里山ってなんなの??

<人工林の問題って何??>



さて
荒れて大変な里山の
一番大きな問題点は
<人工林が、手入れをされず、放置されていること>です。

人工林というのは、
文字通り、人が人工的に作った森のこと。
日本では、ほとんどが、スギやヒノキの植林地になっていますが、
こういう人工林が、日本の森林の、約40%を占めていると言われています。

40%・・・・・って、でかいですよ??

なにせ、我が国の国土の、約70%が森林(山林)。
その中の40%が人工林・・・って言うと、半分近くがスギとヒノキの森ってことになりますから。
                   (ああ、なんか、聞いているだけで、花粉症の私は、鼻がむずがゆい・・・)



このような植林は、
江戸時代あたりから、盛んになり、
材木を売って、藩の財政を潤していたそうですが、
ここまで人工林が増えたのは、戦後のことだそう。
戦後の復興に木材が必要だ!
ってなことになり、国が造林を奨励したんでしょうね。

そして、更に、造林に拍車をかけたのが、戦後の<エネルギー革命>だと言われています。
つまり、
ガスやら石油やらを使うようになって、皆、薪(まき)を必要としなくなってしまった。
だもので、
山持ちの農家の人達は、薪用の雑木林の山を持っていても意味が無い。

ほんじゃあ、ここに、材木として売れるスギやヒノキを植えましょうよ♪

ということになって
全国で、爆発的に人工林が増えていったそうなのです。
子供や孫の世代への財産を・・・と、雑木林を伐り開いて、植林していったのでしょうね。

そこまでは良かった。
でも、

植林した後に、大誤算が待っていたのです。

何かと言うと
外国から、安い輸入材がどんどんどんどん入ってくるようになり
国産の木材が売れなくなってしまったこと・・・・・。

じゃあ、輸入材に対抗して、国産も値段を下げれば??

と言いたいところですが、出来ないですよね。
農作物を見れば、それはわかります。
木だって、農作物と同じで、植林して、そのまんま放ったらかし・・・というわけじゃないですから・・・。

スギやヒノキというのは、
大体、植えてから10年間くらいは
毎年、暑い夏の時期に、苗木の周囲の草刈りをしてやらねばなりません。
そうしないと、木に充分な日光が当たらないから。
また、
20年くらいたった頃からは、<間伐>という、農作物で言うところの<間引き>が必要になります。
苗木は、一坪に1本くらいの割合で
かなり密生して植えられているので
成長してくると、枝と枝がぶつかるようになってくる。
そうなると、適当に間伐してやらないと、木が曲がったり、成長が悪くなったりするんだそうです。
その間伐を数十年続けて・・・・・
50年目。
植えてから、あれこれ手をかけ、50年目になって、やっと木材として売れる木になるんだそう!
・・・安くなんて出来ないですよね・・・。やっぱり。



というわけで、伐っても売れない人工林は、子供や孫の世代に嫌われて、後継者を失いました。
多くの人が、
「スギやヒノキを育ててもお金にならへん」
と、会社員になってしまったのです。
(もちろん、農業では食べていかれへん、というのもあります。)
残された、高齢の農家の人達だけでは
体力の必要な、人工林の手入れはできかねる・・・・・。


こうして、人工林は放棄され、荒れ果てました。



具体的には、どういう状況かと言いますと

植林してから20年以上経ち、間伐の必要になった森が、そのままになっています。
一坪1本の密生状態のまま、4メートルにも5メートルにも伸びているスギは
密生しすぎて、光が充分に当たらないため
皆、幹がヒョロヒョロで、マッチ棒のよう。
当然、こういう木は、根の生育も良くないのです。
ってことは
間伐の出来ていない人工林は、
<地面の浅い部分しか根に守られていない>ということになりますよね??
じゃあ、ここに集中豪雨がやって来たら・・・・・?大きな地震が起こったら・・・・・??
怖いでしょう???


また、密生した森は、地面まで太陽の光を通しません。
間伐してやると、光が入るようになり、
林床(森の地面のこと)にも下草が生えるのですが
手入れ不足のスギやヒノキの森は、年がら年中薄暗く



↑こういう感じ。

下草も生えず、だから、そこには、多様な生き物は住めません。
<豊かな森>ではないのです。



これと全く同じ問題が起こっているのが、今、全国で、モーレツに繁殖している竹林で
<里山が荒れている>
というのは、
この<人工林と竹林の管理ができていない>ってことにつきるんじゃないかと思います。
・・・いや、他にも色々問題はあるけれど・・・・・
対策の緊急度で言えば、やはり、このふたつ!
なにせ

◎手入れの遅れた人工林と竹林は、自然災害に弱い。

◎そこでは、多様な生物が生きられない。


なのですから。

つまり
<里山が荒れている>
というのは、

日本の原風景・心の故郷が、過疎化で人の姿が無くなり、
廃屋とか草ボーボーの田んぼとかばかりになって、悲しい・・・・・


というような、情緒的な問題ではなくって
かなり物理的に大変な問題だったわけです。





じゃあ、ともかく間伐!間伐をしましょうよ!!


と、誰もが思うと思います。
ちゃんと間伐さえすれば、スギもヒノキもしっかり成長し、深く根を張ってくれるわけだから。

でも・・・・・・・・・・
間伐というのは、人手がかかります。
細っこいとは言え、
直径20〜30センチ、高さも4〜5メートルになった木を伐り
伐った木は、何メートルかの長さに切りそろえて、森の外へ持ち出さねばならない。
人手も、技術も、体力もいる作業なのです。

で、
手をかけて育て、また苦労して間伐した木なのです。
できることなら、売ってお金にしたい
って、思いますよね?
ただでこんな作業、やってられないでしょう?農家の人も、森林組合の人も。


けれども、この間伐材が、また売れないんです。今は!


昔は、間伐材も、良い収入になったと聞きます。
風呂桶や、風呂のふた、
すのこ、ちゃぶ台、鍋のふた、割り箸
と、何でも木で出来ていた時代は、間伐材の引き取り手にも、ことかかなかったそう。
それが今では、多くがプラスチック製です。
たまに木製のものがあっても
たいていは、安い中国製だったりして・・・。

売れないのなら、しんどい間伐なんてやってられない!!!

そう思いますよね。自分が農家の人間なら。
売れるのなら、人をやとってでも間伐するでしょうに・・・。

もちろん、政府としても、災害に弱い山を放っておくわけにはいかないので、
山全体の2割を間伐すれば補助を出す
というような条例を作っていますが
それでもなかなか・・・。
なにせ、自分が山を持っていることさえ知らない人だって多い時代ですから。
親から遺産相続で、田舎の山をもらったけれど
どういう山か知らないし、興味も無い
って人も、また多いでしょうし・・・・・。


というわけで、間伐遅れの人工林は増え続けています。

全国で、たくさんのボランティアが、手入れを続けていますけれども
まだまだ追いつかないのが、現状です。
ううう〜〜〜〜〜む・・・・・。



               <竹林の問題>はこちらの<山仕事は楽し・・・5>でどうぞ。

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