そもそも

里山ってなんなの??



1990年代の半ば頃から、よく耳にするようになった言葉、<里山>。

イメージとしては、<となりのトトロ>で、さつきちゃん達が住んでいた場所
あるいは<日本昔話>に出てくる村の風景
なんてのが、浮かんでくるんじゃないでしょうか?

でも、
実際のところ<里山>ってどういう所なのよ??
具体的には、何する場所なの???
ただの<山>と、どう違うわけ???
と思われますよね。



実は、<里山>という言葉は、古くからある日本語ではありません。
作られたのは、昭和30年代だとか。
造語したのは
京大名誉教授で森林生態学の権威、四手井綱英(しでい つなひで)先生。

もともと、人が入って行かないような、大変に深い山奥を
日本人は<奥山>と呼んでおり
その<奥山>に対して
人里の近くで、ひんぱんに人が出入りする山を
じゃあこれは<里山>だな
と、
そう呼ぶことにしたそうです。


<奥山>というのは、深山幽谷の世界で
古来
獣と、その獣を追うマタギなど、猟師集団しか立ち入らない場所だそう。
今なら、登山家とかネイチャー・フォトグラファーなども、行くかもしれませんね〜。
ともあれ、
そういう、日常生活とはかけ離れた山が<奥山>。

一方<里山>は
農村のすぐそばにあり、
人々が、薪(まき)を取りに入ったり、キノコを採りに行ったりする
<生活には無くてはならない存在>だったそうです。
なにせ
戦前まで、日本の家庭でのエネルギーは、ほとんどが薪。
炊事をするのも薪。お風呂を沸かすのも薪。
暖房も何も、オール薪。
都会では、明治以降、ガスとか炭も使っていたようですが、
日本人全体から見れば、それはごくごく一部でしょう。
というわけで、
人は、どんどん里山に入り、どんどん薪になる木を伐った。
また、農家は、山の落ち葉や下草を集めては、田畑の肥料にしていた。
結果、
我が国の里山は、戦前・戦中までは
ほとんどの山がハゲ山だったそうです。



えええ?うそぉ!?

と、思いますよね。今の里山を見ていれば。

でも、これは本当の話らしく、
実際、江戸時代の浮世絵なんか見ると、山って



↑大体いつも、こんな感じに描かれてます。(下手な模写ですみません〜〜)

実は、
私は、長年

これは、こういう<描き方のルール>なんだ


と思っていました。つまり、

山の稜線を描いて、そこに松の木をチョコチョコッと生やしてやると<山>ということになるんだ

と。


  だってホラ、太陽って
  ←こんな形に見えてるわけじゃないのに
  こう描くと<太陽>ってことになってるでしょ?漫画では。
  そういう、記号的な絵画技法だと思い込んでいたわけです。
  


でも、
違いましたね。

これは、あくまでも<写実的>に風景を描いたらこうなった
ってなもんだったんですね。

そのくらい、薪を取ったり、木材にする木を伐ったり、落ち葉をかいたり草を抜いたり、
かつての日本人は、里山を利用していたんだなぁ・・・・・。

で、
このことで思い出したのですが
そう言えば、私が子供の頃遊んでいた裏山は
今、思い出してみると、地面に落ち葉も小枝も落ちておらず、草も生えていませんでした。
そして、松の大木の根が、地面にむき出しになっていて
その根を階段代わりに、私達ガキンチョは、山の斜面を上り下りしたものです。
が、しかし
ごく最近、その山へ行ってみたら
草ボウボウで、入っていくことなど、とても出来ない。
斜面も木が密生していて、全然、子供が走り回れるような状況じゃありませんでした。
あまりの変わりように、ボーゼンとしていたのですが
つまりあれは
私の子供時代には、
まだ、山へ入って薪を取ったり、落ち葉を集めたりする人が、少なからずいた
ということなのでしょうね。
私が子供の頃って、お風呂を薪で焚いていた家が、我が家を含めてまだまだ多かったしですし。



そういうハゲ山だった里山が、今のフサフサ状態になるきっかけは
戦後の<エネルギー革命>というやつだったそうです。
人々が、石油や石炭を使い始め、薪を必要としなくなったのです。
それで、
山をそのままにしておいてはもったいないから、スギやヒノキを植えて、育てて売りましょう
と、一部は人工林に。
他の部分は、そのまま手つかずに放置され・・・・・
時が経つこと、数十年。
それが、今の里山。

もちろん、ハゲ山というのは、豪雨があれば土砂崩れを起こしやすく、とても危険です。
また、草も生えていないような地面は
雨が降ると、すぐ表土が流出してしまい、土の栄養分がどんどん無くなってしまう・・・。
それを考えると
フサフサ、いいじゃないの♪♪豊かな自然が復活してんじゃない♪♪♪
と言えそうなのですが・・・・・・・・・・・・・・・。



じゃあ、
今、ここに来て、
<農村が過疎化・高齢化し、人手が足らず、里山が荒れ放題で大変だ!>と
大騒ぎになっているのは、何故なの?
一見、フサフサの、緑豊かな里山の、何が問題なの?????



ということで
私が勉強した範囲内でわかってきた里山の問題点を、これから少しずつ書いていこうかと思います。



ところで、

<昔の日本の里山はハゲ山だった>

という事実を知ったおかげで
長年、外国映画を観ていて謎に思っていたことが、解明した私です。

謎とは
イランや中国や、アフリカ諸国の映画を観ていて、いつも気になっていた
<田舎の風景なのに、みょう〜〜に樹木が少ない>
ってこと。
バカな私は

「そうそう、イランやチュニジアって、日本より雨が少ないもんなー。
きっと砂漠のような気候やから、日本みたいに木が育たんのやわ」

なんて思っていましたが・・・・・・・・・・

違う!

違う。これ、皆が木を燃料にしてるんで、国土がハゲ山状態だったのですね!!



というわけで
皆さまも、これらの国の映画をご覧になる時、是非、背景にご注目下さい。
森とか林とか、無いですよ〜。
そうそう、もちろん、古〜〜〜い日本映画を観る時も。
確かに、里山、坊主です。



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