Manner 牌品

     (15)牌品高


 牌品高(パイピ ンカオ)と読む。“麻雀の品は高く”という意味。そこで雀品(じゃんひん)とも称される。 “マナーは悪いけど、品はいい” なんてことは絶対無い。そういう意味では、牌品はマナーの意ともいえる。しかし牌品とマナーは、ニアー(near)であってもイコールではない。

 むかしσ(-_-)が某団体に籍を置いていたとき、柴田利克(しばたとしかつ)さんという大先輩がいた。麻雀も上手であったし、もちろんマナーもいい。しかしそれよりも何よりも、そのさわやかさ、すがすがしさにいつも打たれた。

 静かに対局している中にも、ゲームを心から楽しんでいる雰囲気であった。もちろんどんな状況でもバタバタするそぶりもない。1ゲーム終了まで終始同じ雰囲気。ゲームが終了すると、初めて破顔一笑。未熟な私まで心が洗われるような思いであった。σ(-_-)の考える牌品とは、そういう雰囲気をイメージしている。

 σ(-_-)の師匠は或る麻雀団体の創立者で大西太郎という方。むかし地元新聞社の企画で、大西先生をホストとして名古屋の御園座劇場に来演した芸能人と対局する「大西九段をぶっ飛ばそう会」というタイトルの企画があった。

 御園座は名古屋一番の老舗劇場だから、有名芸能人が数多く来演する。そこで「ぶっ飛ばそう会」にも、美空ひばり、江利チエミ、雪村いずみの3人娘をはじめ(そのころは、もう“娘”という年ではなかったけど....)、「ハヤシもあるでよう」のフレーズで有名な南利明など、数多くの麻雀好き芸能人も登場した。その中で、江利チエミさんなども“楽しい人”ということで印象に残っているが、特に印象に残っているのが時代劇俳優で有名な里見浩太郎さんである。

 対局場に現れたときから颯爽としていたが、対局しているときも爽やかそのもの。もう実に楽しそうに、かといって一打一打に拘泥することなくゲームをしていた。たまたまσ(-_-)は里見さんの牌譜係りであったが、その打ち筋も爽やかそのもの。とにかくケレンも迷いもない。

 剣道で一刀両断という表現があるが、打ち筋もまさにそういう感じで思いっきりがいい。或る方針で手を進めていて変更を余儀なくされたときでも、あっさりと転針する。そこに何の屈託もない。

 多くの芸能人の牌譜をとったが、見かけと打ち筋が違うなんてことは珍しくない。ある喜劇役者は口ではダジャレを連発していたが、自分がアガったときはニッコニコ。しかし他人がアガると露骨に不愉快な顔をする....(おや、まぁ、なんと自分勝手な人だ)と思った....。

 しかし里見さんは何が起ころうと、ニコニコして手を進めていた。“こういう人となら10年麻雀やってても楽しいだろうな”と思ったものだ。そんな気持ちを相手に抱かせる里見さんも、やはり牌品が高い人だと思う。

 牌品ということを思うとき、もう一人思い浮かぶ。それはこちらで書いた会計士の女性。この人もほんとにすばらしい牌品の持ち主であった。こんな女性には、もう二度とお目にかかれないだろうな。

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