(04)4枚使いの七対子 (月刊近代麻雀・昭和60年11月号)
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東京の大学へ入って初めて麻雀をしましたが、4枚使いの七対子でアガってチョンボを取られました。なぜいけないのかと聞くと、そんなの常識だと笑われました。しかしいけない理由がとうしても納得できないので教えてください。 (鳥取・高田
○郎)
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日本では数多くのルールで麻雀が行われています。中には七対子そのものを採用していないルールもあるくらいです。しかしほとんどのルールで採用されていることは間違いありません。その七対子を採用しているルールのほとんどで、同一牌4枚使いの七対子は不可とされているのが現状です。
七対子を採用しているルールのほとんどで4枚使いの七対子は不可とされているわけですから、友達の云う通り、それが(日本)麻雀の常識と云うことになります。そこで事前に何の打ち合わせや承諾もなくで4枚使いの七対子をアガった場合、チョンボとされても仕方がありません。
では4枚使いの七対子は中国にも存在しない、高内さんのグループだけの特殊ルールなのかと云えば、そうではありません。
七対子そのものは英語名を「セプン ペア」、または「セプソ ツイン」といい、1910年前後、上海在住のアメリカ商社マソが考案したといわれます。しかし「中国の一地方のアガリ役であったがアメリカ人好みであったため、上海在住のアメリカ人の間に普及し、徐々に中国人にも普及した」(麻雀研究家、田中貞行氏)という説もあり、ハッキリしていません。しかしその普及にアメリカ人が大きく関与していることだけは間違いなさそうです。
いずれにせよアガリの手牌は1雀頭4面子が基本形ですから、七対子が特殊な形式であることは間違いありません。ましてや同一牌4枚を二つの対子として扱うのはもっと特殊です。しかしこの同一牌4枚を二組の対子として認めるルールは、中国麻雀にもあったのです。
昭和5年、四六書院から刊行された「麻雀競技法とその秘訣」(林茂光)に、定座法(ていざほう)というルールが特別法として紹介されています。普通の麻雀では、散家(子)がアガると荘家(親)が移動しますが、定座法では、最初の振りサイで決まった東家南家・・は最後まで移動しません。そこで定座法と呼ばれるのですが、この定座法では七対子の4枚使いがOKと記述されています。
また他の文献でも、次のようなものが清老頭七対子として紹介されています。
しかしこのように中国麻雀に4牧使いを認めたルールがあるからといって、日本麻雀でも認めるべきだというのは短絡的な発想となります。現在
七対子の4枚使いOKというルールが中国でどれほど普及しているのか知りませんが、中国は中国、日本は日本だからです。
話は変わりますが、いうまでもなく対子とは2牧で1単位です。そこで同一牌が3枚あるものは対子ではありません。もちろんのように、が3枚あるのにそのうち2枚を対子として扱う場合があります。
これは俗に暗刻使いなどと呼ばれますが、これは同一牌を3枚使っている事を分りやすく表現しただけであって、本来の意味の刻子ではありません。あくまで面子としては の2面子です。
では同一牌が手のうちで4枚になったらどう呼ぶかですが、中国麻雀には手の内にただ存在しているだけの同一牌4枚を表現する用語はありません。それは雀頭は別として、順子にせよ刻子にせよ、面子は3枚で一組というのが基本だからと思われます。
しかし実際には手牌に同一牌4枚が存在する状態がままあります。そこで日本では暗刻をもじって槓仔(かんこ)と呼んだり、「未だ槓子ではない」という意味で未槓子(みカンツ)と呼んだりしています。
槓仔も未槓子も同じことですが、槓仔の場合は4枚を2面子で使用している状態(+)のニュアンスが強く、未槓子は4枚が孤立して存在しているのニュアンスが強い点が少し異なります。
そしてこの孤立した存在である同一牌4枚=未槓子は、通常の日本麻雀では二組の対子、あるいは暗刻と1枚と認定されることはありません。したがって下記のような手で流局した場合、テンパイ料の精算があるルールではノーテン罰符の支払いが発生するとされるのが普通です。
"アガリ牌が存在する、しない"もさることながら、もともと日本麻雀では未槓子を二組の対子とは解しない基本認識があるので、このような手はノーテンと判定されるわけです。このような未槓子を二組の対子と解さない基本認識により、日本麻雀では4枚使いの七対子が認められていないというのが一般的な解釈です。
もちろんどのようにルールでも、プレーヤー全員が承認すれば、そのグループ間では有効です。そこで今後、4枚使いの七対子OKというルールが日本麻雀の大半となるほど普及すれば、そのときは高田さんの主張の方が常識的ということになります。しかし現時点では、友達の主張の方が常識的ということになります。
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