KM Q&A 難問奇問 

         (05)間違い副露
 (月刊近代麻雀・昭和60年12月号)
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 西家のさらしメンツに四筒 が横向きになっていたので四筒四筒 を切ったところ、南家がロンといいました。「振りテンじゃないか」と抗議したところ、南家は「四筒 は捨てていない。自分が捨てたのは六筒で、はじめは確かに六筒が横向けになっていた。四筒 が横向きになっていたのは、いま云われて初めて気がついた。責任は西家にある」と答えました。

 しかし西家は「いや、自分がチーしたのはたしかに四筒 だった」といいます。残念ながら自分と北家は、そのときの南家の捨て牌が何であったか覚えていません。かと云って南家と西家の言い分が違うのに、四筒 が横になっているのを確認して四筒 を切った自分が放銃したことになるのは納得できません。はたしてこのアガりは成立するのでしょうか。それとも南家か西家がチョンボになるのでしょうか。 (厚木市・渋沢 ○央)


 このケース、西家のツケ牌は正しかったとして"渋沢さんの1人払い"、西家のツケ牌は間違っていたとして"西家の責任払い"、たとえ西家の間違いであっても、それに気づかず放銃した責任もあるとして、"放銃した渋沢さんと西家の折半払い"などいろんな処理法が考えられます。どの処理法でも話し合いで合意できれば、それにこしたことはありません。しかし誰も一歩も譲らないとなると、四角四面というか競技麻雀的な考えで解決するより仕方がありません。

 そこでまず南家の捨て牌が四筒 であったか六筒 であったかは別として、「最初から四筒 が横向きに副露されていた場合」から回答させていただきます。

 麻雀は審判の存在するゲームではありません。となればプレーヤーは同時に審判ということになります。そこで仮りに間違った行為があっても、どのプレーヤーからも何の抗議がなければ、それは全審判によって正当な行為であったと判定されたことになります。

 そしてゲームが次の段階に進めば、それ以前の行為は正当なものであったとして確定します。いったん確定した以上、もう−度その行為の是非を後から問われることはありません。それは一旦確定した事項を後から問題にすることは、自分がくだした判決を自分で否定するという事になるからです。

 この「一旦確定した事項は、後から問題にすることは出来ない」ということを、法律用語では一事不再理(いちじ ふさいり)の原則といいます。そして競技麻雀のトラブルの多くは、この原則によって処理されています。そこで質問のトフブルも この原則に当てはめてみますと、結論はおのずから明らかです。

 もし南家が「西家の副露(ツケ牌)は間違っている」と思ったなら、その時点で指摘すべきということになります。もちろんこの指摘は南家だけの権利ではありません。東家も北家も指摘する権利があります。

 ところがそのツケ牌間違いがあったとき、打牌した南家を含む3審判は何の抗議もしませんでした。そこでこれは西家が錯覚して間違えたのか 図的に間違えたのかに関係なく、全員がそのツケ牌を正当なものとして承認したことになります。

 すなわちこの時点で、南家の打牌は四筒 だったことになりますから、南家が四筒 でロンアガリを宣言すれば錯和(ツオホー)ということになります。もちろんこの場合、西家は正しい副露をしたことになっているのですから、何かの責任を問われることはありません。

 では西家がチーした時点で他家に間違いを指摘されたとしたら、どうなるのでしょうか。これは「ア ごめん、間違えた (_ _)ペコ」で終りです。いうならば卓下に牌を落としたのと同じ程度の過ちということです。
#高レートの中国麻雀などの場合、牌を卓下に落してもアガリ放棄(牌を拾うふりをして、すり替えるのかも知れないので)競技中 手で首のうしろを掻いてもアガリ放棄(首筋に隠してある牌とすり替えるのかも知れないので)になったりすることがあります。

 では今回のように、南家が「自分が捨てたのは六筒 。はじめは六筒 が横向けになっていた。四筒 が溝向けになっていたのは、いま初めて気がついた」と主張した場合はどうなるでしょうか。

 これが事実だとしたら、たしかに「チーした時点」では指摘のしようもありません。それなら南家の主張を認めて西家の責任払いとなるのかといえば、そうではありません。南家が「自分の捨て牌は六筒 だった」と主張しても、それを肯定する証拠はありません。となれば“現状がすべて”となります。すると南家が捨てていたのは四筒 ということになりますので、結論はやはり“南家の錯和、西家は不問”ということになるのです。

 こう云うと「その時点でバレても“ごめんなさい”で終り、バレずにスリ変えできれば他人を落としいれることが出来る。これは“イカサマのやり得”ではないか」という声が聞こえてきそうです。

 そう云われてしまえば、その通りかも知れません。しかしイカサマのやり得というような発想は、競技麻雀というか 正常なゲームレベルの話ではありません。そこで できるだけ そういうトラブルを防ぎたいということであれば、“そういう間違いを よく起こす人”とゲームすることを避けるしかないと思います。(>_<)

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