アマゴ発眼卵放流
2009年11月21日 三重県 安濃川

動画公開中


拝啓 師走の候、閲覧者皆様におかれましては、ますます御健勝のこととお喜び申し上げます。
平素は格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。

・・・・恥ずかしながら帰ってまいりました!


 一時はプロバイダーの変更に伴う休止も考えましたが、月945円で5時間使えるという化石みたいなダイヤルアッププランがあり、それに一時変更する事でホームページが残せる事が判明。てゆーか、電話して聞いたら教えてくれた。

 そんな訳で、今年も頑張ってきました発眼卵放流。足掛け4年、大学の研究チームと共同作業になって2年。
数字的なデータが揃いつつあるので、そろそろ実効性のある新しいアクションを起したいところだが、お仕事と子育て等で連日ヘロヘロ状態。
無理だけはせず、仕事も家庭も趣味も充実させていこうと自分に言い聞かせています。


河内渓谷の紅葉も見ごろ。・・・放流には全然関係ないけどな。

 ALC標識を使った放流魚(発眼卵から孵ったアマゴ)の追跡調査・研究を、2007年〜2008年まで行った学生2名は無事就職が決まり、今春卒業したので、今回からは後を引き継いだ後輩が頑張ってくれています。

今回から本格的に安濃川を担当するその学生さんは、相当な釣り好き。
学生の身分にも係わらず、普通に北海道へ釣りに行くってんだからうらやましい(勉強しろよ)。川と魚への情熱は素晴らしく、調査の中間報告だけ読んでも、川へ通った回数と苦労が窺い知れる。


放流数日前から、メールで簡単な打ち合わせ。初回ALC標識調査の時は、100通ぐらいのメールが飛び交いましたが慣れたもんです。


「明日は三年生を二人連れて行くので,思う存分使ってやってください」

今回は5000粒5箇所だから、3人なら2〜3時間で終わりそうだな・・・・・ハッ!Σ( ̄□ ̄;)







思い起こせば2年前、研究室教授から届いたメールから、それは始まった・・







〜打ち合わせ段階〜

こちらのメンバーは3年生男子2名 4年生女子2名 修士1年1名・・・です。




( ̄▽ ̄ )。o○(こんな活動に興味ある女子大生がいるとは!)



〜放流前日〜

「・・・の4名です。結局、●年の女子学生は来ません。よろしくお願いします。」




 Σ( ̄■ ̄;)だ・だまされたーーーっ!!だまされたーーだまされたーー


備忘録


へっ・・へへ・・・へへっ・・・。期待なんてしてませんよ?(←何の?)


当日、待ち合わせ場所で全員集合。

「こんにちはー」 「はじめまして」 「どうも、お世話になります。」

うんうん。普通に今時のお兄ちゃんが来ましたよ?ガンバッテモライマショウカー(何故か投げやり)



大まかな放流ポイントは決めてあるので、入渓点で準備開始。男4人がウェーダーを装着し、虫カゴやら発泡スチロールの箱やらガソゴソ開始。その姿はまさに密漁者

入渓点近くにある、別荘らしき建物の近くで準備を進めていると、そこのオーナーらしき方が庭の手入れをしていた。



ちらっ      ・・・ちらりっ       ・・・・・ちらっ


意識はしていないが、頻繁に目が合う。学生さん達に小声で確認する。

「おい、どうする。完全に怪しまれてるぞ

「そ・そうですね・・」

「とりあえず、事情だけ説明しておこう。K察呼ばれるとか、変なトラブルになっても困る」


と言うわけで、年功序列で自分が説明に行く事になり、その男性に声を掛ける。

「すいませーん!怪しいものではありません!(30年生きてきて、このセリフを始めて実際に使った・・)今からアマゴの卵を放流しますので、少しの間お騒がせします」

「え?アマゴ?の卵?」
しばし雑談の後、何をするかはご理解頂いた。
折角なので、アマゴの発眼卵を見ますか?と尋ねたところ、是非見せて欲しいとの事だったので、(多分)奥様と娘さんらしき方+ワンちゃん1匹も交え、アマゴ発眼卵の見学会。

「これがアマゴの卵?食べられそうね」
うーむ。初めて見る人は、大抵このセリフを言う。やっぱり、普通はイクラにしか見えないわな・・。

ちなみに、一番興味深そうに見つめていたのは抱っこされていた犬で、クンクンし始めた時はパクッと食うんじゃないかと、内心ドキドキしていた。

 放流地点に入るルートを検討していると、ご主人から「ウチの庭を通っていけば?その方が楽でしょう」とのありがたいお言葉。好意に甘えて、庭から入渓。
滞りなくボックス設置を終え、川から上がると、奥様より「中に入って温かいコーヒーでもどうですか?冷たい水の中で大変だったでしょう」との優しいお言葉。涙が出るかと思いましたね。

次の放流があるので丁重にお断りしたが、別荘持てる人達ってのはこういうレベルかと痛感。心に余裕がありすぎる。

 

その後も場所を移動しつつ、着々とボックスの設置を終えていく。

 作成から4年経っても、普通に使える耐久性である事が分かった虫カゴ改造ボックス
今年、県外の漁協の方より作り方を参考にさせて欲しいとのメールが届き、実際の放流で使われたようである(さらに改造が加わってるようだが)。

最終目標は、放流なんてしなくても魚が泳ぐ川の実現。放流がある程度必要だとしても、いかに小労力低料金でそれを実現できるか。

アマゴ発眼卵

今年の発眼卵は、受け取りの日を遅らせてもらった事もあり、成熟が進んでいた。養魚場の検卵が良かったのか学生さんがチェックしたのか、死卵は皆無。
他で発眼卵放流をされている方も書いていますが、死卵をいかに取り除くかが、発眼卵放流では最も重要な要素となります。

通常の方法での放流と共に、前回、結果がイマイチ分からなかった放流方法、”底上げ型直播き”にも再チャレンジ。

 ご存知のとおり、アマゴや鮭は川底に穴を掘って産卵する。通常、鮭鱒が産卵する(産卵に適した)川底と言うのは、小さな石(礫)で構成されているが、安濃川の場合は砂と泥が大半。
水の透過性が低く、通常であれば酸欠で卵が死んでしまう可能性が高い。

 そこで、大きな石でドーナッツ型の囲いを造り、その中へ小石を敷き詰めてから卵を沈め、上から砂利を降りかけて大きな岩でフタをする・・・まぁ、上の図のような方法を考えた訳です。

 この方法が成功するなら、虫カゴは必要なくなり、さらに放流が簡単になるかと思っていましたが、孵化率を確認するには当然、”何割の卵が孵化したか”を確認しなければなりません。卵の数を事前にカウントし、死卵の数を確認するのです。

そこで、前回は台所の三角コーナー用ネットの中に卵を入れてみたところ・・コレが大失敗。

 まさかとは思いましたが、三角ネットの網目に頭を突っ込んでしまい、死んでいる稚魚が多数。川底に直接埋めたグループと、底上げして直播きしたグループの孵化率に有意な差は見られませんでした。


そこで、今回投入したのは不織布(ふしょくふ)タイプの袋。耐久性と目詰まりに若干不安は残るが、水の透過性も悪くなく、今回で底上げ型直播きの効果が確認できるかと思う。

また、中に小石を入れておくと生存率が上がるようなので(死卵が発生した場合、隔離されやすいから?)、同じぐらいの大きさ、個数を袋の中へ。
もう少し本格的に調べてみたかったけど、今回は準備の時間が無く、50粒ずつの実験。結果が楽しみだ。

ちなみに、近年多発する局地的な大雨により、この川でも流れが大きく変わってしまった。

悪くなった場所ばかりでもないのが救いではあるが、発眼卵放流当初は魚止めになっていた地点の地形が変わり、魚が溯上できるようになったため(イラストマー標識という、鰭などに色素を入れる方法で確認済み)、より厳密に放流効果を確かめるべくこんな場所にも放流。
春までに石を沢山沈めて、隠れ家を作らんといかんなー。


12/4 途中経過観察。

何度か雨も降ったが、沈めたボックスは全て無事。卵表面に薄っすらとシルトが付着しているが、この程度なら問題なし。死卵も0〜5粒ほどと、このまま順調にいけば孵化率は99%を超えてくれそう。

この日、孵化した稚魚は1匹しか見られなかったが、どの卵も眼や体形がハッキリわかるようになっており、もうすぐ一斉に孵化しそうだ。

順調に育ってくれる事を祈りたい。


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