山仕事は楽し・・・ (5)



2004年6月制作


この漫画に描いたとおり、竹林は、今、全国の里山で猛威を振るっており、大問題になっています。
皆さんのご近所の山も、気がつけば、竹林だらけになっていませんか?
一度、じっくり見てみて下さい。
どうでしょう?


でも、竹林って、日本の原風景で、風情があっていいじゃないの

と、思われる方も、いらっしゃるかもしれません。
そう、
日本庭園にあるような竹林なら、本当に涼やかで、美しい。
ああいう林の中をゆっくり散策して、心を落ち着けたいと思う、本当に良いものです。
が、
現実に、里山で問題になっている竹林は、



↑皆、こういう感じです。
手入れも管理もされておらず、林の中は、もうグチャグチャ。人が入っていける状態ではありません。

それでも、
見苦しいだけなら、まだいいのです。
問題は、
竹というのは繁殖力が異様に強く、他の植物を追いやってしまうこと。


<豊かな森>というのは、
様々な草花や樹木が、そこに育ち
その様々な植物を求めて、様々な昆虫やは虫類・ほ乳類がやって来る場所のことです。
でも、
竹林には、竹以外の植物が育たない。
竹が、あまりにもすさまじい勢いで成長し、密生するため
竹林の地面には、太陽の光が届きません。
だから、下草も生えない。
もちろん、他の樹木が芽吹くこともできません。
パンダにとっては、そりゃ〜〜パラダイス♪でしょうけれど、
それくらい、ごくごく限られた動植物しか、そこでは生きられないのです。
こうなれば、もう
南極や砂漠と同じ!!

おまけに、竹は、大変な勢いで地下茎を張り巡らせるくせに
その地下茎は、とても浅い場所に張られます。
深さ、わずか30センチほどだとか。
30センチですよ!
・・・なので、竹林の地盤は、とてもとてもヤワなのです。
集中豪雨などで、土砂崩れが起きるのは、竹の密生した斜面が多い・・・。

そんな
動植物が生育できず、災害にも弱い竹林が、今、全国の田舎を侵略中!



じゃあ、なんで、そんなに竹が増えだしたのよ???

と思われますよね?

それは、この20年ほどの間に、竹林が管理されなくなったから。


もともと、里山の竹は、農家が自分の持ち山や、家の近くの空き地に植えたもので
自生していたわけではないのです。
植えた理由は、
タケノコを摂るため
あるいは、
生活用具の材料にするため。
↑これは、カゴやザルを作ったり、庭の生け垣にしたりするためですね。

あるいは、竹材として売る目的もあったでしょう。

それが、そういう生活用具が、どんどん竹を必要としなくなってきました。
ザルもカゴも、物干し竿も定規も・・・・・竹製のなんて、今、とても少ないですよね?

というわけで
伐っても、積み上げて置くしかない竹を、農家も伐ることをやめてしまった・・・。
となると
なにせ繁殖力の強い竹のこと、
あっと言う間に、耕作をやめてしまった棚田とか、畑とか、みかん畑とかを侵食していきます。
過疎化と高齢化で、
ただでさえ人手の足りない里山地域は、
もうこうなっては、竹の勢いを止められない〜〜・・・・・・・・・・

というのが、今の全国の里山の状況です。


なんとかしなきゃ
と、香川県でも、いくつものグループが、竹を伐る活動を行っています。
でも、
皆、抱えてる問題は同じのよう。
伐るのはいいけど、伐った竹を、使う道が無い。
なので伐った竹、ただただ山のように積み上げられていくばかり・・・。
私と夫の整備している区画も、まさにそうなんです。


また、こういうこともあります。

先日、近所のコープで、割り箸を買う必要があり、棚に並ぶ何種類かの割り箸を見ていましたら
<竹の割り箸>
ってのが、ありました。

おおお!こういうところに竹材を使ってもらえれば、
助かる〜!!!!!


と、手に取りましたら
なんとその割り箸、
<中国産 モウソウ竹>を使用してる、と書いてあるではないですか・・・・・。とほほー。

そう、
生活の中で竹を使わなくなったばかりじゃなく
使う場所でも、安い外国産の竹材に押されてしまう、我が国の竹。

我が香川県の丸亀市というところは、うちわの産地です。
国内の生産高の、ほとんどを占めるという、No.1の産地。
もちろん、プラスチックなんかじゃない、竹の骨組みのうちわですよ。
でも

この丸亀のうちわも、・・・・・もしかしたら中国産の竹を使っているのかも・・・・・??

ああ、もし、丸亀のうちわメーカーが
香川の竹材を使ってくれるというのなら
私、ボランティアで、
なんぼでも一所懸命竹を伐るのに〜〜!!!


・・・難しい問題です。
そして、本当に、かなり重大な問題なのです。竹。



<補足 : ササについて>

漫画に描いた、ササも、実に難儀な植物です。
竹同様、すさまじいまでの繁殖力を持っていて、他の植物を蹴散らしてしまう。

山で木を切り倒したら、そこにはポカッと、日の当たる空間ができますよね。
そういう空間に、
まず生えてくるのがササ。
そして、あっと言う間に成長し、その空間を独り占めしてしまいます。
竹林と同じで
そこでは、他の植物は、育つことができません。

ドイツには、このササが無かった。
だから、ドイツの林業では、
木を伐った後、特に人工的な植林をせず
切り株からまた芽が出るとか
木が無くなり、光が当たるようになった地面から、樹木の種が芽を吹くのを待つとか
そういう自然な<更新>で、森を管理しよう
という方法が、とられるようになったそうです。
こういうやり方を<天然更新>と言います。

でも、
このやり方を日本に持ち込んだら・・・・・・・・・・・・・・・

そう、ササが邪魔をして、ダメだった!!


実は、唯一、ササが育たない、いや、育てない場所もあります。
それは、竹林の中!

そうなんです。
竹林の、最大の長所は、ササの繁殖を防ぐこと!
すごいぞ!竹!
でもそれじゃ、どっちもどっちじゃん!!!
とほほほほほーーー。




・・・というわけで、竹とササは、いよいよの難物なのです。日本の山の手入れにおいて。
双方、
樹木に比べて、恐ろしいほど成長が早いので
その管理は、やはり<戦い>という感じにならざるをえません。

ま、負けるもんか。
とは思うものの・・・。



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