DARK HARBOR ネタばれストーリー解説 C
もうこの辺りに来ると伏線は殆どなく、ただひたすらクライマックスに向けて突き進むだけです。
言葉に2重の意味を持たせて語りかけるデイビッドとノーマンの掛け合いが見事。
次回で最終回の予定です。
夢(妄想)にまで見たようにノーマンと一線を越えるのが現実になるところだったのに、やっぱり奥さんは貞節な妻で、ノーマンを拒絶しました。そして、今度はうって変わって修道女か女学生の制服みたいな地味な服を着込んできます。しかし監督さんって何にでも裏の意味を持たせてらっしゃいますなぁ…。特に色へのこだわりは病的でございます(笑) 居心地悪そうに咳払いして、森で奥さんにキスしたことを謝ろうとするノーマンを遮って、奥さんは「もう許してるわ」と握手の手を差し出します。ノーマンがおずおずとその手を握ったところへ、デイビッドが帰宅。幽霊でも見たような顔で(そりゃそうでしょう)、ゆら〜りとヨロめいています(笑)。 計画では今日の午後、森でキノコを食べて奥さんは死んでるはずだったのですが、 明らかに失敗したということがわかり、デイビッドはものっすごくガッカリしているんですね(ほろほろ…) そうとも知らず、奥さんはデイビッドの異様な形相に、「大丈夫?」とかけ寄ります。 そこでデイビッドは苦し紛れに、「あー、そのー、悪いハマグリを食べてしまったらしい」などと言い訳します。 さらに奥さんが、デイビッドが持って帰ってきた箱を覗きこんで、「あら、どうしてロブスター2匹しかないの?」と聞いてきたので、ノーマンと意味深な視線を交わしつつ、 「あー、うー、ハマグリのせいで夕食を欲しいと思わなくてね」と、もうしどろもどろ(爆)。 実は、奥さんは死んでいるつもりで、ノーマンと2人で祝杯をあげる予定だったので、奥さんの分のロブスターは買ってこなかったんですね。(スキップらんらん♪で、別荘に駈け上がってくるデイビッドが目に見えるよう…涙) そうとも知らず奥さんは、デイビッドが本当に具合が悪いと思って、あれこれと介抱しますが、その奥さんを、デイビッドは湿布が欲しいとかナンとか言って台所に追っ払います。ノーマンと2人きりになるとデイビッドは、けろっと元気になり(←おいおい)、「一体どういうことだ?」と問いただすように(ほとんど泣き出さんばかり/爆)、ノーマンを見上げます。 ノーマンは、「すごく忠実な奥さんだね」とボソッと言いますが、これは、かいがいしく湿布を取りに行ったりする奥さんを誉めているように見せながら、「奥さんが貞節を守って、キノコを食べさせるのに失敗した」と暗に告げています。もうこの世の終り、という風に放心状態のデイビッド。(ついでに髪も、デイビッドの胸の内のように乱れております←かわいー♪) 濡れた布を持って戻ってきて、「今晩の料理対決はやめておいたほうがいいわね。私があなたを送っていくわ」と、ノーマンに言う奥さんに、デイビッドも観念したように、「またの機会に、ということにしよう」と、かなり情けない表情で(笑)噛んで含めるようにノーマンに言います。これは料理対決を見送ろう、と言いながら、殺害計画は延期だ、と語りかけているんですね。 しかし、ノーマンもさるもの。このまま引き下がっては色男の名がすたるッ! 「僕もこの勝負を楽しみにしていたんだけどね」と、こちらも料理対決のことを言っているように見せながら、デイビッドに「もう1度やってみよう」と励ましています。この辺は、脚本の上手さを感じますね。 ここで、「勝負を楽しみにしていたんだけどね」とノーマンが言いながら、前に一歩踏み出します。ごく小さい動きですが、カメラがひいてあることによってノーマンのデイビッドに対する支配力が強調されてます。そして、デイビッドはノーマンの命令で魔法をかけられたようになっているんだとか。そ、そうかやっぱノーマンが主導権にぎってるのねぇぇ…。はれ?でもさっきノーマン女役とか言ってたので、襲い●けってヤツですかッ?? (わかる人だけわかってください…) さて、がぜん元気が出るデイビッド(単純)。「よし、やろう」と、(腹が悪いはずなのに)酒なんかあおったりして、奥さんの反対を押し切り料理対決に突入します。 わざとらしくゴージャスなクラシック音楽をかけ、キャンドルを灯して、3人でテーブルを囲みます。「すばらしいわ、デイビッド」と1人夕食を楽しむ奥さんを傍らに、食も進まず、何となく脱力したようなデイビッドとノーマン(^^;)。会話も投げやり。デイビッドが「今日は楽しく過ごしたかい?」と聞くと、「ひととおり(島を)案内してあげたの」と奥さんが答え、ノーマンが何やら意味ありげな視線を投げます。 ここは多分、奥さんには(森でキスをしたという)秘密があると思い出させ、それを暗黙の了解でデイビッドに黙っていることで、彼女の信頼を得る、というノーマンの作戦だと思います。そして観客には、奥さんとノーマンの間にナニかある、とデイビッドに悟らせ、ヤキモチを焼かせた(→誰に?)ように見せる監督の演出。 お約束通りデイビッドはムッとばかりにノーマンに、「どうだった?」と問いただしています(だんなー、声がふるってますよー/笑) 私は最初、(監督の演出通り)デイビッドはノーマンに妬いているのかと思ってしまったのですが、もちろん青年と何だか仲良くなってしまったような奥さんに嫉妬の炎をメラメラ〜。 そして、昼間自分がいない間に、ノーマンが奥さんに情を移してしまって計画が失敗したんではないかと、多少心配もしていると思います。 寒々しい食事が終って、デイビッドがノーマンを対岸に送りに行きます。ノーマンは奥さんと握手して、「色々とありがとう」としおらしくお礼を言い、ハート型の木彫りを奥さんに渡します。昼間から彫っていたやつですね。「とってもステキね」と喜んで受け取った奥さんですが、ノーマン達が出ていって家に1人になると、木彫りを暖炉の火の中に投げ入れます。このへん、非常に理解に苦しむのですが、やはりノーマンに惹かれたのは一時の気の迷い、さっさと忘れなければ、という感じで、せっかくのプレゼントを焼き捨てたのでしょうか(お〜の〜れ〜〜 #) やっぱり奥さんは心が冷たく、(ノーマンからの)センチメンタルな気持ちのしるしを捨てることができちゃうような人なんだそうです。ノーマンとのロマンスを追求するには自分はもう年をとり過ぎている、というアタマもあります。殺害計画の被害者となる奥さんは、自分に素直になれず感情に流されない冷たい女性であると同時に、温かくて熱情も持った女性でもあります。 ちなみに、暖炉のそばで眠り込んでしまった奥さんが読んでいた本は、マルキ・ド・サドなんですって(ほえ !?) タイトルははっきり見えませんが、最大ズームで見たところ、どうも 『The Crimes of Love』 みたいですね(邦題 『恋の罪』)。読んだことないですが、これはサド侯爵のほかの作品みたいなゴッツイ内容ではないのかしら? どっちにしても上流階級の奥さんが読むような本ではないと思うんですが…。ノーマンのことを考えてカラダが萌へ萌へしてしまったのかしら〜〜(下品) うたた寝から覚めた奥さんの目の前には、なぜかまたノーマンが戻ってきています。びっくりして「ここで何をしてるの? 大丈夫?」と訊く奥さんに、ノーマンは「ボートが壊れた。漕いで戻らなきゃならなかったんだ」と説明しています。「すぐ戻るわ。何か要るものはある?」と、訊かれて、「水上飛行機なんかいいね」と応えるのはご愛嬌。 ボート小屋では、デイビッドが愛用の(←だから違うって)金髪ウィッグや赤いバスローブ、空の酒瓶などを調べています。そこに奥さんがやってきて、「(ボートが壊れて)大変だったわね」とねぎらいますが、デイビッドはケンカ腰に、「ふん、これでジェームズ・ディーン君(ノーマンのこと ←ダフィー監督も同じこと言ってましたね/笑)がまた居座ることになりそうだな」と、まるでボートが壊れたのが奥さんのせいのような言い草。奥さんも、「どうしてこれが私のせいなのよ?」と言い返したりして、結局いつもの小言の応酬になります。 ところで、計画のためにノーマンは戻ってこなければならなかったので、ボートが壊れたというのも嘘と思われます。 手漕ぎで帰っていたら約1時間かかるとして、その稼いだ時間に何をしていたのか? 「あのハートの木彫りはなんだよ、ハニ〜ッ?!」(→ちょっとバロウズのデイヴ風)とねちねち詰め寄ったのはもちろんのこと、 愛を確かめ合った…もとい、計画の打ち合わせをやり直したのだと思います。しかし、催淫剤キノコで、うずく カラダはどーしたんでしょうね?(^^;) たぶんその日の午後、ボート小屋で昼間っからブラインドを閉めたり、酒を飲んでカーボーイごっこをやったりした事をデイビッドに伝えて、翌朝の台所での大喧嘩のネタを提供したのではないでしょうか。 ノーマンが真っ直ぐ家に戻ったのに、デイビッドはボート小屋でごそごそと、酒瓶やらなんやらを確かめていましたが、観客には奥さんの不貞の証拠をあさっていると思わせておきながら、実はノーマンといちゃいちゃしていた奥さんにムカついていたのでしょう。 さて、家に戻って、奥さんのピアノ演奏をバック・ミュージックにして、デイビッドが 愛の賛歌を謳いあげます。こういう詩を訳すのは苦手なので迷ったんですが、いちおう拙訳を載せます。まあ、ご参考までに、ということで… ねえ、君を前にすると、おかしなことに 自分のことはあまり思い出さないんだ でも、昔のことを思い出す そして、その時信じていた愛のかたちを あの頃はそれが花火のようなものだと考えていた そう、激しいほむらと一瞬のきらめき だが、そうじゃない 愛とは2人で時を過ごすということ めぐる季節、万物の移り変わり、波瀾の時を共にし、 そして最愛の人の目を見つめてこう云うんだ 私たちは、“あのこと”を一緒にやったのだ 一心同体となって 誰よりも何よりもお互いを選んだのだ、と それが愛 言葉では説明できない 究極の秘密 それは“時”を過ごして初めてわかるものなのだ… …という感じで、とにかく思いっきり熱烈な愛の詩ですが、“あのこと”が、ノーマンには“殺害計画”と聞こえ、デイビッドはこの愛の詩を通して、「互いの愛を信じて頑張ってやり遂げよう」と語りかけていると思われます。タバコを吸いながら淡白に聞いているように見えるノーマンに、果たしてデイビッドの燃える思い(^^;)は届いたのでしょうか? それにしても、こういうセリフのない表情だけのシーンで特にノーマンの才覚が現れますね。熱い愛の詩を全く意に介さないようにも見えるし、深く感銘を受けたようにも見える。デイビッドが「それが愛」と言ったところで、大きく瞬きをし(彼のまつ毛に扇がれて、吹き飛ばされるような気分) 愛について考えているようですね。 ちなみにアラン・リックマンさんはこの結構長い朗誦シーンを18〜19テイクくらい撮ったそうですが、その中の1テイク(たぶんテイク12くらい)が全部本編に使われたそうです。ノーマンの顔も入ったりしてカットを継ぎはぎにしてるように見えますが、つながってる1つのテイクだけなんですね。なぜテイク12が使われたかといいますと、監督にとって一番感情的に強く訴えて、ミステリアスだったからだそうです。 しかし、このシーン、ノーマンのアップばかりで、奥さんの方はピントがボケていて、最後に一瞬ノーマンの後ろにいるのが、やっと分かる程度。ここまで露骨なんだから、1度目に見た時に気がつきそうなものなのに、私ときたらボンヤリ聞いていて、この詩がノーマンに捧げられているということを見過ごしていたんですから、人間の知覚というのもいい加減なものです (←ア、アタシだけ?) とにかく奥さんには、この愛の詩は、「夫婦として、良い時も悪い時も乗り越えて、長くやっていこう」と聞こえ、後で奥さんは、「あなたが下で言ってたこと、すてきね」と、自分に詩が捧げられたと思って、喜んでます(お気の毒…)。ついでに旦那は、「本気で言ったんだ」と返事してますが、それはノーマンに対してでしょッ! さて、すやすやと寝入っている奥さんの顔を、よくわからない表情でじっと眺めるデイビッド。少しは哀れに思っているのか、それとも「このアマ、よくもハニーと〜ッ!ぶっ殺したる〜!」と、必死で計画を練り直しているのか。とにかく、デイビッドにとっては眠れない夜が明け、既に奥さんはベッドから消えています。 いやはや、今回はデイビッドとノーマンの腹芸に深読みし過ぎて疲れました…(^^;) 次回で全ては明らかに…?(のはず) |
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