・・・。今までの魚とは、明らかに一クラス上のパワー。じわじわと底に沈んで行く。ゴンゴンゴン。頭を振られるたびに、切れるのではないかと不安がよぎる。
岩の隙間に潜りこまれそうになるのを何度か回避し。慎重に寄せる。
ようやくネットイン。
尺
観念したように動かない。コレだけでかくなるのに、天災・人災・生存競争、幾多の試練を乗り越えてきたことだろう。
堂々として天晴れな奴。
でんと構えた態度に甘え、メジャーで計測。31cm。久々に納得の尺岩魚。
フライを外すと、慌てる様子もなくゆっくりと泳ぎだし、深みに帰っていった。しかし、スゲー落ち着きよう。この後自分がどうなるか(逃がしてくれると)分かってたのか?
この一匹で、少し気が抜けた。
ふと時計を見ると、時刻は8時過ぎ。多少傾斜はあるが、薮をしばらく突き進めば脱渓ルートに出られるはず。
まだ行ける。ココまで歩いた苦労、たった2時間半の釣りで終わらせるのはあまりにも惜しい。
好ポイントは続く。
フライを流す・・・ガボッ!
26cm。
・・・最高。いつまでもここで釣っていたい。熊? ああ、そういえば鈴を鳴らすのを忘れていた。
流れる水の美しさ、釣れる魚の美しさ、そして人間の気配を感じない時間。
至福のひと時。
釣れる魚のアベレージは20cm以上。さらに渓相は険しくなり、一方で好ポイントが連続。
程なく魚止めの滝が出現。この上流にも魚がいる事は分かっているが、最終脱渓ポイントまでどれ程の行程があるのか分からない。
滝の横はぬめっていたので少し引き返し、林道へ抜ける(と思われる)ルート入口によじ登ってしばし悩む。
「行くべきか・・・引き返すべきか・・・。」
時刻は既に8時半。体力の消耗を考えると、行きとは異なり、出発点に戻るのは1時間以上を要するだろう。
切り上げるならココが限界。
しかし、ここ20分の釣果は20cmクラスが当然で、25cm、尺とどんどん良くなっている。
この先の流れがどうなっているかは分からない。真っ直ぐ突き進めば脱渓できる林道に突き当たるはず。左に進めば魚止めの滝を超え、さらなる上流へ。
カロリーメートをかじった。突き進んだ方向は・・真っ直ぐ。
これ以上何を求める?綺麗な魚、3時間足らずで大満足の釣果。尺岩魚のおまけ付き。
漁をしてるんじゃない。誰かと競争してる訳でもない。次の楽しみがまた増えた。
・・・本当は、涙を呑んで未練タラタラの撤収。「ううぅ・・・I'll be back!」
しばし道無き薮漕ぎの後、無事脱渓ルートに合流。陽が登り、気温が一気に上昇。
「一番最初に腹に入れる液体はビール!!!」
訳のわからん執念で水分を全く補給せず、汗だくで山を下る。
陽は既に高く、乗客満員の観光バスとすれ違った時、足元がもつれてこけそうになり、思わずしゃがみ込む。車窓から心配そうな顔のおっちゃん・おばちゃん約20名が一斉に見ている(汗)
・・・シューズのヒモを結び直すフリで切り抜ける(汗)
てくてくてくてくてくてくてくてくて・・・。歩く。暑い。のど渇いた。レッグガード(ゲーターみたいなもの。転倒時の足の保護や、草木で怪我しないように、ずっと装着してる方が良いとは思う)を外し、一時の清涼感を得る。
約1時間のウォーキングを経て、ようやく妻と娘の待つ(寝てる)車に到着。
恥ずかしながら帰ってきましたー!
最愛の家族が待つ車に駆け寄ると・・・あ、おもいっきり寝てますね。クーラー掛けて快適そうですね。
パパ、死にかけてますけどね(泣)
ガラスをコンコンすると、娘が先に起きて「パパー!パパー!」。おいおい、あと1時間ぐらい釣ってても良かったんじゃねーか?
あーごめん、娘よ。ドアのロック開けてくれない?え?無理?まだ1歳だもんね。
つーか妻よ、早く起きてくれ。暑いんですけど。
+++
釣りの道具を片付け、ここからは家族サービス・・・の前に、地ビール工場(マルスウィスキー工場)へ直行。
ゴールデンエール、アルプスヴァイツェン、アンバーエール、ぶどうジュース試飲カップ(娘)で乾杯!
ゴキュゴキュゴキュゴキュ・・・くっはあぁあああぁああぁぁあああ!! 最高!!!
しかし、ここは喉の渇きを潤す程度で我慢しなければならない。昼食にソースカツ丼が待ち受けているからだ。
ところが、娘の一気飲みが止まらない。試飲のぶどうジュースが大変気に入ったらしく、「もう一杯!」とおかわりをせがまれる事10回以上。
娘よ、あくまで試飲だからね。飲み干す気か?店員さん、笑ってるけど絶対怒ってるからね。
そしてソースカツ丼。超人気店「ガロ」には大行列。
しかし、我々夫婦のお気に入りは、たっぷりキャベツとあっさりソースでがつがつ食える「すが野」。
ビールを少々飲みすぎ、苦しいかと思われたが完食。
今回は新しい店を開拓できませんでしたが、期待どおり旨かったです。
その後、アイスを食べたり川遊び(ちょっと釣り)を楽しみ、午後3時に宿にチェックイン。
いつもユースホステルに泊まってますが、この日は予約一杯で部屋が取れず、普通の宿(夕食なし)に宿泊。風呂の湯は温泉で、薬草風呂などもあり十分満足できました。
ところが、ここでトラブル発生。
右足が・・・痛くて動かせない(汗)
体力的にはなんとか持ちこたえた。
気力も萎えず、最後までテンションを維持できた。
ただし、体の部品(パーツ)が持たなかったようだ。
朝の5時前から9時半まで、休み無しで山道〜川の中〜山道を歩き続けたのはまずかった。次第に右腕、左足も熱を帯びてきた。
「パーパー!」抱っこをせがむ娘。無理だって。いくら体重10kgでも持てないって!
・・・・・ううぅ。足痛いよー(←結局抱っこしてる)。
もう一度温泉に浸かり、マッサージ。あれ?こういう場合は冷やした方がいいんじゃねーか?(汗)
イブニング間際。まだ体のあちこちが痛かったが、ここまで来て釣りが朝だけではつまらない。
5時半から夕食の7時まで、1時間半だけ時間を貰ってC&R区間で釣り開始。
嫁さんは晩酌用の酒を買出しに、町へ。
川に立つと不思議なもので、あれほど痛かった右足が気にならない。多分、釣りしてる間は変な化学物質でも脳から分泌されてるような。(俺だけか?)
人が入らない上流部とは異なり、やはりC&R区間は難しい。砂地には足跡が・・・。なんてもんじゃない。足跡が無い砂地が無い。
いかにも出そうな場所では全く反応せず、ややこしい場所でシビアな反応が数回。。
ところが、日が落ちて暗くなり始めた頃から状況一変。大場所ではライズも見られ、バコバコッと20オーバーを連発。
釣行記書くのが疲れてきたので(←オイ)省略するが、釣れた魚以外でも良型の反応は多数。今年の太田切川C&R区間はどうしたんだろう。妙に魚影が濃い上、釣れる魚も綺麗な魚体。
早朝と夕方だけ楽しむのであれば、C&R区間はかなり面白いはず。フライは#12前後の大き目が好反応でした。
久々に足を使った少しハードな釣行は、満足のいく結果となった。また来たいなー。