Mahjan talk 雀話

    (61)麻雀スクール


 むかし或るアマチュア麻雀団体があって(まだ活動してると思うけど)、σ(-_-)もそこに加盟していた。その団体が初心者麻雀スクールを開講することになって、σ(-_-)もその講師を努めた。

 あ、もちろん講師は複数いて、σ(-_-)はそのうちの1人というだけの話。どれぐらいの期間、講師をしていたかよく覚えていないけど、少なくとも5年以上はやっていた記憶。

 それだけやっていると、結構いろいろな思い出がある。一番の失敗は、講習のある日だということをすっかり忘れていて、酒を飲んでしまったこと。寿司屋で気持ちよくオダをあげていたあ、ポケットベルがリ〜ン(当時はポケベル全盛時代だったのだ)。連絡してみると、女房から「あなた、今日、学校でしょう!

 「げぇっ!」というので、とるものもとりあえず本部へ駆けつけた。もちろん生徒さん(大人相手だから社会人ばかり)は、全員揃って待っている。さっそく講習を開始したが、σ(-_-)は赤い顔で酔っぱらっている。生徒さんから、「先生、今日はいいご機嫌ですね」なんて云われちゃうし、同僚の講師は冷たい顔をしてジロジロ見るし....

 そんな中で一番の思いでのある生徒さんの話。
 スクールは、いちおう2時間10回でワンクール。(1)(2)(3)で用語や1雀頭4面子の組み合わせ型。(4)(5)(6)で点数計算。(7)(8)(9)で実戦形式という具合。もちろんこれだけの時間でゲームが完璧に理解できるわけはないので、追加の講習がある。

 この中でも、いちばん大変だったのは、点数計算の講習。(4)(5)(6)の6時間をかけても、なかなか習得できない。点数計算の仕組みそのものは簡単だけど、パッと出てくるまでになるのに時間がかかる。それで(4)(5)(6)だけでなく、(7)(8)(9)の実戦の時間までにもくい込んで、講習していた。

こんなことが数年続いていた頃、ある熟年夫婦が揃って入会された。ご夫婦とも非常に上品な感じで、いつもにこやかにしていた。それでいつものように講習を始めたのだが、奥さんが非常に飲み込みが良い。順子だ、刻子だ、雀頭だ、なんてことはもちろん、一翻だ、縛りだなんてことも、1回話しただけで理解してしまう。(ふ〜ん、頭のいい人だなぁ)と感心していた。

 で点数計算の講習になったわけだが、これがまたすごかった。奥さんはまったく何の苦もなく(4)(5)(6)の時間だけで計算法をマスターしてしまった。後で聞いた話だが、他の講師が講習しているとき、奥さんが「嵌張や辺張待ちは2符つくのに、どうして双ポ ンは2符つかないんですか」なんて質問したので、講師が立ち往生したという話だ。(笑) おひ、講師がそんなとこで立ち往生してどうする(~-~;

 もちろんアガった手の得点がパッと出るようになったのはそれからまだ時間がかかったようだが、それとても普通の人の3分の1くらいの時間でできるようになった記憶だ。

 あんまり感心したので、あるとき奥さんに「○○さん、お仕事は何をしてみえるのですか?」と聞いてみた。すると恥ずかしそうに顔を赤らめて、「税理士です」と云った。なーるほろ、それで数字に強いのかと改めて、感心した次第。

 しかし感心したのはルールや計算法の習得だけではない。実戦でも飲み込みが非常によく、このまま行けばプロになれるんじゃないかと思うくらい(笑)、いい腕となった。

 卒業してからもいつも仲良くご夫婦で麻雀会に参加して見えたが、ある時期からご主人だけで参加されるようになった。不思議に思って、ご主人に聞いてみると、病気で亡くなられたという。非常にショックだった。σ(-_-)よりはるかに年上だし、別にプロ雀士養成所じゃないんだから、“目を掛けていた”なんていうとおかしな表現だけど、ほんとうに心から惜しい方を失ったと思った。いまでも忘れられない生徒さんである。

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